※この作品はR-18です。

インフィニット・ストラトス ~目覚める翼~   作:コンコルド

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にじファンの頃よりご愛読頂いている方へ。

今回は、物語に一部改変点があります。

ご了承ください。


破壊と絶望 ~舞い降りる黒き波動~

 5月1日

 

 一夏とオルコットの試合から一週間。遂に俺(高嶺我瑠騨)は、オルコットとの戦う日を迎えた。……しかし、世の中はそこまで甘くなかった。

 

 〜一学年学生寮・1204室〜

 

 朝方06:30、いつも通り目を覚まし、顔を洗い、テレビを音を下げて見ていた。生放送ニューストーク番組では、相変わらず一夏と俺の話題が多い。……と言っても、俺の評判の悪さが一番多く挙げられた。まあ、一夏の気休めになれば良いかと思いながら見ていたら、何やらスタジオが騒がしくなってきたのか、テレビに映っている人物達以外の声が飛び交っていた。すると、番組の司会者の女性に何やら書類が渡された。

 

 そして。

 

「えぇ、番組の途中ですが、たった今入った緊急速報です!現在、ヨーロッパ、ドイツの首都ベルリンにおいて、謎の超巨大兵器によって襲撃を受けているとの事です!」

 

 ドイツの首都ベルリンに超巨大兵器?……まさか!?

 

「たった今、現地との中継が繋がりました!池田さん。現在、そちらはどうなっていますか?」

 

 すると、映像が切り替わり、眼鏡をかけた天パ気味の髪にひげ。つか、まるっきしガンダムOOの池田さんだ。

 

「はい、こちら池田です。現在私達は、地元警察、並びに軍隊による避難指示を受けて、被害地域より約500メートルほど離れた地域で現在も避難誘導に従いながら、移動中です。ベルリンは謎の超巨大兵器による襲撃を受けて、街は壊滅的な状態となっています。」

 

 そう言って、カメラを被害地域に向けた。してそこには、案の定のシルエットが。

 

「また、この超巨大兵器は大きな円盤に鳥のような逆関節の脚が生えているような形をしています。」

 

 デストロイガンダム

 

 ドンドンドン

 

「高嶺君、起きてますか!?高嶺君!?」

 

 真耶か!?随分血相欠いた声だ。恐らくニュースを見たんだろ。すぐに扉を開ける。

 

「落ち着け!今やってるニュースだろ?」

 

「はい、そうです!」

 

「なら話が早い。俺はベルリンに向かう。これ以上被害を被る訳にはいかない!!今日の授業、全部サボり扱いでいいので」

 

 すると、真耶が潤んだ震え声で。

 

「でも……どうしても、どうしても高嶺君じゃなくてはいけないんですか!?今回のは、お台場のと比べ物にならないくらい規模が大きいんですよ!?私は…先生として心配だけでなく、個人としても…、すごく…心配なんですよ!!」

 

 余りの事態の重さに動揺して、今回に関しては、泣き出してしまった。

 

「どうしたんだ我瑠騨?」

 

「一体何があったと言うのだ?」

 

 そう言って隣の1205室から一夏と箒が出てきた。他、周りの部屋からも続々と湧いて出てきた。

 

「何々?何があったの?」

 

「あーーー!!高嶺君が山田先生泣かしてる!!」

 

「うわぁ、前のオルコットさんや篠ノ之さんといい、結構酷いね」

 

 また勝手な事を…。

 

「どうかなさいましたの?」

 

 おっと、オルコットまで来ちまったか。面倒だな。

 

「ああ、セシリアか、いや、何でこうなっているのか正直分からないんだ」

 

「そうですの。しかし、殿方がレディ涙を流させるのは、さすがにいかがなものかと」

 

 …?以前より少し物腰が柔らかくなったな…あ、一夏とバトったからか。

 

「何を騒いでいる!!」

 

 まるで何かの中ボスキャラみたいな形相の千冬の一喝で、あたり一面静まり返った。

 

「千冬!」

 

「織斑先生だ……っと言っている暇は無いようだな」

 

「悪いがその通りだ。今日はサボり判定で構わない」

 

「無論、そのつもりだ」

 

「そうか。…あ、鷹月、真耶…じゃねぇや、山田先生をちょっと頼んでいいか?」

 

「え?あ、はい、分かりました」

 

 そう言って、近くにいたクラスの良心こと鷹月に真耶を預けた。

 

「それじゃ、行ってくる」

 

「おう、お前には不要かも知れないが、気を付けろよ」

 

「あいにく、その言葉はかなり大事だ」

 

 そして一夏の方に向き直り。

 

「一夏、突然の事態だが、これから俺がやるのは、お前の誰かを守るってものだ。帰ってきたら戦闘記録(コンバット・ログ)を見せてやる。だから今回はまず学業に励め。いいな?」

 

「え?お、おう」

 

「それと、オルコット。お前には悪いが、今日の試合は無しだ。その時間までに帰って来れるようなら、試合はやるがな」

 

「えっ、はい、分かりました」

 

 二人揃ってワケわからんって顔してんな。そんな二人を後目に、俺は自室のベランダから飛び出した。

 

「サイファー!!」

 

空中でのIS着装して、試作のフォールドシステムを使い、現地へと赴いた。

 

 

 

 

 

「何て力だ!?まるで怪物だ!!」

 

 不意に|私(クラリッサ・ハルフォーフ)はそう呟いてしまった。有り得ないほどの巨体に加え、円盤上部の上下2連の高出力ビーム砲2門に多連装ミサイルポッド2基、前頭部には高出力エネルギーシールド、円盤部の縁からは、全方位に放てるビーム砲。そして、円盤下部、左右に付いている、大型ビット兵器。これを化け物以外になんと言えたものか。くそっ!!ラウラ隊長の機体のメンテナンスが早くに終わっていたら、コンビネーションで牽制出来たはずなのに…。

 

「隊長!現在、私だけでは、あのデカブツを足止めどころか、牽制すら出来ません。出せる応援部隊はありませんか!?」

 

『落ち着け、クラリッサ。今周辺国のIS部隊がそちらに向かっている。あと三分持ち堪えろ』

 

「了解」

 

 しかし、内心物凄く不安だった、陸軍戦車部隊は3大隊が、空軍航空機部隊は5中隊が壊滅。

 

IS部隊は、壊滅した部隊の負傷者を含む生き残りと民間人の双方の避難、護衛の為に戦闘に参加できず、今戦えるのは私だけ。しかし、ドイツ軍IS部隊、シュヴァルツェア・ハーゼ副隊長であり、そして、隊長のIS用のレールカノンを預かっている今、ここで引くわけにはいかない!!

 

「こぉのおおぉぉぉ!!」

 

 ドゴォンッ ドゴォンッ ドゴォンッ

 

 とにかく注意をこちらにそらさせなければ!

 

 バシュイイィィン

 

 ドガアァン ドガアァン ドガアァン

 

 アーマー形態のデストロイの額部からビームシールドが展開され、クラリッサの放ったレールカノンの砲弾はことごとく遮られる。

 

「ぐっ!やはりあのシールドでどんな攻撃も遮られてしまう。」

 

 今放ったレールカノンもそうだが、したから戦車部隊が砲撃して、装甲に着弾しても、

多少傷が付く程度で、ダメージにはなっていない。

 

 ビビビビビビビ

 

『警告。ミサイルにロックされました。』

 

「!」

 

 ドドドドドドッ

 

 警告の直後、円盤上部の多連装ミサイルポッドから10発ほどミサイルが放たれた。

 

「くっ、この程度で墜ちてなるものか!」

 

 直撃を避けるべく|AIC(アクティブイナーシャルキャンセラー)を発動するが、それが間違いだとすぐに気づいた。

 

 ドガガガガガァァン

 

「ぐはぁっ!!」

 

 近接信管か…!

 

 爆発の影響で、頭を大きく揺すられ、意識が飛びそうになる。

 

そして、バランス感覚を失った私は、そのまま落下、地面に激突し、私の愛機“シュヴァルツェア・ツヴァイク”はその衝撃を緩和するために残りのシールドエネルギーを消耗し、光の粒子となり消え、私は、無防備になった。しかも、頭がくらつき、また、全身打ち身のような痛みに悲鳴をあげていた。

 

「うっ…ぐっ……ケホッ、ゲホッ、ゴホッ…っ」

 

 臓器にも負担が掛かったのか、咳と共に血が少し出た。

 

「オギャー!オギャー!」

 

 赤ん坊の泣き声!!ふと辺りを見回すと、近くの瓦礫の側に赤ん坊、瓦礫に下半身が埋まって身動きが取れず、頭から血を流しながらも、必死で赤ん坊に手を伸ばす母親と思われる女性がいた。

 

 ゴゴゴゴゴッ

 

 私に止めを刺すためか、はたまた赤ん坊の泣き声に反応したのか、黒い巨体はその大きな身を翻し、円盤上部の上下二連ビーム砲をこちらに向けた。

 

 まずい!!

 

 そう思い、悲鳴を上げる体を無理矢理動かして、赤ん坊とその母親の元へと駆け寄り、赤ん坊は母親の元へと近付け、私は瓦礫を必死で取り除こうとした。何故こうしたのか、自分自身分からない。

 

 ギュルルルルルルル

 

 砲口に光が集まりだした。急がねば、でなければ罪の無い人間を、ましてや、生まれて間もない赤ん坊の命を奪われてしまう。それだけは阻止しなくては!!

 

 ゾクリッ

 

 物凄く全身が凍えるような、そんな悪寒がした。

 

 ふと、振り返った。

 

 ヤツの砲口の光が一瞬、より強く光輝いた。

 

 この瞬間、私は生まれて初めて“絶望”を知った。

 

 撃たれる。

 

 そう察した私は、咄嗟に親子をかばうように伏せた。

 

 そして……。

 

 

 

 ガッキィィン

 

 ドガガァァァン

 

 何か金属製のものがぶつかり合ったかのような音と、直後の爆発音。恐る恐る振り返って見ると、ヤツのビーム砲が二門共黒煙を上げていた。

 

 ビュン ビュン

 

 ドガアァン ドガアァン

 

 突然、風切りの音が聞こえたかと思えば、黄色い閃光が二つ、デカブツの円盤上部の多連装ミサイルポッドに直撃、爆発した。

 

「一体……何が…?」

 

 私は、黄色い閃光が飛んできた方向を見ると、その空にやつほどではない“黒い巨人”がいた。

 

 

 

 

 

「ふぅ、何とか間に合ったな。」

 

 到着時に、目の前で奪われそうになった命を守れた俺(高嶺我瑠騨)は、少しだけ安堵の溜め息をもらした。フォールド中に、デストロイガンダムとの戦闘に備え、専用IS“サイファー”を解除し、モビルスーツ“ストライクノワールガンダム”を展開していた。

 

 いや、“変身した”と言うべきか。

 

 俺のいまの体はU細胞(アルティメットセル)によってなんにでも成れるしなんにでも造れる。

 

 んで、手始めにストライクノワールに成ってみた。

 

俺は高度を下げながら変身を解きつつ着地、ISスーツを着てる女性の元に駆け寄った。

 

「大丈夫か?そこのISパイロット」

 

 よく見ると、そのISパイロットは、黒ウサギ部隊こと“シュヴァルツェア・ハーゼ”副隊長のクラリッサ・ハルフォーフ大尉だった。

 

「あ、あ…う、ぐっ…」

 

 今まで感じた事の無い恐怖に晒されたのか、いまいち発言が曖昧だ。それを示すかのように、彼女の座り込んでいる所だけに水溜まりが出来ていた。さすがの彼女も死の恐怖を感じたのか。しかも、すぐ脇には、体の下半身が瓦礫に埋まって身動きの取れない女性とその腕には、まだ一ヶ月程しか経っていない赤ん坊が抱かれていた。成る程な。大方、ISがエネルギー切らして、それでもこの親子を救おうとしていた訳だ。

 

 自らを犠牲にしてでも。

 

俺は彼女の前にかがみ、手を彼女の肩に乗せた。

 

「よく頑張ったな、偉いぞ」

 

「えっ、…いや、私は、何も出来ていない。私一人では、何も…」

 

 ネガティブだなぁ、まあ、しゃあねえか。とりあえず自己紹介で気を紛らわしてみよう。

 

「俺は我瑠騨、高嶺我瑠騨。お前は?」

 

「わ、私…は、ドイツ軍、IS、配備ぶ、部隊…シュヴァルツェア・ハーゼ…の、副、隊長…だ」

 

 まだ恐怖心が残っているようだ。

 

 グオオォォォォン

 

「「っ!?」」

 

 自己紹介が終わると共に、ひるんでいたデストロイガンダムが再び立ち上がり、アーマー形態からモビルスーツ形態に変形した。

 

「なっ!?まだ動くのか!?」

 

「ああ、俺が潰したのは、背中の武装だけだからな。でも、俺が何とかする。お前はその親子を安全な場所まで連れていけ。」

 

 そう言ってGN粒子を、ハルフォーフ大尉と親子に向かって放ち、母親をGNリペアで治癒しながら、瓦礫を粒子化しながら取り除いた。

 

「ついでに、お前のISのエネルギーも回復しておいたから、急いで避難しろ。良いな?」

 

「しかし、それでは…」

 

「大丈夫だ」

 

「……分かった。祖国の命運、託させてもらうぞ」

 

「おう」

 

 この世界で、こう言ったデカブツや化け物の相手をしなきゃならないのはすごく嫌だが、生き返り、力を得た俺の絶対不可避の運命(さだめ)なのかも知れない。だとしたら、俺は、それを乗り越える!乗り越えてみせる!!

 

「さて、やりますか」

 

 そう言って、ストライクノワールに再度変身、再び飛翔する。

 

 ゴゴゴゴゴッ

 

 バウウゥゥゥン

 

 モビルスーツ形態に変形したデストロイは、ストライクノワールで飛翔した俺を見るや、すぐにこちらに指先のビーム砲からビームを放つ。しかし、難なく回避出来た。

 

「ふっ、確かに、当たらなければどうって事はねぇな。」

 

 某赤い彗星の台詞を思い出していた。端から見れば何余裕こいてんだって言われてもおかしく無いが、これが、このふざけが俺の唯一の精神安定術。さすがの俺も、元が人間だから肉体的に強くても、精神的には、転生前の約1.5倍程しか強化されていないから、こうしなければやっていけないのだ。

 

 完全な人間なんかいない。

 

 例え神でさえも、完全な神はいない。

 

 バウウゥゥゥン バウウゥゥゥン

 

「ちっ!」

 

 遠慮無しの砲撃に回避をし続ける。まったく、よくもあんなにドンパチブッ放せるな。当たらないことに苛立ったのか、腕を本体から切り離して、ビット攻撃を仕掛けてきたが、逆に好都合。腕を破壊すれば、ガードが不可能になる上、残りの武装が、胴体のプラズマビーム砲“スーパースキュラ”と頭部の口にあたる部分の同じくプラズマビーム砲“ツォーンMK2”のみとなる。

 

 切り離されたそれぞれの腕が、左右前に位置しこちらを照準、発砲……。

 

 ズギュギュギュギュギュゥン

 ドシュゥンドシュゥンドシュゥンドシュゥン

 

 される前に、両腕を交差させて左右それぞれを狙い、合わせてノワールストライカーのレールガンもそれぞれを狙い、一斉射撃。

 

 ガキキキキキュンッ

 ガキィィンガキィィンガキィィンガキィィン

 

 ドガアアアアァァァン

 ドガアアアアァァァン

 

 左右のアームの破壊を確認、本体の破壊に移行する。

 

 ギュウウウゥゥゥゥ

 

 スーパースキュラとツォーンMK2のチャージを始める。

 

「だが、思い通りにはさせん!」

 

 射線をデストロイの斜め上に向けるように、高度を上げて出来るだけ射線角度を維持しながら突撃する。これ以上、ベルリンに、いや、ドイツに危害を加えさせたくない。

 

 バキュウウウウウゥゥゥゥ

 

 俺を狙い、斜め上にスーパースキュラとツォーンMK2を解き放つ。俺はそれを右に回避しながら、出来るだけ射線角度を変えないように近づく。五秒程で放射が終わり、俺は一気に近づく。途中、頭部側面の対空ミサイル迎撃用機関砲“イーゲルシュテルン”4門が火を吹くが、ヴァリアブルフェイズシフト装甲のこのノワールには、たいしてダメージにはならない。

 

「甘いっ!!」

 

 そう言いながら、ノワールストライカーに取り付けられている対艦刀“フラガラッハ3ビームブレイド”を引き抜き、本来搭載されていないISのシステム“瞬時加速(イグニッション・ブースト)”で距離を詰める。

 

「ぜらあああっ!!」

 

 ヂャアアアァァン

 ドガアアアアァァァン

 

 左回転しながら、左手のビームブレイドで遠心力任せに横一線斬り込み、スーパースキュラ3門を砕き。

 

「はあああああっ!!」

 

 ヂャキイイィィィン

 

 右のビームブレイドでコクピットを貫く。

 

「やはり、ゾイドコアを用いた無人機……か」

 

 そう呟きながら、ビームブレイドを納め、右手を向ける。そして。

 

「憑神覚醒(ひょうしんかくせい)!」

 

 そう口にすると、右手の平に、蒼い光によって魔法円陣の様なものが現れ、次第に円陣の周りに六枚のフィンと、円陣の前に砲身の様な筒状のものが構成されていき、円陣と砲身の間に同じく蒼い光の球体が出来上がる。そう、データドレインだ。

 

「悪しき闇よ、光に飲まれ、浄化されよ!」

 

 ギュウウゥゥゥン

 

 パアアアアァァァァ

 

 この言葉を引き金に、蒼い光の球体を放ち、デストロイに当てる。すると、デストロイは突如蒼く輝きだし、光の粒子となって砲身に集まってくる。無論先程破壊した両腕やその他の欠片も一つ残らず。

 

 数秒後、光の粒子となったデストロイを吸収を終えた。

 

「やはり、まだまだ非力だな…俺は…」

 

 デストロイガンダム襲撃により、ベルリンはその土地の半分を焦土、ないし瓦礫の山に変えた。その惨劇は…余りに見るに耐えないものだ。

 

 あるものは生半可に体を焼かれ

 

 あるものは瓦礫の下敷きに

 

 あるものは爆発に捲き込まれ、四肢が散り散りになった者など。

 

「…………。」

 

 変身を解き、ISスーツ姿のまま滞空している俺は、この惨劇に、自分の非力さに怒りを覚えた。血の焼ける匂い、飛び散った深紅、これが、俺の未熟さ、非力さを示している。

 

「こうなる前に、なぜ俺は動けないんだ…」

 

「しかし、君は私を助けてくれた」

 

「!」

 

 不意に声を掛けられて振り返ると、そこには、先程民間人と避難させたハルフォーフ大尉がいた。

 

「……さっきの親子は?」

 

「大丈夫、先程避難所に預けてきた。母子共に体調は良好との事だ」

 

「そうか…」

 

 その後、数十秒間沈黙が続いた。

 

「確か君は…タカミネガルダ、と名乗ったな?」

 

「ああ、だが、俺を名前で呼んで良いのは、俺が認めた相手だけだ。」

 

「そうか、では高嶺、早速だが私と来ては貰えないか?今回のこの惨事の整理には君に手伝って欲しい」

 

「と言う建前で、本音は俺を鹵獲、拘束して連れてこい。俺がいればISを凌ぐ兵器をつくれるはずだ。ってなことお上に言われてんだろ?」

 

「……」

 

 やっぱりな。まったく、んな暇あるならさっさと救助部隊でも派遣しろっつーの。

 

「……私としては、命の恩人を…売る気は無い。だが、上は余程の事でも無い限りは――――」

 

「大丈夫だ」

 

「…えっ?」

 

「俺、IS学園の学生だから」

 

「何っ!?」

 

 学生証を見せると、さすがにハルフォーフ大尉も驚いた。

 

「IS学園の学生は、基本的には、どこの干渉も受けない。今回の事に関しても、多少の情報提供以外は、干渉のその一切を拒める。故に、お前は恩人を売ることは無い」

 

「そうか…良かった」

 

 そう安堵したのか、溜め息を漏らした。

 

「ハルフォーフ大尉、こいつを持っていってくれ」

 

 そう言いながら、フラッシュメモリーを手渡した。

 

「これは?」

 

「今回の出来事をまとめたデータを入れてある。必要最低限のものだけな。悪用されたら堪ったもんじゃ無い」

 

「ふふっ、そうかもしれないな。ところで一つ聞いてもらいたい事がある」

 

「ん?何だ?」

 

「その、私の事は、これからはクラリッサと呼んではもらえないか?」

 

 その言葉を耳にして、ハルフォーフ大尉の頬が薄赤くなっていることに気づいた……まさか…。

 

「いきなりだな。どうしてだ?」

 

「いや、その…今回は色々世話になってしまったし祖国の危機も救ってくれた。それに…その……私の…恥も…無かった事にしてもらったのでな…」

 

 ?ああ、さっきの親子助けた時の彼女のへたり込んでいたとこの“水溜まり”の事か。てか、今度は羞恥の赤面か。

 

「気にすんな。誰だって慣れない恐怖を味わえばああなる」

 

「しかし、私はドイツ軍IS部隊シュヴァルツェア・ハーゼの副隊長なのだ。……あの恐怖に打ち勝てなかった自分が、ひどく惨めで…情けなかった…」

 

 うーん…これは困ったさんだな。

 

「なら、それで良いんじゃねえの」

 

「えっ?」

 

「それって、それだけプライドがあるって事だろ?なら、今回の経験を生かして、自分の二の舞を避けるべく上官に報告して、部下を教育すればいい」

 

「………。」

 

 ん?ハルフォーフ大尉、なぜに口ポカーン?

 

「…一つ聞いて良いか。」

 

「何だ?」

 

「君の年齢は?」

 

「16。で、それがどうかしたのか?」

 

「いや、口調がまるでいくつもの修羅場をくぐって来たかの用だったから」

 

「ああ、そうか。ちょっと失礼」

 

 そう言って彼女の額に右手の人指し指を当てて、彼女の脳に直接、俺にまつわるデータを与えた。勿論、彼女は驚愕した。

 

「そんな事があったとは…」

 

「取り敢えず、他言無用で頼むぞ」

 

「ああ、わかっ…分かりました」

 

「敬語はやめてくれ」

 

「……わ、分かった」

 

「おう、それじゃ、俺はそろそろIS学園に戻らないと。今課業中だからサボり扱いなんだ」

 

「ふふっ、それは大変だな」

 

「ああ、それじゃ…の前に」

 

「?」

 

「これからは、俺の事は我瑠騨と呼んでくれて構わない。それじゃまたな、クラリッサ」

 

「!」

 

 そう言って、俺はサイファーを展開して、空に上がり、フォールドでIS学園に帰投した。その時、クラリッサが名前を呼んでもらったと言う嬉しさに頬を赤らめたことには気づかずに。

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