四月二四日
放課後
第三アリーナ・Bビットカタパルトデッキ
入学式から一週間経った今日、遂に一夏とオルコットの一戦の日となった。しかし、この一週間は一夏も
寄ってきた理由は当然、約三週間前の台場、対デス・スティンガー戦についての事。
あのサソリ型兵器は何なんですか?
あの時の蒼い翼の生えた騎士みたいのはISなのですか?
お台場の被害について抗議の声があがっていますがその事についてコメントを!
等々だ。で、取材班や記者には、それらの返答が欲しければ、それ相当のギャラ、もとい法外な額を請求し、無理なら来るなと追い討ちをかけて突っぱねた。
警察庁大臣代理人に対しては、大臣が直に来い、そして出来ないなら来るなと話を聞く前に追い返す。
防衛省の大臣代理人、化学科と中央即応連隊の連隊長格は、俺をモルモット扱いする気満々だったので、物理的に追い返した。
とまあ、ちとやってはいけない事もやった感が否めないが、こうしないと追い返せないと、ゼロ・システムの判断に従った。
世の中、だめなことをだめと認識できない奴がいるのは悲しいもんだ。
さて、脱線はここまでにして、現在放課後の三時半……なのだが、一向に白式が到着しない。
「なあ?我瑠騨、箒」
「ん?」
「何だ?」
「ISの事、何も教えてもらってないんだけど…ずっと剣道ばかりで」
「だろうな」
敢えて受け流す俺。
「だろうなって…」
「一夏、言っとくがISはラジコンやゲームみたく甘くない。使い方ひとつで相手の命をも絶ちかねない。いわば、銃や刃物と言った兵器や凶器と同じものだ。そして、嫌でもお前はその危険を手にする。その上で、基礎体力が高くなければ、危険に対する理解と意識ができず、自らの命をも落としかねない。……死んだら、何も出来ないし、お前の“守りたい”って気持ちも無に期す」
「うっ…」
痛いところを突かれたかの様に苦い顔をする一夏。しかし、俺は“死を経験した”身なので、それだけはしっかり意識させておきたかった。
「にしても、我瑠騨って何か…発する言葉に重みを感じるんだよな、一歳違いなのに」
「確かに、そこは私も同感だ。まるで見てきたかの様な口振りだしな」
「いや、見てきたんじゃない。その身をもって味わい、そして一度死んだ身だ」
「「!?」」
あ、さらっと言っちまった。
「おい、それは―――」
『お、織斑君、織斑君、織斑君!』
箒が問い掛けようとしたところを、妙に興奮気味の真弥が一夏を三度呼んだ。
『来ましたよ!織斑君の専用機が!』
そう言うと、カタパルトの真後ろに位置する大型ゲートが開き、一機のISが姿を表した。
『これが、織斑君の専用IS、“白式”です!!』
そう、そこにいたのは、一夏の
『織斑、時間が無いので
そう織斑先生に言われ、一夏は白式に近づき、機体に触れる。
「………あれ?」
「どうした?」
機体に触れていた一夏が何かに気付いたかの様な反応を見せたためか、箒が質問する。
「いや、初めてISに触れた時と何か違うんだ。けど…」
「けど?」
俺は一夏に話の続きを促す。
「なんとなく分かるんだ。こいつが何なのか、何のためにあるのか」
「そうか」
恐らく、白式から一夏に対して“挨拶”でもしたんだろう。
「それよりも、早く搭乗しろ。背中を預ける様にするんだ」
「おう」
少々ぎこちない動作ではあったが、なんとか白式に乗った一夏。
『SETTING』
無機質な音声が聞こえた。すると山田先生が
『織斑君、今回の対戦相手であるオルコットさんのISは“ブルー・ティアーズ”と言います。イギリス製の第三世代機です』
「加えて言うなれば、奴の機体は射撃特化機体だ。気ぃ抜いてると、あっという間に蜂の巣だからな」
「分かった。それじゃ我瑠騨、箒、行ってくる」
「ああ、頑張れよ」
「勝って来い。一夏」
「おう」
そう言って一夏は、カタパルトの射出機まで前進して足を固定した。
「織斑一夏、白式、行きます!!」
その掛け声を合図に、一夏は空に上がった。
第三アリーナ・上空
「よく逃げませんでしたわね。わざわざ無様な姿を晒しに来るなんて」
「逃げるわけ無いだろ。男に二言は無い、何より、今日までこの日の為に練習に付き合ってくれた箒に失礼だからな」
専用機として託されたIS、白式を身に纏って空に上がった
「最後のチャンスをあげますわ」
「チャンスって?」
「この私、セシリア・オルコットが有終の美を飾るのは目に見えていますわ。今泣いて謝れば、許して差し上げないことも無くてよ」
やっぱり、我瑠騨の言う通りだな。
「そう言うのは、チャンスとは言わない。無条件降伏って言うんだ。それに、いちいち女に下げる頭も無ぇよ」
「あら、残念ですわね」
『敵IS、火器の安全装置の解除を確認』
白式から警告が表示された。
「ならこれで、お別れですわ!!」
ガチャ
そう言って、右手に持っていた大型のライフルをこちらに向け、
ギュイィン
放たれた一閃の青い光の筋が左肩の装甲を砕いた。
「ぐっ!装甲が!」
ギュイィン ギュイィン
立て続けに放たれる光の槍を必死に回避する。
「くそっ、俺が白式の反応に追い付けていない!?」
「ふふふ、さあ、踊りなさい。私、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる
そう言うと、背中に浮いていた四つの羽根の様なものの先端が外れ、
キュウン キュウン
その外れた先端がこちらに近づきながら青いビームが放たれる。
「くそっ、何か武器は…」
第三アリーナ・モニター室
「あ、織斑君が近接格闘ブレードを出しましたね」
「みてぇだな」
モニタリングをしていた真耶がそう言ったので、取り敢えず返事をした。無視するのは、失礼だからな。モニターを見てみると、ブルー・ティアーズを二基破壊していた。
「あの馬鹿者、浮かれているな」
「え?どうしてわかるんですか?」
真耶が千冬の言葉に反応した。
「あいつの左手を見ろ。さっきから開いたり閉じたりしているだろう?あの癖が出ると大概初歩的なミスをする」
「は〜、やっぱりご姉弟なんですね」
「まあ、一応は私の弟だからな」
「あぁ、照れてるんですか?」
この言葉の直後に真耶は千冬のヘッドロックを喰らい、もがき苦しんだ。
「あっ!!」
突然箒が叫んだ。モニターに視線を戻すと、オルコットのISのサイドスカートアーマーのミサイル発射筒型ブルー・ティアーズから放たれたミサイルの爆炎に一夏が呑まれた。箒と真耶が動揺していたが、俺と千冬は至って平常。
「ふんっ、機体に救われたな。馬鹿者」
空の黒煙が晴れて、中から
「一体、何があったのだ……?」
理解に至っていない箒に、何があったのかを教えた。
「つまり、ISが一夏の事を理解しようとして姿を変えたと言うことなのか?」
「まあ、そう言ったところだな」
一通り説明をして、モニターに視線を戻した。オルコットのミサイルの嵐を掻い潜り、一気に懐に―――。
ヴーーーーーッ
『勝者、セシリア・オルコット。』
あっ、終っちった。
このあと、一夏が千冬と箒に言葉でメッタ潰しに遭ったのは言うまでもない。