「―――ってな訳だ。悪いが頑張ってもらうぜ」
「冗談じゃねぇよ!?いくらなんでも勝手すぎるだろ!!」
昼休み。
先程の
「じゃあ何も出来ないお荷物のままでいる気かお前は」
「うぐっ・・・・・・」
クリティカルヒット。
お荷物を卒業したがってる一夏にとってはかなりきたはずた。原作では確か、早く千冬に楽させたいが故に安学費で高就職率を誇る藍越学園を狙って・・・・・・場所を間違えてここに来た。そして、来た以上は生半可な気持ちは死を意味する。何より、こいつはISの生みの親、篠ノ之束の次に、世界が狙う重要人物。国家、企業、団体、裏組織等といつその命を狩られるか、いつその命を弄ばれるか分からない。
俺の場合は近づくハエ共を叩ける。が、今の一夏には自分の身を守るだけの術が無い。だとしたら、早い段階で鍛え上げた方があとでどうにでもなる。
こいつは、いや、この世界のこの無邪気な一夏や他の原作キャラ陣は、絶対守る。守り抜かなくてはならない。奪われてもならない。失ってもならない。この手を血で汚そうと、この翼が折れようとも、絶対にだ。
だが、その前に踏むべき段階、今においては一夏に戦う術を教えること。その為にも、まずはこの対オルコット戦と言う通過儀礼を乗り越えさせなければならない。
「で?どうする?お荷物か戦士かで言うとどっちになりたい?」
再び一夏に問いただす。さぁ、どうする一夏?
「・・・・・・その二択なら、俺は、戦士になる。いつまでもお荷物のままでいられるか!」
「よく言った。それでこそお前だ。ISの稽古は俺がつけてやる。但し、どんなに軽くても骨折は覚悟しろ。でないと・・・・・・死ぬぞ?」
「うっ、あ、ああ、分かった。言った以上男に二言はない。厳しく頼む」
「よし、その意気だ。っとその前に、お前、武道は何かやったことは?」
敢えてここでその質問をしてみた。原作通りなら、
「ええっと、小学一年生の頃に剣道をやっていたけど中学に上がると同時にバイトし始めてやめちまったから今は特に何も」
やっぱりな。
「なら、さっきお前に話しかけてきた…篠ノ之って娘に肩慣らしを手伝ってもらえ。仕草や携えてるものからして剣道をやってるみたいだし、お前とも仲良さそうだし」
「そういえばまだ話してなかったな。俺と箒は幼馴染みなんだ」
「へぇ、どんぐらいの付き合いなんだ?」
「あいつと知り合ったのは小学一年生の頃、千冬姉に連れられて剣道を始めた頃くらいで、小学四年の頃に箒は引っ越したから、会うのは六年ぶりだな」
「へぇ〜、随分
「そうか?たまたま一緒になっただけだろ?」
「そのたまたまは、世界を大きく刺激しちまったのにか?」
「うっ、それは言わないでくれ」
やっぱ相当気にしてんだな。
「オホン、ちょっとよろしくて?」
・・・・・・またか。
「今度はなんだ?巻き毛カナリア」
「なっ!?あなた、いい加減馬鹿にするのはお止めなさい!!」
「今のは冗談って言うんだよ」
でも内心では少し馬鹿にいていた。
「ならもう少しマシな冗談を言いなさい。全くこれだから男と言うのは」
お〜い、オルコット。言葉選ばねぇと・・・・・・
「なんだよ。男が冗談を言ったらいけないのか?」
あ〜あ、噛み付いちゃった。
「あら、極東のお猿さんの言う冗談が余りに面白味にに欠けると言っているだけです。それとも、私の言葉が通じない程の低能ものなのですの?」
・・・・・・自重しろ。
「大体、ISについての知識が皆無のあなた達に、この私、セシリア・オルコットが劣るはずありませんのよ」
ピギギッ
「偶然動かせただけで周りから騒がれて、どれ程のものかと期待していましたのに、ほんと、おめでたいものですわね」
「…あのなぁ、俺は試験会場を間違えてうっかりISにさわったら動かせただけってのは否定しないけど、いくらなんでも言い過ぎたと思うぞ。それに俺達に何かを期待されても困るんだが」
俺の顔をうかがってのサポートか、一夏。ありがたいがそれは…。
「ふん、所詮男なんて、私たち女に媚びることでしか脳がないくせにーーー」
ジャキッ
「おい、おめぇには“自重”って言葉がねぇようだな?」
俺の怒りが堪忍袋の緒をぶち破り、MP7サブマシンガンをオルコットの喉元に押し付けた。
突然の出来事に周囲は凍り付くが、その中で一番に状況を呑み込んだのが、篠ノ之箒だった。
「おい!!何をしているんだ!!」
「見ての通り、うるさい巻き毛カナリアを黙らせているだけだ」
篠ノ之の次にその場を理解し終えた一夏も、
「なあ、ちょっと待てよ!いくらなんでもいきなり銃を向けるなんて良くねぇだろ!」
「一夏、世の中そんな甘くねぇんだよ。それに、他人を黙らせる為には常に力を保持・主張しなきゃならん。でなければ、何も守れない。大切な人はおろか、自分の命さえもな」
「でも、だからって」
「人の命を守ること救うことに、どれだけ自分が汚れなければならんのか、貴様のようなひよっこに分かるとでも言うのか!!」
一度死んだ身だからこそむきになってしまう。
話が逸れていることに気付きながらも、こいつに絶対教え込まなくてはならない。力を持つ者の責任と代償。どれだけ重く、どれだけ辛く、どれだけ堪え難いか。
取り敢えず、オルコットの喉元に当てていた銃口を放し、量子変換格納した。そして、オルコットに対し
「今回は一夏達に免じてやる。しかし、これだけは言っておく。・・・・・・一週間後、クラス代表決定戦の時、生半可に来たら死ぬからな。覚悟しておけ」
オルコットは未だに動揺してるのかうまく返事が返せないでいる。しかし気に止めず一夏の方を向き、
「お前もだ一夏。これから一週間後に向けてしっかりと自身の鍛練に集中しろ。篠ノ之、お前が一夏の鍛練に付き合え。良いな?」
「なっ!?何故私なのだ!!そのくらいなら私でなくとも・・・・・・」
「今の一夏はISがどうこうって以前の問題だ。そいつの基礎を鍛え直せるのはお前しかいない。それとも、自分が気恥ずかしい思いをするくらいなら一夏が死んでいなくなった方が良いってのか?」
「そっ、そんな事は無い!そんな事は・・・・・・」
「・・・・・・はぁ、剣道の全国大会優勝は己の力に酔いしれたいが為か。愚か者め。そんなことでよく姉を軽蔑出来るな?感心するよ。何も失っていないのに失ったと被害妄想に浸り、挙げ句、幼馴染みの危機をも救えないお前は、非力の化身だな。」
「・・・・・・くっ!」
俺の挑発に、篠ノ之は身を翻し、自分の席に戻り、立て掛けてあった竹刀袋から竹刀と一緒に入れていた木刀を引き抜き、
「これ以上、私を馬鹿にするな!!」
「やれよ」
「なっ!?」
「…やれるもんならやってみろ。小娘」
「〜〜っ!!天誅!!」
彼の挑発にムキになり、木刀を大きく振り上げ、重力任せ力任せに振り下ろし、
ゴスッッ
物凄い殴打音がクラス中に響いた。
彼の右目のちょうど真上の額部に直撃していたが。
「っ!!」
避けることも防ぐこともせず、彼は、私の一撃を喰らった。直撃した箇所から、どす黒い血が流れ始めた。
「この程度の挑発に引っ掛かる様じゃ、お前も、何も守れない。むしろ、自らの手で大切なものを失ってしまうのではないか?」
「あ・・・・・・ああ・・・・・・」
頭が真っ白になった。自分が今やった事がどれだけ罪深い事かを。
(また・・・・・・また私は・・・・・・)
かつて、姉のIS発表直後の、憂さ晴らしの剣道をやっていた自分を思い出す。
そう、私は、姉さんの、ISのせいで転々と引っ越しをさせられ、古くからの友達にも、会うことはおろか、電話や手紙のやり取りでさえ制限され、散々なまでにストレスを溜め込んでいた。唯一、一夏との繋がりとしていた剣道も、中学二年の大会で、相手を傷付け、敗北でない涙を流させてしまった。
・・・・・・変わって無い。何も、何一つ変わっていない。
全身から力が抜けていき木刀が手から滑り落ちて、カランッと音をたて、その音と同時にその場にすとんと腰を落としてしまった。
「わっ、わたしは・・・・・・」
泣きそうな顔をしながらスカートをシワが出来そうな程に強く握り締めていた篠ノ之を見た
「何萎れた顔してんだ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「自分が『良くない事をした』って思ってるんだろ?」
・・・・・・こくん
「なら、良いじゃねぇか。」
「えっ?」
少しばかり呆けた顔をあげ、俺を見るなり驚きの顔を見せた・・・・・・っつっても、
「あ、頭の、額の怪我は!?顔の血は!?」
普通ならまず疑う。そして篠ノ之の反応は正しい。
ーGNリペアー
体内で構成、蓄積しているGN粒子を用いて状態異常や外傷の修復を行う。また、流出した血液等の体液は、粒子化して酸素に変わりながら蒸発する。俺の
これにより、一瞬の内に傷を治し、血を蒸発させた。
「ご覧の通り、俺は普通じゃねぇんだ。だからこそ、周りの人間には普通に生きていて欲しい。その為に俺はお前の一撃を避けず防がず、直撃して、相手に『自分が何をしたのか』ってのを分からせて、同じ過ちを繰り返させない様にする。そうする事で、相手を成長させる」
そう言いながら篠ノ之の頭を撫でた。
「同じ事は二度とすんなよ?」
「・・・・・・はい」
篠ノ之は顔を引き締めて返事を返してきた。
「いい子だ。さてと」
そう言いながら立ち上がり、
「一夏、篠ノ之、お前達は一夏の鍛え直しを主眼に、一週間後に向けて鍛練しろ。いいな?」
「おう!」
「はい!」
二人とも意気な顔を見せた。そして、オルコットに向けて、
「お前も、しっかりと自身の鍛練をしろ。でないと一夏に出し抜かれるぞ。いいな?」
「わ、分かっていますわ。そちらこそ、私をあまり甘く見ないでくださいな」
「ふっ、お前らしいな。まあいい。だが、“口は災いの元”ってのをしっかりと覚えておけよ?」
「うっ、そ、それも分かっていますわ!」
…まだ少しビビってるな。ま、とにかく今は周りをなだめないとな。
「よし、みんな、迷惑を掛けたが今回の騒ぎはこれにて終了。すまなかったな」
そう言うと周りの
…仕事が増えた面倒感と周りに迷惑を掛けた罪悪感で気が滅入りそうだ。でも、しゃあねぇか。