~IS学園 1年1組教室~
朝のホームルーム前の時間。いつもの様に顔を出そうとしたが、出来ない。
理由は単純。
「(うるうる・・・)」
「・・・はぁ」
朝の登校直前、部屋をでる前に鳥の姿になってゲージの中にいるフェンにいい子で留守番するようにと言った直後、嫌だと言わんばかりに、バタバタと駄々をこねるように暴れ出した。仕舞いにはゲージの扉をぶち壊して部屋中ギャーギャー鳴きながら暴れ飛び回った。
このままだと、間違いなく大事になりかねないと思い、ダメ元で千冬に相談してみた。
その結果、交換条件付きで許可をもらった。中身はあとで伝えると言われたが、何となく嫌な予感しかしなくて困ったもんだ。あと肩に乗ってるワガママ娘も。
「おっす~」
何気なく教室に入る。教室には大分クラスメイトが揃っていた。そして案の定---
「おはよー・・・って高峰君、肩にいるのって鳥?」
鷹月静寐が挨拶と共に質問してきた。
「おう、昨日の女の子覚えてっか?その子が言う事聞かずで色々あって、今はこのオカメインコの姿でくっついてんだ。独りにするとギャーギャー鳴いてかなわないからな。あ!予め言うが、揃った大声は止めろよ!ての施しようがない事態になるからな!」
間違いなく黄色い波動が放たれそうな空気が漂っていた為、予め釘を打った。フェンがビックリして暴れられたらただでさえ朝が面倒だったのだからなお堪らん。
「フェン、みんなに挨拶しなさい」
「フェーン、クゥウ」
ぺこりと頭を下げてお辞儀。この時「かぁわいいー♡」と思った女子達がいたのは言うまでも無いが、我瑠騨、一夏、イクサ、箒、セシリアの5名が含まれていたのはただのネタだ。
「お前ら、席に着け!」
何時もより僅かに苛立った口調の千冬が少し強めの勢いで扉を開ける。その時の開ききったときの〝バンッ!〟て音に---
「(ビックゥ!?)ギャーギャー!!」
フェンが驚いて飛び出した。
そして窓目掛けて一直線に飛び---
「ブッ!!」
激突した。絵に描いた様な大の字となり、そしてポテッと落ちた。
「何やってんのフェン」
「ク~~ィ~~」
勢い良く激突したから、頭がぐるぐるしてるのだろう。鳴き声がなんかこう、ぐねぐねな感じだった。
「ッ!?ビィビィビィーー!!」
またまた突然に覚醒してまた飛び回り始めた。
教室をグルッと廻って再び窓目掛けて---
バリイィィン!!
---突き破った。
「・・・っておいいぃ!?何窓割ってんだよぉぉ!!」
フェンは窓突き破り、大体10メートル程飛んだ先の木の中程の高さの枝に留まる。
「(・・・ホッ)」
ここでやっと落ち着いてくれた。だが、一難去ってまた一難。ガサリと葉音が聞こえる。
「!」
キョロキョロ辺りを見回すも何もない。ふと上を見ると、黒い影があった。
「カァー」
カラスである。
「ピッ!?」
自分より倍近く大きく黒いカラスが視界に入るや、ビビって硬直するフェン。
しかしカラスの方は、見慣れないフェンに興味を持っただけで、敵意はおろか、変にちょっかいを出すつもりもなかった。
※ここからは少々鳥達の会話をお聞き下さい。
「きみ、見たこと無いけどどっから来たんだ?」
オスのカラスは訊く。
「(カチーン)」
「名前は?」
「(カチーン)」
「・・・だめだ、固まってる」
そこへ別のメスのカラスがやってくる。
「何やってんのよ?」
「ああ、あそこの子に話しかけてんだけど、固まったままなんだ」
「あらホントだ。あんたまた驚かしたんじゃないの?」
「失礼だな。確かにこの位置からだからそうなのかも知れないけど、そんな気は無かったぞ」
「そ、まあいいわ。よっこいしょっと」
メスのカラスはフェンの乗っている枝に飛び移る。刺激しないように極力柔らかめに枝につく。
一方フェンはメスのカラスが近付いた事に対し、頭の羽をピーンと全開に立てる。
「そんなに怖がらなくて大丈夫よ、ちょっと見慣れなかったから興味が湧いただけで、何も取って食おうって訳じゃ---」
「!食べられるの!?」
「いや、だから---」
「食べられるーーー!!」
「あ、行っちゃった」
「やーい、逃げられてやんの」
「(カチン)あんた、良い度胸してるわね?それは覚悟あっての台詞よねぇ!?」
この後、この2羽がケンカになったのは言うまでもない。
一方で、食われると勘違いして全力で逃げるフェンはというと---
「キュ~~~・・・」
ジョギングコースの一角にある休憩所のごみ箱の中に目を廻して入っていた。
実は逃げる最中、余り周りを気にしておらずに飛んでいて、目の前に現れた、遅刻してしまい全力で走っている生徒に気付かず、生徒はギリギリでフェンに気付くと、防御反応で手にしていた鞄を盾にし、フェンの激突を受け流した。
そしてフェンは当然本日2度目の頭がぐるぐるになり、そのまま自然落下でごみ箱にホールインワン。
「・・・ッ!キュイ?」
目を覚ましたフェンは周囲を確認する。と言っても、狭い空間で上に出口がある事を確認するや、すぐに起き上がろうとする。
「プィ!?」
しかし、ビニールが絡まって思うように動けない。
「ギャーギャー!!」
大暴れするも逆にビニールがボロボロになって余計に絡まっていく。
「・・・キュルルル!キュルルル!」
仕舞いには怖くなって泣き出した。我瑠騨に出会った時の姿になれば良いものをそうしなかったのは、今になって我瑠騨の言い付けを思いだしたからだ。
『良いか?ここではみだりに基本体にはならないこと。みんなが驚くからな。それと、このケージみたいに何でもかんでも壊すのも駄目だ。分かったか?』
「・・・キュルルル・・・」
先程は驚いたとはいえ、窓を割ってにげた。それに対しても反省していた。
「あ!いた!高嶺君に連絡して」
「ピッ!?」
突然上からの光が何かの影に遮られ身構える。
「ほら、おいで。出してあげる」
その影は、鷹月だった。フェンは鷹月の顔を既に覚えていたため、すぐに差し伸べられた手に飛びつく。
「ほら、絡まってるから暴れないで。・・・よし!おいで」
「クィッキュー!」
鷹月はそのまま抱き抱えるようにした。
「どこかケガとかしてない?」
「クピィ!」
「大丈夫そうね」
「おーい、鷹月ー!」
「あ、高嶺君、こっちこっち!」
遠くから我瑠騨が駆け付ける。それを視認するや、フェンはすぐに飛び出そうとする。
「あ、待って!危ないからちょっと待とうね?」
「ク?クィ!」
我瑠騨がそばまで来ると、鷹月は手渡しでフェンを我瑠騨に引き渡した。
「わりぃ鷹月、手間かけて」
「ううん、いいよ。それより見つかって良かったよ」
「ああ。全く、どれだけ迷惑かけたか分かってんのかお前は?」
「ェーン」
「高嶺君、そのぐらいにしてあげて。相当怖い思いしてたみたいだから。さっきもそこのごみ箱に入って泣いてたから」
「そっか・・・次からはこんな事すんなよ?」
「キュー!」
「ふふ、それじゃそろそろ戻ろう?織斑先生、多分しびれを切らしそうだし」
「だな。戻るぞフェン」
「フェンフェンフェーン!」
他に捜索に当たっていたクラスメイト達に声を掛けつつ教室に戻って行った。
今回のパニック状態は、オカメインコに見られる「オカメパニック」を部分的に取り入れました。