5月1日
08:20
IS学園 1年1組教室
現在ショートホームルームの時間中。
「……とまあ、高嶺については以上。また山田先生は、今しばらく様子見で、体調が回復次第、職務に復帰する。以上だ。何か質も―――」
ウィイイイイィィン
「おくれました〜」
「えっ!?我瑠騨!?」
ッパアァン
脱力感濃厚な我瑠騨が現れて、不意に大声を上げて、千冬姉に叩かれた。出席簿の枠で。
「高嶺、事は片付いたのか?」
「まあ、デカブツは消しといたから、あとは向こうがどれだけ素早く救援活動出来るかによる」
「なるほど、とりあえず席につけ。あと、遅刻は撤回しないぞ」
「まあ、当たり前だな」
そう織斑先生と言葉を交わし、席についた。しかし、我瑠騨はどうみても体調が悪そうだ。
「大丈夫か?我瑠騨」
「うん?ああ、大丈夫だ」
「本当か?」
「ああ」
「ならいいけど。・・・・・・あんまり無理すんなよ」
ッパアァン
「人の心配をする余裕が有るならISの基礎知識くらいしっかり覚えてからにしろ」
「・・・・・・はい」
どうやら我瑠騨は本当に大丈夫そうだ。千冬姉が俺に出席簿アタックを食らわせるのだから。
その後、午前中の授業の二時限目は遠慮無しに我瑠騨は居眠りをしていた。が、千冬姉は何故か出席簿アタックを食らわせなかった。
「まったく・・・・・・」
この一言だけだったが、大して強くは言わなかった。
放課後
第3アリーナ・Bビットカタパルトデッキ
体のあちこちか疲れを訴えている。・・・・・・が、オルコットに背を向けるのは、あいつのプライドを汚す事になる。この前、学生寮の俺の使っている部屋のパソコンで『イギリス 越境鉄道 事故』と検索してみた所、ある記事にこう記されていた。
『この横転事故により、イギリス大手企業の名家、オルコット家の総取締役のアイシャ・オルコットとその夫のハリー・オルコットの二人も捲き込まれた』
よく考えて見れば、あの高飛車な態度は、オルコット家の後取りにして唯一の末裔。しかも両親の遺産を守る為に自分の自由を犠牲に頑張った努力家なのが故の事かもしれない。・・・・・・前世では、この世界はただの文字や絵の中の作り話に過ぎなかったが、今、俺の目の前の世界は、実在している世界。そしてあいつは“今この瞬間”を生きている一人の少女。そして、その命に身分も格差も無い。いや、あってはならない。・・・・・・今俺があいつに出来るのは、まず謝る事だ。彼女は、間違い無しに嫌味や妬みを味あわされていたはずだろうからな。
そう思い、打鉄は使わず、愛機サイファーを展開・着装し、カタパルトに足を固定した。
「高嶺我瑠騨、サイファー、出撃する!!」
掛け声が終わると同時に固定台が前進、俺はアリーナに放たれた。
第三アリーナ・Cビットカタパルトデッキ
あの方は、まだ日も浅い時間に、多くの人命を救うために迷わず飛び出した。それも、欧州の、私の祖国イギリスの近くのドイツに。今はまだ詳しい事は把握しきれていませんが、かなり甚大な被害を被ったとの事。昼食のお時間に、食堂であの方と一夏さんのお話しに、無礼を承知で聞き耳をたてていましたところ、『俺は、あのデカブツを消すことは出来たが、三人しか命は救えなかった。』っとおっしゃっていましたが、その時のあの方の表情はとても暗く、食事も手付かずと言わんばかりの、悲しい表情をしていた。
今、あの方と戦うのは、かえって癒えていない心の傷を深めてしまうのではないのかと、とても不安で堪りません。確かに、二週間程前にひどい目に遭いましたが、それとこれとでは違う話。
そんな事を考えていると、アリーナのBビットから蒼いISが空に舞い上がった。
何故?何故そこまで無茶が出来ますの?
私には全く理解を得ることが出来ません。・・・・・・ただ、今分かることは、ここで退く事がもう許されないと言うこと。
今は、まずこの一戦を勝つこと。いえ、この一戦に全身全霊をかけて戦うこと。それこそが、今、私に出来ること。
第三アリーナ・上空
「お、来たか。」
アリーナ上空で待機していた
「よ、体調と機体、共に良好か?」
「ええ、……あなたはいかがですか?」
「さっきまで沈んでいたが、気持ちは既に切り替え済みだ。あまり気にしなくていい、しっかりと全力でこい!」
「そうですの…、分かりましたわ。あなたのおっしゃる通り全身全霊、全力でお相手させて頂きます!」
その意気だ。しっかり保持しろよ。オルコット。
ヴーーーーーッ
『試合開始!』
警笛とアリーナの総監督、並びにこの試合の審判を務める教師の掛け声で、お互いに相手をロックした。
さあ、一夏との試合から一週間、その成長ぶりを見せてみろ!
セシリアは、まずライフルを構え、閃光を放った。
(ほう、まずは狙撃による牽制か…しかし!)
「甘いっ!!」
俺は、当たりそうな弾は少し体を傾けてかわした。
「なっ!?・・・・・・っく!!」
かわす動作に無駄が無い事に焦り出したオルコットは、確実に狙いを定めているものの、思いのほか中々当てられずにいた。
「くっ・・・・・・こうなれば」
当てられない事にしびれを切らしたのか、ビット兵器《ブルー・ティアーズ》を射出、攻撃を始めた。
ビットのランダム波状射撃を開始させたオルコット。確かに、常人なら反応しにくい角度から狙ってくるな。だが、今の俺は、くどいかもしれないが、普通ではない、人間とは呼べないようなチート野郎だ。故に、反応しにくい角度からの攻撃も全神経の
(そろそろ動くか)
そう思い、右腕の甲にレーザーブレード《WL−MOONLIGHT》を展開、着装し。
「はあっ!!」
ビットを一基切り落とす。
「っ!?」
再び近接格闘でビットを落とされた事に、激しく動揺している。現に、ビットの動きが曖昧だからだ。
「
「!!」
「お前は勝つことに専念し過ぎた。…だからッ」
そこで言葉を区切り、両手にハンドガン《WH09H−WRAITH(ライズ)》を展開、狙いを定め。
バゥンバゥンッ
ドガガアァン
ビットを二基同時に落とす。
「勝つことより負けないことを意識しろ!!」
左手の《WRAITH(ライズ)》で、最後のビットを撃ち落とす。
「あっ!・・・・・・くっ!!」
ビームビットの全滅に動揺したのか、ミサイルポットビットからミサイルを乱射した。
すかさず両手の《WRAITH》を格納し、右手にマシンガン《WR04M−PIXIE2》を装備し、飛来したミサイルすべてを撃ち落とした。
すかさず背面部装甲を展開、
「うっ・・・・・・」
「負けない人間なんて、この世にはいない。だから、負けを恐れるな」
「くっ、参りました・・・・・・」
ヴーーーーーッ
『試合終了。勝者、高嶺我瑠騨!』