テストの結果が発表されたので一之瀬潰しを実行することにした。
一之瀬が万引きや援助交際、薬物使用に手を染めたという噂をAクラスの人たちを使って流していく。
万引き以外は手を出してないと思うけど、こっちの方が噂が広まりやすいと思ったからだ。
思っていた通り、一年の間でその噂は一気に広がり、皆その噂について話している。
そして一之瀬にはある手紙を出しておいた。
『一之瀬帆波は犯罪者だ』
手書きだと筆跡でバレる可能性があるからもちろんパソコンを使い、プリントアウトした手紙だ。
かなり噂が広がっているので、学校や生徒会なとが動くことは予想できるが、俺は生徒会の副会長である
ただ、現生徒会長である
でも、話した限り、副会長は会長に敵対心を持っているようなので、何としてでも止めにかかるだろうことは予想できる。
実際にかなり噂が広がっているにも関わらず、学校や生徒会が動く気配はなく、きちんと約束は守ってくれているみたいだ。
ちなみに副会長と密会した時に生徒会に勧誘されたが、きちんと断りを入れておいた。
「さて、一之瀬はどう動くかな」
ほとんどの人は一之瀬がそんなことをしていないと思いながら噂を流しているだろうが、本人はそう思っていない。
一之瀬の性格からして実際にしていなかったら、堂々と振る舞うだろうが、今の彼女は消極的になっている。
だから万引きしたのは確定だな。
「坂柳はいるか?」
Bクラスの何人かの生徒がAクラスまで来た。
この中には勉強会に参加していた神崎や白波がいる。
思っていた通り一之瀬はいない。
一之瀬のためにクラスメイトが動いたということは、相当信頼されているんだな。
「私ならここにいますが、何かご用ですか?」
Bクラスの人たちが有栖の側に来る。
きっと一之瀬の噂について聞きにきたのだろう。
神崎は頭が切れるから有栖がその噂を流したと思っているはずだ。
「坂柳が噂を流したというのは本当か?」
表情こそいつもの冷静な神崎だが、その気迫は中々のものだ。
「噂ですか? ああ、一之瀬さんが色々と悪さをしたというやつですね。だとしたら事実無根ですね。そんな噂を流すほど、私は暇じゃありませんよ」
「とぼけるだけ時間の無駄だ。この場ではっきりさせておきたい。お前たちがやっていることは悪質すぎる」
「そんなことを言われても私にはどうしようもありませんよ。それとも私が噂を流したという証拠があるのですか?」
「それは……」
証拠はない。
一之瀬本人には手紙を出したが、噂は人を伝って広まった噂だ。
そんな状態で証拠を掴むことなんて難しい。
ここまで広まったのなら名誉毀損になるが、ここが閉鎖的な空間で俺たちがまだ未成年であること、全世界に配信されるインターネットに書き込んでいないこと。
確実な証拠がない限り、俺たちを罪に問うことは到底できない。
「この噂について一之瀬はなんて何か言っていたか?」
あんまり有栖につっかかってこられても嫌なので、俺が横槍を入れる。
「水無月か。一之瀬は噂などに惑わされず気にしないでほしい。そう答えた」
「つまりは肯定も否定もしなかったってことか」
「そうだ。だから信じることにした」
まだ知り合って二ヶ月もたっていないのに、凄い信頼しているんだな。
「そもそも火のない所には煙は立たないって言うよ。本当に単なる噂なのかな?」
少し神崎を煽ってみる。
「噂は火がなくても煙を立てることができる。人間に悪意さえあれば」
「なるほど。確かに火と噂は別物だ」
確かにこの噂は悪意があったからこそ広まった。
まあ、その悪意が目の前にいるわけだが、神崎は有栖が流した噂だと思っている。
「でも、証拠がないならこれ以上有栖を責めるのは止めてもらいたいね」
「それはこっちだって同じだ。一之瀬のありもしない噂を流されて嬉しいわけがない」
一之瀬はBクラスのリーダーだ。
もし彼女が抜けてしまったら、今のBクラスはAクラスに上がるのは難しくなる。
そもそも一之瀬はリーダーというよりリーダーを支える補佐の方が向いているように思える。
そんな一之瀬がリーダーになっているのだから、もし抜けてしまってはCクラスに抜かれて降格するだろう。
「そう思うのであれば一之瀬本人も連れてきたらどうだ? 事実だからこの場にいないんじゃないか?」
「一之瀬は風邪で休んでいる」
風邪か……これは一之瀬と2人きりで話すチャンスだ。
外だと2人きりになれることは難しいからな。
「俺たちはもう帰るよ。噂に付き合うほど、暇じゃないんでね」
「ま、待て……」
「遼くんの言う通りですね。お互いにこうでは話す意味がありません」
俺は有栖を連れて教室を出た。
☆
俺たちはけやきモールまで来ていた。
「一之瀬さんに接触すると思っていたのですが、しないのですか?」
「するよ。その前にすることがあるから」
「すること……ですか?」
俺はけやきモールにある店に入ってからある物を買った。
それを有栖にプレゼントする。
「俺が有栖を一番って思っている証拠」
俺は買った物を袋から取り出してから有栖の左の薬指につける。
「お揃いだよ」
俺が買ったのはペアリングだ。
チョーカーは桔梗にもつけているし、有栖は俺の彼女ってことにしているから、これで差別化した。
「嬉しいです」
よっぽど嬉しくなったのか、外なのに俺に抱きついてきた。