出来映えが不安
〜西暦二○一七年四月十七日〜
〜IS学園〜
春が彩る桜の季節、終わりと始まりを告げる桜吹雪舞うこの日、IS学園は新入生を向かい入れた。新入生達もこれから始まる学園生活に心踊らせていた。
…一人を除いて…。
(これは……想像以上にきつい……)
入学式早々、
しかも、最前列のど真ん中の席に座っているから、後ろからの視線が非常につらい。
救いを求める様に同じ最前列の一番窓側の席に座る幼なじみ、篠ノ之箒に視線を向ける。
「…………!」
目があった瞬間、ぷいっとそっぽ向かれてしまった。…嫌われてるのか?俺。だとしたらちょっとショックだな…はぁ…。
「…らくん…。織斑一夏君っ」
「はっ、はい!!」
「ひゃあっ!?」
大声で名前を呼ばれていたので、とっさに返事をするが思わず声が裏返ってしまった。物凄く近くまで寄っていた副担任の山田真耶先生が驚いて悲鳴に近い声を出した。正直少し耳が痛い。
「あ…あの、何ですか?」
「えっ、あっ、あの、お、大声出してごめんなさい。でも、自己紹介が『あ』から始まって今『お』の織斑君なんだよね。ごめんね?それで自己紹介してもらえるかな?だめかな?」
そう言いながら山田先生はぺこぺこと、不釣り合いに大きな眼鏡がずり落ちそうな程に頭を下げていた。
「あの、そんなに謝らなくても…っていうか自己紹介しますから」
そう言った途端、がばっと山田先生は頭を上げて、
「ほ、本当ですか?本当ですね?ぜ、絶対ですよ?」
っと詰め寄ってくる。熱心な先生だ。
しかしまあ、言ってしまった以上、男に二言は無い。その場で立ち上がり、
「えー、織斑一夏です。よろしくお願いします」
……ん?
キラーン
キュピーン
…なんだか、背中全面に視線を感じた。それもとてつもなく強い、殺気の様なとんでもない視線も混じっている気がする。
何?今の俺に何を求める?しかし、ここで黙っていたら“暗い奴”のレッテルを貼られてしまう。
「はぁぁ…すぅぅ。」
呼吸を整え、一言。
「以上です。」
ガタタッ
一喝するようにそう言った。っと同時にクラスの全員がずっこけた音が聞こえた。
「えっ、だ、駄目でしたか?」
ゴズッ
物凄い音と同時に頭に激しい痛みを感じた。
この鉄槌…もしや…。
そう思い頭を押さえながら顔を上げると。
「げっ、千冬姉!?」
ゴズッ
「学校では“織斑先生”だ。馬鹿者」
二発目も同じところに鉄拳制裁。知ってる?千冬姉。人の脳細胞って一回殴る毎に約五千個死ぬらしいよ。
現時点で約一万個死んだことになる。…ん?織斑先生?
「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」
「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押しつけてすまなかったな」
…?どういう事だ?分からん。全然分からん。俺の唯一の家族で実姉、加えて職業不詳で月一、二回しか帰ってこない千冬姉が何故ここに?
「諸君!私が織斑千冬だ。君たちを一年で
そう突然言い放った。いや千冬姉、いくらなんでもその言い方は…。
「キャーーーーー!!千冬様、本物の人の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から」
いや、別に南北海道でもいいけどさ。
「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」
「私、お姉様の為なら死ねます!」
いや、止めておけ。本当に死ぬかも知れないぞ。
「随分人気だな千冬?いや、織斑先生?」
「えっ…。」
俺はおろか、クラス全体が、今の声に沈黙した。何故かって?その声が男のものであった事と、その声の主と思わしき男が俺と同じ男物のIS学園の制服を着て、黒板側の教室の扉の前に立っていた。
いきなりながら原作沿いの展開を
「はあ、呼ぶまで待てと言っただろう」
「んな事いちいち気にしたらやってけねぇって」
「お前に言われたらこちらの面目丸潰れだな。まあいい、とりあえず自己紹介でもしろ」
「承知」
そう返事をして、黒板を背に教卓の右側に立ち、
「俺は我瑠騨、高嶺我瑠騨。“世界で二人目の男のIS操縦者”だ」
核爆発言。この世界ではそう言っても過言ではない。『ISは女しか使えない』って常識が、一夏君の存在だけでもインパクトがでかいのに、そこに俺が現れたら、当然混乱を招くのは避けられない。
「キャーーーーー!!二人目、二人目の男よ!!」
「うそ、信じらんない!」
「しかも織斑君といい勝負になりそうなイケメン!」
「ぐふっ、ぐふふふっ」
…どうやら壊れた嬢ちゃんがいるみたいだが、流しておこう。
「お前達!静かにせんか!」
千冬が一喝。鎮まるクラス。
「こいつの事を話すと極端に長引く上に時間の無駄になるから省かせてもらう。高嶺、織斑の隣の席に座れ」
「りょーかい」
そう指示され、一夏君の右隣の席に座った。そして一夏君に向かって、
「はじめまして、織斑一夏君。これからよろしく」
そう言って、左手を差し出した。
「お、おう、よろしく。俺の事は一夏って呼んでくれ。お前の事はなんて呼べばいいかな?」
「高嶺でも我瑠騨でも好きに呼んでくれて構わん」
「なら、我瑠騨って呼ばせてもらうよ。よろしく」
「ああ、よろしくな」
一通りの挨拶の直後、千冬、もとい織斑先生が割り込んだ。
「挨拶が済んだならショートホームルームを始めるぞ。それと織斑、もう少し口に気を付けろ。こいつは十六、少なくともお前より一つ年上だ」
えっ、マジで!?
ってな感じの驚きの表情をしていた一夏君を見て、ついくすりと笑ってしまった。
「えっと…」
「事実だ。だが、あまり気にしなくていい。俺にまで気張ったらマジメイカれるぜ?」
リラックスをさせようと思い、そう言った。
「あ、ああ、分かった。それじゃ改めてよろしく」
「おう、よろしくな」
一通り挨拶を済ませ、ショートホームルームが、始まった。
〈休み時間〉
十間の休みの間、一夏は幼なじみの篠ノ之箒に呼び出され教室をあとにした。俺は次の授業の教科書を広げ、時間を潰していた。
「ねえ、あの子が例の男のIS操縦者?」
「でも、テレビで見たのと全然違うよね?」
「確か彼、今日になって姿を現したみたい。」
「うそ!?つまり世界で二人目の男のIS操縦者って事!?」
「やだ〜かっこいい!!」
「私、声かけて見ようかな」
「ちょっと!抜け駆けする気じゃないでしょうね?」
廊下に詰め寄った女子生徒達が色々と話していたが大して気には止めなかった。
「ちょっとよろしくて?」
こいつが来るまでは。
取り敢えず視線をその声の主と思わしき女子生徒に向けた。両腕を組んで堂々とした態度の女、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットが机の左側に立っていた。
「何だ?」
「まあ、なんて口の聞き方を。わたくしが誰かをご存知ないの?」
「少なくとも、知らなくても損は無いはずだと思ってる。」
「なっ、何ですって!?」
案の定、頭に血を上らせ始めた。
「わたくし、セシリア・オルコットは、祖国イギリスの代表候補生にして専用機を持つエリート中のエリートですのよ。それを知らないなんて、非常識にも程がありますわ!」
「初対面の人間に高慢な態度をとるどっかの巻き毛カナリアの方がよっぽど非常識じゃ無いのか?」
「なっ、わたくしを侮辱していますの!?」
あえて無言で睨んだ。誰もが引く様な強い殺気を込めて。オルコットは怯んだが、
「けっ、決闘ですわ!!」
っと言い放つ。
「断る。仮にお前がISを使っても、やろうと思えば生身でもおまえを潰せる。どうしてもと言うなら、まずは一夏の手解きをしてやってからにしろ。俺と戦いたいならやれ。出来ないならすっ込んでろ」
「なっ!わ、わたくしを---」
「素人の当て馬にするなとか、んな青臭い事をぬかすならISに乗る資格はねぇぞ!!」
少し強めに言った。一応原作を知る身としては、この一戦で一夏を強くしなくてはならない。少々可哀想だが、この機を逃すわけにはいかない。
「くっ…分かりましたわ。その勝負、受けて立ちますわ!!」
こうして、オルコットは決闘条件を受け入れた。
…すまない一夏、これもお前の為だ。