06:00
まあ、そこまでではないが…
タオル…無いんだった。
やむ無く、顔面部の温度を上げ、さっさかと水っ気を蒸発させた。因みにこれは以前千冬達に説明した俺が普通で無い故のアビリティの一つ、要は体温自己調節。操作は初めてだがうまくいった。
その後は、千冬…厳密には一夏君から借りた紺色のジャージから、薄い灰色の長袖と青いジーパン、黒い靴下と青地に白ラインのスニーカー、っとカジュアルな服装に着替えた。服のサイズもピッタリマッチした。…一夏君と同じ身長なのか?俺。
…自己身体検査システムが算出したデータは、身長が175cmの体重が60kgと出た。原作での知識では、一夏君の身長は172cmだったはずだから、一夏君より3cm高い事になる。
コンコン
…千冬か。
ガチャ
「おはようさん、千冬」
「ああ、おはよう」
昨日と同じ黒いスーツの千冬が、左手を腰にあて、凛としたスタイルで立っていた。
「…何を考えている?」
「特に何も。ただ、スーツをうまく着こなしているなって思っただけだ」
「誉めても何も出ないぞ」
「安心しろ。見返りは求めていないから」
「そうか、それはそうと朝食は摂ったか?」
「いや、まだだ」
「なら付いて来い」
そう言われて俺は千冬に付いていった。そして教師寮の食堂に着いた。“少し小さなレストラン”っと言えようしっかりと設備の整った綺麗な食堂だった。無論、男の俺がここ、もといIS学園にいると言うことは異例中の異例。故に食堂の調理師のおばちゃん達も当然驚いてる。
「織斑先生、そちらの坊やは?」
一人のおばちゃんが質問してきて、千冬は、
「ん?ああ、こいつの事を話すとかなり複雑なのですが、少なくともここにいても問題無い奴とだけ言わせて貰います。…おい、挨拶くらいしろ」
「高嶺我瑠騨です。よろしくお願いします」
「はい、よろしくね」
軽い挨拶を交わし合ったところで、料理が出てきた。俺は取り敢えず千冬が選んだ焼き魚定食のトレーを受け取った。因みに千冬も同じメニューだ。
「ふぅ…うまかった」
午前8時、俺は朝食後に借り部屋に戻ってそう呟いた。幾分、昨日の夕飯を食い忘れていたからだろう。余談だが、俺は魚料理は好き嫌いが激しいのだが、今日のは旨かった。
コンコン
…今度は真耶か。
ガチャ
「おはよう、真耶」
「あ、おはようございます、高嶺君」
少し頬が赤いが、原因は昨夜のアレか?
「どうかしたのか?」
そう質問した直後。
(…何だ?この威圧感。只者じゃねぇな。しかも相当遠くのものだな)
「…?どうかしましたか?」
方角と距離からして…東京…台場…。
「あ、あの…高嶺君?」
しかし返事は無く、いつの間にかテレビの選局を終えて、見るのに集中していた。そして、私も集中してしまった。何しろ、そのテレビに映っていたのは、大事件の生中継だったのだから。
『…繰り返しお伝えします。只今ここ、お台場において、謎の巨大兵器の攻撃を受けています。この巨大兵器に対し、政府は、自衛隊、自衛隊IS部隊、各企業のIS操縦者に緊急令を発令したとの事。また、この巨大兵器はサソリの形をしており、強靭な爪と、尻尾の先端には、大型のビーム兵器を有しており、お台場が廃墟と化すまでは、もはや時間の問題としか言えません』
あまりに突然のニュースを、私はただ呆然と見ていました。
「とんでもないことになっているな」
「ひゃあ!!おっ織斑先生!?」
いつの間にか私の右後ろに織斑先生がたっていました。
「…
「高嶺ッ!!」
「っ!!」
ふと千冬の大声で思考を一時中断した。
「はぁ…やっと反応したか」
「…すまん」
「まったく、で?アレが何なのか分かるのか?」
…千冬には話しても大丈夫だろう。真耶もいるけど、こっちも問題無いはずだ。
……。
「成る程。要するにあの化け物潰せるのは、他でもないお前だけなのだな?」
「ああ、そうなる」
「しかし今お前が…」
「今俺が出れば確実、世間の注目の的。しかし、意味の無い死は、俺は出来るだけ避けたい。自分だろうが他人だろうが変わりはない。だから行く。奴を潰しに」
「学園や私は、一切責任を負わないぞ?」
そう言いながらも、“お前ならやれるだろう”っと確信したかの様な微笑みを見せた。
「ちょっ…高嶺君!?それに織斑先生も!!」
「心配すんな、俺はあんなのに負けねぇ。負けやしねぇ。必ず奴を潰して、必ず帰ってきてやる。必ずな」
「で…でも…」
「大丈夫だ山田先生、こいつは必ずやり遂げる」
「織斑先生まで……分かりました。私も高嶺君を信じます。でも…必ず帰って来て下さいね?」
「当然!!」
不敵な笑みを浮かべ、ベランダに出た俺はそのまま飛び出し、
「サイファー!!」
そう叫び、俺はAC型専用全身装甲IS、“サイファー”を展開。その後、背面装甲を展開し
〈東京都・お台場〉
デス・スティンガーの破壊行動により、お台場。東京湾側半分は壊滅。自衛隊やIS部隊の面々は、如何なる攻撃も効かないことに、動揺の色を隠しきれなかった。
「何なんだ!?あの化け物は!!」
「IS部隊の攻撃も効かないなんて…」
成す術も無く、IS部隊は文字通り非力となった。そして、デス・スティンガーは尻尾の先端の水平5連砲の両端2門が左右に展開し、中央の大口径砲の上下のブレード状の部分がプラズマを収束しながらゆっくりと展開した。
荷電粒子砲
展開している全部隊を一撃で蹴散らせる事の出来る程のエネルギーをチャージしていく。
「まずい、強力な荷電粒子砲が来るわ!!逃げて!!」
「大丈夫か?お前ら」
「えっ?」
「なっ!?」
荷電粒子砲の直後の突然の声に驚くのも無理はない。突然男の声が聞こえてきたかと思えば、自分達の目の前に蒼い全身に装甲を纏ったISがいたのだから。
(なんとか間に合ったな。)
は両腕のエネルギーシールド“FUTEN”と両肩のエクステンションエネルギーシールド“IWATO”を展開しながら、ほっと胸を撫で下ろした。しかし、今の荷電粒子砲の影響でどちらも使い物にならなくなった。直ちに|量子変換格納した。
そして、今度は両腕にガトリングガン“CR-WH79M2”と両背面にショットガン“CR-WB755G”を装備し、デス・スティンガー目掛けて掃射した。相当な火力なのか、デス・スティンガーは大きく怯み、身構えて防御し始めた。
相当なダメージを負ったと言わんばかりに、さっきまで無傷だったデス・スティンガーはその装甲はだいぶぼろぼろになった。
しかし、俺の武装が弾切れを起こした瞬間、
「ぐっ…けほっ…今のは結構きたな…」
デス・スティンガーと目が合い、俺は身の危険を察した。
…ヤバイな…。
そう思った刹那。
『GNシステムリポーズ解除。ZEROシステムリポーズ解除。
何かが一瞬の内に終わり、その一瞬の内に全てを理解した。
今の俺なら出来る。
その頃、デス・スティンガーは荷電粒子砲の発射体勢を執っていた。そして、全身装甲ISに狙いを定めて。
バオウゥゥゥゥ
荷電粒子砲が放射され、誰もが終わったと思った次の瞬間。
クワアァァァ
全身装甲ISから、まるで天の川が目の前に現れたかの様な、蒼い光の粒子と帯がいくつも見えた。そしてそれは、デス・スティンガーの荷電粒子砲を軽く掻き消した。蒼い光の粒子の発生源見ると、そこにいたのは、先程の全身装甲ISではない、蒼い翼と同じく蒼い騎士甲冑の様な姿をした、神々しい存在だった。
「これが…俺の本当の姿…。フッ…成る程な、“お前が俺だ”ってのはこの事か」
俺は今、あの“巨人”と同じ姿をしていた。神々しいあの“巨人”と。
「さて…やってみますか!」
そう言ってまずは粒子解放をやめ、空高く飛翔した。
ここからは…
俺の距離だ!!