〜ドイツ・ベルリン西部・避難民キャンプ〜
〜独 08:30 5月7日(日)〜
〜日 15:30 5月7日(日)〜
シャルロットとクラリッサの二人を抱いた翌朝、
「忘れ物とかしてないよな?」
「うん、大丈夫」
「そうか」
軍用ジープの後部座席に座っているシャルロットと言葉を交わす。
「・・・ところで、本当にいいの?」
「何が?」
「この羽根ペン、我瑠騨の羽根から作ったんでしょ?それに・・・・・・」
「大丈夫。その羽根ペンは、どんなに解析しようとしても何一つ解析出来ないし、ましてや邪な輩には触れることすら出来ない。心配するな」
「・・・うん、分かったよ」
「失礼だが、そろそろ出発したいんだ」
話しに割り込んできたこのフランス救援部隊の部隊長さん。しかしこの人、ホントまぁオールバックにした赤い彗星そっくり。階級は大佐との事。
「失礼した。それじゃあシャルル、
「うん、必ず待っててね」
そしてお互いに右拳を伸ばし、ぶつけた。いつかまた、無事に合える様にっと祈りを込めて。
「では、失礼する。」
「協力、感謝します。」
フランス部隊長とクラリッサが挨拶を交わし、部隊の車両はフランスへの帰路についた。
(必ず、必ず来いよ。シャルロット)
(必ず行くから、絶対に待っててね。我瑠騨)
声に出さず、心の中で互いに祈り、想いあったのは当人達も気付く事は無かった。
〜独 09:00 5月7日(日)〜
〜日 16:00 5月7日(日)〜
〜ドイツ・ベルリン西部・避難民キャンプ・独救援部隊作戦本部〜
・・・・・・う〜ん。何故こんな事になったのか?
シャルロット、ならびにフランス部隊の見送りの後、クラリッサと今日の日程について話していた。
ここまではいい、ここまでは。
んで今、目の前にクラリッサと同じ黒い上着に下は黒ズボンの銀髪の眼帯娘、もといラウラ・ボーデヴィッヒが腕を組み、仁王立ちしていた。
「・・・何か用か?」
「貴様が高嶺我瑠騨・・・いや、蒼騎士か?」
「蒼騎士じゃねえ、ガルダ・イーグルだ」
「ふんっ、どちらでも構わん。貴様、随分と強いみたいだな。どうだ?私の部隊、シュヴァルツェア・ハーゼに来ないか?無論それ相応の優遇を約束しよう。どうだ、嬉しいだろ?」
この態度、ガンダム
「救援活動より、ヘッドハンティングを優先するとは・・・国民が知れば大批判だろうな。『ドイツ軍は、国民より怪物を優先させた。』とか、後味最悪だぜ。それと、俺はまだ、どこの国家にも帰属しない。いや、したくない。故に断る。」
「ほう、では、我々ドイツの敵に回ると言うのか?加えてお前は、私の部下を1人死なせたではないか。それに対して、何の償いもせんと言うのか?」
「た、隊長!?」
「・・・・・・たかが15の小娘がでしゃばった口を利くなッ!!」
トーン低めで殺気を込めて言葉を発した。
ラウラは元より、クラリッサもその殺気を感じ取り、二人とも少し怯えるかの様に一歩後退した。
「全く、お前のその態度を見る限り、千冬の指導は水の泡か。あいつが知ったらガッカリするだろうな」
「ッ!!貴様ッ、織斑教官をあいつ呼ばわりするとは、いい度胸だなッ!!」
「残念だが、お前は俺を知らない。故にそう言った口が聞けるが、真実を知ってからも、そんな偉そうな口が聞けるのか?少なくとも、世間知らずの出来損ないには無理だな」
「〜〜ッ!!貴様ッ!黙って聴いていればッ!!」
ボーデヴィッヒは右腰に携えていた拳銃、H&KP9を引き抜き、片手で構える。
「隊長!落ち着いてください!」
クラリッサが制止を促すも、今のボーデヴィッヒには届かぬ声だった。
引き金が絞られ―――
カチンッ
「!?」
銃口から火が
「何故だ!?」
「それはこっち見りゃ分かる」
そう言って俺は右手をボンバージャケットの右ポケットに突っ込み、中から装填済みのP9の
「なっ?!いつの間に!?」
「手品、とだけ言っておこう」
「くっ、ふざけるなぁッ!」
今度は右手で腰に携えていた刃渡り約二十センチのサバイバルナイフを引き抜き、距離を詰め、俺の
「なっ!?」
心臓はおろか
「力と強さは別格だ。千冬はそう言った大事な事をお前に教えていたはずだぞ。お前は力を得ただけで、まだ強さは手にしていない」
「うるさいッ!貴様、また教官を―――」
刹那、乾いた音が響いた。我瑠騨がボーデヴィッヒの頬を叩いたのだ。
「―――ぇ?」
「千冬の教え子とあらば、何故その様な事を理解しないんだッ!それを理解せず、自らの考えが正しいなど、彼女に対する
「っ!!」
「力とは何か、強さとは何か、その答えは、千冬とその弟の一夏に会えば分かる。強くなりたいなら、拒まずに受け入れろ。そうすれば、少しは強くなれる」
「・・・・・・」
さっきまでの荒れた気は無く、少ししょんぼりと顔を下に向けるボーデヴィッヒ。間違ったままでは、哀しい擦れ違いと、それに伴う争いが起こってしまうからな。
「ところで、お前が千冬にそこまで入れ込むには、それ相応の何かがあったんだろ?」
「・・・・・・」
「まあ、無理に聞き出しはしない」
「・・・・・・」
う〜ん、さっきからずっと黙ったままだな。言い過ぎたか?
「・・・私は」
「?」
「私は、教官のおかげで今ここに居られる。〝出来損ない〟の烙印を押された私を、再び〝最強〟の座に戻してくれたのだ。私にとって織斑教官は、私の憧れであり、最高の恩師だ」
・・・なるほど、ボーデヴィッヒの
「だが、そんな教官を、凛々しくて強い教官を、どこか恥じらいの混ざった優しい顔に変えた、そして、モンド・グロッソ二連覇を妨げた男を、織斑一夏を私は許さない!」
おい、話ズレてんぞ。って言いたくなった俺が居る。因みにこの世界のモンド・グロッソ、いわばISの世界大会を調べてみたが、色々興味深い。つっても、要約しちまえばISの世界大会って言葉が一番しっくり当てはまる。
・・・あ、俺も脱線しちった。
「なるほど、ところで一つ言わせてもらっていいか」
「何だ?」
「そこってさ、マイナス面しか捉えてないじゃん」
「?どういう事だ?」
「一夏が捕まらなければモンド・グロッソ二連覇達成出来たって事は、お前は落ちこぼれの出来損ないのままだったって事になりはしないか?」
「むっ・・・」
「加えて言えば、一夏が捕まった事で、そしてその情報を持っていたのがドイツ軍だったから恩返しの為にここに来て、お前は千冬に会えて、指導を受けて、そして這い上がれた。違うか?」
「・・・否定、出来ん」
「だろ?」
「だが、それでも私は認めない。織斑教官の弟ならば、何故容易く捕まるのだ?」
「無理もない。それは、当時の一夏がただの中学生であったことと、千冬が一夏をISから遠ざけていたからさ。それに、お前さんが思っている以上に、あいつは自責の念を持っている」
「・・・そうか」
「責めるなとは言わないが、責める前にあいつの気持ちを少しは分かってやれ」
「・・・考えておこう」
「あともう一つ。人の未来は一つじゃ無い。ボーデヴィッヒ、誰かに憧れるのは、決して悪い事では無い。しかし、そこで自分を見失ったら、全てが終わる。だから、今ある自分の時間を大事にしろよ。兵器としてではなく、一人の人として」