〜IS学園職員室〜
ザアアァ
春先の豪雨。季節外れのこの豪雨に、
何かが来る。
そんな胸騒ぎだ。すると、
「織斑先生、コーヒー淹れてきました。それにしても、すごい大雨ですね。職員寮に帰るときには止んで貰いたいですね。」
窓から外を見ていた私に、後ろから山田先生が淹れたてのコーヒーを差し出してきた。
「ん?あぁ、すまないな。しかし、この分だと職員寮に戻るときまでに晴れる事の方が確率は低いな。」
山田先生からコーヒーを受け取りながらそう言い、流し込んだ。すると、
「はぁ〜、これじゃ着いた時には絶対びしょ濡れですよ〜。」
山田先生らしい言い分だな。そう思った次の瞬間。
ドゴオオオオゥゥン
「キャアァァァァ!!」
突然の爆音と振動。そして山田先生の悲鳴。まるで爆撃でも受けたかの様なそれは、雷だった。しかし、ただの雷なら音はともかく、ここまで大きな振動はそうそうあり得ない。窓から外の様子を確認する。すると、第三アリーナの中から蒼白い光が放たれている。ふと気付くと、さっきまで散々なまでに降っていた雨が完全にあがっていた。
「私の勘もまだまだ劣っていないな。」
そう呟く。山田先生はさっきので爆音で酷く怯えていたが、
「しっかりしろ!今すぐ学園内放送をかけて、学園中の職員全員にISを装着させて第三アリーナに向かわせるんだ。出来るな。」
すると、山田先生は、
「あ、は…はい…や…やっ…てみ…みま…す…。」
涙目で震えながらも、必死で私の期待に応えようとしていた彼女に私は手を貸し、放送室まで連れていった。
織斑先生に手を貸してもらい、放送室に辿り着いた
「私はこれから第三アリーナに向かう。山田先生は他の教職員に呼び掛けをしてくれ。」
「え?で…でも、織斑先生…。」
突然アリーナに向かうと言い出したので物凄い不安になりました。けど織斑先生は。
「私の心配なら無用だ。それよりも、放送は任せる。良いな?」
いつもと変わらない口調で私に指示をしました。やはり織斑先生は強い。私なんかでは絶対届かない、高嶺の花のような人。その人が大した取り柄の無い私を信用してくれてる。なら、その期待に応えたい。
「わかりました。織斑先生も気を付けて下さい。」
「分かっている。では頼むぞ。」
「はい!」
このやり取りを終えた後、私は学園内放送をかけた。
『学園内にいる全員教職員は、直ちにISを装着して、第三アリーナへ向かって下さい。繰り返します。』
『学園内にいる全員教職員は、直ちにISを装着して、第三アリーナへ向かって下さい。繰り返します。』
この放送の声に先程の怯えた感じは無かった。私も、普段は生徒に「廊下を走るな!」っとよく叱責している立場なのだが、今回ばかりは状況が状況、悠長な事を言っていられなかった。
〜第三アリーナ〜
私が第三アリーナに辿り着いた時にはあの蒼白い光は消えていた。代わりに、アリーナ中央に人が倒れていた。
男だ。
意識を失っているようだ。少し艶やかな蒼色より少し黒いショートヘア、
しかし、こいつの着ているものは明らか普通ではない。その黒い着衣は、ISスーツとは違う、首から下全てを覆う、分かりやすく言えばスパイスーツみたい黒いスーツだった。
「ん……っ!?」
男は急に意識を取り戻したかと思えば、いきなり距離を取り、右腿の大型拳銃を引き抜き、こちらに向けた。
“巨人”の光に呑まれ、俺は意識を失った。その後、気が付けば、目の前に黒い服の人が立っていた。
俺は咄嗟に距離を取り、右腿の大型拳銃を引き抜き黒服の人に向けて構えた。
…何故俺は銃を持っている?
ふと気付くと、髪の毛の色や身に着けた覚えの無い手袋と衣服、色々有りすぎて頭がパンクしそうになったが、先ずはこの拳銃、日本ではソーコムピストルの名で知られている、《H&K MK23 Mod.0》を右腿のホルスターに収めた。そして自分が身に纏っていたスーツを見ると、それはスニーキングスーツ、しかも、メタルギアソリッドピースウォーカーのスニーキングスーツだった。
再び視点を黒服の人に向けた。その人は女性だった。上下黒のビジネススーツを見事着こなし、容姿もスーツ越しでも抜群のプロポーションであることが分かる。顔立ちも、"美徳"と"威厳"のふたつが綺麗に重なる。先程からの俺の行動に顔色一つ変えて居なかった。そして、俺は今言うべき事を口にした。
「いきなり銃を向けてすまない。」
先ずは謝る。何がどうであれ、今現在、銃を構えたって意味では、こちらが悪いことに代わりはない。
「いきなり現れて銃を向けるから、どんな大馬鹿者かと思ったが、それなりの礼儀は弁えているようだな。」
冷静な口調で返事をしてくれた。そして、気になることが一つ。
「俺は我瑠騨(がるだ)、高嶺(たかみね)我瑠騨(がるだ)。あんたは?」
「私は織斑千冬だ。」
疑問の一つ。彼女が織斑千冬で有るかどうかがこの質疑応答でわかった。そして、この世界がISの世界だと確証を得たのはその直後。
「織斑先生、大丈夫ですか?」
「あぁ、山田先生か、私は平気だ。」
山田と呼ばれた女性は、フランス量産型第二世代機、原作通り深緑の塗装で、背面部に左右に一つづつ着いた大型シールドが特徴の機体《ラファール・リヴァイヴ》を纏って、他の教師数人と共に姿を現した。
そして、山田先生も原作通り、童顔とそれに合わない大きめの眼鏡、そしてお約束の、巨乳…加えて言えば体自体が高校生位だから、無駄に強調されてる。本当に女性に対し無関心な奴でも無い限り、一度は、凝視してしまうだろうな……脱線しちまった。
「良かったぁ。…ところで彼は?」
「彼は高嶺我瑠騨。詳しいことはこれから聞くところだ。」
ってそれは構わないが…。
「ならせめて、どこか屋内にして貰いたい。こちらも色々有りすぎて頭が整理しきれてないからね。」
「そうか、それでは付いてこい。但し、次は銃を突然向けるなよ?」
「分かっている。」
その言葉を確認したら、山田先生含む教師部隊に向かって、
「よし、教師部隊は撤収しろ。撤収後は各人の持ち場に戻るように。あぁ後、山田先生はISを格納したら私と一緒に応接室に来てくれ。こいつについて色々調べるのに、少し手を貸して欲しい。」
「はい、分かりました。」
っとまあ、色々面倒な気もするが、ISの世界だと言うこと以外俺には何も分からない。
〜応接室〜
「ではまず、お前がアリーナに倒れていた理由(わけ)を聞かせて貰おうか?」
…微妙に悩む、本当の事を話すか、それともカバーストーリーを今作るか。
「正直に話して信じて貰える確証は有るか?」
「現状、判断材料はお前の言葉しか無いからな。お前の名前の個人データも検索中だ。出来るだけ包み隠さず話して貰おう。無論口外にはしない。」
彼女がもし、原作通りの女性なら…、そう思い、この世界に転生する直前の事件や、その後の死んでからここに跳ばされるまでの出来事“は”話した。
他に話していないこと、もとい隠している事は、この世界に転生してから、幾つか自分の身体について気付いた事だった。
ガンダム、マクロス、アーマードコア等のテンプレのアビリティが多かった。
・身体自体は一般人と変わり無いが、拳銃弾程度なら、無傷で済むほど特殊な身体をしていること
・脳内にナノマシンネットワークの構築による機械・電波・電子信号による情報直接処理や各種レーダー・スキャニング機能を備えた脳
・各種神経の強化や任意での神経機能操作
…今のところこの程度だ。解りやすく言えば、ヒイロ・ユイ、ブレラ・スターン、強化レイブン。この3つを足して3で割った感じた。・・・いや、割れてるのか?
そして顔に関しては、何故か.hack//G.U.のハセヲ(Vol.3の白服版)の赤いフェイスラインかなく、髪が少し黒よりの蒼で、目の色がサファイア色をしていた。何故わかったかって?鏡見れば自分の顔ぐらい見えるだろ。何でその顔だったかって?流石の俺にもわからん。ただ、ハセヲがピースウォーカーのスニーキングスーツを着てるとなると…違和感満載だな。
「事情は分かった。しかし、鵜呑みに出来る話では無いな。」
「だろうな。」
まるで帰ってきた答えが予想通りと言わんばかりの反応をした。まぁ、あんな話をすれば当然だかな。私自身、疑いの念を強く持っている。
コンコン
「織斑先生、山田です。」
山田先生が応接室の扉をノックした。
「入れ。」
「はい、失礼します。」
そう言って応接室に入ってきた山田先生は難しい顔をしていた。
「どうした?難しい顔なんかして?」
「それが…彼の個人データが…何一つ見付からなかったんです。」
「何!?」
個人データが無い…それはこの世に存在しないと言う事になる。更に、
「あと、先程の彼の血液検査や身体検査のデータもまとまったのですが…彼には…IS適性があることが分かりました。しかも、適性ランクは最高値のSを遥かに越えるほどのもので、測定は不可能でした。」
最高ランクのSを遥かに越えているだと!?私はかつてブリュンヒルデと呼ばれていた。個人的に、そう呼ばれるのは好ましくないが、今のこいつは、適性だけで見れば、私を含む数少ないブリュンヒルデを凌ぐ存在なのか?
「一つ聞くが、お前は専用機を持っているのか?」
その質問をすると、高嶺は無言のまま左腕を真横に伸ばすと、私の瞬きをする間にISを左腕だけ部分展開した。
「もう一つ聞くが、実戦経験は?」
「全く持って無し。」
即答した。すると彼女は、結構深い溜め息を吐いた。
「最後にもう一つ。」
「何かな?」
「そのISはどこで手に入れた?」
「気が付いたら、手に入れてた。少なくとも、篠ノ之束の作り出したものでは無いだろう。」
そこは確証を持って言える。何となくだけど。すると織斑千冬は、何かを諦めたかの様に短い溜め息をして、
「…聞きたいことは山とあるが、今は一旦ここで話を区切るとしよう。」
そう言って彼女は時計を見た。俺もつられて時計を見ると、十八時をまわっていた。流石に時間に関してはどうにもならん。加えて、織斑千冬も山田真耶も教師って職業だ。さっき確認した事だが、入学式が二週間後に迫っていて、かなり忙しいタイミングこの沙汰が起こった。故に話を一度切り上げる事にした。
最も、この先どうなるかは判らないけど、少なくともISと無縁ってことにはならんだろうな…。
後、どうでも良いって程粗末にするわけでは無いが、今夜はどこで雨風凌げば良いのやら…IS以外でも、面倒な事からは逃げ切れねぇな。
……はぁ、桑原桑原。