〜5月12日(金) 昼休み〜
〜本校舎棟屋上〜
「おっ、来たか」
「はい、ところでお話しってなんですの?」
屋上に居たのは、我瑠騨とセシリアの二人。
今二人がここにいる理由は、我瑠騨がセシリアに『話がある』っと言い、呼び出した為である。
「ずっと言いそびれていたんだが、お前に謝んなきゃなんないと思ってな」
「と、言いますと?」
「この学園生活の初日に、ムキになって銃を突き付けちまっただろ。そん時の事、まだ謝ってなかったからさ」
「い、いえ、その時の事はわたくしは気にはしておりません。それに、あれはわたくしが少々高慢な態度をとったのがいけなかったのですし」
「それでもだ。無抵抗の奴に銃を突き付けたんだ。それだけで、こちらが謝んなきゃならないのは確定している。本当にすまなかった。セシリア」
「いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした。って我瑠騨さん、今、わたくしの事を〝セシリア〟とお呼びになりまして?」
「おう、俺が信頼出来る奴は名前で呼ぶことにしてんだ」
「つ、つまりわたくしは、我瑠騨さんに信頼して頂いていると言うことですか!?」
「あ、ああ、そうだが・・・」
「信頼して頂けた・・・我瑠騨さんに・・・」
小さくモジモジするセシリア。どうしたものか。
「あれ?我瑠騨にセシリアじゃん」
「鈴さん」
ん、鈴が手にしてる布包みは。
「鈴、飯か?」
「うん・・・」
こう暗い答え方になると言うことは・・・。
「まだ一夏と仲直りしてないのか?」
「だって、あいつ、中々謝りに来ないんだもん!」
「はぁ〜、なんだかとんでもなく面倒になってないか?まあ、必要以上に突っ掛かるのは良くないってわかってるんだがな」
「・・・で?」
「ん?何?」
「何でアンタ達二人はここにいるの?」
「わたくしは、我瑠騨さんに呼ばれましたの」
「んで、要件が済んだ直後にお前が来たって訳」
「ふ〜ん、そんで要件て?」
「実はな---」
カクカクシカジカ
「・・・ここの生活初日にいきなり銃を向けるなんて、アンタ、色々とんでも無さ過ぎでしょ」
さすがに鈴も呆れた。って当然か。
「ま、そこは気にすんな。その内、もっとズバ抜けた事を知ることになるんだからな」
「我瑠騨さん、それはどういう事ですの?」
「その内教える。その時が来たら、必ずな」
「そうですの・・・分かりましたわ」
「我瑠騨、その時はあたしにも聞かせてくれる?」
「愚問だな。お前も当然入っている」
「本当に?」
「ああ、本当だ」
俺の肯定の返事に、照れ隠しの様な嬉しそうな顔をした鈴。セシリアも少しモジモジしている。一夏なら絶対『何だ?トイレか?』って言うに違いない。
「さて、そいじゃ一旦お開きにすっか。飯も食わなきゃなんねぇし」
「そうですわね」
「オッケー」
「よし、それじゃまたな」
こうして三人はお開きとなるんだけど。
「あ、我瑠騨」
俺だけ鈴に呼び止められた。
「ん?」
「我瑠騨っていつも食堂でホットケーキとか、安くて少量のものしか食べて無いんでしょ?」
「おう、そうだが」
「その、良かったらなんだけど、お弁当分けてあげよっか?」
「えっ、いいのか?お前が腹空かしたりすんじゃ無いのか?」
「あ、あたしはいいのッ!その、えと、そうッ!少し作りすぎちゃったから。だから少し分けたげる!」
「そっか、サンキュー」
この事は深くは追求しないのがいいんだろうな。
「じゃあはい、お皿はタッパーのふたでいい?」
「おう」
ほう、
余談だが、中国発祥の青椒肉絲は、地元では豚肉、日本やアメリカは牛肉を使っているとの事。
そして鈴の持ってきたのは、後者の牛肉を入れた青椒肉絲だ。
「あとは・・・あ、箸が無いか。えっと・・・」
箸の代わりになるものを、制服のポケットやら弁当を包んでいた包み布を引っくり返すやら、まるで技を覚えて間もない新米マジシャンの様でつい笑みがこぼれる。が、その焦り顔を見るや少し可哀想になったので。
「箸なら持ってる」
「え?」
そう言って右手に光の粒子を収束、量子変換して飾り気の無いシンプルな箸を取り出した。
「あんたって、なんか手品師に見えてならない時があるのよね」
「褒め言葉と受け取らせてもらうな。んじゃ、いただきます」
箸でひとつまみ、口にほおる。
「どっ、どう?」
「んんっ、うまい!牛肉の旨味とピーマンの苦味、塩胡椒のアクセントも程よい。流石だな」
「ホント!!」
「ああ、本当だ」
「そっか、良かった♪」
嬉しそうな笑みを見せながら、それを照れ隠しするように自分の青椒肉絲をパクつく鈴。俺も引き続き頂いた分を口に運んだ。
この時、影から巻き毛カナリアがジト目で睨んでいた事に、我瑠騨は気付く事はなかった。
〜放課後〜
〜第三アリーナ前〜
放課後、第三アリーナにて一夏、箒、セシリアの三人は、最後の放課後訓練をやると言っていた。
アリーナに入る。---と
ドゴオォッッ
「ごばはっっ!!」
何かが勢い良く
鳩尾と背中と後頭部が痛い。
「イツツっ、誰だ!突っ込んで・・・鈴?」
俺に激突し、今俺の上に乗っかってるのは鈴だった。
「・・・グスッ」
これはもはやお約束だな。
「・・・まぁた一夏と喧嘩したのか」
「・・・(コクン)」
「はぁ・・・俺の部屋、来るか?」
「・・・(コクン)」
「オッケー、じゃあ、まずは立とうか」
少しゆっくり目に体を起こし、立ち上がる鈴。続けて少し早目に立ち上がる俺。そして一度、俺の部屋に向かう。
〜放課後 16:30〜
〜一学年学生寮 1206室〜
「---なるほど、つまり口喧嘩に鈴が一番気にしている胸の事で馬鹿にされたって訳か」
「そうよッ!あの唐変木、いつもいつもあたしの事バカにして、人の気も知らないでッ!あいつ絶対許さないッ!!今度のクラス
「殺人予告すんなッ!」
ガヅンッ!
「・・・ゴメンナサイ」
以前、千冬に拳骨を頂いた事もあり、その千冬譲りの拳骨を鈴に食らわす。
すると案の定、おとなしくなった。
「つーか、真面目に怒りの原因ズレてるよな。約束事から胸にまつわるブロックワード。仲が良いからここまでの事態に発展したのかね?」
「・・・がる・・・も」
「ん?」
「・・・我瑠騨もあたしの胸の事バカにするの?」
鈴の目には涙が溜まり、今にも決壊しそうなダムのようだ。
「馬鹿にはしないさ」
「・・・・・・ホント?」
「ああ、本当だ。嘘はついてない。それに---」
俺はゆっくり手を伸ばし、鈴の頭の上に乗せ。
「鈴のしおらしい顔は見たくない。明るくて元気なのがお前らしくていい。俺は、普段のアクティビティな鈴が好きだしな。」
「あ、あんた何恥ずかしい事サラリと言ってんのよッ!!」
「ほらそれ、そういう時の鈴が一番いい」
「・・・ありが、と」
顔を赤らめ、やや俯きながら礼の言葉を述べた鈴。
(もしかしてツンデレ小動物系?)
ま、そこはどうでもいいがな。
「とにかく、一夏の件は、リーグマッチで怒りぶつけてやれ。ただし、殺さない程度でな」
「うん、分かった」
「あ、あとさ」
「なに?」
「今回胸の事でどうこうって感じだったけど、俺は今のままで良いと思うぜ?」
「な、何でよ?」
少し視線が鋭くなった。まあ、気にしてるんだから当然か。
「鈴てさ、結構アクティビティだって言ったろ?女性が大きな胸に憧れる理由は判らないけど、元気で明るく活発な鈴には大きい胸はアンバランスだと俺は思う。真耶・・・じゃなくて、山田先生みたいに噛み合うのは稀だけとな」
「・・・あ、あんたは」
「ん?」
「あんたは、大きいのと小さいの、どっちが好みなの?」
「好み、ねえ。・・・真面目に言うけど人による」
「・・・答えになってないじゃない」
「じゃあ例えばお前は、自分と体格に絶対合わない男物の衣類を着れるのか?」
「・・・着れない」
例えばの質問に、鈴は拗ねた顔をしながら答える。
「だろ?それに、今言った様に人によるってのは、容姿や性格の一致で、初めて美貌が成り立つって事なんだよ。それに、いくら気にしている事を言われてカチンとくるのは判るけど、だからと言って直ぐに暴力に訴えるのはダメだかんな」
「わかったわよ・・・じゃあ、最後に」
「ん?」
「我瑠騨は、あたしの・・・胸、今のままが良いって・・・本気で言ってるの?」
「そこまで疑うなら、直接揉んで感想述べようか?」
「そこまでしなくて良いわよッ!!」
顔を真っ赤にして反論、いつものテンションに戻りつつあるな。
「冗談だって。まあ、今の鈴には今のままの容姿が良いのには嘘偽りは無いよ」
「・・・なら、良いけど」
「よし、じゃあこの件についてはこれにて終了!一夏への対策云々は後にして、まずは飯食いに行くか。」
「うん」
こうして、食堂に向かう俺と鈴。
来週月曜日がクラス
一夏の奴、どんな戦いを見せてくれるのやら。
そして、無人機の介入にも警戒しないとな。