日本の村に眠る淫習を訪ねて、柳沢研究室レポート 今に残る日本の村のエロ風習 ⭐︎各話読み切り 新作はイラスト付き 作:みなぽん
月野カグヤ 17歳
月野朋子 35歳
春先のやわらかな陽射しが、山あいの町をゆっくりと満たしていく頃だった。
カグヤと母の朋子がこの町にやってきてから、まだ一ヶ月も経っていないというのに、二人はすでに「よそ者」ではなくなりつつあった。朝になると、商店街のパン屋の前を通るたびに「カグヤちゃん、これ焼きすぎちゃったのよ」と言って袋を手渡され、八百屋では「今日はトマトが甘いぞ」とおまけを山ほど詰められる。朋子が遠慮しても、「いいのいいの」と笑って押し切られるのが常だった。
カグヤは最初、その距離の近さに戸惑っていた。大阪で過ごした幼い頃、都市での生活では、こんなふうに他人が踏み込んでくることはなかったからだ。だが、この町ではそれが当たり前だった。
「カグヤちゃん、田植え手伝ってみるか?」
ある日、田んぼの脇で声をかけてきたのは坂田徹だった。青年団の団長で、町の若者たちのまとめ役。日に焼けた顔で、気さくに笑う。
「え、でも、私、やったことないです」
「だからいいんだよ。最初はみんな初心者だ」
その一言に背中を押され、カグヤは裸足で田んぼに入った。泥の感触に悲鳴をあげ、バランスを崩して尻もちをつき、周囲の大人たちに大笑いされる。その様子を少し離れたところから見ていた石田和也も、思わず笑ってしまった。
「……大丈夫か?」
声をかけると、カグヤは泥だらけの手で顔をぬぐいながら笑った。
「ぜんぜん大丈夫じゃないです。でも、楽しいです」
その笑顔を見た瞬間、和也の胸は妙に熱くなった。守りたい、と思った。理由なんてうまく言葉にできない。ただ、この笑顔が消えてほしくないと、そう思った。
一方で、朋子もまた、この町の中で少しずつ居場所を見つけていた。青年団の集まりに顔を出すようになり、炊き出しや祭りの準備を手伝う中で、自然と会話が増えていく。
「無理して笑わなくていいんだぞ」
ある晩、片付けのあとにぽつりと声をかけたのは坂田徹だった。
朋子は少し驚いたように目を見開き、それから静かに笑った。
「……そんな顔、していましたか?」
「してたな。長く生きてりゃ、そういうのはわかる」
徹は照れくさそうに頭をかく。「でもよ、この町はさ、そういうの全部ひっくるめて受け入れるとこだから。あんたも、そのままでいい」
朋子はしばらく何も言わなかったが、やがて小さく頷いた。その目には、わずかな涙が浮かんでいた。
穏やかな日々だった。笑い声があり、誰かが誰かを気にかける当たり前があった。カグヤにとっても、朋子にとっても、それはようやく手に入れた「普通」だった。
――だからこそ、それはあまりにも脆かった。
ある日の午後、町に異様な音が響いた。エンジンの重低音。黒塗りの高級車が何台も連なり、細い道を無理やり進んでくる。
その光景を見た瞬間、朋子の顔から血の気が引いた。
「……来た……」
カグヤは何もわからず、ただ母の手を強く握った。
車が止まり、ドアが開く。屈強なスーツ姿の男たちが次々と降り立ち、最後に現れたのは、冷たい目をした男だった。
カグヤの父――すべての元凶。金田万蔵
「久しぶりだな、朋子」
その声には感情がなかった。ただの確認のように、事務的に名前を呼ぶ。
「どうして……ここが……」
「調べればわかる。お前は隠れるのが下手だ」
男はカグヤに視線を向ける。「それが、あの子か。……思ったより使えそうだな」
その言葉に、和也の中で何かが弾けた。
「ふざけんなよ!」
気づけば前に出ていた。「人をモノみたいに言うな!」
男はわずかに眉を動かし、鼻で笑った。
「田舎のガキが、口を挟むな。お前に関係のある話ではない」
「あるに決まってるだろ!」
その隣に、坂田徹が並ぶ。
「ここは俺たちの町だ。あんたの都合で人を連れていく場所じゃねぇ」
男はため息をついた。
「理解が足りないな。これは“回収”だ。必要になったから来た!私の血を引く者は、私のものだ。お前たちのような連中に関与する権利はない」
「権利だと?」
徹の声が低くなる。「じゃあ聞くが、あんたはこの二人に何をしてきた?」
男は一瞬だけ沈黙し、それから平然と答えた。
「売れないアイドルをバックアップしてやった。俺の子供を身ごもったから、金を与えた。愛人として飼ってやってたんだ。それで十分だろう」
そのあまりの言葉に、周囲の空気が凍りつく。
「愛人だろうが、子どもだろうが、役に立てば価値がある。役に立たなければ切り捨てる。それだけの話だ」
カグヤの手が震えていた。朋子はそれを強く握りしめる。
「……帰ってください」
朋子の声は震えていたが、はっきりとしていた。「この子は、あなたの道具じゃない」
男は興味なさそうに肩をすくめる。
「感情論は不要だ。連れていけ」
その一言で、ガードマンたちが一斉に動いた。
「止まれ!」
和也が飛び込む。だが次の瞬間、腹に重い衝撃が走り、息が止まる。殴られたのだと理解する前に、地面に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
徹も応戦するが、数が違いすぎた。何人もを相手にしてなお立ち続けるが、背後から押さえつけられ、膝をつかされる。
「離せ……!」
「無駄だ」
男は冷たく言い放つ。「力の差も理解できないのか。愚かだな」
和也は必死に立ち上がろうとするが、再び蹴り飛ばされる。視界が滲む。悔しさと無力感で、歯が鳴る。
「やめて!」
カグヤの叫びが響く。だが、その声も無情にかき消される。
朋子とカグヤは引き離され、強引に車へと押し込まれる。
「和也……!」
カグヤの手が伸びる。しかし、その指先は届かない。
「カグヤぁぁ!!」
和也の叫びが虚しく響く中、車のドアが閉まる。
エンジン音が再び鳴り響き、黒塗りの車列はゆっくりと去っていった。
あとに残ったのは、倒れたまま動けない和也と、膝をついたまま拳を握りしめる徹、そして言葉を失った町の人々だった。
しばらくの沈黙のあと、徹が低く呟く。
「……終わりじゃねぇ」
その声には、怒りと決意が混じっていた。
和也も顔を上げる。唇から血を流しながら、それでも目は死んでいなかった。
「取り返す……絶対に……!」
その言葉に、周囲の青年団の面々が顔を見合わせる。
「やるんだな、団長」
「ああ」
徹はゆっくりと立ち上がった。「あいつらが相手でも関係ねぇ。この町の人間を、好き勝手に連れていかせるわけにはいかない」
遠くで、夕焼けが山を赤く染めていた。
その色はまるで、これから始まる戦いの予兆のようだった。
黒塗りの車列が去ったあとも、町の空気は重く沈んでいた。土の匂いと、夕焼けの赤さがやけに現実味を帯びて、誰もが言葉を失っていた。
その沈黙を破るように、ゆっくりと杖をつく音が近づいてくる。
「……情けない顔をしとるな」
振り返ると、そこに立っていたのは村長だった。白髪の老人だが、その眼光は鋭く、ただの年寄りではないと誰もが感じる迫力があった。
「村長……」
坂田が顔を上げる。
村長はしばらく、倒れた和也と血を流す坂田を見回し、やがて懐から古びた包みを取り出した。
「坂田、前へ出ろ」
言われるままに歩み出ると、村長はその包みをほどく。中から現れたのは、時代を感じさせる木製の軍配だった。黒く煤けた表面に、かすかに紋様が残っている。
「わしらはな……雑賀鉄砲衆の末裔じゃ」
その言葉に、ざわめきが広がる。
「坂田、おまえにこれを授ける。雑賀孫六の軍配じゃ!これを持つものは、村の衆を指揮することができる」
坂田は思わず息を呑む。冗談ではないと、その場の誰もが理解した。
「村の男どもを使え。知恵と覚悟で戦え。――見事、敵を討って見せよ」
その瞬間、坂田の中で何かが切り替わった。受け取った軍配の重みが、そのまま責任の重さとしてのしかかる。
「……やります」
低く、しかしはっきりと答える。
その横で、和也もふらつきながら立ち上がった。
「俺も……行きます」
「当たり前だろ。おまえは先陣だ」
坂田はにやりと笑った。
そこからの動きは速かった。
まず情報の整理。金田たちの進行方向は峠道――大阪方面。しかしその先、最も可能性が高いのは、南紀白浜のリゾートエリア。外部からの目が少なく、かつ豪華な施設が整っている場所。
「正面から追えば間に合わない」
地図を広げながら坂田が言う。
「なら、近道だ」
誰かが呟く。
「裏山……か」
坂田の目が鋭くなる。
その裏山には、かつて採石場として使われていたルートがあり、そこから白浜へと直結する搬出路が残っている。そして――
「ベルトコンベア……!」
和也が思い出したように叫ぶ。
コンクリート資材を運ぶための巨大なベルトコンベア。今は稼働していないが、傾斜は緩やかで、人が乗ることもできる。
「決まりだ」
坂田は軍配を握りしめる。
「全員、動くぞ!」
青年団、そして和也のクラスメイトたちも集まっていた。普段はふざけ合う仲間たちが、今は真剣な顔で頷く。
「マジでやるんだな」
「ああ。――取り返す」
その一言に、全員の覚悟が揃った。
夜の山道を駆け上がり、やがて巨大なベルトコンベアにたどり着く。錆びた鉄の匂い、軋む音。
「落ちるなよ。下は崖だ」
坂田が声を張る。
そして彼らは、一斉にその上へと乗り込んだ。
ゆっくりと、しかし確実に南へ――白浜へと滑り出す。
風が顔を打つ。暗闇の中、ただ前だけを見て進むその姿は、まるで戦国の兵のようだった。
――その頃。
南紀白浜の高級リゾートホテル。
豪華なロビー、煌びやかな照明。その一室で、金田はワインを傾けながら笑っていた。
「結局、ああいう連中は何もできん。感情だけで動く愚か者だ」
ガードマンの一人が頷く。
「追ってくる様子はありません」
「当然だ。力の差を思い知っただろう」
金田は鼻で笑う。「あの娘は明日には東京へ送る。美しい娘に育った!使い道はいくらでもある」
その言葉に、カグヤの顔が強張る。拘束されたまま、何もできずにいる。
「やめて……」
朋子が震える声で言う。
「黙れ。お前に発言権はない!お前には身のほどわからせてやらなくてはなくてはいかんな!」冷たく言い放つ金田。そして彼女の体を抱きしめた。
「やめてください。もうあなたの愛人じゃないんです。」
「お前の処女を奪いセックスの喜びを教えてやったのは誰だったかな?その体に聞いてやろう。」
朋子は両腕を掴まれたまま部屋に押し込まれる。金田はゆっくりとジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイを緩めながら微笑んだ。
「さて……久しぶりだな。朋子」
その声音には愉悦が滲んでいた。
「……触らないで」
朋子の声は震えていた。だが金田は一歩も退かない。
「触れられない理由などない。お前は今も――俺のものだ。お前の体は覚えているはずだ。私とのセックスの気持ちよさをなぁ。まだ10代だったお前を俺は1から仕込んでやったらだからな!喜んで腰を振るちんぽ奴隷に!」
彼の手が朋子の首筋に伸びる。その接触だけで、朋子の身体が小さく跳ねた。
「嘘だ……違う……っ」
彼女は必死に否定する。けれどその肌は火照り始め、瞳が潤んでいる。金田の指先が鎖骨を這い、乳房を包み込むように揉みしだく。
「感じるだろう?昔と同じだ。ここが弱いのは変わらない」
カグヤは息を呑んだ。母の表情が変わっていく。恐怖と嫌悪の中に、別の何かが混ざり始めたのを感じる。
「やめて……お願い……カグヤの前で……っ」
「最高のショーになると思わないか?」金田は嘲笑った。「自分の母親がどれほど淫乱なのか、しっかり見ておくといい。愛人として私のおもちゃにするだけじゃなく、他の男にこいつを抱かせたこともあるんだぞ。アメリカのポルノ男優の黒人とセックスさせた時は面白かったなぁ。黒いちんぽにむしゃぶりついて絶頂なあまり気絶したんだぞ。お前の母親は!」
その言葉を聞いた瞬間、カグヤの中で何かが壊れた。
「いやぁぁぁっ!!」
彼女はガードマンに向かって体当たりするが、簡単に羽交締めにされてしまう。
「ママ!ママぁっ!!」
その叫び声を聞きながらも、金田の動きは止められない。
朋子の服が一枚一枚剥ぎ取られていき、やがて白い肌が露わになる。
「だめ……だめなの……」
朋子の抵抗は弱まりつつあった。かつて愛人だった頃の記憶が蘇る。苦痛と快楽が織り交ざった三年間。そのトラウマが、金田の手の動き一つで鮮明に呼び覚まされていく。
「カグヤを犯されたくなかったら、お前がおもちゃになるんだ。感じるだろう?ここでイった時のことを覚えているか?」
「お願いだから、娘には手をださないで」
耳元で囁かれる言葉に、朋子の全身が痙攣する。金田の指が秘部に触れた瞬間、彼女の腰が弓なりに跳ねた。
「やっ……ああっ……!」
涙を流しながらも、体は正直だった。長年の調教によって刻み込まれた快楽の記憶が、理性を押し流していく。
「違う……私は……あなたなんか……!」
言葉とは裏腹に、濡れた吐息が漏れる。金田は満足げに唇を歪めた。
「素直になれ。体は正直だ」
彼の舌が朋子の乳首を舐め上げる。背筋を電流が走るような感覚に襲われ、朋子は嬌声を上げてしまった。
「ダメ……こんなの……絶対……!」
叫びながらも、下半身は疼きを抑えられない。金田の手が太腿を這い上がるにつれ、腰が勝手に揺れ始める。
「まだ抵抗するか……ならば仕方ないな」
金田は朋子の両脚を大きく開かせると、自身の昂ぶりをあてがった。
「やめてぇぇぇっ!!!」
カグヤの絶叫が響く中、金田は一気に貫いた。
「あああっ!!!」
朋子の全身が仰け反る。痛みと同時に奔流のような快感が押し寄せ、彼女の理性は崩壊寸前だった。
「分かるだろう?これがお前の本性だ」
金田は容赦なく動き始める。そのリズムに合わせて朋子の体が揺れ、声が高まっていく。
「ダメ……イきたくない……イきたくないのにぃっ……!」
涙と汗に濡れた顔で、朋子は必死に耐えようとする。
しかし、彼のピストンは、容赦なく、彼女をえぐり、彼女の敏感な部分を目覚めさせ、次には自ら腰を振らせた。
「やっぱりだな!この淫乱め!イケ!」
快楽の波は容赦なく押し寄せ、ついに—
「イク……だめ……イクぅぅぅ!!」
全身を激しく震わせながら、朋子は絶頂に達した。その光景を目にしたカグヤの瞳から、希望の光が消えていく。
「お前の体は忘れていないようだな」
金田は冷笑しながら朋子の体を抱きしめる。
「これから毎日調教しなおす。楽しみだ」
その時—
ドーン!
突如として部屋の壁が爆発したかのように粉々に砕け散る。大量の煙と埃が舞う中、人影が次々と突入してきた。
「金田ぁああああああああ…!」
坂田徹が軍配を掲げながら叫ぶ。
「カグヤっ!!」
和也が木刀を振り回し男たちを突進して突破しようとする。続いて青年団のメンバーが雪崩れ込んできた。
「な……なんだこの人数は……!」
金田は驚愕の表情を浮かべる。村人、総勢50名が押し掛けたのだ。
「言ったはずだ……この町はお前たちを許さないと」
徹は断固とした表情で告げる。
金田が警備を呼ぼうとするが—
「遅い!」
村の男達がすでに警備員を打ち倒していた。
カグヤは震える足で立ち上がると、母のもとに駆け寄る。半裸のまま放心状態の朋子を抱きしめながら涙を流す。
「ママ…………」
徹は金田と向き合い、軍配を地面に叩きつけた。
「覚悟しろ。今度は逃がさん」
南紀白浜の星空の下で、因縁の戦いが始まった。
「覚悟しろ。今度は逃がさん」
徹の言葉が夜の海風に乗って響く。
50人の村人たちが円形に陣を組み、軍配を持った徹を中心に構える姿は、まさに戦国武将の一軍だった。
金田は床に転がっていた服を慌てて拾い上げ、ボタンを留めながら怒鳴る。
「貴様ら……!私を誰だと思っている!警察を呼ぶぞ!こんな地方の山猿どもが、都会の大物に敵うと思ってるのか?」
金田は嘲るように笑いながらスマートフォンを取り出す──が、画面をタップしても反応がない。
「電話は繋がらないぜ」
徹がニヤリと笑う。
「仲間が携帯のアンテナをオフにした。このホテルだけ今や完全オフライン!」
金田の顔から血の気が引く。
「馬鹿な……どこまで用意してるんだ……!」
言い終わる前に、坂田の拳が叩き込まれる。
「これはな……」
もう一発。
「“勝ち負け”の話じゃねぇんだよ」
さらに踏み込む。
「守るって決めたんだ。――それだけだ!」
金田は床に叩きつけられる。信じられないという顔で坂田を見上げる。
「馬鹿な……こんな……」
「金の力で全部思い通りになると思うなよ」
坂田は静かに言い放つ。
やがて、すべてが終わった。
ガードマンたちは拘束され、金田は完全に打ちのめされていた。
和也は震える手でカグヤの拘束を解く。
「もう大丈夫だ」
その言葉を聞いた瞬間、カグヤは堪えきれずに抱きついた。
「怖かった……ずっと……」
「ごめん、遅くなって……」
「ううん……来てくれた……」
その声は、これまでのすべての不安を溶かすように震えていた。
一方、朋子も坂田の前に立つ。
「……どうして……ここまで……」
その問いに、坂田は少し照れたように笑う。
「好きな女と、その娘が泣いてるのに、黙ってられるかよ」
朋子は涙をこぼしながら笑った。
「……ありがとう……」
その言葉には、これまでの人生すべてが込められているようだった。
翌朝。
村へと戻る道を、彼らはゆっくりと歩いていた。
カグヤは和也の隣で、朋子は坂田の隣で、それぞれに寄り添う。
村の入口に着いたとき、そこには大勢の人々が待っていた。
「おかえり!」
その声に迎えられ、カグヤは涙を流しながら笑う。
――ここが、自分の居場所だと、ようやく心から思えた。
村に凱旋した夜、祝いの席がひと段落したあと、月野朋子はひとり、縁側に座っていた。遠くで笑い声が聞こえる。提灯の灯りが揺れ、虫の音が静かに夜を満たしている。
その穏やかな光景の中で、彼女だけが少しだけ過去に取り残されていた。
「……眠れませんか」
背後から声がして振り向くと、坂田徹が立っていた。手には湯呑みが二つ。
「少し、昔のことを思い出していて……」
朋子は苦笑しながら受け取る。
「聞いてもいいか?」
坂田は隣に腰を下ろした。
しばらくの沈黙のあと、朋子はぽつりと語り始めた。
――それは、まだ彼女が“月野朋子”ではなく、“夢を追う誰か”だった頃の話。
東京の小さな芸能事務所。雑居ビルの一室。壁に貼られたアイドルのポスターの中に、自分の顔はなかった。
「笑顔が足りないな」「もっと愛想よく」「売れる顔じゃないけど、使いようはある」
そんな言葉を何度も浴びながら、それでも朋子はステージに立ち続けた。小さなライブハウス、客は十人もいない。拍手もまばら。それでも、歌うしかなかった。
夢だったからだ。
誰かに見つけてもらえる日を、信じていたから。
だが現実は、そんなに優しくなかった。
ある日、マネージャーに呼び出された。
「チャンスだぞ」
そう言われて連れていかれたのは、高級ホテルの一室だった。
そこにいたのが、金田だった。
その時の彼の第一声を、朋子は今でもはっきり覚えている。
「……これか? ずいぶん地味だな」
値踏みするような視線。人ではなく、商品を見る目。
「まあいい。磨けば多少は使えるか」
その言葉に、背筋が冷えた。
後でマネージャーは笑いながら言った。
「気に入られたら、一気に売れるぞ。ああいう人に取り入るのも才能のうちだ」
断る選択肢は、なかった。
いや――正確には、あると思えなかった。
夢を捨てる勇気が、なかった。
それからの時間は、曖昧だった。金田の求めに応じるたび、少しずつ何かが削れていく感覚。だがその代わりに、仕事は増えた。小さな雑誌のグラビア、深夜番組の端役。ほんのわずかだが、“見られる側”に近づいていく実感もあった。
だが――
「子どもができました」
その報告をしたとき、金田は一瞬だけ眉をひそめ、それから興味を失ったように言った。
「そうか。産むなら勝手にしろ。ただし、表には出すな」
それだけだった。
「認知は……」
「必要ない。金はやる。それで十分だろう」
その瞬間、すべてが崩れた気がした。
夢も、誇りも、自分の存在も。
ただひとつ、残ったのは――お腹の中の命だった。
カグヤ。
その名前をつけたとき、朋子は決めた。この子だけは、絶対に守ると。
芸能界から姿を消し、誰にも知られない場所へ。そうして辿り着いたのが、この村だった。
「……情けない話ですよね」
語り終えた朋子は、少し自嘲するように笑った。
「夢を追った結果が、あんな男の……」
「違うな」
坂田が静かに言う。
「その結果が、あの子だろ」
朋子は言葉を失う。
「カグヤは、お前が守り抜いた証だ。胸張れよ」
その言葉に、朋子の目から涙がこぼれる。
「……でも、あの子には……あんな父親の血が……」
「関係ねぇよ」
即答だった。
「血がどうとかじゃねぇ。あの子がどこで笑ってるか、それが全部だ」
遠くで、カグヤと和也の笑い声が聞こえる。
無邪気で、まっすぐで、嘘のない声。
朋子はその音に耳を澄ませ、そして静かに頷いた。
「……はい」
それは、ようやく過去を受け入れた瞬間だった。
夜空には、丸い月が浮かんでいた。
まるで、あの日守ると決めた小さな命が、今こうして確かに輝いていることを祝福するかのように。
月光の誓い
「お前には守るものがある」
「お前には俺が必要だ」
「――だから」
言葉を探るように沈黙し、やがて真摯な眼差しで朋子を見つめながら、坂田徹は告げた。
「お前を守らせてくれないか」
朋子の呼吸が止まる。月明かりが彼女の瞳に揺れ、長い睫毛に宿った。
「……私に、そんな資格が……」
「ある」徹は躊躇わなかった。「あんな男から逃げてきた。傷だらけで、それでも娘を守ってきた。それだけで充分だ」
その言葉に、朋子の胸の奥が熱くなった。
「坂田さんは……いつも助けてくれましたね」
「お前の笑顔が見たかった」
坂田は一歩近づき、朋子の頬に触れた。温かい掌。
「今度は……恋人として守らせてくれ」
朋子は答えの代わりに、徹の胸に顔を埋めた。
「……私も」かすれた声で呟く。「守られたい……です」
「俺を選んでくれ」徹の声がかすれる。「一緒に生きよう」
ゆっくりと二人の影が重なる。月明かりが重なった唇を照らした。
寝室へ移動する途中、朋子は不安げに尋ねた。
「嫌じゃないですか? 私は……あの男の手が……」
「過去は過去だ」徹は微笑みながら遮る。「これからは、俺の手しか触れない」
朋子の目に涙が溢れた。徹はそっとそれを拭いながら、彼女を布団に導いた。
月光が障子越しに差し込み、白い寝具を銀色に染めている。
徹は慎重に朋子の服を脱がせながら、古い傷跡を見つけるたびに唇を寄せた。
「これも……これも……全部お前が生きてきた証だ」
「嫌だ……見られたくない……」
「美しく見える。生きた証だからな」
彼の低い囁きが耳に響く。指先が慈しむように肌を滑る。痛ましい記憶と新しい優しさが混じり合い、朋子の体が小刻みに震えた。
「本当に……いいのか?」
徹の確認に、朋子は瞼を閉じたまま頷く。
「あなたが……欲しいです」
その言葉に応えるように、徹はゆっくりと彼女の中へ沈んだ。
最初はためらいがちに。だが朋子の緊張が解けると、深い満足とともに律動が始まる。
「あっ……っ…」
甘い喘ぎが漏れる。金田の時に感じた屈辱や恐怖とは違う。自分の意志で選んだ男の体温に包まれる悦び。
徹は腰を進めながら、朋子の変化する表情を見守っていた。苦痛から解放される顔。目尻に溜まる涙。それら全てを優しさで受け止める。
「怖いか?」
「ううん……嬉しい……」
「ちゃんと気持ち良くなれよ」
朋子は初めての「自分の意思による快楽」に翻弄されながらも、それに溺れていく自分に戸惑っていた。
「もっと……強く……」
つい漏らした言葉に自分で驚く。
だが徹は嬉しそうに笑い、応えた。
「これで良いか?」
腰遣いが大胆になる。朋子の奥が締まり、熱く脈打つ。
「ああっ……!」
悲鳴とも嬌声ともつかない声が漏れた。膣壁が収縮し、徹の男根を飲み込む。
「凄いな……朋子……」
徹の額に汗が光る。激しく責められながらも朋子は恍惚とした表情を浮かべた。
「ずっと……寂しかったんです……」
「知ってる」
「でも今は……すごく幸せ……」
徹は彼女の腕を引き寄せ、騎乗位に導いた。月光に照らされた白い背中に舌を這わせながら突き上げる。
「俺も……お前を愛してる」
「私も……あなたを……愛してます……!」
肉襞が収縮し、徹の分身を絡め取る。下から支える腕に力が入り、腰の動きが加速する。
「ああ……もう……!」
朋子の声が切迫した。膣内が激しく痙攣し、徹を締め付ける。
「一緒に……いくぞ」
「来て……!」
二人の動きが同期し、瞬間的に高みへ昇った。
「―――ッ!」
徹が激しく放出し、朋子はその熱を受け止めながら絶頂を迎えた。全身が波打ち、糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。
しばらく荒い息だけが部屋に満ちた。やがて朋子が静かに呟く。
「……こんな……気持ちよかったの……初めてかも……」
徹は彼女の頭を胸に抱き寄せた。
「何度でも教えてやる。お前が望む限り」
窓から差し込む月光が二人を照らす。長い夜が始まろうとしていた。
星明かりの告白
月光の照らす縁側で母が新たな愛に包まれていたちょうどその頃――離れの小さな部屋では、カグヤと和也が静かに向き合っていた。
「本当にいいのか?」
和也は緊張で震える声で訊いた。畳敷きの狭い部屋、窓から差し込む淡い月光が布団を銀色に染めている。
カグヤは布団の上で正座し、俯いたまま小さく頷いた。
「和也くんなら……いい」
その返事が聞こえた途端、和也は息を呑んだ。目の前にいるのは幼なじみではなく、一人の女性――守るべき人だった。
「無理はしないでくれよ」
慎重に距離を詰めると、カグヤの華奢な肩が微かに震えた。そっと彼女の手を取り、握る。少女の指は細くて冷たかった。
「怖い?」
「うん……少しだけ」
カグヤはかすれた声で答える。
「でも……和也くんが一緒なら平気」
和也の胸に熱いものがこみ上げた。この純粋すぎる信頼に応えたい。
慎重に彼女の方へ体重を預ける。
「目を閉じて」
囁くと同時に、ゆっくりと唇を重ねた。柔らかくて甘い感触。初めてのキスは恐る恐るだったが、カグヤが応じてくると徐々に深くなる。息継ぎの合間に彼女の匂いを感じる――シャンプーと石鹸の香りが混ざり合った少女特有の甘さ。
「好きだ」
唇を離した隙に告げる。
「私も……ずっと……」
カグヤの言葉が途切れたのは、和也の手が彼女の肩に触れたからだ。
「脱いでほしい」
頼むような言い方に、カグヤは頬を紅潮させながら浴衣の紐を解いた。白い襦袢が現れ、和也の喉仏が上下する。ゆっくりと襟を開くと、豊かな胸がこぼれ出た。
「綺麗だ」
「やめて……見ないで……」
恥ずかしさで身を捩るカグヤを優しく抱き留めながら、和也はそっと彼女の乳房を覆った。
「柔らかいな……」
初めて触れる女性の体。皮膚の滑らかさ、胸の重量感に圧倒される。掌に収まりきらない膨らみを丁寧に揉みしだき、淡い桃色の先端にそっと唇を寄せた。
「あっ……」
甘い呻きが漏れる。乳首を含むとカグヤの体が弓なりに跳ねた。
和也の頭を抱きかかえるようにして快感に耐える彼女の仕草が愛おしい。
「もっと……触っていい?」
「うん……」
裾を捲ると、淡いレースの下着が覗いた。羞恥で真っ赤な顔を隠すカグヤ。それでも和也の手を受け入れるように腰を浮かせる。
「濡れてる……」
下着越しに秘所に触れると、湿った感触があった。驚きながらも嬉しくて口角が上がる。
「恥ずかしい……」
「可愛いよ」
素直な反応が愛らしい。和也はゆっくりと彼女の脚を開かせた。白い下着を下ろすと、薄い陰毛に隠された可憐な割れ目が露わになる。
「綺麗だ……本当に」
「見ないでってばぁ……」
カグヤは両手で顔を覆った。指先でそっと花弁を拡げると、桜色の粘膜が月光に光った。微かな蜜が糸を引く。
「痛かったらすぐ言ってくれ」
慎重に中指を入れると、キツい抵抗感。だが徐々に膣が慣れてくる。ゆっくり出し入れしながら親指でクリトリスを探る。
「んっ……そこ……っ」
敏感な部分を刺激され、カグヤの腰が浮いた。膣壁が和也の指に絡みつき、収縮と弛緩を繰り返す。
「気持ちいい?」
「うん……変な感じ……だけど……」
言葉とは裏腹に彼女の表情は蕩けていた。額に浮かんだ汗が月光で光る。そろそろ頃合いかと判断し、和也は帯を解いて裸になった。
「ちょっと待って……」
初めて見る男性器にカグヤは息を呑んだ。赤黒い亀頭が天を突き、脈打つ血管が浮き出ている。自分の体の一部なのに他者の器官のような不思議な感覚。
「大きすぎない……?」
「大丈夫。ゆっくり挿れるから」
和也は彼女の膝裏を抱えて大きく開かせた。
濡れた秘裂に先端を当てるとカグヤが身を硬くする。
「いくよ」
「うん……来て……」
ゆっくり押し入ると、強い抵抗感。ミシミシと処女膜が破れる音がする。カグヤが痛みで顔を歪めた。
「痛いか?」
「平気……続けて……」
額に脂汗が浮かぶも健気に微笑む彼女。痛みを超えてでも和也と一つになりたいという意思表示に胸が締めつけられた。
少しずつ腰を進める。灼熱の隘路を押し開く感覚。やがて根本まで埋まり切ると互いに深いため息が出た。
「全部入った……」
「うん……すごい……」
結合部を見下ろし、二人の境界線がなくなったことにカグヤは驚きと幸福を同時に覚える。和也のペニスを咥え込んだ自分の秘所が信じられないほど大きく広がっていた。
「動くよ」
最初は浅くゆっくりと。カグヤの息遣いを伺いながら少しずつ速度を上げる。
「あっ……そこ……」
腰を引く際にGスポットを擦られカグヤの声が上ずった。反射的に膣が締まり、和也の茎を搾り取るような動きをする。
「気持ちいい?」
「うん……おかしくなりそう……」
汗ばんだ胸板に爪を立てながらカグヤは甘く喘ぐ。純潔を失ったばかりの身体が急速に快感に馴染んでいく。
「俺も……すごい気持ちいい」
和也のストロークが激しくなった。パンパンと肉同士がぶつかる音が室内に響く。カグヤの乳首が和也の腹筋に擦られ更なる刺激を生む。
「もっと……強く……」
自ら腰を浮かせてねだる姿に煽られ、和也は全力で突き上げた。最奥をノックする度にカグヤの胎内が痙攣する。
「あっ……来る……っ」
カグヤの目が宙を泳いだ。絶頂の兆候だ。和也はラストスパートに入った。
二人の動きがシンクロし、共鳴するように高みへ登っていく。
「出すぞ……!」
宣言と同時に爆発する射精感。白濁液がカグヤの子宮口めがけて噴射された。
「ああぁっ……!」
同時にカグヤも果てた。
強烈な絶頂で全身が痙攣し、膣が和也の精液を求めて吸い上げる。
長い放精が終わると和也はそのまま倒れ込み、カグヤを抱きしめた。二人の荒い呼吸だけが響く静寂。
「大丈夫か?」
「うん……すごかった……」
汗で貼り付いた前髪を掻き分けながらカグヤは微笑んだ。純潔を失った証が太腿を伝っている。
「痛いことさせてごめん」
「ううん……嬉しいよ」
和也の額に軽くキスをする。
「和也くんが私の初めての人になってくれて……良かった」
その言葉に救われる想いだった。ただ欲望だけでなく愛情と尊敬を込めた行為が報われた瞬間。
「次からはもっと優しくする」
「焦らないでね。少しずつ慣れていきたい」
外では月が雲間に隠れ始めた。この一夜で確かに変わった二人の関係を静かに見守るように。
「もう一度……抱き締めて」
「何度でも」
カグヤを腕の中に納めながら和也は誓った――この穢れを知らない魂を一生かけて守り抜くと。
母子二代で新しい愛を築く夜が深まっていく。
村に新しい家族の営みが誕生した証を、窓から漏れる暖かな明かりが示していた。
エピローグ
秋の深まりと共に季節は巡り、村には結婚式の準備で賑わいを見せていた。神社の境内には赤い鳥居が新鮮な漆喰で修復され、石段には祭り提灯が飾られ始めていた。
「明日から新婚生活か……」
夜更けの自室で朋子は鏡に向かいながら呟いた。月野という旧姓を捨て、坂田姓になる感慨で胸が一杯だった。
ノックの音がして扉を開けると、パジャマ姿のカグヤが立っていた。
「お母さん……ちょっと話があって」
緊張した面持ちに朋子は微笑む。
「どうしたの?」
カグヤは床に正座すると深々と頭を下げた。
「私……明日から坂田さんを本当にお父さんって呼んでもいいでしょうか?」
「もちろんよ」
朋子は涙ぐみながら娘の肩に手を置く。
「徹さんもすごく喜んでくれるはず」
その言葉にカグヤの顔が明るくなる。
だがすぐに不安そうな表情に戻った。
「和也くんとのことも……認めてくれるかな」
「もう大人なんだから自分の幸せは自分で選ぶの。徹さんもそう言ってるわ」
カグヤは安心したように微笑んだ。親友以上の関係へと進んだ少年との将来について話し始めた矢先──
「おいおい!もう親子喧嘩か?」
突然襖が開き、徹が顔を覗かせた。二人の肩が跳ね上がる。
「いつから聞いてたの!」
「最後だけな」
徹はにやにやしながら中に入ってくる。
「いい加減寝ろよ。明日は早いぞ」
「わかった……おやすみなさい」
朋子が答えると同時にカグヤも慌てて立ち上がった。
「お父……さん!おやすみなさい!」
呼びかけた瞬間、徹の目が丸くなり次いで満面の笑みに変わる。
「おぉ……!」
彼は大きな手でカグヤの頭を撫でた。
「嬉しいなぁともこ!俺、今すぐ酒飲みに行きたい気分だな」
三人で笑い合う中、庭の柿が紅く色づいていた。