〜放課後〜
剣道場に、竹刀を交える二つの影がそこにあった。
「めえぇぇぇん!!」
バチンッ
見事、面に一本入れたのは篠ノ之。入れられたのは一夏だった。
「一夏、どうしてそこまで弱くなっている?」
「いや、中学の頃はバイトばかりで、竹刀を持ったのも三年ぶり位だからな。」
面をはずしながら篠ノ之が言い、同じく面をはずしながら一夏が答える。
「今竹刀を交え気付いただろうが、このままだと、確実にオルコットに潰されて終わる。IS以前の問題だ。故に篠ノ之、こいつの鍛練、お前に任せるぞ」
割り込みつつ俺は指導を入れた。
「はい、任せてください」
少し緊張気味に返事をした。先程の罪悪感がまだ抜けきっていないようだ。
「篠ノ之、さっきの事、まだ引きずってるのか?」
「…はい」
ピチッ
「あたっ!?」
軽く篠ノ之の額にでこぴんをかました。
「なっ、何をするんですか!?」
「お前の気分転換」
「だからと言って、何故でこぴんなのですか!?」
「その方が気がほぐれやすいと思ったから。それに、たかが一歳差なんだから、敬語じゃなくても良い。むしろため口じゃないとこっちが接しづらい」
「いえ、しかし…」
「敬語禁止」
「…分かりまし…じゃなくて、分かった」
「よろしい」
?一夏、何ポカンと口を開けてる。
「ところで高嶺」
いまいち緊張気味だな。
「なんだ?」
「その…先程の事なんたが…。やはり、しっかりと謝罪したい。先の無礼、本当に申し訳無い!」
おいおい…なにも土下座までしなくても…。ほら、ポカンと口を開けていた一夏の顔が驚愕の顔に変わってんぞ。
「気にすんなって。第一俺は普通じゃあ無いってさっき言ったろ?」
「いや、高嶺が許してくれたとしても、私の心が許せないんだ!!私は武士だ!!いかなる罰も受ける!!」
…はぁ、しゃあねえな。
「篠ノ之。取り敢えず頭上げろ」
むくりと頭を上げて…。
ごちっ
「あたっ!?」
っと俺の拳に頭頂点が当たり、ちょっぴりいい音が聞こえた。
「なっ、なっ、何をするんだ!?」
「何って罰」
「なっ!?」
「少なくとも、俺からすれば今ので充分なんだが」
「…からかい過ぎだ」
そう言いつつも、少し頬を膨らませた。だいぶほぐれなた。
「わりぃわりぃ。さて、今日は時間ももう無いし、お開きとしますか」
「ああ」
「…おう」
篠ノ之、一夏の順に返事をした。てか一夏、お前バテ過ぎだ。
「よし、俺は先に帰るから、二人ともちゃんと汗拭いておけよ」
「ああ、分かった」
「おう、分かっている」
一夏との鍛練を終えた
「…………」
ふと、鏡に映った自分の姿を見た。
『六年ぶりだけど、箒ってすぐに気付いたぞ』
「…………」
『ほら、髪型だって昔のままだし』
「……えへへ♪」
一夏が私の事を覚えていてくれたのは、とても嬉しかった。髪型も覚えていてくれたし、それに…。
「ふふ、男前な顔になっていたな」
…しかし、
「家庭の事情、もとい千冬さんに楽をさせようと思ったとはいえ、あそこまで弱くなっているとは…」
正直、がっかりした。
「…よし、明日からも鍛練をしよう。そうすれば、その時は一夏と二人っきりで……は!!」
恋する乙女の純情とは、儚く、美しく、そして恐ろしい…妄想が。
「いかんいかん!そんな不埒な事を考えるなど…でも、二人っきりという状況があり得ないとは言い切れない。ああ、しかし、高嶺がいる可能性も、ああくそっ!!」
…その後約二十分妄想は続いた。
―IS学園休憩地点―
朝にジョギングをする生徒の事を考えて転々と東西南北四ヵ所に設置されている休憩地点、そのうちの南の休憩地点のベンチに、
(つっても、千冬通して呼び出すやつは一人しかいないか)
「……いい加減出てきたらどうだ、兎さん?」
「やっぱり気付いていたんだ」
そう言って右後ろに木の影から姿を現したのは、言うまでもないこの世界のキーパーソン。天才科学者にしてISの生みの親、篠ノ之束だ。胸元が少し開いた空色のワンピースにエプロン、腰より少し下まで伸びた紫気味のピンクの髪、耳の後ろ側の一部の髪を三ッ編みにして前側に垂らしている。のんびりとした目は、大人らしさと子供らしさのバランスをうまくとっているかのようにも見えた。
「一つ確認したい」
「何かな?」
取り敢えず、一番に聞きたいことを聞く。
「俺にコンタクトを図ったのは、科学者として興味を持ったからか?それとも、個人的に興味を持ったからか?」
「うーん、君のISに関しては科学者として、君自信に関しては私が個人的に興味を持ったからかな」
「ほう、千冬からどのくらい話を聞いた?」
「君がISを使えることと、君が普通じゃ無いって事くらいだね」
「なら、俺が転生者で、今は十六だけど、前世では二四って事は?」
「それは初耳だなぁ。でも、科学者の観点から言わせてもらうなら、そんな非科学的な事はすぐには信じられないな」
「だろうと思ったよ」
そう言って、俺は胸部を中心に光のラインを展開した。そのラインは、デススティンガーを討ったときの蒼い翼の騎士、現在のこの世界で“蒼騎士”と呼ばれているあのときの騎士甲冑を象っていた。
「…なるほど、確かに君は普通じゃないね」
「だろ?」
「でも、君と君のISには強く惹かれる何かを感じるんだ。んで、早速なんだけど君のIS、見せてもらってもいいかな?」
「いいぜ」
その返事の直後、俺はサイファーを展開した。
デススティンガーとの戦闘でだいぶダメージを負っていたが、今では修復は完了済み。
「やっぱり
「気に入らないか?」
「ううん、むしろもっと興味が湧いた。じゃ、早速バラしてもいいかなぁ〜♪」
ウキウキとした口調で、ワキワキと指を動かす……!?
「ちょっ!?お前まさか、俺までバラす気じゃねぇだろうな!?」
別の意味で身の危険を察した。
「ええ〜、少し位いいじゃないか〜」
「無邪気に言うな!!逆に怖いわ!!」
「ちぇ〜」
ちぇ〜じゃねぇよ!!ちぇ~じゃ!!
「まあいいや。それじゃせめて、君の機体のスペックデータと武装データを取らせてもらっても良い?」
「こっちにコピーがある。今はこれで我慢しろ」
「え〜、それじゃ束さんがわざわざ来た意味がなくなっちゃうよ〜」
わざとらしくしくしくと泣き出したが、無視しておこう。
「で?要るの?要らないの?」
面倒だからさっさと帰ってもらおう。
「ん〜、しょうがないな。コピーで我慢するよ」
…わりと切り替え早いな。まあ、その方がこちらにも好都合。
「でも生体データは取らせてもらいま〜す☆」
ナンですとー!!
「いっただっきまーす☆」
「ぎゃあぁぁぁ!!」
飛び込んできた篠ノ之博士をかわそうとするも、その勢い故に押し倒された…。
ドンッ
「イテっ!」
押し倒されて後頭部を打った。…ちきしょ!早く抜け…。
むにゅ
…………。
むにゅむにゅ
「やっ…ん…、そんなに…束…さん…の……おっ…ぱい……んっ…好きな…の…?」
…この世界の成人女性は揉まれたがり多いのではないかとつくづく疑う。特に巨乳な女。
「感じるぐらいならどけ!!」
重低音で静かに言った。
「むぅ、ちょっと位ノってよ」
「…ミンチにすんぞ」
「それは嫌だなぁ」
そう言って渋々どいた。…真耶とは違った感触だったな、しかも白よりのうっすらピンク……ってちっがーう!!
「じゃ、生体データは採らせてもらったからね☆」
はあ!?いつの間に!?
「でも、それ解析するなら気を付けろ」
「ほえ?」
すっとんきょうな顔を晒しながら、間抜けな返事をした篠ノ之博士。
「…だって、調べるだけならまだしも、それを利用しようなんて考えたら勝手に蒸発するからな。だから調べ方には充分に注意しろよ」
「ふぅ〜ん、わかったよ。ところで話が変わるけどさ」
「何だ?」
「君の事は、これからがーくんって呼んでも良いかな?」
「……は?」
「だから、これからは君の事をがーくんって呼んでも良いかって話。良いかな?」
「はあぁ…ダメだって言っても呼ぶんだろ?」
「うん、呼ぶよ」
「…なら好きにしろ」
「オッケー、ついでに私の事は気軽に束って呼んでくれてもいいよ」
「オーライ、それじゃ束、改めてよろしくな」
「うん、よろしくね☆」
この無邪気ハイテンション兎、今度千冬に一発代わりに殴ってもらおう。
ピピピッ
生体センサーに反応、近付いて来てるな。
「そろそろ帰ったほうがいい。人が来てる」
「おお〜!そんな事まで分かるなんて、やはりただ者ではないなぁおぬし☆」
「分かったから帰れ」
「オッケー、それじゃがーくんまったねー☆」
そう言って再び茂みに飛び込んだかと思えば、いつの間にか、熱源、生体どちらのセンサーも束をロストした。……無邪気とはいえ、