〜5月16日(火) 18:32〜
〜日本 愛知県IS学園 1205号室〜
『突如出現した謎の巨大物体は、現在―――』
インドネシアからの衛星中継で、前にも聴いたことのある台詞を言うナレーターと、その背景の大きく禍々しいものが佇み、それに向かっている4機の戦闘機が飛んでいくのテレビ越しに見ていた
(我瑠騨、また戦うのか?)
「一夏!箒!」
「2人ともいらっしゃいますか!?」
私たちの部屋の扉を勢いよくあけて入ってきたのは鈴とセシリアだ。
「なっ!?おい!!いきなり開けるな!ったく、心臓に悪い」
「それより2人とも、我瑠騨からメール来た?」
「ああ、届いている。それにこれを見ろ」
鈴とセシリアに点けていたテレビを見るよう促す。
「何これは!?」
「一体なんですの!?」
四人の携帯が同時に鳴り出す。
「!!」
「これって!!」
「ええ、間違いありませんわね」
「あの怪物の情報だな」
「けど、何で我瑠騨、あの怪物の事を知ってるんだ?」
「それは私達が訊きたいくらいだ」
「騒がしいかと思えば、一通りの面子が揃っていたのか。」
「「「織斑先生!?」」」
「千冬姉!?」
ッパァァン
「学校では“織斑先生”だ。馬鹿者」
いつの間にか部屋に入っていたちふ・・・織村先生の平手打ちが一夏の頭に直撃してかなり凄い音がした。一夏はその場で頭を押さえながらうずくまる。対する織斑先生は至っていつも通りの顔をしていた。織斑先生、手、痛く無いのですか?
「お前達、高嶺からのメールを受け取ったか?」
「「「は、はい」」」
「織斑、お前はどうだ?」
「は、はい・・・届いてます」
痛みを堪えながら一夏は返事をする。……しかし、織斑先生の平手打ちは強力だな。
「さて、あいつはどうやってあのデカブツをやるのやらな」
確かに、あれ程の巨大なものをどうやって倒すのか。そして一夏、いい加減うずくまっているな。
「ところで、フォルゲートはどこだ?」
〜マヤン島 上空〜
「コバルトよりスカルリーダーへ」
『こちらスカルリーダー、コバルトどうぞ』
「現時点において予測したターゲットの攻撃手段を転送する。なお、これはあくまで予測であるため、何処からか不意急襲されることを予め理解されたし」
『こちらスカルリーダー、了解。データの転送を願う。』
「こちらコバルト、了解」
通信を終え、俺はスカル小隊にエイフォスのデータを送った。マクロスゼロのエイフォスと同じだと思った攻撃手段を提示した。
翼から放たれる赤い軌跡のミサイル。
胴体部より放たれる絶え間無い青い光の散弾。
空間転移能力。
そして、自らをも呑み込めそうな大収束光線。
『こちらスカル2、コバルト、応答願う。』
ん?一条少尉か。
「こちらコバルト、スカル2どうぞ」
『こんな怪物、俺達だけで倒せるのか?!』
「少なくとも、ISでは歯が立たない。ISは間違いなく一撃でパイロットごとミンチと鉄屑になる。だが、お前達の乗っているそのバルキリーなら、少なくとも充分に対処出来る。それにしばらくすれば応援が来る」
実はこの世界に来て少しした時に、ある目的の為に俺の力を使ってあるものを造っているのだ。サンプルとして日本の南西、九州沖の海域に眠るあれを〝勝手に〟使っているがな。そろそろ完成しているはずだ。
『応援って一体・・・』
『先輩!おしゃべりはそこまでです。来ましたッ!!』
『!!』
ジーナス少尉の声に、全員の気が締まる。エイフォスが先手のミサイルを放ったのだ。
「スカル小隊!お前達は自分を狙うミサイルを落とせ!いいなッ!!」
『『『了解!!』』』
散開していた各機は各々に飛行・変形を駆使し、自身を狙うミサイルを撃ち落とし始めた。
『こいつぁすげぇな!』
『まるで昔から使っていたみたいに手に馴染む!』
『それにこの機動性、まるでISに乗っている様な感じですね!』
「言ったろ、これが〝男の兵器〟だ。事実、ヴァリアブル・ファイターのスペックはISを凌ぐからな」
『いくらお前さんの力とは言え、とんでもない代物だな』
「誉め言葉と受け取らせてもらうぜ」
ガンポットに対空レーザー、ミサイル等でそれぞれ順調にミサイルを撃ち落としていたが、ここでなって欲しくない事態になってしまった。
『こちら、第7艦隊第1IS部隊、シースパイダーズ』
『並びに、第2IS部隊、シーウィンドーズ、これよりターゲット殲滅作戦を開始する』
アラクネタイプ3機編成のシースパイダーズと、先程は確認出来なかったが、藍色の、恐らく海洋迷彩の塗装が施されたラファール・リヴァイヴタイプの3機編成のシーウィンドーズが接近してきた。
「なっ!?おい!!今すぐ戻れッ!!ISで敵う相手じゃねえッ!!」
『はんっ、男のクセに生意気言ってんじゃねぇよ』
『たかが戦闘機、ミサイル落とすことしか出来て無いじゃない』
『あんたらは大人しくすっ込んでな』
「チッ、第7艦隊聞こえるか?何故出撃を許可した?」
『こちら第7艦隊CIC、こちらの制止を一方的に無視、勝手に出撃された!』
「ヤツ相手にISは無意味だと警告したのに、ったくこれだから今の女はゲスなんだよッ!!」
『テンメッ!?なめてんのかッ!!あのバケモンの前にお前からぶっころ―――』
『!!アネッタ!後ろッ!!』
『!?』
俺に敵意を剥き出していたショート茶髪の白人の駆るリヴァイヴの1機がミサイル3発に狙われていた。
『このぉぉぉッ!!』
右手に装備していたグレネードランチャー用
『しまっ―――』
ドガアァーーーン
一発撃ちそびれ被弾し、爆音と爆炎に呑まれる。
『アネッタ!!』
徐々に煙が晴れて人影が見えた。
しかし---
『う・・・で、わた、し、の・・・腕が・・・ぁ、ァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!?』
彼女は生きていた。しかし、彼女の右腕を肩より少し先を除いて、ISの腕部装甲ごと〝無くなっていた〟のだ。
他にも右脇腹も傷を負っていたが、今の彼女はそれに気付けない程気が錯乱状態にあった。
「くそっ!言わんこっちゃ無い。今すぐIS部隊は下がれッ!!」
しかし、無線を入れた時には新たなミサイル群が来ていた。
「くっ!ヤバい!!」
流石の俺も、力が使え無くばただの男、しかし、それを認める気にはなれない。必死にミサイルを落とす。
しかし、無情にもミサイルは彼女を狙う。
「やめろぉぉぉぉぉッ!!」
「キュイィィ!!」
一筋の黄色い光線が手負いのISパイロットの前を射抜き、ミサイルを薙ぎ払う。
射線から発射点を見る。そこに居たのは、他でも無いフェンだった。最初の服装に加え、前腕、肩、胴体、脛にウィングガンダムを模した甲冑、左腕に赤いシールドと右手にはバスターライフルが握られていた。
「キュ〜ゥイ〜」
「フェン!!」
「フェンフェ〜ン♪ク?」
フェンはISパイロットの状態に気付いたのか、近付いていった。
「キュ」
「ぇ……何?」
腕を無くしたリヴァイヴパイロットを自分の翼で包むフェン。すると白い光る粒子、俺と同じ力を持っているなら恐らくGN粒子が傷口を覆い始め、次第に大きくなり、腕を象り始めた。GN粒子が消えると、そこには〝無くなったはずの腕が元に戻っていた〟のだ。
「私の・・・腕!治してくれたの?」
「キュ〜イ!フェンフェンフェ〜ン♪」
「ありがとう、うっ、ううっ、良かった・・・私の腕、元に戻った」
嬉し涙を流すISパイロット、フェンはその頬をつたう涙をなめ取った。
「ぅあ?!ちょっ、ふふ、くすぐったい」
「ク〜♪」
微笑ましい光景に皆の緊張感が和らいだ。
(フェン、さっきまでと違って随分勇ましいな)
先程までの人懐っこさは相変わらずだが、その目には一筋の思いを感じた。
〜絶対守る〜
あの娘の目はそう語っているかの様に強い眼差しとなっていた。
ふと、メインモニターに文字が表示される。
『指定ポイント到着 指示を待つ イクサ』
来たッ!
「全部隊に告ぐ。直ちに危険指定エリアから退避せよ!繰り返す、全部隊は直ちに危険指定エリアから退避せよ!」
『お、おい、ちょっと待て―――』
「待ってる間がない、今すぐ下がれッ!!IS部隊もだ!」
『りょ、了解!』
『・・・了解だ!』
フォッカー少佐は不満そうに返事をする。しかし
「ターゲットロック!」
六角形のロックオンポイントがエイフォスを捉える。
「主砲1番2番、副砲1番、
この号令と同時に突然海面が大きな水飛沫を上げ、青い光線が九本飛び出しエイフォスに着弾。
『何だ今のは!?こちらスカルリーダー、コバルト、今のは一体何だ!?』
「今のが、お前らに下がれと言った理由だ。イクサ聞こえるか?ヤマト、直ちに浮上せよ!!」
「了解!」
海面を突き破る勢いで縦長い飛沫を上げて現れたのは、前世で衰えを知らぬ程の人気があった架空の兵器〝宇宙戦艦ヤマト〟だ。
『戦艦だと!?』
「ところがただの戦艦じゃ無いんだよ!」
そのままヤマトは離水、前進しながら宙に浮き始めた。
『浮き上がった?!』
「おうよ。宇宙戦艦なんだから当然だ」
『何ぃぃ!?』
・・・リアクションデカ過ぎだフォッカー少佐。
「こちらヤマト第1艦橋イクサです。我瑠騨さんお待たせしました」
「いんや、大丈夫だ」
「それなら良かった。では、行きましょう!」
「ああ!エイフォス、悪いがお前はここで墜とす!ヤマトの咆哮と共に、俺の歌を聞けえええええぇぇぇッ!!」
VF−0Sをガウォーク形態に変え、ウィング下部ににフォールドスピーカーを展開、曲を流し、歌い始めた。
力強く、すべてを込めるような歌---
サウンドによる空間構成で、ミサイルも一定の距離で防いでいる。
「クッキュッキィッ!!」
歌に合わせるかのように胸を結晶体を光らせ、ミサイルを撃ち落とすフェン。
ヤマトも船体左舷をエイフォスに向けながら砲火を放つ。
(やらせねぇ、世界を破滅させる訳にはいかねぇ、皆の笑顔を奪わさせやしねぇ。必ず守り抜く!!)
失う恐怖と悲しみを知る我瑠騨にとって、エイフォスは脅威でしかない。転生時に与えられた力が使えないのも、その脅威に怯えているからだ。だが、だからこそ、彼は歌う。
自らを奮い起たせる為に。
破壊者たる者を守護者に変え、生き抜く為に。
『汝、|何故(なにゆえ)に我を妨げる?』
「!」
歌の間奏に入ると共に、心にエイフォスの声が届いた。取り敢えず応えるか。
『お前こそ、何故人類を抹殺しようとする?』
『人類はこの星を汚しすぎた。我は全ての人類を抹殺し、この星を元の青き星に戻すためだ』
『そうか、なら俺はお前を止める。人類は自らその罪に気付かなくてはならない。それに、人類を抹殺する事は、この星を傷付け、汚すことになる。全ての生き物にも、この星の為にも、俺はお前をここで撃つ!!』
間奏が終わり、再び歌う我瑠騨。
ヤマトもそれに合わせて艦首をエイフォスに向け、艦首の大口径砲〝波動砲〟の発射体勢に入る。
対するエイフォスも翼を前に曲げ、自信の目の前を覆う様な姿勢を取り、エネルギーを収縮させていく。
そして、互いに渾身の一撃をぶつけ合う---
大き過ぎる力同士のぶつかり合いは、辺り一体を強い閃光で包んだ。
―――我が破壊者たる力を、汝が思い描きし守護者たる力に―――
えっ?
―――我が力、汝の思う未来の為に、汝の想う者の為に―――
眩い閃光が消えると、そこにエイフォスの姿はなく、我瑠騨と彼の駆るVF−0、そしてヤマトの姿があった。
『勝った・・・のか?』
「おう、勝った」
『マジで、あのデカブツに勝ったのか!』
『やりましたね。隊長、先輩、高嶺さん』
「フェンフェンフェ〜ン♪」
ワァァァァッ!!
無線から聞こえる歓喜の声。そして---
トクン
「?」
胸元に違和感を感じた我瑠騨はコアに右手を添えてみる。
「!・・・そうか、そう言う事か」
我瑠騨は強張った顔を緩めて、微笑む。
「まさか、お前が俺の進化に必要な力の紙片だとはな・・・これからはよろしくな。エイフォス」
エイフォスは倒されたのではない。彼の中に入っていたのだ。
そして彼の言葉に反応するように、紫色の小さい光が胸元に一瞬灯る。
それはとてもきれいで、無邪気な光だった。