長い長い梯子を降りると、その先には巨大な門が有った。しかしその前には、巨体が居た。
「あれは……」
「み、ミノタウロス……!」
ミノタウロス
約3mに迫る巨体に、途轍もない膂力。そして何より、生半可な刃物では傷すら付かない高い防御力を誇る、当に魔物の中の魔物だろう。
しかしそのミノタウロスは、通常のミノタウロスとは違かった。
「ねえ……確かミノタウロスって、赤い肌じゃなかった?」
「黒い……わね……」
「それに、大きくないですか? 優に4mはありますよ?」
そう、門の前に居たミノタウロスは、通常より大きく黒い肌だった。それに、その手には雷を纏う大剣が握られていた。
「あれはまさか……ネームド!?」
「ミノタウロスのネームドといやあ……
今から少し前にあった戦争の時、たった一体で軍隊の大隊規模を壊滅させた規格外のミノタウロス。
一度は有名な冒険者達と交戦し負傷させる事には成功したが、討伐には失敗。逆にその冒険者達は全滅し、
その後、最新のネームドとして
「二体目ですね、ネームドと交戦するのは……」
「確かアステリオスは……岩すら砕く拳に、鉄より硬い肌って聞きましたが……」
「それだけではないな……明らかに、戦闘勘も高い」
神官娘の後、剣舞士は白髪剣姫と一緒に前に出た。
ここまで会話していたが、アステリオスは一歩も動かなかった。
それは恐らく、剣舞士と白髪剣姫を警戒したから。
下手に踏み込み攻擊したら、手痛い反撃を受けると察したからだろう。
「……こいつは、俺達三人で引き受ける……」
剣舞士がそう言うと、白髪剣姫と大妖精が構えた。
「そんな!?」
「師匠! ここは、全員で戦った方が!」
「いや……こいつは下手に大勢で挑んだら、被害が大きくなる……それに、時間の余裕も無い……安心しろ……こいつは、絶対に追わせない」
剣舞士はそう言って、餓狼だけでなく黒椿も抜いた。
それに合わせて、白髪剣姫も剣を抜いた。
ほぼ同時に、大妖精が
「斬撃強化、攻擊力強化」
とまずは、剣舞士と白髪剣姫を強化した。
更に
「全体強化……俊敏強化、防御力強化」
と全員を強化した。
「……私達でも、僅かな隙を作るのが限界だと思います……その隙を逃さず、門を通り抜けてください」
「……分かった……後で必ず会おう……」
大妖精の言葉に、ゴブリンスレイヤーは僅かに迷ってから頷いた。
「じゃあ……行くぞ……!」
その言葉と同時に、剣舞士と白髪剣姫が駆け出した。
二人は強化された機動性を活かし、二人が交互になるように撹乱しながらアステリオスに接近し、左右から一閃したが、二人の攻擊でも薄皮が少し削れた程度でしかない。
だがその時には、既に剣舞士が策を発動していた。
気付けばアステリオスの顔の高さに、着火した導火線が着いた竹筒があった。
アステリオスは爆弾かと考え、範囲外に出ようと横にジャンプしていた。次の瞬間、凄まじい閃光が放たれアステリオスの視界が真っ白に染まった。
「今だ! 行け!!」
剣舞士が合図したら、一党は全速力で駆け出した。
目的の門は昔の戦闘の余波か、右側が崩れている。そこを一党は駆け抜け
「ご武運を!!」
最後に戦士娘が、駆け抜けながら三人に声援を送った。
そして、アステリオスの視界が戻ると、三人以外は居なかった。
「さっきのは……」
「令嬢商人が魔法使い協会から仕入れた閃光筒だ……俺も原理はよく分からん」
大妖精からの問い掛けに答えながら、剣舞士は餓狼の刀身を見た。
今のところ刃毀れはしていないが、アステリオスの硬さを考えると、折れる可能性すらあり得る。
それは白髪剣姫も同じらしく、剣の様子を軽く見ている。
大妖精の支援魔法で斬撃強化されているが、それでも僅かに削った程度。
となれば、致命傷を狙うしか勝つ方法は無いだろう。
更に、魔剣が気になる。
冒険者達が死んでしまった為に、魔剣の詳しい効果は不明。しかし、ギルドに残っていた資料からは、雷を発生させ、操る魔剣となっている。
迂闊に受け止めたら、雷撃で内部からダメージを負うだろう。
だから、極力回避しながら攻擊していき、倒すしかない。
「いくぞ……あいつらを、追わせる訳にはいかない」
「はい!!」
剣舞士の言葉に、大妖精と白髪剣姫は頷いた。