リアルがまじパネェ!!
〜5月4日〜
〜1年1組〜
朝、いつもの様に教室に入る。
「おはよう」
「あ、高嶺君、おはよー」
「おはよ〜、たかみー」
元気に返事を返してくれたのは、赤みがかった茶髪の谷本と、いつもおねむな顔つきの布仏だ。
この前の一夏のクラス代表就任パーティー以来、何かと普通に話してくれるクラスメイトが増えてきた。
嘘とは言え、やはり影響でかかったか。
「ねぇねぇ高嶺君、高嶺君は2組に中国からの代表候補生が転入して来たって知ってる?」
「おう、知ってる。てか、昨日の夕方ばったり会って道案内したぞ」
「本当!?んじゃさ、その子が二組の―――」
「クラス代表になったってか?」
「うん、そう。これも知ってたの?」
「知ってたって言うか、昨日転入手続きの最中に譲ってもらうように交渉するって言ってたからな。」
「へぇ〜」
「なあ、我瑠騨」
一夏が話しに入って来た。
「ん?」
「その中国の代表候補生って強いのかな?」
「少なくとも、弱かったらこのタイミングに転入しては来ないだろ。それに、その中国の嬢ちゃんは少なくともお前も知ってる人間だ」
「一体誰なんだ?」
「そろそろ出てこいよ。鳳」
俺は教室の電子ボード側の扉を向きながらそう言った。
「やっぱりアンタの感性はすごいわね。高嶺」
そう返事を返した鳳は、扉の前で、足は肩幅に広げ仁王立ち、右腕は下げたままに左手は左腰に当てて立っていた。
「鈴?お前、鈴か!?」
「そうよ、中国の代表候補生、鳳鈴音。今日は宣戦布告に来たって訳!」
そう言いながらビシッと右の人指し指を一夏に向ける。
「鈴、何やってんだお前。似合わないぞ」
「なっ!?何て事言うのよアンタは!!」
苦笑いをしながら一夏は言い、反論する鳳。
俺としてはむしろアクティビティなこの娘には似合ってる気がするが…やはり長い付き合い故か。
ゴチッ!
「いたっ」
あ、ナルガクルガ・・・じゃねえ、千冬が鳳の後ろから現れ、後頭部に一撃。
「何するのッ・・・!?」
あ、
「もうショートホームルームの時間だぞ」
「ちっ、千冬さん・・・」
「織斑先生だ、馬鹿者。早くどけ邪魔だ」
「す、すいません・・・」
そう言うと、扉の前から少し横にずれて道をあける。千冬が通り過ぎたあとに、再び一夏に向かって。
「また後で来るからね!逃げないでよ一夏!」
ふんっと踵を返し、自分のクラスに戻る。にしても、やっぱり千冬は苦手対象か。・・・まいいや、授業に専念しますか。
〜昼休み〜
〜校舎食堂〜
ここに来る前に、教室にズババーーーッって効果音を出さんばかりに滑り込んできた鳳だったが、案の定千冬チョップを勢いよく打ち込まれたあと、意識飛びかけの鳳を何故か俺が引きずりながら連れてくるハメになった。
んで、その鳳は一夏と2人で円卓テーブル席で食事中。どうやら地元よりこっちの方が旨いのか、ラーメンを食っていた。一夏は当然日替り定食。
俺は、箒、オルコットを含む一組の他の女子数人と隣の円卓テーブル席に座って、俺以外の女子、特に箒とオルコットはがっつり盗み聞きしていた。
・・・騒いだら黙らせりゃ良いか。
そう思いながら、ホットケーキの3枚重ねを頂いてる。
ハチミツとバターの合わさった香りが心を落ち着かせてくれる。
「あれ?高嶺君それしか食べないの?」
そう質問してきたのは、クラスのスポーツ系短髪女子の相川だった。
「おう、俺、そんな多く金持って無いからな。それに、この金は真耶からもらったモンだからな」
「えっ、山田先生からお金貰ってるの!?」
「うん、前にも言ったけど、俺、孤児だし。最初は千冬が出すって言ってたけど、真耶が『織斑先生は弟さんがいますから、彼の生活に必要最低限のお小遣いは私が出しますよ。』って言っててな。最初は迷ったけど、生活に必要最低限のお小遣いとしての一点張りで、半ば一方的に受け取らさせられたんだ。だから、少しでも負担を減らすために安値で済ませようと思って」
「そうなんだ……ごめんね、悪いこと聞いちゃったね」
「気にすんな、今更変えらんね―――」
バンッ
「「!?」」
隣の席でデカイ音がして、見てみればいつの間にか箒とオルコットが一夏と鳳の席の前に立ってテーブルを叩いていた。
「ったく、しゃーねぇな」
渋々立ち上がり二人をなだめようと近づく。
「あ、そう言えば、セシリアと鈴に質問があるんだがいいか?」
声をかけようとしたした瞬間、一夏がオルコットと鳳に質問を投げ掛けた。
「何ですの?」
「何?質問って」
そんな二人に一夏は真面目な顔をして。
「・・・代表候補生って、何?」
ッドガッヂアアァァァン
食堂の生徒全員がずっこけた。俺と箒は脱力。鳳はちょうど麺をすすっていたのか、むせている。オルコットは口と指をわなわなさせていた。
「?」
状況を読めていない一夏に。
「こんドアホウ!!」
ゴズンッ!
千冬直伝の拳骨を食らわす。
「ってええぇぇぇ!何で殴るんだよ!?」
「この一ヶ月お前は何を勉強してたんだ!!代表候補生ってのは読んで字の如く聞いて言葉の如く、国家代表IS操縦者の、その候補生の事を指してんだよ!!」
「へぇ、なるほどな」
「「「「・・・ハァァ」」」」
俺、箒、オルコット、鳳は同時に呆れ溜め息を吐いた。
〜放課後〜
〜18:20〜
〜1025室〜
「・・・っと言うわけだから部屋変わって♪」
「はぁ!?」
突然の鈴の発言に、さすがの箒も驚いてるようだ。
「何故だッ!?いきなり押し込んできて部屋を替われなどと!!」
「いやぁ〜、篠ノ之さんも男と同居するなんて肩身が狭いだろうなぁ〜って思ってね。ね、一夏っ?」
「俺に振られても困るんだが・・・・・・」
だろうな。今の誰がどうみても無茶振りだからな。そこ、同情するぞ。
「とにかく部屋は替わらん。今すぐ荷物を持って出ていけ!」
「ところで一夏、あたしと昔した約束、覚えてる?」
「なっ!?無視をするな!!っえぇい、ここで成敗してくれる!!」
バッと竹刀を上段に構え、一気に鳳目掛けて振るう。
「なっ、バッーーー」
バシイィィィィン
「「ッ!?」」
「ほぉ」
一夏は箒を制止しようとするも目の前の光景に目を疑ったようだ。ISの右腕を間一髪の間に部分展開、竹刀を受け止めた。俺は部分展開の速度に感心した。
「今の、普通の人間だったらかなり危ないよ。」
真剣な顔の鳳に、箒はしゅんと
「まっ、あたしだったから良かったけどね」
鳳はそう言いながらISを解除した。
落ち込んでる箒の頭を撫でながら、箒の荒れた気を
「それでさ、一夏。約束・・・覚えてるでしょ?」
「ん〜と。あ、小学生の時の、鈴の料理の腕が上がったら、毎日酢豚を・・・」
「そうそれっ!」
「おごってくれるってやつだろ」
「・・・はい?」
「だからさ、料理を毎日ごちそうしてくれるってやつだろ。いやぁ〜、独り身にはありがた―――」
パシィン
……バカめ。
「最っ低!!女の子との約束も覚えて無いなんて、男の風上にも置けない奴ッ!!」
「えっ?り、鈴?」
「うるさいうるさいッ!!一夏のバカッ!!犬に噛まれて死ねッ!!」
そう言い放ち、部屋から出ていく。
「あっ、おい、鳳!ったくしゃあねえな。箒、後を頼む」
「えっ!?あ、ああ」
箒の返事を待たずに、俺は鳳を追いかけた。
その後、部屋に残された一夏と箒は。
「何で殴られたんだ、俺?」
「一夏」
「お、おう」
「馬に蹴られて死ねッ!!」
容赦無しに覇気ごもった一喝を一夏に放つ。
〜一学年学生寮・裏側広場〜
「!いた。・・・ってありゃ完全に泣いてんな」
鳳を追いかけて外に出て、生体センサーを起動させながら探して、一学年学生寮の裏にある広場の一角のベンチに、膝を抱え込むように声を抑えながら泣いている鳳を見つけた。よっぽど悔しかったのか?
あそっか、確か原作では・・・
とにかくまず泣き止ませてやるか。
「鳳、大丈夫か?」
「・・・グスッ」
「・・・」
「・・・っといて・・・」
「何?」
「放っておいて・・・お願いだから・・・・・・」
「はぁ〜、分かった。とりあえず放っとく、ただしーーー」
トサッ
「隣に座らせてもらう」
「お願いだから一人にさせてよッ!!」
ばっと顔をこちらに向けて、威嚇するような剣幕で睨んでくるも、涙に濡れた顔と、充血した目は寂しさ一色だった。
「だが、今のままここにいると、そのうち寮長の千冬の
「うっ・・・」
さすがに今は千冬には会いたくないだろうな。
「とりあえず寮内には入っておこうぜ」
「・・・アンタの部屋・・・どこ?」
「一夏達ん所の隣」
「・・・・・・ま、いっか」
「何が?」
「アンタの部屋に案内して。そこで話す」
「オーライ」
〜一学年学生寮・1026室〜
「・・・・・・つまり、小学生の頃の約束事をあいつは聞いたままの意味に捉えていたって事か。」
「そう、まったく信じらんない!一夏のバカバカバカッ!」
なんとか広場のベンチから俺の部屋まで鳳を連れて来たのだが・・・現在進行形でグチりフィーバータイムの真っ最中。さっきの悲しい顔が一変、憤怒の
「んなに大声出すと聞こえちまうぞ」
「うっ・・・」
「あいつの素直で唐変木な性格ってそんなに前からなんだ。・・・んで鳳、この先どうすんだ?」
「決まってるでしょ、アイツから謝りに来させるのよ」
決定事項かよ。
「しかし、あいつのこったから、『何で謝んなきゃいけないんだ』って言うんじゃ無いのか?」
「それはそうだけど・・・と、とにかく、アイツから謝りに来るまであたしはアイツと口を聞かないんだから!!」
……いや、仮にだけど、謝りに来たときに無視されたら逆に怒るぞ。あの唐変木でも。
これ以上の突っ込みは面倒スパイラルから抜け出せなくなる。そう思い、質問を変えた。
「んで?結局寝床どうすんの。戻るのか?」
「うん、・・・ねえ、今日その・・・ここで寝ていい?」
うんダメ・・・・・・って言いたいが、しゃあない。
「今回だけな」
「ホント!?ありがと」
おやおや、さっきの湿気吸いに吸った鰹節が一気に元気取り戻した。
「ねぇ、もう寝た?」
「まだ起きてんぞ」
現在、消灯時間の二十二時半を回って数分後、鳳は俺の就寝を確認してきた。
「……ところでさ、高嶺。質問してもいい?」
「答えられる範囲なら」
「アンタ・・・その、親とか家族とか、いる?」
「いないよ」
「えっ!?ウソ!?」
「ホント。それどころか、俺の個人データも皆無だから、今を生きている俺は、一体何者なのか。はっきりとは分からない。分かっているのは、力あるものとして、その
「そうなんだ・・・ごめんね、悪いこと聞いちゃって」
「気にすんな。それより、その質問をしてきたのは、俺に何か聞いて欲しい事があるんだろ」
「ホント、高嶺ってすごい感性の持ち主ね」
「あの唐変木よりは、相手を理解しようとはしてるって自負してる。」
「ふふっ、そうね。少なくとも、一夏よりはマシね。…で、本題なんだけど」
「おう」
「あたしね、あたしの両親なんだけど・・・一年前に離婚しちゃったんだ。それでさ、親権は母さんが持つことになって、父さんとは会うことが許されなくてさ」
「んで、頼みの綱の一夏はあれか」
「うん・・・」
「俺はお前に何もしてやれないけど、少なくとも愚痴やストレスの
「うん、本当にありがとう、高嶺」
「我瑠騨でいい」
「えっ?」
「俺の事はこれからは我瑠騨と呼んで構わない」
「うん、分かった。なら、あたしの事もこれからは鈴って呼んで」
「おう、分かった。改めてよろしくな、鈴」
「よろしくね、我瑠騨。それじゃそろそろ寝よ」
「ああ、そうだな。おやすみ、鈴」
「おやすみ、我瑠騨」