※この作品はR-18です。

日本の村に眠る淫習を訪ねて、柳沢研究室レポート 今に残る日本の村のエロ風習 ⭐︎各話読み切り 新作はイラスト付き   作:みなぽん

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日本の淫習を訪ねて 島根県 灯火守り 未亡人の服喪と再起

 

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秋雨が山々を淡く霞ませる頃、柳沢昂教授は山間の小さな集落を訪れていた。

 広島県と島根県の県境近くに位置するその村では、古くから「灯守り」という風習が続いているという。

 村に暮らす配偶者を亡くした者は、一年間だけ村外れの小さな庵に通い、毎晩灯を灯す。

 亡き人が迷わず山を越え、祖先の待つ場所へ辿り着けるように。

 それが村人たちの信仰だった。

「私は日本の民俗学を研究する傍ら、村に古い因習について研究しています。失われたローカルレジェンドの中にこそ、この国の民族の本質が眠っているのです。」

 柳沢はそう語りながら、静かな山道を歩いていた。

 隣を歩くのは姉川美奈子と南條美和。

「でも教授、それって因習なんでしょうか。」

 美奈子が口を開く。

「亡くなった人を想う時間を共同体が用意しているようにも思えます。」

「私もそう思います。」

 柳沢は頷いた。

「風習というものは、一概に善悪だけでは語れません。人を苦しめるものもあれば、人を支えるものもある。時にはその両方であることさえあります。」

 三人を迎えたのは、三十代半ばの女性だった。

 名を佐伯千鶴という。

 三年前、山仕事へ向かった夫を土砂崩れで失った未亡人だった。

 黒髪を後ろで束ねた穏やかな女性だったが、その瞳にはどこか静かな寂しさが残っていた。

「毎晩、ここへ?」

 美和が驚いたように尋ねる。

「ええ。」

 千鶴は小さく笑った。

「最初の頃は辛かったですね。どうして私だけこんなことをって思いました。」

 庵の中には古びた燭台が置かれていた。

 千鶴は慣れた手つきで火を灯す。

 小さな炎が揺れる。

「でもね。」

 彼女は炎を見つめながら言った。

「毎日ここへ来て、主人に話しかけているうちに気づいたんです。」

 窓の外では虫の声が響いていた。

「私は主人を失ったんじゃないんだなって。」

「……。」

「姿が見えなくなっただけで、思い出までなくなったわけじゃない。」

 静かな言葉だった。

 けれど重みがあった。

「今日ね、お店のお客さんがこんなこと言ってくれたんです。」

 千鶴は少し笑った。

「『旦那さんが好きだった煮物の味、ちゃんと受け継がれてるね』って。」

 彼女の夫は村唯一の食堂を営んでいた。

 今は千鶴が一人で店を守っている。

「私が料理を作って、お客さんが食べて、主人の話をする。」

 炎が揺れる。

「それって、まだ生きてるってことなんじゃないかなって。」

 美奈子は黙っていた。

 美和も珍しく言葉を挟まない。

 柳沢だけが静かに頷く。

「民俗学は過去を研究する学問だと思われがちです。」

 柳沢は言った。

「ですが本当は、人が大切なものを失った時、それでも生きていくために作り出した知恵を研究する学問なのかもしれません。」

 千鶴は少し驚いたように目を見開いた。

「知恵、ですか。」

「ええ。」

 柳沢は庵の灯を見つめる。

「悲しみは消えません。ですが、人は昔からそれを抱えたまま生きる方法を探してきた。」

 外では雨が降り始めていた。

 屋根を叩く音が静かに響く。

「この灯も、その一つなのでしょう。」

 千鶴はしばらく黙っていた。

 やがて小さく笑う。

「変な先生ですね。」

「よく言われます。」

「でも少しだけ、救われました。」

 庵の中で灯が揺れる。

 それは死者を送る灯であり、生きる者を照らす灯でもあった。

 

 ⭐️最後の送り火

 雪解けの水が山を流れ、小さな沢の音が村に春の訪れを告げていた。

 その日、村人たちは朝から忙しく動いていた。

 家々の軒先には提灯が吊るされ、広場には長机が並べられる。

 祭りの日のような賑わいだった。

 村外れの庵。

 佐伯千鶴は最後の灯を見つめていた。

 小さな炎が静かに揺れる。

「これで終わりですね。」

 誰にともなく呟く。

 一年間。

 毎日この場所へ通った。

 春も。

 夏も。

 秋も。

 そして冬も。

 夫に話しかけた日もあった。

 ただ黙って座っていた日もあった。

 涙が止まらなかった夜もあった。

 けれど今日は違う。

「あなた、私、ちゃんとやれたかな。」

 炎は答えない。

 それでも千鶴は少し笑った。

「うん。きっと怒られるね。『そんな真面目にやるな』って。」

 夫らしい言葉だった。

 彼女はそっと灯を吹き消した。

 白い煙が空へ昇る。

 灯守りは終わった。

 服喪の一年が終わったのだ。

 山を下る道は明るかった。

 村へ近づくにつれて、提灯の灯りが見えてくる。

 まるで星が地上に降りてきたようだった。

「これは……」

 千鶴は足を止めた。

 村の入口には大勢の人が集まっていた。

 子どもたちが笑っている。

 老人たちが酒を酌み交わしている。

 そして、その後ろ。

 どこか緊張した顔をした男たちが並んでいた。

 二十代。

 三十代。

 四十代。

 皆、妙に背筋が伸びている。

「来たぞー!」

 誰かが叫ぶ。

 村長が前へ出た。

「さて。」

 老人は咳払いを一つした。

「灯守り明けの『春迎え』を始める。」

 柳沢昂は隣で目を瞬かせていた。

「教授、聞いてませんでした?」

 美和が笑う。

「未亡人が一年の服喪を終える日、村の独身男性が求婚を申し出る風習らしいですよ。」

「なるほど。」

 柳沢は興味深そうに頷く。

「共同体による再出発の儀礼ですか。」

 美奈子も静かに聞いていた。

 昔の農村では労働力は貴重だった。

 配偶者を失った者が孤立しないように。

 残された人生を一人で抱え込まないように。

 共同体が新たな縁を後押しする。

 そんな知恵だったのかもしれない。

 村長が杖を鳴らす。

「では始める!」

 男たちの顔が引き締まる。

「佐伯千鶴さん!」

 二十八歳の農家の青年が前に出た。

「お、おれと、その……もしよかったら今度、お茶でも!」

 周囲から拍手。

「順番守れ順番!」

「お前それ告白じゃなくて誘いだろ!」

 村人たちが笑う。

 次の男が前に出る。

「うちの母ちゃんが、千鶴さんの煮物好きで!」

「お前の告白じゃないだろそれ!」

 再び笑いが起こる。

 緊張。

 真剣さ。

 そして優しさ。

 千鶴は目を丸くしていた。

 

 

 まるで思ってもみなかったという顔だった。

 すると村長が静かに言った。

「勘違いするな。」

 笑い声が止まる。

「これは再婚を強いるためのものじゃない。」

 老人は穏やかに続ける。

「一人で生きてもいい。」

「誰かと歩んでもいい。」

「ただ村は、お前さんがこれから先を生きることを応援している。」

 提灯の灯が揺れる。

「悲しみと一緒に生きることを許す日だ。」

 千鶴は俯いた。

 気づけば涙が落ちていた。

 一年間。

 村は彼女に泣く時間をくれた。

 そして今日。

 今度は生きる時間をくれようとしている。

「ずるいなぁ……」

 涙混じりに笑う。

「こんなの泣くに決まってるじゃない。」

 柳沢は静かにその光景を見つめていた。

「教授。」

 美奈子が小さく言う。

「いい風習ですね。」

「ええ。」

 柳沢は頷いた。

「人は昔から知っていたのでしょう。」

 山の方を見る。

「悲しみを終わらせることはできない。」

 提灯の灯りが夜を照らす。

「ですが、人は誰かと共に前を向くことならできる。」

 それもまた民俗なのだ。

 生き残った者が生きていくための知恵。

 失った人を忘れないための優しさ。

 村の入口では、まだぎこちない告白が続いていた。

 笑い声が響く。

 春の夜風が吹く。

 そして千鶴は、久しぶりに心から笑った。

 

 「春迎え」の儀礼は、古くからこの村に伝わるもう一つの風習を伴っていた。

 千鶴が選んだ五人の男たちは、翌日から一日交代で彼女の家を訪れることになっていた。

 名乗りを上げ、想いを語り、そして——ふんどしを解き、素肌を重ねる。

 それは単なる情欲の発散ではない。

 心の契りを結ぶ前に、まず二人の体が響き合うかどうかを確かめる、古くからの夫婦の原型だった。

 命を育む季節の始まりに、人もまた命の源に帰る。

 そんな厳かで、熱を孕んだ夜が始まった。

 

【一日目・健太の視点】

 

 俺は、佐伯千鶴さんに選ばれた。

 昨夜、あんなに緊張して「お茶でも!」なんて言っちまったけど、千鶴さんは笑ってくれた。

 その笑顔が愛おしくてたまらない。

 

 「健太くん、来てくれたのね」

 千鶴さんが家の入り口で出迎えてくれる。その瞳は、昨日と同じように静かで、でもどこか温かい。

 俺は泥臭い農家の息子だ。器用な口もきけない。

 だから、ただ真っ直ぐに言った。

 「千鶴さん。俺、あんたを守りたいんです。吉宗(亡き夫)さんの代わりなんてじゃなく、俺自身の女の人として」

 千鶴さんは少しだけ目を潤ませて、小さく頷いた。

 「言葉、ありがとう。健太くん」

 震える手で、俺は褌(ふんどし)を解いた。

 越中褌の結び目を引き抜くと、俺の男がむき出しになる。

 恥ずかしいなんて思ってる余裕はない。

 ただ、この人と一つになりたい、それだけだ。

 千鶴さんも着物の前を寛げ、肌襦袢(はだじゅばん)の紐を解く。

 白く柔らかな肌が露わになる。

 俺は、まるで神前にて手を合わせるように、彼女の肌に触れた。

 「あ……」

 千鶴さんが小さく声を漏らす。

 俺の厚い掌が、彼女の滑らかな背中を這う。

 土いじれの手でごめんなさい、と心の中で呟きながら、その柔らかさに身を委ねる。

 唇を重ねると、千鶴さんは驚いたように体を強張らせたが、すぐにふわりと力を抜いて、俺の首に腕を回してくれた。

 若い俺の体は、もう限界だった。

 彼女の太腿の間に割り入り、熱くなった先端を濡れそぼった秘所に当てる。

 「健太くん……いいのよ。来て」

 許しを得て、俺は一気に楔を打ち込んだ。

 「くっ……千鶴、さん……!」

 きつい。熱い。慈しみ深い。

 彼女の中は、まるで豊かな田圃のように俺を包み込んで離さない。

 俺は獣のように腰を振った。

 下手に気取るなんてできなかった。

 ただ、この愛しい人の中に精を注ぎ込みたい、その本能のままに。

 千鶴さんの喘ぎ声が、虫の音と重なって響く。

 俺の背中に、彼女の爪が食い込む。

 その痛みさえも愛おしかった。

 俺たちは二人、泥にまみれて生きる者同士、ただ無心で交わった。

 体の奥底から込み上げる熱を、俺は彼女の最奥にぶちまけた。

 心も体も、溶け合うように満たされていく。

 

-【二日目・隆司の視点】

 大工の隆司は、無骨な手つきで千鶴の家の柱を撫でた。

 「この家は、吉宗さんが建て直したんだな。骨組みがいい」

 そう言うと、千鶴は嬉しそうに微笑んだ。

 「ええ。あの人、職人仕事にはうるさかったから」

 「俺も、うるさい方だ。仕事も、女も」

 隆司は褌を解き捨て、がっしりとした体躯を晒した。

 四六時中、木と油にまみれている自分の匂いが、千鶴にはどう映るか。

 だが、千鶴は逃げなかった。

 むしろ、その広い胸に頬を寄せてきた。

 「隆司さんなら、この家の傷んだところも直してくれるかしら」

 「ああ。骨組みからやり直してやるよ」

 隆司は千鶴を抱き上げ、畳の上に優しく横たえた。

 大工の手は、材木を削るように繊細で、確かだ。

 彼女の肌を、まるで最高の檜(ひのき)を撫でるように指先で辿る。

 鎖骨の窪み、乳房の丸み、腰のくびれ。

 何一つ粗末にしたくない。

 「隆司さん……優しいのね」

 「優しくなんかない。ただ、いい仕事をしたいだけだ」

 言いながら、隆司は彼女の足を開かせ、その中心に唇を寄せた。

 「あっ、そこ……!」

 甘い蜜を舐め取る。熟れた果実のような匂いが、彼の理性を蕭(しゅん)させる。

 たっぷりと時間をかけて彼女を開花させると、隆司はゆっくりと沈み込んでいった。

 寸分違わず、自分を收めていく感覚。

 「千鶴……」

 「隆司さん……いっぱいに……」

 隆司の動きは、緩やかで、深い。

 一突きごとに、彼女の最も深い場所を正確に突き上げる。

 木を組み立てるように、二人の体を組み上げていく。

 千鶴の声が、甘く、高く張り詰めていく。

 「いい……そこ、すごく……!」

 「俺もだ。千鶴、お前の中は最高だ」

 職人の意地と、男の情愛を込めて、隆司は彼女を貫いた。

 最後に深々と結合したまま、隆司は千鶴の耳元で囁いた。

 「俺がお前の家を守る。体も、心もな」

 

【三日目・雅巳の視点】

 役場の窓口でいつも書類と向き合っている雅巳は、千鶴の前に立つと、つい眉間に皺を寄せてしまった。

 「千鶴さん、僕は……不器用ですから」

 「知ってるわ。雅巳さんは、いつも真面目に村のことを考えてくれてる」

 「愛しています。言葉でしか伝えられないのがもどかしいですが……」

 雅巳は、紐を解く手つきさえ几帳面だった。

 褌を外して露出した自分の体を、千鶴は静かに見つめている。

 その視線に耐えきれず、雅巳は彼女に歩み寄ると、その手を取って自分の胸に当てた。

 「鼓動、聞こえますか? 僕の心臓は、今、貴方のためにだけ動いている」

 千鶴はくすりと笑い、その指を雅巳の唇に添えた。

 「雅巳さん。言葉も好きだけど、今は体で話して?」

 理性の糸が、プツリと切れた。

 普段は抑圧している感情が、一気に溢れ出す。

 雅巳は千鶴を壁に押し付け、強引に唇を塞いだ。

 「んっ……!」

 貪るような口づけ。

 彼女の着物を乱暴に剥ぎ取り、露わになった白い双丘に顔を埋める。

 「千鶴、千鶴……」

 名前を呼ぶことさえ、愛おしい。

 雅巳は、既に猛った自分を彼女の中に押し込んだ。

 「ああっ! 雅巳、さん……!」

 言葉はもういらない。

 ただ、互いの体温を確かめるように、激しく腰を打ち付ける。

 壁が軋む音。

 互いの呼吸が荒くなる音。

 それが、僕たちの会話だ。

 「好きだ……っ! 愛してる……っ!」

 喘ぎながら、言葉を紡ぐ。

 千鶴の足が、僕の腰に絡みついてくる。

 その締め付けに、僕は何度も絶頂に引きずり込まれそうになった。

 彼女の奥へ注ぐ熱い飛沫は、僕の全ての想いそのものだった。

 

-【四日目・耕一の視点】

 食堂の常連である耕一は、千鶴の作る煮物が好きだった。

 そして、その味を守る千鶴自身も、愛していた。

 「千鶴ちゃん。俺は、吉宗の味を守ってくれたお前を尊敬してるんだ」

 耕一は、ふんどしを解く前に、まず千鶴の手を握った。

 炊事で少し荒れたその手を、自分の両手で包み込む。

 「耕一さん……」

 「俺の体で、お前を温めてやりたい。吉宗の分も、俺の分も」

 耕一の体は、年季の入った道具のように、傷だらけで、温かい。

 彼は褌を外すと、千鶴を抱き寄せ、その背中をさすりながら、ゆっくりと肌を合わせた。

 「耕一さん、大きい……」

 「我慢させるからな、ゆっくりな」

 耕一は、自分の太い男を、千鶴の濡れた割れ目にゆっくりと擦り付けた。

 焦らすように、亀頭でクリトリスを突く。

 「あっ、あっ……そこ、駄目……」

 千鶴が腰を浮かせてねだるまで、耕一は決して中には入らなかった。

 「欲しいか?」

 「欲しい……入れて、耕一さん……」

 ねだる声を聞いて、耕一はようやく沈み込んだ。

 「うおっ……きついな、千鶴ちゃん……」

 千鶴の中は、熟れた蜜壺のように耕一を飲み込んでいく。

 耕一は、千鶴の腰を抱え、自分のペースで深く突き上げた。

 「いいぞ、千鶴ちゃん。俺のでいっぱいになれ」

 「ああっ、耕一さん……深い……お腹の中まで……!」

 背中をさする手と、子宮を突く男。

 優しさと、力強さ。

 耕一は、千鶴がイク度に、その髪を撫で、額に口づけた。

 「俺がいるからな。一人にはさせねぇ」

 その言葉と共に、耕一はどっぷりと精を注ぎ込んだ。

 体の相性も、心の相性も、既に確かめる必要なんてなかったのかもしれない。

 

--【五日目・源蔵の視点】

 

 村長の息子、源蔵。

 彼は千鶴をずっと見てきた。

 嫁いできた時から、夫を亡くした時も。

 「千鶴よ。俺は、この村の掟通りにここへ来たが……本心は、お前を妻にしたいのだ」

 源蔵は、年齢を重ねた威厳ある体を晒した。

 褌を解くその動作は、堂々としていた。

 「源蔵さん……」

 「恐いか?」

 「いいえ。頼もしいです」

 千鶴は、源蔵の胸に手を置いた。

 白髭の生えた顎を、千鶴は愛おしそうに撫でる。

 「お前の全てを、俺に預けろ」

 源蔵は、千鶴を畳の上に押し倒すのではなく、自分の上に座らせた。

 「自分の好きなように動け。俺は、お前の器になる」

 千鶴は、源蔵の太い男を手で支え、自らの秘所に導いた。

 「んっ……」

 ゆっくりと腰を落としていく。

 源蔵は、千鶴の腰を支えながら、その表情を伺う。

 苦悶と、快楽が入り混じった顔。

 「源蔵さん、動きます……」

 千鶴は、源蔵の上で腰を振り始めた。

 源蔵は、彼女の揺れる乳房を掌で包み、乳首を指で捏ねった。

 「あっ、あっ、あっ……!」

 千鶴の動きが激しくなる。

 源蔵は、彼女の腰を掴み、下から突き上げるように呼応した。

 「くっ、千鶴……いいぞ、もっと俺を弄べ」

 「源蔵さん、好き……っ! 深いところに……当たって……!」

 年齢を重ねた男の女への執着は、若者のそれよりも遥かに深く、静かで、そして熱かった。

 源蔵は、千鶴が絶頂に達し、崩れ落ちるその瞬間まで、彼女を支え続けた。

 そして、自分もまた、彼女の胎内に深く注いだ。

 「これからは、俺がお前の家族だ」

 五日間の儀式は、終わった。

 千鶴は、五人の男と心と体を重ね、この村の「生きるための知恵」を、その身で味わった。

 まだ、誰を選ぶか決めてはいない。

 けれど、彼女はもう、一人ではない。

 提灯の灯りが揺れる部屋で、千鶴は、五人の男の温もりを心に刻みながら、静かに目を閉じた。

 外では、春の雨が降り始めていた。

 命を育む、温かい雨だった。

 

 五日間の雨は上がり、山々の輪郭がくっきりと青空に浮かび上がっていた。

 村の広場には、再び村人たちが集まっていた。しかし、昨夜のような祭りの喧騒はない。そこには、厳かで、張り詰めたような静寂が漂っていた。

 五人の男たちが、一列に並んでいる。

 農家の健太、大工の隆司、役場の雅巳、常連の耕一、そして村長の息子・源蔵。

 皆、晴れ着に着替え、緊張で汗ばむ掌を握りしめていた。五日間、彼らは千鶴の体を知り、心に触れ、そして彼女の孤独の深さと、それでも生きようとする強さを痛いほど理解した。だからこそ、今の彼らの瞳には、劣等感や嫉妬はない。ただ、千鶴への深い敬愛と、彼女の未来を祈る静かな願いがあった。

 柳沢教授、美奈子、美和も、広場の端で息を潛めて見守っている。

 

 土蔵の扉が静かに開いた。

 白無垢にも似た、薄い鼠色の着物に身を包んだ千鶴が姿を見せる。

 昨夜の五つの温もりは、彼女の心に深く沁み込んでいた。

 健太の若く真っ直ぐな情熱は、彼女の枯れかけていた心に水を与えてくれた。

 隆司の無骨で確かな愛撫は、壊れかけた彼女の心身を支え直してくれた。

 雅巳の必死で不器用な抱擁は、彼女が誰かに必要とされていることを教えてくれた。

 源蔵の包み込むような熟れた愛は、年齢を重ねた者同士の安らぎを与えてくれた。

 そして、耕一。

 彼は吉宗の味を守る千鶴を尊敬し、その手を握ってくれた。「俺がいるからな」と、何度も背中をさすってくれた。彼の中では、千鶴はいつでも「女」であり、同時に「共に歩む者」だった。

 

 千鶴はゆっくりと歩み出す。

 土の感触を確かめるように、一歩、また一歩。

 五人の男たちの前まで来ると、彼女は足を止めた。

 視線が交錯する。迷いはない。しかし、その瞳には深い慈しみと、選ばれなかった者への申し訳なさが揺れていた。

 千鶴は、一番左に立つ健太の前へ進み出た。

 健太が息を呑む。

 千鶴は微かに首を横に振った。「ごめんなさい」という無言の謝罪。健太は強張った顔を綻ばせ、「頑張れよ」と目線で送った。

 次に隆司。大工は小さく頷き、「いい骨組みを選べ」と促すように胸を叩いた。

 雅巳は、千鶴が近づく前から目を伏せていた。彼の分厚い眼鏡の奥が光る。千鶴が通り過ぎる時、彼は震える声で「お幸せに」とだけ呟いた。

 源蔵は、豪快に笑って見せた。「若い者には敵わんか」と、その背中で村の未来を託す覚悟を見せた。

 

 そして、千鶴は耕一の前に立った。

 耕一だけが、いつも食堂のカウンターに座っている時と同じように、自然体で千鶴を見つめていた。その眼差しは温かく、ただ「おかえり」と待っているようだった。

 千鶴は、耕一の目の前で、するりと着物の裾を整えた。

 ごくり、と誰かが息を飲む音がした。

 千鶴は正座し、両手を畳について、指先を揃えた。

 三つ指をついて、深く、深く、頭を下げた。

 

「耕一さん」

 静かな、しかしよく通る声だった。

「私は、吉宗さんの煮物の味を、これからも守っていきたい。この村の食堂を、灯り続けさせていきたい」

 畳に額を擦りつけんばかりに下げた頭は、上げられない。

「そのために、貴方の温もりと、力を、お貸しください。……私と、共に生きてくださいませんか」

 

 耕一の目から、ぼろりと涙がこぼれ落ちた。

 彼は震える手で、自分の袴の紐を直すわけでもなく、ただ前に進み出た。

 そして、頭を下げたままの千鶴の肩に、そっと手を置いた。昨夜、何度も背中をさすってくれた、あの厚くて温かい手だった。

 

「千鶴」

 耕一は、しゃがれ声で名前を呼んだ。

「俺は、吉宗の代わりになんてなれねぇ。でも、お前が作る味を、一番に食って、一番に褒める男にはなれると思う」

 千鶴の肩が震える。

「俺の精力も、根性も、全部お前に注ぐ。お前が笑って店に立つために、俺の体を使ってくれ」

 

 千鶴はゆっくりと顔を上げた。

 目元は赤く腫れていたが、そこにはもう、灯守りの庵で揺れていたような寂しさはなかった。

 あるのは、泥にまみれても、雨に打たれても、前を向く農村の女の決意の顔だった。

 千鶴は耕一の手を取り、自分の頬に押し当てた。

 

「……よろしくお願いします」

 

 広場に、どっと村人たちの温かい歓声が巻き起こった。

 口笛を吹く若者たち、涙を拭う婆様たち。そして、肩を叩き合う四人の男たち。

 

 「見事な儀礼の結末ですね」

 柳沢教授が、目を細めて呟いた。

 「選ばれなかった者の痛みを伴うからこそ、選ばれた絆は重い。そして、選ばれなかった者たちもまた、彼女と深く交わった記憶を胸に、それぞれの生を歩んでいく。……これが、この村の『春迎え』の真髄なのでしょう」

 美奈子がハンカチで目元を押さえ、美和がそっとその肩を抱く。

 

 耕一は千鶴の手を引いて立ち上がった。

 二人は並んで、村人たちに頭を下げる。

 その背後では、山から吹き下ろす風が、新緑の匂いを運んでいた。

 庵の灯は消えた。

 けれど、食堂の竈には、これからも命の火が灯り続ける。

 五人の男が注いだ精は、千鶴の体に春の養分として蓄えられ、やがて彼女と耕一の間に新しい命として芽吹くかもしれない。

 それが、人から人へと受け継がれていく、最も原始的で、最も確かな知恵なのだから。

 「さあ、店じまいの仕込みをしようか」

 「ええ、耕一さん」

 二人は手を繋いだまま、光の差し込む食堂へと歩き出した。

食堂の戸を閉め、勝手口から入った台所には、まだ竃(かまど)の余熱が残っていた。

昼間の歓声が嘘のように静まり返った村内で、二人の呼吸だけが荒く響く。

耕一は千鶴の手を引いたまま、板場の奥にある六畳間へと歩いた。そこは千鶴が吉宗と暮らした場所であり、五日間、彼女が男たちを受け入れた場所でもあった。

 

「千鶴」

耕一は千鶴を座布団の上に座らせると、自分も向かい合って正座した。

二人の間には、布団も、ましてや夜着もない。あるのは、土と油と、煮物の出汁の匂いが染み付いた空気だけだ。

耕一は、千鶴の着物の帯に手をかけた。

「俺が、脱がせていいか?」

「……ええ。お願い」

千鶴の目は潤んでいたが、揺るぎない信頼があった。

帯を解き、着物を肩から滑らせると、昼間の五人の男の痕跡が、千鶴の白い肌に残っていた。

健太に付けられた首筋のキスマーク。

隆司に掴まれた腰の赤い指の跡。

源蔵に揉まれた乳房の青あざ。

耕一は、その一つ一つに、まるで傷口を消毒するように、そっと指先で触れ、そして唇で吸った。

 

「あっ……耕一さん……」

「痛いか?」

「いいえ……優しい……」

耕一の手つきは、やはり耕一だった。

他の男たちのように、獣のように貪るわけでも、職人のように正確に組み上げるわけでもない。

ただ、慈しむように、確かめるように、ゆっくりと肌を滑る。

彼もまた、褌を解いた。傷だらけの体。年季の入った逞しい男が露わになる。

千鶴は、耕一の胸に手を置いた。その心臓が、トクトクと力強く打っている。

「耕一さん。私、吉宗さんの味を守るって決めたわ」

「ああ」

「でもね、私の中にあるのは、吉宗さんだけじゃないの」

千鶴は、耕一の目を真っ直ぐに見つめた。

「健太くんの熱さも、隆司さんの強さも、雅巳さんの必死さも、源蔵さんの深さも。全部、私の中に残ってる」

耕一は、痛ましそうに、そして誇らしげに眉を寄せて頷いた。

「そうだろうな。お前は、全部受け止めたんだ」

「ええ。だから、私と耕一さんがするのは、ただの夫婦の営みじゃないわ」

千鶴は耕一の首に腕を回した。

「私たち、同士(同志)になりましょう。吉宗さんを忘れない、同じ思い出を持った、同士に」

 

その言葉が合図だった。

耕一は千鶴を押し倒すのではなく、二人は互いに抱き合うように、畳の上に横たわった。

肌と肌が密着する。

耕一の体温が、千鶴の冷えた背中を包み込む。

「千鶴……吉宗」

耕一が、耳元で囁いた。

亡き友の名前だった。

「お前の味は、最高だ。俺も、食わせてもらったからな」

千鶴の目から涙がこぼれた。

「うん……吉宗。私、耕一さんと一緒にいるわ」

二人は、亡き男を交えて会話していた。

同士なのだ。

同じ男を愛し、同じ味を知り、同じ喪失を背負った者同士。

耕一の男が、千鶴の濡れた秘所に触れた。

焦らすことはしない。ただ、ゆっくりと、確かに、沈み込んでいく。

「ああっ……!」

千鶴の背筋が反った。

耕一の太さと温かさが、彼女の最奥を押し広げていく。

他の男たちの残滓(ざんし)さえも、耕一の男が掻き混ぜ、溶かし、一つにしていくような感覚。

「いいぞ、千鶴。俺も、吉宗も、みんなも、一緒にお前の中にいる」

「耕一さん……! ああっ、吉宗……っ!」

千鶴は耕一の背中に爪を立て、しがみついた。

耕一の腰の動きは、決して激しくはない。

しかし、一突きごとに、確信に満ちていた。

子宮の奥深くを、丹念に、執拗に、叩く。

「くっ……千鶴、きついな……吉宗、お前もわかってただろ、この味」

「吉宗……好き……っ! 耕一さんも、好き……っ!」

千鶴は、耕一の耳元で喘ぎながら、亡き夫と現(うつつ)の夫を同時に呼んだ。

耕一もまた、千鶴の中に吉宗の面影を見ていた。

男が愛した女。自分も愛した女。

彼女の中に、吉宗は今も生きていた。

耕一の動きが、少しずつ速くなる。

部屋に、肉が打ち合う湿った音が響き始める。

「千鶴、いくぞ。俺も、吉宗も、お前の中に注ぐ」

「来て……! いっぱいにして……吉宗……耕一さん……っ!!」

千鶴の体が硬直し、激しく震えた。

耕一もまた、低く唸りながら、千鶴の最奥に熱滾(ねったき)を叩きつけた。

どぷっ、どぷっ、と吐き出される精の感触に、千鶴は恍惚とした表情で受け止める。

耕一は、果てた後も千鶴を抱きしめたまま、離れなかった。

二人は汗と涙と体液にまみれて、荒い息を吐き合う。

「吉宗……」

千鶴が、虚空を見つめながら、愛おしそうに呼んだ。

耕一は、千鶴の汗ばんだ髪を撫でながら、同意するように目を閉じた。

 

「ああ。俺たちが、守っていく」

外では、夜の虫が鳴き始めていた。

庵の灯は消えた。

けれど、この部屋の中には、死者と生者が入り混じり、深く結び合った、濃厚で優しい温もりが満ちていた。

二人は共に吉宗の名を呼びながら、何度も唇を重ね、飽くことなく体を合わせた。

それが、彼らの弔いであり、これからの生への契りだった。

あれから季節がめぐり、山の色が幾度も変わった。

千鶴の腹は、秋の稲穂のようにゆっくりと、しかし確かに膨らんでいった。

五人の男が注いだ精のうち、どの種が芽吹いたのか。

それは誰にもわからないし、誰も詮索しなかった。

重要なのは、この村に新たな命が宿ったという事実だけだった。

 

食堂の厨房に立つ千鶴の背中を、耕一がいつも支えていた。

重い鍋を持つ手を借り、疲れれば強張った肩を揉みほぐす。

「無理すんな。店は俺がやる」

「いいのよ。動いてないと、体が鈍るから」

そう言って微笑む千鶴の顔は、灯守りの庵で見せた寂しさを完全に拭い去り、母なる女の穏やかな光を帯びていた。

 

あの五日間の夜を共にした男たちも、それぞれの形で千鶴を見守っていた。

健太は畑で一番良い野菜を食堂に届けてくれた。

隆司は出産に備えて揺り籠をこしらえてくれた。

雅巳は役場から産前産後の書類を持ってきてくれた。

源蔵は村の掟として、出産時の世話をする婆様たちを手配してくれた。

彼らは千鶴の選択を尊重し、遠くから暖かい眼差しを送り続けていた。

 

雪降る冬の夜。

産声が上がった。

耕一が、絞ったばかりの布で赤子を包み、千鶴の胸に抱かせた。

「元気な男の子だ」

耕一の目から、ぼろぼろと涙がこぼれる。

千鶴もまた、汗と涙にまみれた顔で、愛おしそうに赤子の頬に唇を寄せた。

 

数日後、役場に届け出るための名前が決まった。

六畳間に、耕一と千鶴が向かい合い、赤子を間に座っている。

「名前は……吉宗(よしむね)にしましょう」

千鶴が静かに言った。

耕一は目を見開き、そして深く頷いた。

「ああ。吉宗だ」

亡き夫の名前であり、食堂を開いた彼の名前。

それを跡継ぎに継がせる。

それは死者への執着ではない。

彼が遺した味と場所を、この子がさらに先へ繋いでいくという、生者の誓いだった。

 

役場へ向かう道すがら、村人たちが次々と声をかけてくれた。

「吉宗か! いい名前だ!」

「立派な男になれよ!」

健太や隆司たちも、遠くから手を振ってくれる。

千鶴は、背中の赤子を揺らしながら、深く深く頭を下げた。

この村の全てが、この子を産み落としたのだ。

 

春。

再び雪解け水が山を流れ始めた頃、柳沢昂教授が再び村を訪れた。

美奈子と美和も同伴している。

三人が食堂の暖簾をくぐると、耕一がカウンター越しに出迎えた。

「いらっしゃい。教授たちも、久しぶりだな」

「いい匂いだ。やはりこの店の煮物は格別だ」

柳沢が目を細める。

奥の座敷から、千鶴が現れた。

腰には幼い吉宗を結い付けている。

赤子はすやすやと眠っており、その顔には何の憂いもなかった。

 

「教授。また見に来てくださったんですか?」

千鶴が小さく笑う。その笑顔は、一年前と同じようで、どこか別人のように力強かった。

「ええ。命がどのように繋がっていくのかを見届けに」

柳沢は言った。

「名前を聞きました。吉宗。……素晴らしい名前だ」

 

千鶴は眠る赤子の頭をそっと撫でた。

「この子にはね、五人のお父さんがいるの」

美奈子が目を丸くする。

「五人?」

「ええ。健太くんの真っ直ぐさ。隆司さんの強さ。雅巳さんの優しさ。源蔵さんの深さ。そして耕一さんの温かさ」

千鶴は耕一の方を見て、微かに笑った。

「この子が育つ時に、全部教えてあげるつもり。この村で生きる知恵として」

 

柳沢は深く頷いた。

「それこそが民俗なのでしょうね」

窓の外を見る。山には淡い緑が芽吹き始めていた。

「形は失われても、命は脈々と繋がっていく。古きものを尊びながら、新たな命を抱擁する。……この村は、それを実践している」

 

やがて赤子が目を覚まし、大きな声で泣き出した。

千鶴は慌てることなく、乳房を含ませる。

赤子は夢中で母乳を吸い始めた。

命の源に還るように。

耕一が横から手を伸ばし、赤子の小さな手を指で包み込んだ。

 

提灯の灯りが揺れる。

竃(かまど)には火が燃えている。

虫の声が響く。

そして、命を育む温かい風が吹く。

 

「いただきます」

柳沢が箸をつける。

煮物の味は、昔と変わらない。

いや、千鶴と耕一が二人で守り抜いた味は、さらに深みを増していた。

口の中に広がる優しい出汁の味は、喪失と再生を繰り返してきたこの村の歴史そのものだった。

 

食事を終えた三人が店を出ると、外では春の宵月が昇っていた。

「美和さん。美奈子さん」

柳沢は月を見上げながら言った。

「我々はまた、一つ大切なことを教えてもらいましたね」

「ええ」

美奈子が答える。

「人は誰かと共に前を向くことならできる」

「悲しみと一緒に生きることを許す場所がある」

美和も続く。

「そしてそこから、新たな命が紡がれていく」

 

山の方から風が吹いてきた。

それは庵の灯を消した夜と同じ風だった。

けれど今の風には、確かな温もりがあった。

命はつながっていく。

古きものを灯とし、新しきものを抱きしめながら。

いつまでも、いつまでも。

 

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