日本の村に眠る淫習を訪ねて、柳沢研究室レポート 今に残る日本の村のエロ風習 ⭐︎各話読み切り 新作はイラスト付き 作:みなぽん
夕暮れの商店街に、三味線の音が流れていた。
シャッターの閉まった魚屋の前を通り過ぎ、古びた和菓子屋の角を曲がると、小さな稽古場がある。
築百年近い木造の建物。
看板には「花柳会」とだけ書かれていた。
「違う違う、そこで息を止めちゃ駄目。」
「はい、師匠。」
「踊りは足でするものじゃない。心でするもの。」
「……はい。」
汗を拭いながら返事をした少女の名は橘小春。
十七歳。
墨田区桜ヶ丘高校二年生。
そして――芸者を目指す少女だった。
今の時代、芸者を目指す高校生など珍しい。
クラスメイトたちも最初は冗談だと思った。
「えっ、芸者さんってまだいるの?」
「舞妓さんみたいな感じ?」
「将来の夢ってこと?」
「いや、本気でなるつもり。」
小春が答えた瞬間、教室は静まり返った。
「なんか大変そう……」
「お酒注ぐ仕事なんでしょ?」
「夜のお仕事って親が言ってた。」
悪気はない。
ただ知らないのだ。
芸者とは何なのかを。
舞や唄や三味線を磨く芸能者であることを。
何年も修行を積み重ねる職人のような世界だということを。
小春は笑っていた。
「まあ、変わってるよね。」
笑っていたけれど、少しだけ傷ついていた。
祖母が芸者だった。
幼い頃、祖母の踊りを見た。
静かな座敷。
流れるような所作。
指先ひとつ、視線ひとつで空気を変えてしまう姿。
幼い小春は思った。
(綺麗だ。)
(こんな人になりたい。)
その憧れは、ずっと変わらなかった。
学校帰り。
制服姿のまま稽古場へ向かう。
三味線。
日本舞踊。
小唄。
礼儀作法。
覚えることは山ほどあった。
友達が放課後にカラオケへ行く頃、小春は正座をして師匠に頭を下げる。
友達が休日に遊園地へ行く頃、小春は舞の稽古をしている。
辛くないわけではない。
足は痛い。
正座で痺れる。
踊りは覚えられない。
何度も怒られる。
それでも辞めたいと思ったことはなかった。
「小春ちゃん。」
稽古帰り。
老舗の蕎麦屋の主人が声をかける。
「今日も頑張ってたな。」
「見てたんですか?」
「音が聞こえるんだよ。」
店主は笑う。
「ほれ、天ぷら持っていけ。」
「えっ、悪いですよ。」
「未来の芸者さんへの投資だ。」
商店街の人たちは皆、小春を知っていた。
八百屋の親父。
和菓子屋のおばあちゃん。
呉服屋の店主。
旦那衆と呼ばれる地元の商売人たち。
「焦るな。」
「十年後に花開けばいい。」
「芸は逃げない。」
誰も急かさなかった。
皆、見守っていた。
かつてこの町にあった花街の最後の灯火を。
そしてある日。
「橘さん。」
「え?」
「これ、数学のノート。」
声をかけてきたのは同じクラスの男子。
神崎悠人。
サッカー部。
背が高く、笑うと八重歯が見える。
「授業休んでたろ?」
「あ、ありがとう。」
「芸者の稽古だっけ?」
小春は少し身構えた。
変なことを言われるかもしれない。
笑われるかもしれない。
「すごいよな。」
「……え?」
「俺、部活だけでも大変なのに。」
悠人は笑う。
「将来やりたいこと決まってるって格好いいと思う。」
その言葉を、小春は忘れなかった。
文化祭。
クラスの出し物の準備で遅くなる。
「橘さんってさ。」
「うん?」
「いつも和菓子食べてるよな。」
「好きだから。」
「おばあちゃんみたい。」
「失礼だなあ。」
二人で笑う。
帰り道。
夕焼け。
自転車を押して歩く。
「芸者になったらさ。」
「うん。」
「俺みたいな高校生とは話さなくなるのかな。」
「どうして?」
「世界が違う感じするし。」
小春は少し考えた。
「私は変わらないと思う。」
「そう?」
「芸者になる前に橘小春だから。」
悠人は少し照れくさそうに笑った。
「そっか。」
冬。
初めて客前で舞を披露する日。
緊張で指が震えた。
座敷の隅には商店街の旦那衆の顔が並んでいた。
皆が黙って見守っている。
演目が終わる。
静寂。そして拍手。
小春は頭を下げた。
涙が出そうだった。
その日から「橘小春」という名は薄れ、今は「小春太夫」と呼ばれる。
袂の仕草ひとつで座敷の空気を靡かせる。
稽古で磨き抜かれた芸は、確かに彼女の足場となっていた。
そんなある日のこと
置屋の奥、女将の間に呼び出された小春は、畳の上で正座して女将の言葉を聞いていた。
「小春、あんたの『初枕』、田辺商事の田辺さんに決まったよ」
女将の口調は、天気予報のように淡々としていた。
その言葉の意味を理解するのに、数秒の時間を要した。
初枕。
贔屓筋の旦那衆と同衾し、芸者としての契りを結ぶ儀式。
幼い頃から祖母の背中で、そして置屋で先輩たちの噂話として聞いてきた、女の関門。
小春はずっと、それはもっと先の、もっと自分が枯れた芸で迎えるべきものだと思っていた。
未だ心のどこかで、高校の制服を着た自分が残っていたからかもしれない。
「……はい」
声が震えそうになるのを、喉の奥で押し殺した。
断る権利など、この世界にはない。
女将の目は、愛娘へではなく、商売道具へ向けられた冷徹な光を宿していた。
夜の帳が下りた料亭の一室。
小春は白無垢ではなく、しかし初々しい淡い色の着物を纏い、案内された。
襖が開くと、そこには十二畳ほどの広い座敷。
そして、部屋の中央には紋様の入った肌触りの良さそうな布団が、まるで小春を待ち受けるように引かれていた。
田辺商事の田辺は、小春の舞を贔屓にしてくれている温厚な男だった。
だが、この場の彼は「旦那」であり、小春は「芸者」だった。
「よう来たね、小春」
田辺は酒の香りを纏い、穏やかに笑った。
その笑みが、かえって小春の緊張を際立たせる。
平素なら軽やかにこなす挨拶も、今は唇が綿を噛んだように動かない。
小春は畳に指を付けて深く頭を下げた。
「お待ち申しとりました、田辺様」
声の裏返りを、田辺は見逃さなかっただろう。
「堅苦しいのはなしだ。こっちへおいで」
田辺に手招かれ、小春は膝を運ぶ。
布団の淵に座ると、自分の膝が微かに震えているのがわかった。
舞の稽古で何度も叱られたが、こんなに体が言うことを聞かないのは初めてだった。
田辺の大きな手が、小春の頬に触れた。
温かく、節くれだった手のひら。
その感触に、小春はびくりと肩を跳ねさせた。
「そんなに怖い顔しなさんな」
田辺は苦笑し、ゆっくりと顔を近づける。
「あんたの舞は美しいよ。だが、今夜はもっと美しい顔が見たいんだ」
酒と煙草の匂いが、小春の鼻先を掠めた。
優しく、触れるだけの口づけが落とされた。
それは、慈しむような、しかし逃げ場を塞ぐ合図だった。
唇が離れた瞬間、恐怖と羞恥、そして自分の無力さが一気に押し寄せ、小春の目尻から涙がこぼれ落ちた。
幼い頃、祖母の舞を見て抱いた憧れも、稽古場で流した汗も、悠人と笑った夕焼けも、全てが白い布団の上に溶けていくようだった。
「……田辺様、わたくしは……」
言葉にならない嗚咽が漏れる。
田辺は何も言わず、小春の涙を親指で拭うと、そのまま着物の襟元に手をかけた。
白い首筋が露わになる。
着物の重みが肩から滑り落ちるたび、小春の心も裸にされていくようだった。
冷たい空気が剥き出しの肌に触れ、身震いをする。
慣れない重い帯が解かれ、着物が畳の上に音もなく横たわっていく。
袖から抜かれた腕を、小春は無意識に胸の前で交差させた。
薄闇の中、田辺の視線が肌を這う。
羞恥に顔を伏せ、睫を震わせる小春の姿は、儚くも鮮烈だった。
田辺は、逃げようとする小春の両手首を、確りと握りしめた。
「小春」
低く呼ぶ声は、容赦なかった。
布団の上に引き倒され、重みがかかる。
天井の木目が滲んで見えた。
裙帯が解かれる音。
粗い息遣い。
小春はただ、目を固く閉じ、この先に待つ、芸者としての「業」の深さに身を委ねるしかなかった。
畳の上に散らばった着物は、もはや小春を守る殻ではなかった。
布団の白さが、剥き出しの肌を無慈悲に浮かび上がらせる。
田辺の視線が、陶器のように白い体を舐めるように這う。
その熱に満ちた眼差しに見つめられるだけで、小春の肌は粟立ち、恥じらいで淡く紅潮した。
「綺麗な肌だねぇ……」
田辺は感嘆じみた声を漏らし、太い指で小春の鎖骨をなぞった。
そして、熱い吐息をかけながら、首筋に唇を寄せる。
ザラリとした舌の感触。
湿った粘膜が肌を這う異物感に、小春は背筋を震わせた。
「あっ……」
声にならない悲鳴が漏れる。
田辺の舌は、耳の裏から首筋、そして鎖骨の窪みへと、ゆっくりと、執拗に這い進んでいく。
まるで、獲物の味を確かめるかのように、全身を舐めまわすその行為は、容赦なく小春の処女性を浸食していった。
太い腕が小春の腰を抱き込み、逃げ場を塞ぐ。
舌は胸の谷間を通り過ぎ、脇腹へと降りていく。
柔らかな腹の肉を吸い上げられ、小春は無意識に体をよじった。
ざらついた舌の感触と、自分の肌が擦れ合う水音が、静かな座敷に淫らに響く。
肌が唾液で濡れて光り、どこか熱を帯びていくのを感じる。
恐怖のはずなのに、粘膜が熱を孕んで疼き始めるような、奇妙な痺れが体の奥底を駆け巡った。
「ここなんか、反応がええね」
田辺が低く笑い、舌は再び上へと戻ってきた。
目指すは、小春の胸の頂にある、可憐な蕾。
恐怖と羞恥で縮こまっていた淡い桃色の乳首は、田辺の熱い吐息を浴びて、知らず知らずのうちに硬く尖り始めていた。
「いやっ……」
田辺の舌先が、左の乳首に触れた瞬間、電流が背骨を駆け抜けたような衝撃が走った。
小春は反射的に田辺の頭を押し退けようと手を伸ばすが、男の体は岩のように動かない。
舌先でちろりと転がされ、次いで唇に含まれる。
「ひうっ……!」
赤ん坊が母親の乳を啜るような、ねっとりとした吸い付き。
だが、その行為は慈しみなどではなく、明確な征服の欲望を孕んでいた。
舌で弄び、歯の側面で軽く挟み、転がす。
執拗な乳首責めに、小春の理性は音を立てて崩れ始めた。
「あ、だめ……そこ、ぁっ……!」
敏感な蕾に凝らされる緻密な愛撫。
吸い上げられるたびに、子宮の奥底が甘く痺れ、熱い汁がとめどなく溢れ出すような錯覚に陥る。
右の乳首は、田辺の親指と人差し指で挟み込まれ、ひねり上げられた。
「んんっ……ぁぁっ!」
快楽の波が、容赦なく小春を襲う。
秘められた場所への刺激は、初心な体に残酷なほど鮮烈な味を教え込んでいく。
目を固く閉じ、シーツを握りしめて耐えようとするが、口からは甘い喘ぎが溢れ出す。
体は芯から熱く火照り、拒絶とは裏腹に、腰が微かに揺れ、太ももが無意識に擦り合わされた。
涙で滲む視界の端で、田辺が満足げに乳首を紅く腫れ上がらせていくのを感じながら、小春は、自分の体が芸者としての「業」の深みへと、一歩ずつ引きずり込まれていくのを悟った。
乳首を紅く腫れ上がらせ、息も絶え絶えになった小春の体を、田辺はさらに下へと導いていく。
「さあ、足を開きなさい」
低く、しかし逆らえない声で命じられる。
小春は羞恥で顔を背けたまま、震える膝をゆっくりと開いた。
白い下腹部の奥、誰の目にも触れたことのない秘められた花園が、田辺の視線の前に露わになる。
まだ誰にも触れられたことのない一筋の割れ目は、先程の愛撫ですでに蜜を滲ませ、恥ずかしくも濡れ光っていた。
「ほぉ…… すでにこんなに濡らしとる」
田辺の太い指が、その割れ目をなぞる。
熱く粘ついた愛液が、糸を引いて指先に絡みつく。
その淫らな光景に、小春はあまりの恥ずかしさに涙をこぼした。
だが、田辺は構わず、その顔を小春の股間に埋めた。
「ひゃっ……!?」
熱い吐息が秘部に触れた瞬間、小春は飛び上がりそうになった。
そして次の瞬間、ざらついた舌が、一番敏感な秘貝を下から上へと、ていねいに舐め上げた。
「あぁっ、だ、だめぇっ……!」
電撃が走ったような衝撃。
目の前が白く弾けた。
田辺の舌は、割れ目の奥に隠れた肉芽を見つけ出し、執拗に転がし始めた。
ねっとりと吸い上げられ、舌先で弾かれるたびに、子宮の奥から痺れるような甘い毒が体中に回っていく。
「んぁっ、あっ、あっ……!」
声を抑えることなどできなかった。
必死にシーツを握りしめ、頭を振って快楽から逃れようとするが、田辺の腕が腰をがっちりとホールドし、逃げ場を奪う。
舌は容赦なく、溢れ出る蜜をすすりながら、敏感な襞の一本一本までをも丁寧に解きほぐしていく。
恥辱の極みだったはずなのに、体の芯は熱く火照り、自分の意志とは裏腹に、腰が田辺の顔に押し付けられるように動いてしまった。
太ももの内側が痙攣し、足の指が強く反り返る。
「んんっ、そこっ、ぁぁっ、変になっちゃうぅっ……!」
限界が近づいていた。
脳髄を直接揺さぶられるような圧倒的な快感の波が、堤防を越えようとしていた。
視界が明滅し、呼吸さえ忘れる。
そして、つま先が極限まで伸びきり、激しくピクピクと震えた瞬間――
「いゃぁぁぁぁっ!!」
小春の体は大きく弓なりに反り返り、激しく痙攣した。
初めて味わう絶頂の波に、幼い体は為す術もなく飲み込まれていく。
意識が白濁し、全身の力が抜け落ちる。
ビクビクとつま先が痙攣するたび、愛液がとめどなく溢れ出し、田辺の顔を濡らした。
ハア、ハアと荒い息を吐き、虚脱した小春の目からは、快楽の涙がとめどなく溢れていた。
自分の体がこんな風に反応するなど、小春自身思ってもみなかったことだった。
恐怖と羞恥の中で刻まれた鮮烈な快楽の刻印。
それが、小春の処女性を決定的に打ち砕いていた。
田辺は、小春の秘部から顔を上げ、口元の愛液を手の甲で拭いながら、満足そうに破顔した。
「可愛いいのぉ!」
田辺は夢中になったように、痙攣する小春の体を抱き寄せた。
「ほんに、可愛いい反応じゃわし。見たか? お前の体、こんなに喜んどるんじゃぞ」
耳元で囁かれる残酷な事実に、小春は言葉を失った。
「わしはなぁ、前からお前のこと狙ってたんだぞ」
田辺の目は、獲物を仕留めた獣のように、喜悦と独占欲に燃えていた。
「あの頃からじゃ。お前がまだ半人前で、稽古場で汗垂らしとった頃から、わしはこの日を夢見とったんじゃ。あの真面目な顔が、わしの前でどんなに淫らに崩れるか、楽しみにしとったんじゃよ」
小春は、逃げることもできず、ただ震えていた。
自分が芸者として一歩一歩歩んできた道のりそのものが、この男の欲望の通り道だったのだと知ったからだ。
祖母の憧れも、稽古の汗も、悠人の笑顔も、全てがこの瞬間のために用意された道具に過ぎなかったかのような、深い絶望が胸を覆い尽くす。
田辺は、まだ痙攣の余韻が残る小春の体を、貪るように抱きしめた。
「さあて……」
田辺は、痙攣の余韻に震える小春の両脚を、さらに大きく割り開いた。
「この日を、ずっと待っておったんじゃ」
その目は、もはや常連客の顔ではない。長年、獲物を狙い続けてきた狩人のそれだった。
「初枕、いただくで」
帯を解き、自らの着物をはだけさせる。
露わになった田辺の肉は、怒張し、脈打っていた。
あまりの異様さに、小春は息を呑み、無意識に首を振った。
「や、やめて……」
涙で濡れた声で懇願するが、田辺は薄く笑うだけだった。
「今更、やめられるか」
熱く滾ったそれが、小春の秘所にあてがわれる。
まだ誰も受け入れたことのない蕾は、先ほどのクンニで十分に解され、愛液で濡れ光っていたが、それでも田辺のそれはあまりにも大きすぎた。
「力を抜け。痛いのは最初だけじゃ」
田辺は腰をゆっくりと沈めていく。
「あ、ああっ……! 痛い、痛いっ……!」
メリメリと、体が内側から裂けていくような感覚。
引き裂かれるような激痛に、小春はのけぞり、シーツを握りしめた指が白くなる。
「くっ……」
田辺はその締め付けに、獣のような唸り声をあげた。
「こ、これは…… たまらん……」
小春の痛みに歪む顔など、彼の目には映っていなかった。
ただ、自分の欲望を満たすための、生娘の肉の感触だけが、彼を支配していた。
そして、一気に腰を突き入れる。
「い、やぁぁぁぁっ!!」
ブチリ、と何かが切れる音が、小春の体の中で響いた気がした。
処女喪失。
あまりの激痛に、視界が暗転する。
「入ったぞ、小春。わしのが、全部、お前の中に入っとる」
田辺の声が、遠くで聞こえる。
小春の膣は、異物を拒もうと激しく収縮し、田辺の肉棒を締め上げる。
「ううっ…… これじゃ、すぐに果ててしまいそうじゃ」
田辺は、一旦動きを止め、その感覚を堪能した。
「さあ、動くぞ」
そして、小春の細い腰を掴むと、無慈悲なピストン運動を開始した。
パン、パン、パン……!
肉と肉がぶつかり合う淫らな音が、静かな座敷に鳴り響く。
「あっ、あっ、あっ……!」
突かれるたびに、小春の口からは、苦痛と、その奥に潛む何かが混ざり合った声が漏れる。
「どうじゃ、小春。これが芸者の仕事じゃ」
田辺は、腰を振りながら、小春の耳元で囁く。
「わしだけに尽くせ。わしだけの芸者になれ」
その言葉は、呪いのようだった。
痛みに耐えながら、小春はただ、天井の木目が揺れるのを、虚ろな目で見つめていた。
「
パン!パン!パン!
肉と肉がぶつかり合う音は、もはや稽古場で響く拍子木のようではなく、淫らな獣の交尾のようだった。
田辺の腰は、容赦なく小春の最奥を突き上げていた。
最初は裂けるような激痛だったはずの感覚が、いつしか鋭い痺れとなり、背骨を駆け上がる甘い熱へと変わり始めていた。
「あっ、あっ、あぁっ……! な、なにか…… 変……!」
子宮の奥を直接抉られるような衝撃。
拒絶していた膣壁が、次第に男の形を覚え込み、貪るように締め付けていく。
逃げ場のない快楽の奔流に、小春の理性は木っ端微塵に砕かれていた。
「そうじゃ、その顔じゃ! イケ! イクんだ小春!」
田辺は小春の両足首を力強く掴み、自らの肩の上へと押し上げた。
股間が完全に露わになり、最も深い結合部が剥き出しになる。
蛙のように大きく割り開かれた体勢、V字型に極限まで開かれた足。
その無防備で卑猥な姿は、かつて舞を舞っていた優雅な太夫の面影など微塵も残していなかった。
「いやっ、いやぁっ、でも…… あぁぁっ! 来るっ、何か来るぅっ!」
限界だった。
下腹部の奥底で、巨大な何かが弾けようとしていた。
視界が白く明滅し、全身の血が沸騰するような感覚。
「許せっ、田辺様っ…… あっ、ああっ、ああああっ!!!」
小春は首をのけぞらせ、喉が裂けんばかりの絶叫を放った。
その瞬間、膣の奥が激しく痙攣し、田辺の男根を狂ったように絞め上げる。
「くぅっ……! 出すぞっ、小春っ!」
絶頂に達し、意識を手放しかけた小春の最奥に、田辺は深々と先端を押し付けた。
そして、ドクドクドクッという脈動と共に、どす黒い欲望の証をたっぷりと注ぎ込んだ。
「あっ…… あつっ…… 中に…… 出てるぅっ……!」
子宮口に直接浴びせられる熱波。
その生々しい感触が、小春を二度目の絶頂へと突き落とした。
大きく開いたV字の足先が、痙攣のようにピクリと跳ね、やがてダラリと力なく落ちた。
白濁した液体が、結合部から溢れ出し、白い太ももを伝ってシーツに染みを作っていく。
小春は虚ろな目で天井を見上げていた。
涙で濡れた顔は快感に歪み、口からはだらしなく涎が垂れていた。
芸者としての初舞台ではない。
女としての扉を開け、男の欲望を受け止める器へと堕ちた「初舞台」。
座敷には、荒い息遣いと、淫らな体液の匂いだけが充満していた。
数ヶ月後。
春の宵も過ぎ去り、花柳会の看板がかかり続けた古い木造の店。
小春は昼間の稽古場ではなく、夜の座敷で芸を披露していた。
舞扇を操り、唄い上げる表情は涼やかで洗練されていた。
だがその指先は時折震え、瞳の奥には消えない影が残っていた。
座敷の一角に新しい客が通された。
まだ恰幅の良い紳士と高校生の少年
父親と息子だろうか。
小春は彼らのもとへ歩み寄り、優雅な仕草で膝をついた。
「橘小春と申します」
「ほう、これが例の……」
父親の方が意味ありげに微笑み、小春を値踏みするように見る。
「うちの息子にそろそろ体験させてやってもいいかなと思ってね」
父親は煙管を取り出しながら言った。「新人の小春ちゃんつけてくれるかな。女将に話を通しておくよ」
小春は息を飲んだ。
父親に同行している青年はまさか――。
「悠人……くん?」
青年は驚きに目を見開いた。
「え? 橘さん?」
「さあさあ、君が私の相手だ」
父親がニヤリと笑う。
「こちらへおいで」
小春は悠人に背を向け、別の卓へと案内した。
その背中が震えていないか心配になるくらい、小春の歩みは危うかった。
女将の言葉が脳裏をよぎる。
『あんたは商品なんだよ』
無情にも突きつけられた現実。
反論する権利などない。
小春は立ち止まり、振り返った。
悠人はまだ呆然としていた。
「橘さん……なんでここに?」
「……悠人くん」
小春は努めて冷静に言った。
「今はその名前で呼ばないで」
「え?」
「私は、花柳小春です」
悠人は何かを言いかけて、口をつぐんだ。
彼女の瞳に映る大人びた光が、彼を黙らせた。
「さあ、お座敷へ」
小春は微笑んだ。
それは祖母が見せたような、静かで、揺るぎない微笑みだった。
「お酒を注ぎますね」
小春は手際よくお猪口を並べ、徳利から酒を注いだ。
悠人はおずおずとそれを受け取った。
「なんだか……変わったね」
「そう?」
「大人っぽくなったというか……」
「ただ仕事をしてるだけだよ」
小春は酒を口に含み、悠人の猪口に口移しで注いだ。
悠人は顔を赤らめた。
「あ、その……」
「いいの」
小春は静かに言った。
「これが私の役割だから」
悠人は複雑な表情を浮かべた。
「……ごめん」
「なんで謝るの?」
「俺の親父が……こんなことさせて……」
「気にしないで」
小春は首を振った。
「私、決めたの。芸者になるって」
悠人は目を潤ませた。
「……うん」
「ねえ」
小春は唐突に言った。
「覚えてる? あの夕焼けの帰り道」
「……うん」
「私は変わらないよ。芸者になる前に橘小春だから」
悠人の瞳が揺れた。
「橘さん……」
小春は微笑んだ。
「さあ、愉しみましょう」
扇を手に取り、静かに舞い始めた。
足運びは正確で、指先はしなやかだ。
それはかつて稽古場で見せた未熟な姿ではなく、一年の月日が磨き上げた、凛とした芸だった。
悠人はその舞に見とれた。
やがて小春は舞を止め、悠人の前に座した。
「……教えてもらえる?」
悠人は恐る恐る尋ねた。
「え?」
「舞……」
小春はふっと笑った。
「まだ早いよ」
「うん……でも……」
悠人は手を伸ばし、小春の白い手を握った。
「あたたかいね」
「……うん」
小春は悠人の手を取り、自分の胸に当てた。
悠人の心臓が激しく高鳴った。
「橘さん……」
「小春でいいよ」
悠人は小春の唇に触れた。
それは初めての口づけだった。
先ほど田辺に奪われた唇とは違い、今度は彼女自身の意志だった。
「……教えて」
小春は耳元で囁いた。
「あなたが望むなら」
女将の命は絶対だ。
そして小春は、自らの意志でこの夜を選んだ。
彼女にとって、悠人の筆おろしは、田辺への復讐でもあり、自分自身への贖罪でもあった。
悠人は震える手で小春の着物に触れた。
着物は滑り落ち、小春の白い肌が露わになる。
田辺に散々貪られた体だが、今の悠人にはそのことは分からない。
ただ目の前の凛とした美しさに息を呑んだ。
「綺麗だ……」
その言葉に、小春の目から涙がこぼれた。
悠人は不器用に小春の体を抱きしめた。
不慣れな手つきで胸に触れ、肌を滑る指先に戸惑いながらも、その温かさに安らぎを覚えた。
小春は悠人の服を脱がせた。
若くひょろりとした体。
だが、その眼差しは真剣だった。
「入れていい?」
小春は優しく尋ねた。
悠人は頷いた。
小春は悠人の上に跨り、自ら導き入れた。
「んっ……」
まだ田辺に慣らされた体は、抵抗なく悠人を受け入れた。
だが、彼女の心は田辺の時とは違った。
冷たい屈辱ではなく、温かな感情が体の奥から湧き上がる。
「大丈夫?」
悠人が心配そうに尋ねた。
「うん……」
小春は微笑んだ。
「動いていいよ」
悠人は震える腰をゆっくりと動かした。
不慣れな動き。
だが、それが心地よかった。
机が軋む音。
衣擦れの音。
そして悠人の必死な吐息。
小春はその全てに酔った。
これが本当の交わりなのだと実感した。
田辺の時は、ただの搾取だった。
だが今は違う。
「橘さん……俺…」
「小春って呼んで」
「小春……俺…もう……」
「出していいよ」
悠人は小春の背中を掻き抱き、熱いものを放った。
小春は悠人の上に倒れ込み、二人で荒い息を吐いた。
「俺……初めてなんだ」
「知ってる」
小春は悠人の額にキスをした。
「私も……本当は……」
言いかけて、言葉を飲み込んだ。
悠人は優しく彼女の髪を撫でた。