~IS学園 第3アリーナ~
一夏に引き続き、次はメリッサの試合となった。
本人が以前言っていた通り、機体シルエット、並びに機体名は地球防衛軍4の〝ウィングダイバー〟であった。カラーリングは紫で、右手には粒子系銃の〝イクシオン〟が握られていた。
また、この試合では思わぬ事が起こった。
「対戦相手がまさか更識簪ちゃんだったとはね」
メリッサがぼそりと言う。そう、対戦相手のペアに訓練機の打鉄を更識簪がいたのだ。
なお、今回の互いのペアは両方ともラファールだ。
彼女が4組の日本代表候補生で、自力で専用機作製に尽力しているのは1学年周知の事実で、また、今回の試合の様に学園には参加しないの傾向にあった為に今回の出場には多少ながらも驚いている生徒もいる。
「・・・」
この状況に、更識簪は苛立っていた。
勿論専用機の完成を焦っているのもあるが、それだけではない。
今回は珍しく行事に参加してる。
更識さんて、生徒会長の妹だよね?
あんな子が代表候補生なんだ。
正直居心地が悪いのだ。色眼鏡で見られること。贔屓目で見られること。勝手な私情と偏見で見られること。周りの視線と気配が現在の苛立ちの最大の原因なのだ。
(私だって、好きでこんな所にいる訳じゃないのに)
そう思うものの、通じるはずがないと割り切っているため、誰にも相談せず、ひとりで抱え込んでいる。
『両者、準備完了、試合開始!』
ブザーが鳴り響き、簪は気持ちを切り換えて戦闘体勢に入る。
データ収集の為に持ち込みを許可された試作型高周波薙刀を構える。
(相手ペアの専用機は全く知らない機体。高嶺我瑠騨やイクサ・フォルゲートと同じ未知数の機体。でも、データ収集には最適)
メリッサについては、簪の変に思い詰めた表情を察し、敢えてデータが収集しやすい様に〝必要な手加減〟をするようにした。
まずは手にしていたイクシオンで牽制射撃。しかし、ある程度は直撃させた。
「くっ!」
「ほら、まだまだ始まったばかりなんだから、頑張りなさい」
「い、言われなくても!」
薙刀を構え直し、距離を詰めようと試みる。
この際もメリッサは自分に近付く事が出来るようにある程度は当たる牽制射撃を行う。簪は回避行動を取りつつ接近。薙刀の有効範囲にメリッサを捉え一振り。
「なっ!?」
「ふふん♪」
しかしこれを左手の平で制止する。よく見ると、数ミリ程、手の平より浮いた位置で止まっている。
「一度試してみたかったのよね。シールドバリアを一点に集中させる方法。思ったよりしっかり出来たけど、思った以上にエネルギーが削れちゃった」
「くっ!!」
「焦っちゃダメ」
「えっ?」
不意に掛けられた言葉に動きが止まる簪。なおもメリッサは続ける。
「1人に出来る事は非常に限られているの。あなたが1人で専用機を完成させようとしているのは周知の事実。でも、実際あなた1人で出来る事、1人では絶対出来ない事ははっきりとわかっているでしょう?」
「・・・・・・」
「あなたのお姉さん。確か生徒会長さんだったわね?それもロシアの代表。自分が負い目を感じたりするのは仕方ない」
「・・・・・・」
「なぁ~んて考えてるなら、あなたはおバカさんですよ?」
「・・・は?」
「だってお姉さんはお姉さん、あなたはあなた。一人一人違うのは当たり前だし、優劣がつくのもよくあること。でもね、あなたのお姉さんにだって、どうしても出来ないことがあるはず。そしてあなたはお姉さんより出来ることがある。違うかしら?」
「それは・・・」
「隙あり!」
「きゃあ!!」
不意に、いつの間にか持ち替えていた近接武器〝レーザーランス〟で突き飛ばす。
「ほら!自分を見下す暇があるならさっさと目の前の倒してみなさい!」
今度はレーザーランスの先端からレーザー射撃。距離は限られるが高威力の為油断は出来ない。現に簪がかわした先の地面は激しい砂埃を撒き散らした。
「わぷっ!?」
砂埃に驚き、怯んだ簪に更なる追撃。
「はっ!」
「ふぎっ!」
振り下ろされたランスを薙刀で防ぐ。だが、元々運動する機会の少ない簪にはこの力勝負は敵わない。
(やっぱり・・・無理・・・)
ふっ、と力が抜け、身体にそこそこ強い衝撃が走った。
直後、シールドエネルギーの残量がゼロになり、機能停止となる。
「・・・私は、どう頑張ってもダメなの?」
「それは違うわよ」
「え?」
そっと手を差し伸べられてはきょとんとする。
「あなたは1人で頑張り過ぎ。少しは他人に甘えたり、迷惑を掛けたりしないといつまでも成長しないわ」
「で、でも、お姉ちゃんは1人で完成させたって・・・」
「素材収集から?」
「え?いや、そこまでじゃ無いけど・・・」
「でしょ?あなたのだって機体の形自体は完成したものを自分で仕上げようとしてるのだから、人に頼らざるを得ない事もあるの。あなたのお姉さんでさえも、あと、高嶺我瑠騨君も」
「あの、高嶺我瑠騨さんが?」
「そうよ。だからひとりで背負い込まないで、一緒に手伝ってくれる人探さないと。まあ、最初のうちは上手くいかないかもしれないけど、それもまた人付き合いを勉強するいい機会だと思ってやってみたらどうかな?」
「・・・無理」
「・・・そっか」
「でも・・・少し・・・頑張ってみる」
「うん、それがいいわ。頑張れ」
「えと・・・あ、ありが、とう・・・」
少し俯き気味に、それでもしっかりと受け答えをして、メリッサの助言を意識するように心掛けようとする簪だった。
「さて、それじゃあ---」
メリッサは振り返る。
そこに映ったのは簪のペアだった。メリッサのペアはすでにやられている為、状況は1対1なのだ。
そして、メリッサの目つきは、好物を目の当たりにしたケダモノのようだった。
「ヒィッ!!」
「いただきまーす♪」
「キャアアアアアア!!!!」
・・・・・・いうまでもないが、試合はメリッサペアの勝ち、そして、簪のペアだった子は・・・。