※この作品はR-18です。

日本の村に眠る淫習を訪ねて、柳沢研究室レポート 今に残る日本の村のエロ風習 ⭐︎各話読み切り 新作はイラスト付き   作:みなぽん

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日本の淫習を訪ねて広島県 「龍迎えの十三夜」蘇る悪夢

柳沢 昂(やなぎさわ のぼる)

大東亜文化大学 民俗学教授。

日本各地に残る因習・禁忌を研究する民俗学者であり、穏やかな物腰と知的な雰囲気を持つイケオジ教授で、学生からの信頼も厚い。

研究分野は 土着信仰 民俗風習 祭りなどを求め日本全国を巡り記録を収集している。

 

姉川 美奈子(あねがわ みなこ)

柳沢ゼミ ゼミ長。真面目で責任感が強く、ゼミをまとめる柳沢教授の右腕。

柳沢への尊敬は人一倍強く、研究でも調査でも常に全力。清楚で落ち着いた雰囲気の優等生タイプだが、実はかなり大胆な一面も持つ。寺の娘であり体捨施徳会という儀式の生贄を親に強要されていた過去をもつ。

 

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南條 美和(なんじょう みわ)

美奈子の同期。元陸上部エースで、現在も抜群の運動能力を持つ。長身スレンダーな美人で、ファッション誌の読者モデルも務める人気者。明るく社交的で、ゼミのムードメーカー。

柳沢への想いは美奈子と同じく熱狂的であり、彼らの為ならいかなる献身も厭わない。。

 

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戸神村に伝わる古い伝承。

 それは「龍迎えの十三夜」と呼ばれていた。

 五十年に一度。

 山の神が眠りから覚める年。

 十三日間に渡って村は山へ供物を捧げる。

 もし儀式を怠れば、龍は怒り、人を連れて帰る。

 古文書にはこう記されていた。

『一夜目は耳を奪う。』

『二夜目は目を奪う。』

『三夜目は口を奪う。』

『そして十三夜には、龍は嫁を山へ迎える。』

「ずいぶんと不気味な話ですね。」

 民宿の座敷で古文書を読みながら、美奈子が眉をひそめる。

「身体を少しずつ奪っていくわけか。」

 美和も珍しく真剣な顔だった。

 柳沢は黙って資料を閉じる。

「民俗学的には珍しくありません。」

「身体の一部を象徴として扱う信仰は日本各地に存在します。」

「問題は――」

 その時だった。

 玄関が激しく叩かれる。

 村人だった。

「大変じゃ!」

 老人の顔は青ざめていた。

「辰巳さんが死んどる!」

 山道の途中。

 辰巳源治。

 82歳。

 村の古老が倒れていた。

 死因は心臓発作。

 医師はそう判断した。

 しかし。

「耳が……」

 美奈子が息を呑む。

 老人の耳にはなぜか泥が詰め込まれていた。

 まるで何かを塞ぐように。

 村人たちの顔色が変わる。

「一夜目じゃ……」

「龍が耳を奪ったんじゃ……」

 誰かが呟く。

 そして翌日。

 二人目が見つかった。

 山仕事をしていた70歳の男だった。

 斜面から転落した事故死。

 だがその遺体には奇妙な点があった。

 両目が布で覆われていたのだ。

「二夜目は目を奪う。」

 誰かが震える声で言った。

 村は恐怖に包まれた。

 警察は偶然だと言う。

 事故だと言う。

 だが村人たちは違った。

 伝承通りに死者が出ている。

 偶然なはずがない。

 そして三日目。

 村役場の74歳の役員が自宅で死亡した。

 脳卒中だった。

 しかし。

 遺体の口には大量の小石が詰め込まれていた。

 まるで。

 喋ることを禁じるように。

「三夜目は口を奪う。」

 美和が呟く。

 村人の一人が叫ぶ。

「儀式を中止したからじゃ!」

「五十年前と同じことが起きとる!」

 柳沢は顔を上げた。

「五十年前?」

 村人たちは口を閉ざす。

 沈黙。

 重い沈黙。

 やがて一人の老婆が言った。

「昔もあったんじゃ。」

「十三夜の年。」

「3人死んだ。」

「そして最後に巫女の娘が山で消えた。」

 部屋の空気が凍る。

「消えた?」

「見つからんかった。」

「遺体も。」

「骨も。」

「何も。」

 柳沢は静かにノートを閉じた。

 伝承を模倣した殺人か。

 あるいは事故を利用した何者かの演出か。

 だが。

 引っかかる点があった。

 耳。

 目。

 口。

 古文書に書かれていた順番と完全に一致している。

 問題は。

 その古文書の存在を知っていた人物が村にほとんどいないことだった。

「教授。」

 美奈子が小さく尋ねる。

「まさか本当に……?」

 柳沢は窓の外を見る。

 夜の山。

 闇に沈んだ稜線。

 そして。

 ほんの一瞬。

 山の中腹に灯りが見えた気がした。

 祭壇の方向だった。

「民俗学者としての私ならこう答えます。」

 柳沢は静かに言った。

「伝承が人を殺すことはありません。」

「人を殺すのは、いつだって人間です。」

 しかし。

 その言葉を口にした柳沢自身も気づいていた。

 自分が完全には否定しきれていないことに。

 山の闇はあまりにも深かった。

 そして戸神村の人々は。

 信仰しているのではない。

 やはり。

 山を恐れているのだった。

 

 「五十年前に消えた巫女には、名前がありました。」

 

 戸神村役場の倉庫。

 

 埃を被った戸籍台帳を前に、美奈子が呟く。

 

「神代澪。」

 

 十八歳。

 

 昭和五十一年六月失踪。

 

 記録上はそうなっていた。

 

「死亡扱いになっていない?」

 

 美和が顔を上げる。

 

「ええ。」

 

 柳沢は静かに頷く。

 

「遺体が見つからなかったのでしょう。」

 

 さらに調査を進める。

 

 すると奇妙な記録が見つかった。

 

 失踪の11か月後。

 

 隣県の診療所に身元不明の若い女性が運び込まれている。

 

 重度の低体温症。

 

 栄養失調。

 

 そして――

 

「出産?」

 

 美奈子が息を呑む。

 

 診療記録には書かれていた。

 

『二十歳前後の女性。男児を出産。本人は身元を明かさず退院。』

 

 日付。

 

 年齢。

 

 特徴。

 

 すべてが一致する。

 

「神代澪は生きていた。」

 

 柳沢は呟く。

 

「そして子供を産んだ。」

 

 山へ捧げられた巫女は死んでいなかった。

 

 だが村へ戻ることもなかった。

 

 その理由は誰にも分からない。

 

 あるいは。

 

 戻れなかったのかもしれない。

 

 その夜。

 

 柳沢たちは一枚の古い写真を見つける。

 

 若き日の神代澪。

 

 その隣に写る13人の青年団の男たち、その中には、殺された男 たちの顔もあった。

 

 

「まさか……。」

 

 美和が言葉を失う。

 

「犯人は村の人間?」

 

「いいえ。」

 

 柳沢は静かに首を振る。

 

「村の人間ではない。」

 

「村に捨てられた者です。」

 

 

⭐️五十年前の悪夢

 

 

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五十年前の悪夢は、祭壇の冷たい石の上で始まった。

 

 昭和五十一年、十三夜の月が山の端にかかる頃。

 神代澪は、白い小袖を纏い、ただ一人で座っていた。

 龍を迎えるための巫女として。

 村の女たちに潔められ、髪を結い上げられ、ただ静かに山の神が降りてくるのを待っていた。

 虫の音が遠い。

 夜風が木々を揺らす音だけが響く森の中で、松明の灯りが揺らめいていた。

 

 「澪」

 

 低い男の声が、闇から響いた。

 振り返ると、そこにいたのは見知らぬ獣ではなかった。

 幼馴染の男だった。

 青年団の団長を務める、優しかった彼。

 だがその目は、松明の赤い炎を孕んで、ひどく濁っていた。

 

 「龍は、もうすぐ来る」

 

 彼はそう呟くと、澪の肩を掴んだ。

 力は強く、逃げ場はなかった。

 巫女の衣服が裂かれる音は、あまりにも無惨に夜気に響いた。

 冷たい土と石の感触。

 そして体重。

 

 「これが……龍の迎えだ」

 

 彼が澪の中に侵入した時、澪は声も出せなかった。

 痛みよりも先に、理解が追いつかなかった。

 優しかった隣人が、自分を犯しているという事実。

 彼が激しく腰を打ち付け、最後に低い呻きと共に澪の中に欲望を吐き出した時、澪の目から涙がこぼれた。

 

 しかし、それは序章に過ぎなかった。

 

 暗闇から、次々と男たちが現れた。

 全員が顔見知りだった。

 一緒に祭りの準備をした青年たち。

 畑で挨拶を交わした隣人たち。

 酒を飲み交わした親戚の若者たち。

 十三夜に因んだ十三人の男たち。

 彼らは一人残らず、澪の前に立っていた。

 

 「次は俺だ」

 「龍に代わって、穢れを受けよ」

 「これが儀式だ」

 

 口々に囁かれる言い訳。

 彼らは自らを龍の代行者と称し、澪を犯すことを神聖な儀式と信じ込んでいるのか、あるいは単にその大義名分に隠れて欲望をぶつけているのか。その境界はとうに消えていた。

 

 二人目が覆いかぶさる。

 三人目が足を開かせる。

 四人目が白い腹に精を放つ。

 

 一人ひとりの男が、澪の体を蹂躙していった。

 見知った顔が、獣のような形相で澪を見下ろす。

 知っている声が、荒い息遣いに変わる。

 繋がるたびに、注がれるたびに、澪の魂は少しずつ削ぎ落とされていった。

 

 痛みはやがて麻痺した。

 恥辱も焼き切れた。

 ただ、冷たい夜空の下で、次々と注がれる生温かい粘液の感触だけが、澪の意識に焼き付いていった。

 

 「十三夜目には、龍は嫁を山へ迎える」

 

 古文書の言葉が脳裏をよぎる。

 龍は来ない。

 来るのは、人間だ。

 欲望という名の龍が、澪という生贄を食らい尽くそうとしている。

 

 最後の十三人目の男が、澪の体から離れた時。

 祭壇の上には、ただの肉の塊が転がっていた。

 精と泥と血にまみれた巫女。

 その瞳から光は消え失せていた。

 

 龍は嫁を迎えなかった。

 だが澪は、もう村には戻れなかった。

 心も体も、十三人の龍に食われてしまったから。

 

 村はその事実を闇に葬った。

 巫女は山へ消えたことにした。

 だが澪は生きていた。

 壊れて、壊れかけたまま、山を降りた。

 そして誰にも言えない忌まわしい記憶を抱えたまま、遠くの診療所で赤子を産み落としたのだ。

 

 それが、五十年前の真実。

 神聖なる儀式の名の下に行われた、十三人の男たちによる輪姦という名の悪夢。

⭐️事件の犯人

母さんの目は、いつも虚ろだ。

あの暗い山の奥底で見たという龍神の影を、まだ瞳の奥に焼き付けているのかもしれない。

母さんは私を産んだ。

身元不明の女として診療所で産み落としたその子を、竜司と名付けた。

龍神から授かった子、龍の使いだと信じ込んで。

 

「竜司、お前は龍の使いじゃ」

 

母さんはよくそう言って、私の頭を撫でた。

優しい手つきだったが、その指先はいつも微かに震えていた。

私はその震えを、恐怖だと気づくのに時間はかからなかった。

母さんは龍を恐れている。そして、その使いである私を。

それなのに、どうしても離れられない。逃げられない。

その矛盾が、母さんを壊していった。

 

 

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少年期を迎えた頃、母さんの狂気は形を変えた。

ある夜、私の寝床に潜り込んできた母さんは、震える手で私の下着を下ろした。

「奉仕せねばならぬのじゃ」

熱い吐息と共に囁かれる言葉は、祈りのようでもあり、呪いのようでもあった。

「龍への奉仕。お前の中に龍がおるのじゃ」

 

母さんの唇が、私の中心を包み込んだ。

温かく、湿った感触。

幼い私には理解できない快感と、胸を締め付けるような憐憫が同時に押し寄せた。

母さんは夢遊病者のように私を愛撫する。

その目は私を見ていない。

私の向こう側にいる、巨大で見えない何かにすがりついているのだ。

 

やがて母さんは、私の上に跨った。

痩せ細った白い体が、月明かりに浮かぶ。

ゆっくりと沈み込んでくる時、母さんは決まってこう呟く。

 

「龍が……来る……」

 

私の中に母さんを迎え入れた瞬間、母さんの虚ろな目に炎が灯る。

それは歓喜か、それとも絶望か。

母さんは腰を振りながら、泣き笑いのような表情で私を見下ろす。

 

「ああ、龍様……お戻りなさいました……」

 

倒錯していた。

私たちは母子でありながら夫婦であり、人間でありながら神と信徒だった。

私が母さんの胎内に精を放つたび、母さんは「龍の種を受けた」と恍惚に身を委ねる。

だが私は知っている。

母さんが感じているのは、龍神の幻影ではない。

五十年前のあの夜。

十三人の男たちに注ぎ込まれた、忌まわしい記憶の残滓だ。

 

母さんの体に刻まれた陵辱の傷は、時間を超えて私を侵食する。

私が母さんを抱くたびに、私は知らず知らずのうちにあの十三人の男たちの一部になっていくのかもしれない。

龍の使いではなく、母さんを壊した男たちの末裔として。

 

それでも、私はこの行為を拒まない。

むしろ待っている。

母さんが求めるなら、私は喜んで龍になりすまそう。

母さんの狂気をこの身で受け止め、その深い闇を精で埋め尽くそう。

この歪んだ交わりだけが、母さんを現世に繋ぎ止める唯一の鎖なのだから。

 

「母さん」

 

暗闇の中で、汗ばむ肌を重ねながら私は呼ぶ。

母さんは答えない。

ただ、獣のような喘ぎ声で龍神の名を呼び続ける。

その声が私の鼓膜を震わせ、精神を溶かしていく。

 

私は知った。

これは愛ではないと。

救済でもないと。

ただの、永遠に終わらない忌まわしい儀式の再演なのだと。

十三夜目に嫁を迎えるはずだった龍は来なかった。

代わりに残されたのは、互いの肉体を貪り合うしかない、壊れた母子だった。

そして母は私が30歳の時に癌でこの世を去った。

私は忌まわしいしがらみから解放されて人並みの人生を生きることにした。

しかし。運命は残酷だ。50歳になった。私は母と同じ癌を患った。余命は1年。

そこにまるで天啓を示すかのように、五十年の歳月が経ち、再び十三夜の年が巡ってきた。生きるための時間を残された私は、母の痛みを晴らすため、自分自身を龍と化すことを決めた。

母さんが待ち続けた龍神が降りてきたのではない。

私が自ら龍の衣を纏い、忌まわしい祭壇に舞い戻るのだ。

十三人の男たちに刻まれた母の痛み。あの夜の絶望を、今度は私が彼らに返す。

それが、この倒錯した血脈の終わりの形なのだと信じて。

 

 

⭐️姉川美奈子 拉致

姉川美奈子は、古い民家の軒下で雨宿りをしていた時だった。

村の取材を終え、民宿へ戻る道すがら、突如として空が泣き出したのだ。

土砂降りの雨音に紛れて、足音は近づいてきた。

 

「姉川、さんですね」

 

声をかけられて振り返ると、傘を差した初老の男が立っていた。

物静かで、どこか影のある男。確か、村の集会所で見かけたことがある。

竜司。そう名乗っていた男だ。

 

「はい。あの、雨が上がるまで……」

 

言葉はそこで途切れた。

男の目が、獲物を狙う蛇のように冷たく光ったからだ。

気づいた時には遅かった。

男の手が伸び、美奈子の口を塞ぐ。

湿った布が鼻口を覆い、甘い刺激臭が肺を満たした。

意識が遠のく中で、男の低い囁きが聞こえた。

 

「……姉川の娘か」

 

目が覚めた時、美奈子は硬い木の床の上にいた。

見知らぬ天井。古い木材の匂い。そして微かに香る、血のような錆の匂い。

薄暗い山小屋だ。壁には見覚えのある古文書の写しが貼られ、蝋燭の灯りが揺らめいている。

手足は縛られ、身動きが取れなかった。

 

 

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「目覚めましたか」

 

奥の闇から、竜司が現れた。

着物を着ていた。白装束に近い、神職のような出で立ちだ。

その手には、祭祀用の禰串が握られている。

 

「あなた……何をするつもり?」

 

美奈子の声は震えていた。

竜司は無表情のまま近づき、美奈子の顎を禰串の先で持ち上げた。

 

「五十年前の夜を、もう一度」

 

男の声は低く、呪文のように響いた。

 

「私の母は、神代澪。この村の巫女でした」

「そして、お前の祖父もまた、その夜にいた」

 

美奈子の息が止まった。

祖父。どうやら偶然にも姉川と言う苗字のものが13人の中にいたようだ。

 

「十三人の龍が、母を食らった。……お前の祖父もその一員だ」

 

竜司の目に狂気が宿る。

五十年の歳月が凝縮されたような、ドス黒い感情の渦。

 

「神聖な儀式だと? 違う。ただの輪姦だ。獣の交尾だ」

「母は壊れた。そして私は、その壊れた母の胎内から生まれた」

「お前の血には、母を犯した男の穢れが流れている」

 

竜司は禰串を置き、美奈子の服に手をかけた。

ビリッという音が、小屋内に響く。

肌が露わになる。冷たい空気が肌を刺す。

 

「やめて! やめてください!」

 

美奈子は叫び、縄を解こうと身をよじる。

しかし竜司の力は圧倒的だった。

彼は美奈子の抵抗を無造作にねじ伏せると、その白い喉元に顔を埋めた。

 

「匂うな……」

 

男は鼻を鳴らし、獣のように肌を舐め上げた。

ざらついた舌の感触。恐怖で鳥肌が立つ肌を這う唾液の熱さ。

 

「五十年前の夜と同じ匂いがする。女の匂いが。贄の匂いが」

 

竜司は帯を解き、自らの下半身を露わにした。

すでに猛々しく勃起したそれが、美奈子の目前に突き出される。

拒絶しようと口を開いた瞬間、男は強引に美奈子の足をこじ開けた。

 

「龍が来る」

 

その言葉と共に、竜司は一気に突き入れた。

 

「ああっ!」

 

裂けるような痛みが走り、美奈子は悲鳴を上げた。

乾ききった秘所に無理やり押し込まれた異物の感触。

壁をこじ開け、内臓をかき回すような暴力的な侵入。

美奈子の目から生理的な涙がこぼれ落ちる。

 

竜司は構わず腰を打ち付けた。

ドス、ドス、と肉がぶつかる鈍い音が響く。

それは交尾ではなかった。処刑だった。

五十年前の罪を、美奈子の体に刻みつけるための罰だった。

 

「これが龍の迎えだ!」

 

竜司は叫びながらピストンを速めた。

美奈子の華奢な体が、打ち付けられるたびに木の床の上で跳ねる。

痛みに意識が飛びそうになる中で、男の喘ぎ声が聞こえた。

 

「母さん……見てくれ……これが龍だ……!」

 

竜司は狂ったように腰を振り続ける。

彼の目には美奈子は映っていなかった。

見ているのは、五十年前に輪姦された母の幻影。

そして、母を犯した十三人の男たちの亡霊。

彼は美奈子を犯すことで、母の痛みを追体験し、同時に男たちへの復讐を果たそうとしていた。

 

「ああ……龍様……龍様……!」

 

男の放つ言葉は、あの夜、母に囁かれた呪いの言葉そのものだった。

美奈子は屈辱に震えた。

自分が個人として見られていないこと。

ただの器、苗字を持った肉袋として扱われていること。

それがどんな殺されることよりも深い絶望をもたらした。

 

やがて竜司の動きが激しくなり、低い唸り声を上げた。

「受けよ! 龍の種を!」

 

どろりとした熱が、美奈子の奥深くに注ぎ込まれた。

脈打つ感触。子宮を汚す粘液の重み。

美奈子はただ天井を見つめ、声も出せずに涙を流した。

 

竜司は事が終わっても、美奈子の中から抜かなかった。

まだ硬さを保ったそれを埋めたまま、荒い息を整える。

そして美奈子の耳元に唇を寄せ、囁いた。

 

「これは最初の一夜だ」

 

美奈子の背筋が凍った。

 

「十三夜まで、あと十夜ある。……お前は龍に食われる」

蝋燭の火が揺れ、古文書の文字が不気味に浮かび上がる。

『十三夜目には、龍は嫁を山へ迎える』

その言葉が、美奈子の犯された体に突き刺さった。

この山小屋はもう避難所ではない。

五十年前に母が閉じ込められた祭壇そのものだった。

そして美奈子は今、その冷たい石の上に横たわる巫女だった。

山小屋の日々は、緩やかな狂気の中に沈んでいた。

 

初めの数日は、痛みと恐怖だけだった。

竜司は毎夜、いや、夜に限らず気が向けば美奈子を求めた。

彼は決まって白装束を纏い、低く「龍が来る」と呟きながら、美奈子の体を開いた。

乱暴な侵入は、いつしか執拗で粘着質な愛撫へと変わっていった。

彼は美奈子の全身を舐め回し、敏感な場所を指先と舌で何度も攻め立てた。

抵抗しようと縄を引く手足は擦り切れ、叫びは喉を枯らした。

しかし、竜司は止まらなかった。むしろ、美奈子が泣き叫べば叫ぶほど、その瞳に恍惚とした光を宿し、腰の動きを激しくしたのだ。

 

「母さん……龍が……来る……!」

 

彼が耳元でそう囁くたびに、美奈子の中で何かが溶けていくような感覚に陥った。

五十年前の巫女と重ねられていることは分かっている。

自分はただの器だということも。

なのに。

 

「いやっ……やめっ……あぁっ!」

 

ある夜、竜司が美奈子の胸の先をきつく吸い上げ、同時に下の口を激しく突き上げた時だった。

背筋を電流のような快感が走り抜けた。

痛みだと思っていた感覚が、いつの間にか裏返り、甘い痺れとなって脳髄を侵食し始めていた。

体が跳ね、無意識に竜司の背に爪を立ててしまう。

その瞬間の自分の声が、甘く、淫らで、信じられないほど濡れていたことに美奈子は絶望した。

 

理性が悲鳴を上げる。

これは犯罪だ。陵辱だ。許されることではない。

心は頑なに拒絶しているはずなのに、肉体は裏切る。

竜司の指が秘所をなぞるたびに、蜜が溢れ出す。

彼が深く突き入れられるたびに、子宮が喜びに震える。

体が竜司の形を覚え、彼を迎え入れるために潤い、疼き始めていたのだ。

 

「……っ、あ……ああ……」

 

柳沢先生。

美奈子の脳裏に、大学の研究室で穏やかに笑う恩師の顔が浮かんだ。

民俗学を共に学んだ日々。真実を追い求めた誇り高き時間。

あの清らかな場所から、どれほど遠くへ堕ちてしまったのだろう。

 

先生、許してください。

私は汚されています。

あの男に犯されるたびに、私の体は喜んでいるんです。

あんなにも恐ろしかった男の手が、今では私を快感の渦へ引きずり込む魔法の手のように思えてしまう。

 

「ほら、龍が呼んでいるぞ」

 

竜司が耳元で囁き、耳たぶを噛みながら最奥を突き上げる。

美奈子は首を振った。否定したかった。でも、口から漏れるのは甘い喘ぎだけだった。

体は竜司にしがみつき、もっと深く突かれることを求めて勝手に腰を動かしていた。

 

「いい子だ……龍の嫁よ……」

 

注がれる精液の熱さ。それが子宮を満たすたびに、美奈子は倒錯した安心感を覚えるようになっていた。

自分の中に龍が宿る。

そんな狂った妄想が、一瞬だけ脳をよぎる。

 

先生、私はもう、元の美奈子には戻れません。

十三夜の闇に溶けてしまいそうです。

この快楽の泥沼から、どうか引きずり出してください。

いえ、もう遅いのかもしれません。

私の体はもう、龍に染まってしまった。

 

美奈子は涙で濡れた顔を伏せながら、闇の中でただ一人、見えない恩師に向かって懺悔を続けた。

声にならない声で。

すでに壊れかけている心で。

 

柳沢先生。

許してください。

 

⭐️反撃

 

美奈子の行方が分からなくなって、三日が過ぎた。

警察の捜索は難航し、村の不安は膨らむ一方だった。

柳沢は民宿の縁側で夜空を見上げながら、独りごちた。

「このままでは、美奈子さんの命が危ない」

伝承通りなら、十三夜には「嫁」が山へ迎えられる。

つまり、竜司の復讐が完了する日だ。

柳沢は一計を案じた。狂人を罠にかけるには、狂った舞台を用意すればいい。

 

「龍迎えの十三夜を行う」

 

柳沢は村の代表者たちに宣言した。

「儀式を行わねば、竜司は満足しない。我々が彼に舞台を提供するのだ」

勿論、本気で生贄を捧げるわけではない。

竜司をおびき寄せ、美奈子を救出するための罠だった。

 

巫女に選ばれたのは、南條美和だった。

柳沢の提案に、美和は迷わず首を縦に振った。

「私がやります」

美和は覚悟を決めていた。友人を救うためなら、自ら餌になることも厭わない。

 

儀式の当日、美和は澪と同じ白い小袖に身を包んだ。

髪を結い上げられ、額には注連縄を巻かれる。

鏡に映った自分を見て、美和は震えた。それは巫女というより、処刑台に上がる囚人のように見えた。

 

山に入るのは、美和と十三人の男たち。

柳沢が選抜した若い男たちだ。彼らには内密に、竜司を取り押さえるよう命じてあった。

松明の列が、暗い山道を登っていく。

美和はただ一人、白い衣を翻して歩く。

その姿は、五十年前の澪と重なるようで、背後の男たちの目を怪しく光らせた。

 

山小屋の闇の中で、竜司はその様子を覗っていた。

美和の顔を見た瞬間、竜司の呼吸が止まった。

「母さん……」

白い小袖に身を包み、怯えながらも毅然と歩くその姿は、記憶の中の澪そのものだった。

美しかった母の面影が、目の前の娘に重なる。

竜司の中で、復讐心と渇望が入り混じった。

 

夜が来た。

祭壇のある広場に、松明が焚かれる。

美和は祭壇の前に立ち、男たちに取り囲まれた。

柳沢の合図を待つ美和だったが、儀式を演じる男たちの目が、次第に狂気を帯びていく。

「龍が来る……」

誰かが低く呟くと、男の一人が美和の肩を掴んだ。

美和は悲鳴を上げた。「やめて! これは演技で……!」

だが男は聞く耳を持たない。小袖を力任せに引き裂いた。

 

 

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白い肌が露わになる。冷たい夜気に晒され、美和は縮み上がった。

「龍への奉仕だ」

男の手が美和の胸を鷲掴みにする。痛みと屈辱に、美和は目を閉じた。

次々と男たちの手が伸びる。

足を掴まれ、太ももを押し広げられる。

「やめて……お願い……」

美和の哀願は夜風にさらわれた。

 

男の一人が、すでに勃起した自身を美和の足間に押し当てた。

「龍の種を受けよ」

無慈悲な一撃が、美和の体を貫いた。

「ああっ!」

乾いた悲鳴が響く。体を裂かれるような痛みが走り、美和は涙を流した。

男は容赦なく腰を打ち付けた。肉と肉がぶつかる音が、静寂な山に響く。

「龍が……来る……!」

男の興奮した声と共に、熱い液体が美和の中に注ぎ込まれた。

美和はただ、されるがままになった。

 

次の男が代わる。

美和の体は、もはや抵抗する力も残っていなかった。

男たちが次々と体を重ね、欲望を注ぎ込んでいく。

「母さん……」

竜司は震える手で、自分の股間を押さえた。

目の前で繰り広げられる陵辱の光景は、五十年前の悪夢の再現だった。

しかし今、犯されているのは母ではない。

母と同じ衣装を纏い、母と同じように泣き叫ぶ、別の女だ。

竜司の中で、何かが弾けた。

 

「龍が……来る……!」

 

竜司は山小屋を飛び出した。

白装束を翻し、闇の中を疾走する。

祭壇を目指して。

美和を犯す男たちに向かって。

彼の中の龍が、吼えた。

美和を救うためか、それともこの倒錯した儀式に加わるためか。

竜司自身にも分からなかった。

ただ、止まれなかった。龍の衝動が、彼を突き動かす。

 

「龍様じゃ!」

男たちの誰かが叫ぶ。

竜司は祭壇の上に躍り出た。

そして、美和の上に覆いかぶさる男を力任せに引き剥がすと、自らの股間を露出し、美和の足間に割り込んだ。

 

「母さん……!」

 

叫びと共に、竜司は一気に突き入れた。

すでに数人の精液で濡れそぼった秘所は、いとも簡単に竜司を受け入れた。

「あああっ!」

 

美和の悲鳴が、また一つ山に響く。

竜司は狂ったように腰を振った。

母の幻影を追いかけ、母の痛みを追体験し、母を犯した男たちへの憎しみをぶつける。

そのすべてが混ざり合い、竜司はただの獣となった。

 

「龍が来た! 龍が嫁を迎えた!」

 

男たちの歓声が上がる。

美和はもう、何がなんだか分からなくなっていた。

ただ、突き上げられるたびに体が震え、注がれるたびに何かが壊れていくのを感じていた。

柳沢は森の暗がりで拳を握りしめていた。

計画は狂った。

男たちを装っていたはずの村人たちまで、狂気に当てられ、美和を犯し始めたのだ。

そして竜司まで加わった。村に眠る狂気が男たちを操っていた

美和を救うための儀式が、本物の輪姦の儀式と化してしまった。

柳沢は走り出した。手には木刀!

 

柳沢は疾走した。

木刀を握る手は、怒りで白く震えていた。

静かな学者の仮面は、もうどこにもなかった。

そこにいたのは、愛する弟子を奪われ、もう一人の弟子を目の前で獣に貪られようとしている、ただの男だった。

 

「貴様らああああッ!!」

 

獣のような咆哮と共に、柳沢は祭壇へと躍り込んだ。

視界に入ったのは、白装束を血と精液で汚し、美和の上で腰を振る竜司の背中。

狂気に震えるその背骨に向かって、柳沢は木刀を振り下ろした。

 

ドゴォッ!!

 

鈍く、重い音が夜空に響いた。

木刀は竜司の肩甲骨の間に叩き込み、その衝撃は骨を軋ませ、竜司の体を祭壇の上から弾き飛ばした。

「がはっ……!」

竜司は苦悶の声を上げ、泥と苔にまみれた地面を転がる。

美和から引き剥がされた彼の下半身は、まだ勃起したまま無様に露わだった。

 

「龍だと? 巫女だと?」

柳沢は倒れた竜司を見下ろし、血走った目で睨みつけた。

「貴様の母を壊したのは龍じゃない! 人間だ! そして今、お前も同じ人間だ!」

 

竜司は痙攣しながら、それでも虚ろな目で柳沢を見た。

「龍が……来る……」

「来ない!!」

柳沢は竜司の腹に蹴りを入れた。竜司は嘔吐し、体を丸めて動かなくなった。

 

だが、柳沢の怒りは収まらなかった。

かえす刀。木刀を逆手に持ち直し、今度は未だ狂気に浮かれている男たちに向き直る。

彼らは、竜司が弾き飛ばされた様子に一瞬呆然としていたが、まだその手は美和の体を掴んでいた。

 

「離せ! その手を離せ!」

美和は泣き叫んでいた。衣は完全に引き裂かれ、白い肌には赤い手形と青あざがくっきりと残されている。

その惨状が、柳沢の理性のタガを最後まで砕いた。

 

「貴様ら、全員が鬼だ!!」

 

柳沢は男たちの群れに突っ込んだ。

木刀が唸りを上げて空を切り、肉を打つ。

一人の男の腕に叩きつけると、骨が折れる音がして、男が悲鳴を上げて転がった。

「ぎゃあああ!」

もう一人の男の横腹に蹴りを入れる。男は息を詰まらせてうずくまる。

柳沢は容赦しなかった。村の青年団たちが、今はただの獣に見えた。

 

「儀式だと? 民族学を舐めるなよ!」

木刀で男の顔面を薙ぎ払う。鼻が潰れ、血が飛び散る。

「人間を犯すための言い訳に、神の名を借りるな!!」

めった打ちだった。

柳沢は、怒りに任せて木刀を振り回した。

男たちが逃げ惑う中、柳沢は狂ったように彼らを追いかけ、打ち据えた。

ある者は足を折られ、ある者は背中を打たれ、ある者は顔を砕かれた。

祭壇の周りは、男たちの悲鳴と呻き声で満たされた。

「やめ……やめてくれ……!」

「勘違いだ……龍に……龍に憑かれたんだ……!」

男たちは命乞いをしたが、柳沢の目は笑っていた。

 

「龍に憑かれた? いいや、違うな」

柳沢は這って逃げようとする男の背中に、容赦なく木刀を振り下ろした。

「貴様らは最初から、龍になりたかったんだ! 弱者を犯し、暴力を振るう権利が欲しかっただけだ!」

ドスッ!

最後の一撃が、男の背中に決まった。男は動かなくなった。

静寂が戻った。

祭壇の周りには、呻く男たちと、立ち尽くす柳沢だけが残された。

柳沢は肩で息をしていた。木刀は血と油で濡れ、今にも折れそうだった。

彼の目から、怒りの炎は消えていなかった。

だが、そこには新たな感情が混じり始めていた。

虚無感だった。

彼は壊れた木刀を投げ捨て、祭壇の上に横たわる美和の元へと歩み寄った。

美和は、砕かれた人形のように動かなかった。

引き裂かれた衣の下、白い肌は赤く腫れ上がり、太ももには血と精液が混じり合ってこびりついていた。

目は虚空を見つめたまま、焦点が合っていない。

 

「美和……」

柳沢は震える手で、美和の乱れた髪を撫でた。

触れられた瞬間、美和の体がビクッと跳ねた。

「やめ……やめて……龍…こないで……」

掠れた声で、美和は繰り返す。

柳沢の心が、引き裂かれるように痛んだ。

 

「美和、私だ。柳沢だ」

彼は優しく声をかけ、自分の上着を脱いで美和の裸体にかけた。

「もう龍は来ない。誰も来ない」

美和の瞳に、かすかに光が戻る。

「……先生……?」

「ああ、そうだ。私だ」

柳沢は美和を抱き上げた。軽すぎる体。あまりにも冷たい体温。

 

「許してくれ、美和」

柳沢は泣いていた。

「私のせいだ。私の浅はかさが、お前を……」

美和は、柳沢の胸に顔を埋め、子供のように泣き出した。

「怖かった……先生……怖かった……」

その言葉が、柳沢の胸に深く突き刺さる。

 

柳沢は、気絶した竜司と、呻く男たちを一瞥した。

かつて彼は言った。

『伝承が人を殺すことはありません。人を殺すのは、いつだって人間です』

そして今、彼はその言葉の重さを、身をもって知った。

伝承は人を殺さない。だが、伝承を信じる人間は、人を殺す。

そして、伝承を利用しようとする人間も、また人を殺す。

 

柳沢は美和を抱きしめ、山を降りた。

背後には、十三夜の月が冷たく輝いていた。

龍は嫁を迎えなかった。

だが、この山には永遠に、十三人の龍の亡霊が彷徨うことだろう。

そして柳沢自身もまた、この夜の罪を背負って生きていくことになる。

民俗学者としての彼は、今夜死んだ。

残されたのは、ただの傷だらけの男だった。

エピローグ

山を降りて数日後。

柳沢は美和と美奈子を連れ、広島の奥まった温泉宿にやって来た。

被害者の保護と、捜査協力への警察の要請は一通り終えていた。

精神的なダメージは計り知れないが、二人は生きていた。

だが、その瞳の奥にはまだ、あの山小屋と祭壇の闇が沈んでいた。

 

宿は静かだった。

木造の古い建物、庭に流れる水の音、そして何より、硫黄の香りが混じる白い湯気。

そのすべてが、戸神村の冷たい夜気と血の匂いを洗い流そうとしているかのようだった。

 

「さあ、湯に入ってきなさい。疲れを取るんだ」

 

柳沢は二人を貸切の露天風呂へと促した。

夜風は少し冷たかったが、湯の熱さが骨まで染み渡る。

三人は湯に肩まで浸かり、星空を見上げた。

しばらくの間、誰も言葉を発しなかった。

水音だけが、たっぷりと時間を埋めていく。

 

やがて、柳沢が静かに口を開いた。

「美和、美奈子。本当にすまなかった」

その声は、低く、震えていた。

「私の軽率な判断が、お前たちをあんな目に遭わせた。民俗学者としての傲慢さが、お前たちを傷つけた」

柳沢は湯の中で深く頭を下げた。

「どんなに謝っても、許されないことは分かっている。だが、謝らせてほしい。お前たちの痛みを、私も背負って生きていく」

 

美和と美奈子は、黙ってその頭を見ていた。

湯気が、柳沢の顔を濡らしていた。それが涙なのか湯気の結露なのか、二人には分かった。

 

やがて、美和が小さな声で言った。

「先生、顔を上げてください」

柳沢が顔を上げると、美和の目には力が宿っていた。

「私たちは生きています。先生が助けてくれたから。そのことには感謝しています」

 

美奈子も頷いた。

「でも、先生」

彼女の声は、まだ少し掠れていた。

「私たちの体は、まだ覚えているんです。あの男たちの手の感触も、痛みも、そして……屈辱的な快楽も」

 

美奈子は自身の腕を抱きしめた。

「体に刻まれたあの記憶が、夜になるたびに蘇るんです。誰かに触れられるのが怖い。でも、同時に、あの時と同じような感覚を求めてしまう自分もいる。それが怖くてたまらない」

 

柳沢は唇を噛み締めた。

「それは、お前たちのせいじゃない。あの異常な状況下で、心と体が切り離されてしまった反応だ。時間はかかるが、必ず……」

 

「時間じゃ消せないんです」

美和が遮った。

「私たちは、上書きしたいんです」

 

柳沢は目を見開いた。

「上書き?」

 

美和は湯の中で柳沢の手を取った。

「あの男たちに刻まれた記憶を、別の記憶で上書きしたい。怖い記憶じゃなくて、温かい記憶で。屈辱の記憶じゃなくて、愛しい記憶で」

 

美奈子も柳沢のもう一方の手を握った。

「先生、お願いします。私たちと、セックスしてください」

その言葉に、柳沢の心臓が跳ねた。

「私たちの体に、先生の痕跡を刻んでください。あの男たちの痕跡を、先生のもので塗り替えてほしいんです」

 

柳沢は呆然とした。

「しかし、私は教師だ。お前たちの恩師だ。そんなことをすれば、私は……」

 

「先生」

美和が柳沢の頬に手を添えた。

「私たちは、もう学生じゃないんですか? ただの傷ついた女じゃないんですか? 先生に救われた、ただの女なんですか?」

 

美奈子も顔を寄せた。

「お願いです。先生でなければ、駄目なんです。先生の温かさで、私たちを包んでほしい」

 

二人の瞳が、湯気の向こうから柳沢を真っ直ぐに見つめていた。

そこには、狂気はなかった。ただ、純粋な救済への渇望があった。

傷ついた魂が、別の魂にすがりつき、互いの傷口を舐め合うような、切実な願い。

 

柳沢は目を伏せ、そしてゆっくりと顔を上げた。

「……分かった」

彼は覚悟を決めたように言った。

「私の全てで、お前たちを受け止めよう。お前たちの痛みも、恐怖も、快楽も、全部私が背負う」

 

彼は美和の顔に手を添え、その唇に自分の唇を重ねた。

優しく、確かめるようなキス。

次いで、美奈子の唇にも。

それは、教師としての別れであり、男としての出会いの挨拶だった。

 

三人は湯から上がり、客室へと移動した。

布団が敷かれた和室。

明かりは弱く、穏やかな時間だけが流れていた。

 

柳沢はまず、美和の浴衣の帯を解いた。

白い肌が露わになる。そこには、あの夜の青あざがまだ残っていた。

柳沢はそのあざに唇を寄せ、優しく吸い付いた。

「んっ……」

美和が小さく声を上げる。

痛みではなく、安堵の声。

 

「ここに、私の痕を残そう」

柳沢は囁きながら、あざの上に舌を這わせた。

そして、美和の乳首に口を含み、優しく転がした。

「ああっ、先生……」

美和の体が震える。それは恐怖の震えではなく、喜びの震えだった。

 

次に、美奈子の浴衣を脱がせた。

彼女の体にも、竜司に刻まれた爪の跡が残っていた。

柳沢はその一つ一つにキスをした。

「お前はもう、龍のものじゃない。私のものだ」

そう囁くと、美奈子の目から涙がこぼれた。

「先生……先生……」

彼女は柳沢の首に腕を巻き付け、彼に身を委ねた。

 

柳沢は二人を抱き寄せ、その体を隅々まで愛撫した。

指先で、唇で、舌で、彼女たちの体をなぞる。

それは、地図を描くような行為だった。

二人の体に刻まれた「恐怖の地図」を、「愛の地図」で上書きしていく。

 

やがて、柳沢自身も裸になった。

彼の体には、あの夜の木刀のあざが残っていた。

美和と美奈子は、そのあざに唇を寄せた。

「先生も、痛かったんですね」

「私たちも、先生の痛みを上書きします」

二人は競うように柳沢の体を愛撫した。

 

三人の体が重なり合う。

汗と、涙と、愛液が混じり合う。

柳沢はまず、美和の中に入った。

「あっ……!」

美和の体が強張った。男が入ってくる感覚に、無意識にあの夜の恐怖が蘇ったのだ。

「大丈夫だ、美和。私だ。柳沢だ」

柳沢は動かず、ただ優しく美和の髪を撫でた。

「怖い時は、いつでも私の名前を呼んでいい。私が必ず答える」

 

美和は深呼吸をした。

そして、柳沢の目を見つめた。

「……動いても、いいですか?」

「ああ」

 

柳沢がゆっくりと腰を動かし始めると、美和の表情が変わっていった。

苦痛が薄れ、次第に紅潮していく。

「先生……先生……気持ちいいです……」

「私もだ、美和。お前の中は、こんなにも温かいんだな」

 

次に、美奈子の中に入った。

彼女の中は、まだ竜司の暴行の記憶で萎縮していたが、柳沢の優しい愛撫と言葉で、次第に潤いを取り戻していった。

「ああっ、先生……私の中に……先生がいる……」

「そうだ、美奈子。私がいる。そして、お前もここにいる。もう、どこにも行かせない」

 

柳沢は二人と向き合い、交互に彼女たちを抱いた。

ある時は美和を抱きながら美奈子の胸を愛撫し、ある時は美奈子を抱きながら美和にキスをした。

三人の息遣いが、部屋の空気を満たしていく。

 

「龍が……来ない……」

美和が恍惚とした表情で囁いた。

「龍は来ない。ここには、私しかいない」

柳沢が答える。

 

「もう……怖くない……」

美奈子が涙ながらに微笑んだ。

「そうだ。私がお前たちを守る」

 

そして、三人は果てた。

柳沢は二人の中に精を注ぎ込んだ。

それは、龍の種ではなく、人間の、男の、愛する者への証だった。

 

事後、三人は一つの布団にくるまり、互いの体温を分かち合った。

「ありがとう、先生」

「私も、ありがとう」

二人の声は、穏やかだった。

柳沢は二人の髪を撫でながら、静かに目を閉じた。

 

この行為が、過去を消し去ることはできないかもしれない。

だが、過去に塗られた黒い絵の具の上に、新しい色を塗ることはできる。

それが、上書きという救済だ。

そして、その色は、彼らが生きていくための、新しい血の色になるだろう。

 

「おやすみ、美和、美奈子」

「おやすみなさい、先生」

 

戸神村の呪縛は、解かれた。

龍は去った。

残されたのは、傷を舐め合い、生きていくことを選んだ、三人の人間だった。

 

窓の外では、明け方の光が、湯気を白く染めていた。

 

(了)

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