~日本 愛知県 IS学園 外来応接室~
「・・・で、その娘を連れて帰ってきたと言うのか?」
「おう」
「ク?」
マヤン島をあとに、ヤマトの海洋航行での長い船旅で俺達はIS学園に帰ってきて、今は千冬に状況の報告をしていた。
途中学園の生徒達がわいわい群れを成して寄ってきた時には面倒だった。俺の事はともかく、フェン絡みで騒がれてややこしくなりかけたから、危なかった。
「カルカ」
「ん?なに?」
「クィーユ?」
フェンは自分の座っている席の前に用意された紅茶を見ながら「これは何?」と言うかのような顔をした。
「それは紅茶って飲み物だ。熱いから気を付けろよ」
「クー」
「んん、それで高嶺。その娘、フェンと言ったか?今後どうするつもりだ?」
「ひとまずはあっちに住まわすさ」
そう言いながら右手の親指で窓の外、その先の海に見える宇宙戦艦ヤマトをさした。
「あの船は生活、ネットワーク、火器管制等々の完全に独立した様々な環境がある。保護しとくには充分な状態が備わってるんだよ」
「ならば構わん。と言うか、こちらが拒んだ所でお前らが何をしでかすか分からんからな」
「カルカ!カルカ!」
「はいはい、今度は何?」
「フェーン、カルカ、グィーギュ!」
俺の制服の袖を掴んでグイグイ引っ張りながら何かを訴えてきた。ただ、俺も万能と言うわけではないので、フェンが何を求めたりしているのかを全部が全部分かるわけではない。まあ、なんとなく察しはつくが・・・。
「フェン、まさかとは思うが・・・あっちは嫌か?」
「ヤーノ!」
・・・!?今喋った!?
「ヤーノ!フェン、ヤーノ!」
・・・片言、いや、相手に自分の気持ちを伝えようと馴れない発声を頑張ってしていると言った所だな。
「仕方ないだろ、ここの決まりなんだから。だから---」
「キュイ!」
「うお!?」
フェンは急に身体を光らせた。よく見ると、それはISの量子変換に似た発光だ。
形が変わっていき、どんどん小さくなる。
その大きさがソファの座面の真ん中にポツンとなるくらいで、光は消えた。
「・・・オカメインコ?」
「ピィ」
そこにいたのはオカメインコだった。しかもカラーはオカメインコの中で比較的少なく珍しいと聞いたことのある〝ピュアホワイト〟と言われる綺麗な白色だった。ちなみにオカメインコの特徴たる頬のオレンジ色はなくなり、その部分も白い。
「クィーキィー?」
翼を軽く広げ、「これならどう?」と言う感じで目線を合わせてきた。だけど・・・。
「フェン、その状態だと〝ペット禁止〟にあたるからもっとアウトだぞ?」
「(ガーーーン!!)」
黒い円の内側を白く塗り潰した用なお約束の〝目〟をして、くちばしをあんぐりと開けてショックを露わにした。
(なんというか・・・面白おかしく可愛いやつだな)
「・・・千冬、なんとかなんねえかな?」
「・・・仕方ない。その鳥の姿で、例外として認めよう。但し、ちゃんと鳥かごを用意しとくように」
「わりぃ、助かった。ってな訳でフェン、一緒に過ごせるぞ」
「キュイー!」
嬉しそうにする仕草は本当に可愛い。これは我瑠騨に限らず千冬もそう思ったのだ。
~IS学園 学生寮 1206号室~
「ほれ、着いたぞ」
「(キョロキョロ)」
オカメインコの姿のフェンを肩に乗せて自室に戻った我瑠騨。
フェンは部屋に入るなりあちこちをキョロキョロと見回していた。
「取り敢えず、かごはこの辺かな?」
そう言って、両手の間に約50センチ四方の鳥かごを作り出した。
そしてそれをカウンター設計の机の、席と席の間のスペースに設置した。
「これで良し。フェンーーーあり?ドコ行った?」
いつの間にか肩からフェンが居なくなっていた。が、すぐに見つけた。俺のベッドの枕の上にいた。
「なぁにやってんの?」
「クィッキィ!」
どうやら色々真新しい空気やものに目移りしている最中に、俺の匂いが染みた枕に気付いて飛びついたらしい。
「はは、色々見慣れないもんが多いだろ?でもすぐ馴れるよ。ほらおいで、かごの居心地も教えてくんないと」
「キュイー」
我瑠騨が手を差し出すと、素直に乗ってきた。
鳥かごにいれた直後、扉がノック音を響かせた。
「我瑠騨、俺だけど入っていいか?あ、あと女子3人も一緒なんだが」
「いいぞ」
扉が開くと、一夏、箒、セシリア、鈴がぞろぞろと入ってきた。
「あ、鳥だ」
「ああ、訳あってこれからここに住まう事になったフェンだ。今はオカメインコだが、本来は人間に翼が生えた様な天使みたいな姿をしてるんだ」
「へぇ~」
「ねね、我瑠騨、この子触ってみてもいい?」
鈴が少しうずうずしながら訊いてきた。
「ん?ああ、こいつがいいって言うならな。フェン、いいか?」
「フンフーン♪」
「いいよってさ」
「ホント!じゃあ失礼しまーす」
「ン♪」
鈴が撫でやすい様に自分から頭を差し出すフェン。
「うわぁ、サラサラでふわふわ、気持ちいい!」
「クルルルル♪」
2人そろって和みきっていた。
んで、衝動の連鎖が発生するのは人間的な何かなのだろう。残りの面子も触りたいと言い出した。
フェンは特に嫌がらず、好きなように撫でさせていた。
・・・あとで俺も撫でさせて貰おうかな。