~IS学園 学生寮1206号室~
早朝、日の光が射し込み始め、シャルロットは目を覚ました。
「ふあぁ~・・・ぁふう」
昨夜は我瑠騨と別々のベッドに寝ていた為、窓側のシャルロットは心地良い目覚ましで起きた。
「ン?ヒャルル、フェンフェーン?」
「ん~、おはようフェン」
「キュイ!」
身体を起こしてフェンと挨拶を交わす。ふと、なんとなく周囲を見回す。
「あれ?我瑠騨?」
廊下側のベッドに寝てるはずの我瑠騨がいない。するとフェンが「こっちこっち」と言わんばかりにシャルロットの机に頭を向ける。
「書き置き?」
そこにあったメモ書きにはこう書かれていた。
『おはようシャルロット、起きて俺がいなかったら、トレーニングで外にいるだけだから。食堂の開く6時半まで位には戻るから 我瑠騨』
書き置きを読み終え、時計を確認すると現時刻は6時前。書き置き通りならあと30分程で帰ってくるはずだろう。
「さてと、僕も準備しておこうかな」
まずは顔を洗おう。
~同時刻 グラウンド~
ISスニーキングスーツを纏った我瑠騨は、学園の外周を3回程周り、現在グラウンドで10メートル程の距離を100%を全力と考え、70%、80%、90%の3段階をその力加減ごとでの全力を出して走った。これは前世の自衛隊体力錬成の内容も含めている。因みに彼のベストは100メートル走で8秒台だ。
「はぁ・・・はぁ・・・っし!もういっちょ!」
次にその場に十字の光線が足元を中心に3メートル程の距離に伸びる。そして中央と十字の各先端に同じく光の輪が地面に描かれた。すると各先端の覆面をつけた軍人のような姿の光の人が現れた。
刹那、何の前触れもなく光の人の1体がおもむろに、かつ攻撃する為に駆けてくる。
「ふっ!」
放たれた右拳を払い、遠心力で相手を受け流す。そして出来た背中の隙に右肘打ち。光の人はその勢いで倒れ込みそのまま粒子状に四散し、消滅した。
するとまた別の光の人が襲撃に掛かった。今度は右手にナイフを逆手に持っていた。それを振り上げ我瑠騨の首を狙う。
「らあっ!」
振り上げられた右腕の肩と肘辺りをチョップするように受け止め、肩に当てられた右手で顔面に平手、怯んだところをさらに右フックで顎にクリーンヒットさせた。
「おら次来いッ!!」
~学生寮1206号室~
時刻は03:23、シャルロットが男装も含めて準備が終わったとき、まるで合わせるかの様に我瑠騨が帰ってきた。
「ただいまっと」
「あ、お帰り我瑠騨、すごい汗だね」
「学園外周を3周してダッシュ3本、そして格闘訓練をやったからな」
「外周って、結構距離あるよね?」
「まあな。途中ジョギングしてた相川にも似たような事を言われた」
「あ、確か前にISの授業で、一夏に自己紹介してた時にジョギングが趣味だって言ってたね。あとスポーツ観戦だっけ?」
「ああ、そんな事言ってたな。あの後こっちもそれに感化されて同じ事をやろうとした時には、釘を打っておかなかったら大変な目にあったろうな。っと、そろそろシャワー浴びとかないと」
「そうだね、じゃあシャワーが終わるまで待ってるよ」
「あいよ」
~学校棟 応接室~
日中の授業も滞りなく進んでいき、現在放課後。我瑠騨はシャルルを連れて千冬との話し合いの為に応接室を借りてもらった。
「---以上が彼女、シャルロット・デュノアの現在に至るまでの経緯だ」
「なるほど。自分達だけではどうにも出来なくなり、偶然にもIS適性が高く、また、男装させるに向いた顔立ちをした愛人の娘を道具の様にしていた。っと言う事か」
「・・・・・・」
内容はシャルロットにまつわる事だ。
話をまとめた千冬の発言に、シャルロットは俯いてしまった。
「それで、私に何をしろと?」
「今まで通りで良い。相手がどう動くのかをもう少し観察したいからな。何より、俺は経済や社会のやりとりに関しては素人だ。ただ単に破壊するだけなら簡単だけど、それは恐怖で屈伏させてるだけに過ぎないし、何よりこいつを救った事にはならない。苦手なことだからもう少し観察と勉強が必要なんだ」
「ほう、そうしている間に相手のいいように踊らされたりしたらどうする?」
「先の意見に矛盾するが、それを行った奴のみ物理的に叩く。だが、こちらもタダでシャルロットの身柄を庇うのは酷すぎるからな。すぐには手に入らない様な、それでも全てを擲ってでも手に入れたいモノを天秤に掛けるつもりさ」
我瑠騨の言い分は少々理解に苦しむと思いつつ、真面目かつブレを感じさせない何かがあり、少し揚げ足を取る様な質問をぶつけてみようと思っていた千冬だが、しつこくするとどことなく暴れ出しそうなビジョンが浮かび上がり、ここで話を切り上げることにした。
「分かった。ひとまずデュノアの件についてはお前の好きにしろ。ただし、あまり乱暴を働くなよ?」
「了解。あともうひとつ」
「何だ?」
「クラリッサ・ハルフォーフは知ってるな?」
「ん?ああ、ドイツに居た頃に---」
「シャルロットとクラリッサの2人、すでに囲ってるんでそこんとこよろしく」
「・・・はあっ!?」
「ちょっ、我瑠騨!?」
「だから、2人の女に手ぇ出してるって言ったんだよ。告ったのはシャルロットとクラリッサ2人同時。その後俺が返事と一緒にな」
「ちょっと!!どこまで暴露する気なのさっ!!!?」
「高嶺、お前はそんなロクデナシだったのか?」
「いんや?俺とて無闇に手出しはしねぇよ。囲うに相応しいかどうかも必要だし、何より俺が護れるかどうかが一番に影響するな。てか、何だ千冬、囲われたいか?」
「ほぅ、私相手に随分な口の効き方をするではないか?」
何故か2人の間に火花が散っている。様に見えるほどに---
(怖い!怖い!この2人怖いよぉぉぉぉぉ!!!!)
余りの恐怖にガクブルで涙目になるシャルロットだった。
(誰でも良いから助けてよぉ!!!)