今日も、ライネス師匠は弟子を甘やかす。 作:スカーレット@エボルト憑依中
「ところで、マスター。
昨日が何の日だったかは覚えているかな?」
また別の日、レイシフトをする日でもなく訓練をする訳でも無い日。
何か用事がある訳では無いが、少年はまた少女の部屋を訪れていた。
少年を膝枕し頭を優しく撫でながら、少女は微笑みかける。
長い間続けている為腕や足が痛む筈だが、頭を撫でる事や膝枕を一切止めずに延々としている。
少年が望むまでは何があっても止めないであろう。
ちょっとした問題ではあるが、人理焼却により行事を完全に忘れた少年はうなされているような声を出して考える。
「そうか、君は行事はもう覚えていないか…では、三択問題といこうじゃないか。
一つ、私の誕生日。
二つ、君が私を召喚し出会った日。
三つ、ストッキングの日。」
「…その問題って、正解を答えさせる気しかないよな?」
「はて、なんの事かな。
もしかしたら君が考えている答えとは別の日だったりするかもしれないんだぞ?」
意地悪をするように笑う少女の背後に悪魔の尻尾が生えてくる。
だが少女の表情は期待に満ちていて、早く正解を言ってくれと言わんばかりにうずうずとしている。
「…ストッキングの日。」
「…うん、正解だ。
流石は我が弟子、偉いぞぉ。
他の二つを答えなかった理由としては何かな?両方ともしっかりと覚えているとか?」
少女は心から嬉しそうに笑い、膝枕をされたままの少年の頬に軽く口付けをする。
「…まぁ、忘れるなんて事できないから。」
少女が下を向けば顔が合うような向きで膝枕をされている少年は、少し恥ずかしそうに目を逸らす。
口ではこう言っているが、本心は忘れたくないと思っているのだろう。
「…ふふふ、そうかそうか。
私も出会った日、そして君の誕生日はしっかりと覚えているよ。」
驚いたような表情をしてから、優しく微笑む少女は思わず頭を撫でる速度が早くなる。
悪魔の尻尾は犬のようにブンブンと振っていて、嬉しいと思っているのが簡単に分かってしまう。
しかし少女はそんな事を気にはせず、ただただ少年に対する想いのみを積み重ねていた。
〝可愛い〟〝好き〟〝今日は気分が落ち込んでいないな〟〝好き〟〝良かった〟〝大好き〟
少年と会っている時の少女の考えている事はほとんどがこの考えで埋め尽くされている。
少年の気持ちを考え想いを伝える事は無いが、現時点ではこうして少年に愛情を注ぐ事で満足している。
ただし、少年と会っている際紫式部と呼ばれるサーヴァントには頑なに近付こうとはしない。
理由としては、紫式部の能力によって本心が全てさらけ出してしまう事になる為。
「…それよりも、何でストッキングの日の話を?
特に関係ないんじゃ…」
「何を言う、今の私にかなり関係しているだろう?
ほら、現に君がその感触を堪能しているじゃないか。」
少女はそう言って少年の腕を導き、自身の太腿を触らせる。
ストッキングの感触と柔らかい少女の太腿の感触が手から伝わり、少年は少しだけ意識してしまう。
「おや、顔が赤くなってきたな…意識してくれたかな?」
「……」
その言葉を肯定するように、少年は何も喋らずに目を逸らす。
少女にとってその光景が良いものなのか、可愛らしいものを見たような表情に変わる。
「…ふふ…本当に君は可愛い。
…今すぐにでも、食べちゃいたいくらいに…」
膝枕をしたまま口を少年の耳まで近付け、耳元で囁く。
小さいながらも胸が顔に当たり、少女の胸とストッキング越しの太腿に挟まれ少年の興奮が高まる。
「っ…やめてくれ、俺は師匠とそんな事をするつもりは無いから…師匠もそんな事したくはないだろ。」
優しく押し退け、少女から少し遠ざかる。
そんな少年を見て、密かに少女は思う。
彼なりに私を思っての事だとは分かっている。
もし、そうなってしまったら私に迷惑をかけたり失望をさせてしまうかもしれないと考えているのも重々承知している。
それなのに、私は何故ここまで悲しいと感じてしまうのだろう。
意中の男性から跳ね除けられたから?…違う。
我が弟子が想いに答えてくれないから?…違う。
じゃあ、私は。
《何をしても、どれだけ時間をかけても自分を信じてくれないから…だろう?》
「っ…」
少女は思わず息を呑む。
この体にいる、もう一人の人物───司馬懿。
その人物からの予想外の答えが、自身の知りたかった答えにピッタリとハマった感覚があった。
信じてくれているはずなのに。
十分に信頼関係を築いている筈なのに。
なのに、何故。
《確かに、マスターと俺達は十分に信頼関係を築いている。
だが、完全には信頼されていない。
気付いているだろう?》
確かに、少年は少女を信頼しきってはいない。
少女は少年を信頼し、少年の為なら命でも投げ出す覚悟があるだろう。
しかし少年は〝きっと失望をさせてしまう〟〝迷惑をかけてしまう〟と常に感じている。
本当に信頼しているならば、心配をする事など微塵もないだろう。
なのに何故少年はいつまでもそう感じてしまうのか。
それは少年が幼い頃から無意識に作ってきた壁によって他人を信じ、愛する事ができなくなっている為。
ただひたすらに愛情を求め、周りによって歪んでしまった為。
「…そうか、私は。」
「…師匠?」
「ううん、なんでもない。
いやぁ、冗談が過ぎてしまったかな。
君がそこまで言うなら、私は一切このような事はやめよう。
すまなかった、今日はこれから用事があるからもう戻ってくれると嬉しいかな。」
少女はいつものように、優しく笑う。
なんでもないかのように、冗談だと笑う。
しかし、少年も少女も気付いている。
その笑顔は偽物だと。
無理をしていると。
「……うん、ごめん。
じゃあ、また明日。」
「うん、また明日。」
小さく手を振り、少年が部屋から出ていくのを見送る。
自動のドアが閉まる機械音が響き、一人残された少女だけが残る。
「……私は、駄目な師匠だな。」
一人呟いたその言葉を肯定する者も否定する者も、その部屋には存在しない。
司馬懿は黙り、少女、〝ライネス〟の想いを静かに聞く。
次の日から、ライネスはいつも通りに戻った。
何も無かったかのように、いつも通りに。
それから数日後、レイシフトが行われた。
一時的に発生した小規模の特異点を簡単に修復するというミッションで、マスター、マシュ、ライネスの三人が向かう事となった。
しかし、想定外の事態はつきもの。
特異点で突如出現した無数のエネミーに囲まれ、強力な毒を受けて身体が動かなくなったライネスを庇いマスターが傷を負ってしまった。
トリムマウによってその場を切り抜けカルデアに緊急帰還をし、サーヴァント達による必死の治療によって事なきを得た。
それでも、ライネスは─────
「…やあ、我が弟子…身体は、もう大丈夫かな?」
翌日。
ライネスは、マスターの部屋を訪れていた。
「あ、師匠。
かなり良くなったよ。
痛みも無いから明日からまた戻れる。」
マスターは包帯こそ巻いてはいるものの、異常無しといったように体を軽く動かせる。
「…そうか、良かった。
……我が弟子よ。君は、どうして私を庇ったんだ?
君が傷を負う必要は無かったのに。」
ライネスはマスターの隣まで歩き、ベッドに座る。
その表情はいつもとは違い、真剣な表情だった。
「どうして、って言われても……俺が、そうしたかったから?
……戦わせておいて何を言うんだ、って思われるかもしれないけど…師匠が傷付くのは、見たくないからさ。」
「……君が傷ついて、私達がどれだけ心配をしたと思っているんだ?
私は、君が傷付くのを見たくはなかった。」
「……ごめん。」
「…私は、君が傷を受けて…倒れるのを見て…もう、死んじゃうんじゃないかって…怖かった。
怖かったんだよ。
あんなに怖いと思ったのは、初めてだった。
君がいなくなるのが、何よりも怖かった。
そして、一つだけ決めた事があるんだ。」
震えた声で、ライネスはマスターの手を握る。
マスターが声をかけようとすると、その唇が塞がれた。
〝少女〟は〝少年〟に口付けをした。
以前のように、恋人同士がするような舌と舌を絡め、口内を貪り合うような口付けを。
息苦しくなったのか力が入らない少年を、少女は力のままに押し倒す。
口付けを続けたまま少女は少年の体に馬乗りになり、唇を離す。
互いの唾液が橋を作り、少女がそれを吸い飲み込む。
頬を赤く染めた少女が、少年と目を合わせたまま口を開く。
「…我が弟子。
私は、君がいないと生きていけない。
私には君しかいない。
もう、こんな関係のままは嫌なんだ。
私は、君を手に入れる為に─────
─────君を、犯す。」
読者の皆様、予想外の高評価やアンケートの回答をしてくださりありがとうございます。
この話を投稿した時点ではイチャラブックスと重い方向がいい勝負をしていて、感想の方が一件だけ入っていました。
本編としては次話で終わりにしようかなとは考えていますが、要望があればif世界や本編後の話を書こうかなとか考えています。
感想等でこんな師匠の甘やかしプレイが見たいとかこんな感じの話が見てみたい、等があれば書くかもしれません。
(訳:皆様の見たい甘やかし師匠を教えてくれよな!!
昨日がストッキングの日
↓
よし、ストッキングの日の話題を入れた話にしよう!
↓
ストッキングの日に間に合わない
↓
アンケートの内容を見てどんな話にするか考える
↓
いつの間にかこんな話になってた。
台詞の後について
-
台詞の後に「♡」は必要
-
台詞の後に「♡」は必要ない