#0
恐らく、悪夢を見ていたのだと思う。
妙な寝苦しさを覚えて、クリムは目を覚ましてしまった。
元々クリムは寝付きの良い方ではない。業の深い経験ばかりを積んで来てしまったおかげか、彼が寝床で見るのは大抵がろくでもない悪夢だ。
そういう意味で言えば、まだ今日は運がいいとも言える。「悪夢を見ていたような気がする」という何となくの感覚があるだけで、具体的な内容は全然覚えていなかった。
「……う……」
ただ、夢の中身を覚えていないのはまあ良いが、よほど酷い内容だったのか、寝汗で体中ぐっしょりと濡れてしまって気持ち悪い。
身を起こし、シーツをどけて身体を冷やしながら、クリムは大きく息を吐いた。
「……ふぅ」
額にかいた汗をぬぐい、ふと窓の外の様子を伺えば、月の位置から察するにまだ真夜中を少し過ぎたくらいの頃合いのようだった。流石に正確には分からないが、寝入ってから大体1刻程度の時間が過ぎたくらいの計算だ。
「…………ん……参ったな」
がりがりと頭をかきながら小さく呟く。
明日から、ミリアやコノミと、ちょっとした外出をしようという予定になっている。
出来れば早々に眠りたいところだが、今のような気分では、どうにもそのまま寝直す気になれない。必要な時に自在に睡眠を取れることも戦場を生きる上では大切な技ではあったが、精神的に未熟とされ、事実不安定なところを抱えていたクリムはその手の技術を体得しきれないでいた。
どうしたものかと考え――改めて大きくため息を吐き、クリムは寝間着から着替えて外套を羽織り、少し歩いて頭を冷やすため、自室を後にすることにした。
もちろん、護身用の短剣を腰に佩くのも忘れない。
常に護衛と使用人を侍らせるような普通の貴族様ならば、このような夜中の散歩も、当然許されるような行為ではないのだろうが――そのあたり、雑に扱われているクリムは気楽なものである。何度かコノミの誘いに乗って城を抜け出し城下町を散策した事もあったが、大して罰もなく、領主代行であるシーリス辺りから二、三、小言を頂く程度で済んでいた。
と言うより――そもそも、クリム達の存在はあまり城内の者にも知られていないようだ。
城内を歩いて使用人とすれ違っても、仕事仲間に対してするように軽く会釈をしてくる程度で、一人で歩いているクリムを見とがめるような者は殆どいない。
(付けられた使用人も1人だけだし、護衛は無し……「所詮は種馬」……って事なのかね)
もちろん、戦場で送っていた、泥と血に塗れるような日々に比べれば十分以上の待遇だし、それ以前にクリムはそもそも平民の出である。不平を言うつもりはクリムには毛頭ない。
「ん……?」
とりあえず夜風に当たろうと城壁に上がると――そこに自分と同じような不埒者の姿を発見した。
見知った顔である。
夜更けの王城で1人徘徊するような不審者など、そうそういるものではない。
向こうもクリムに気付いたらしく、気軽な足取りでとてとてとクリムに駆け寄ってきて、場違いに思える程に陽気な声をかけてきた。
「不審者はっけーん」
「お互い様でしょ」
全く緊張のない台詞と共に近づいてきたのは、もはや言うまでもない。
クリムの相棒にして師匠、コノミ=ロクサールである。
彼女が身につけているのはいつものごとく、白と黒を基調とした例の派手な衣装だ。
恐らくそれは、道化を演じる意味もあってのものなのだろう。幼い頃の記憶の中では、彼女は自らの出身地、東洋由来の衣装を好んで着ていたが、いつの頃からか彼女は慣れ親しんだ着物を脱ぎ、こういった奇抜な服をばかり着るようになった。
礼装でもなければ軍服でも使用人の着る服でもない、こんな格好で由緒ある城内を1人徘徊しているのだから、不審者と見なされても文句は言えない。
もっとも――不審者、不埒者と言いつつ、彼女がこうして城内を歩いているのにはれっきとした理由があるのだが。
「こんな時間まで見回りかよ」
「当然。手を抜いていいものじゃーないからねえ」
呆れた口調のクリムに、気軽にコノミは頷いた。
先日、敵対勢力と思しき魔族の侵入者があった件については、コノミ本人から聞いている。
今後も似たような侵入者の存在は考えられるため、コノミとクリム、それに霊的な知覚の優れた者を何人か選りすぐり、交代で見張りをしているのだが――明日早い時間から出かける予定があるというのに、今日のこの時間までコノミが見張りに出ているとは思わなかった。
まあ基本的に、コノミは疲れ知らずだ。こういう事をしていても不思議ではないのだが。
「――うん?」
と、ふと、何かに気付いた様子で小首をかしげ、彼女は鼻先をクリムに近づけて、ふんふんと臭いをかぎ始めた。
「……ふうん?」
そして、ちょっと楽しそうな、悪戯猫が嬲るネズミを見つけたような、そんな笑顔を向けて来る。
「……何だよ」
「いっけないんだぁ、クリムくん」
なじるような言葉尻に反して、しかし表情は酷く気楽で、どことなく嬉しそうでもある。
にこー、と満面の笑みで笑いかけ、コノミはそっとクリムに身を寄せ、耳元をくすぐる甘い声で囁いてきた。
「ムラムラしてるにおい、してるよー?」
ぞっとする、男を欲情させる声だった。
「欲求不満たまってるって感じだねえ? ミリアちゃんとのぬるーいママゴトセックスじゃ満足できないんでしょー? 久しぶりにぼくが思いっきりご奉仕したげようか?」
さらに続けてとんでもない事をのたまうその顔には、悪気など全く見当たらない。
空恐ろしいことをまるで何でもない事のように語るのは、まあ、いつものことと言えばいつもの事ではあるのだが。しかし流石に、ものには限度というものがある。
「……いや、あのな」
「ぼくはいつでもどこでもおっけーだよー? そうだ、どうせならココでしちゃう? ひさしぶりに青姦セックスして、ぼくに種付けしてみよっか?」
あげく、あどけない笑顔で言いながら、挙げ句の果てに彼女はスカートの裾を持ち上げ、ほんの少しだけ太股を見せて誘惑までしてくる始末である。
クリムは、ため息をつくしかなかった。
これが冗談であればどれほどマシだろう。
どっこい、彼女は徹頭徹尾本気なのである。
「冗談。……出来る訳ないでしょ」
「あっはっは。ホント真面目だなぁクリムくんは」
苛立ち交じりに吐き出したクリムの台詞に、コノミはあっさりとスカートから手を放し、扇情的な雰囲気を一瞬で引っ込めてあっけらかんと笑って見せた。
無駄話はこれでおしまいとばかりに対峙するのをやめ、クリムはほんの少し不機嫌にきびすを返して城壁を歩き出す。コノミも図太い物で、そんな相棒の態度を全く気にした様子もなく、やや足早に歩いてクリムの隣に追いつき、歩調を合わせてきた。
「あらら怒っちゃった? ごめんってば」
「別に、コノミには怒っちゃいないけどさ……性格悪い弄り方はしないでよ」
「ええー? ひどいなぁ。ぼくはいつだって本気なのに」
「なお悪い」
「まあミリアちゃんに遠慮するのは分かるけどさ。本気で我慢出来なくなったら言いなよ? ぼくがたーっぷり抜いてあげるから」
「つくづくうっさいわ」
「あっはっは!」
どこまでが本気とも取れぬ無駄話をしながら――内心ため息をつく。
(……一体このお方も、何を考えてらっしゃるのやら)
いつもいつも必要以上にこちらの気持ちを見透かしてくるのだから、その調子でこちらの気持ちを察してくれてもいいだろうに。コノミも何か思うところでもあるのか、この件についてはかなりの頻度で、似たようなからかい方をしてくる。
いつももふざけているような振る舞いをする事も多くて、いまいち本心がつかみにくい相棒ではあるのは確かなのだが。
「……ん?」
さすがに今回ばかりは苦言を呈そうかとしていたクリムの隣で、しかしコノミはそれを許さず、ふと何かに気付いた様子で後ろを振り返った。
彼女が視線を向けたのは、アルタレナ王城の本棟、そのほぼ中央部である。
「どうした?」
「ミリアちゃんの部屋。気配が動いてるね」
「うん?」
言われてクリムも意識をそっちの方に向けると、確かに何者かが動く気配があった。気配の動き方から察するに危険な事態は起こってはいないようだが――しかしこの夜更けである。何か問題が起こっているのかと、少し気にはなった。
どちらともなく頷き合い、二人はミリアの部屋に向かうことにした。
ミリアの部屋がある王城の中央部は、陽の光を取り込める構造になっていないため、昼夜問わず魔法灯による照明が付けられている。真夜中にも関わらず昼間と変わらぬ明るい廊下を足早に急ぎ、いざ彼女部屋の前に着いてみると、確かに扉の隙間から僅かに灯りが漏れているのが確認できた。
あらためて気配を確認すると、中にいるのはミリアの一つだけ。
ノックをしてみると、「は、はい。どうぞ」と、少しどもったような声で返事があった。
とりあえず無事なようだが、しかし少し様子が妙だ。
一体何があったのか。
「入るからね」
一言そう断りを入れてから、念のため懐の短剣の柄に触れつつ扉を開けて――そしてその中の様子を目の当たりにして、クリムは一体何事かと目を剥いた。
結論から言えば、まあミリア自身は全く無事だったのだが。
部屋の中が、何というか、しっちゃかめっちゃかになっていたのである。
就寝前にミリアを送り届けた際にはきれいに整理されていた部屋の中が、まるで地震が起きたか、強盗にでも入られたかのように、衣服や書籍類がひっくり返され、部屋中に撒き散らかされている。
そして――極めつけにその部屋の主たるミリア自身も、まあ無事は無事だが、無残な有様になりはてていた。
艶やかな赤毛、優しげな瞳。細身の滑らかな体躯。
平静にしていれば目の覚めるような美しい娘――であるのだが。
そんな彼女が、寝間着のまま服の散乱するベッドに腰掛け、何やら一冊の本を開いて、もうものすごく情けない表情で、滂沱と涙を流しまくっていたのである。
「あ、グリムざま……」
こちらに気付いて上げる声も、涙に濡れて濁り、いつもの甘く涼やかな響きは全くない。
「……何やってんの」
「あ、あの。えっど……ぞの。あじだのじだぐをじて、もっでいぐほんをえらんでだんでづが、その……」
「……」
言っている事はよく分からなかったが、まあ何となく状況は理解した。
クリムと別れた後、明日の支度をする途中、持って行く本を物色していたらそのまま読みふけってしまった――とまあ、そんなところなのだろう。
その特異極まる経歴に似合わず、ミリアはかなりの読書家だ。わざわざ城付きの図書室とは別に自室に本棚を設けており――しかもそれもインテリアとして置いた物でなく、愛読書をすぐ側に置いて繰り返し読むためだというのだから恐れ入る。
いや、というか、今気にすべき点はそこではない。
「……自分で旅支度してるのか」
「あ、はい……」
当然の話だが、ミリアにもクリム達と同様、使用人を付けられている。
遠出の支度も使用人に任せればいいのに、どうやら、できる限りのことは自分でしたがる彼女は、それを拒否したらしかった。
立派な心がけ――と根が庶民のクリムは思わずそう考えかけてしまうが、実はこれは、大きな間違いだ。
曲がりなりにも貴族として扱われる者には、相応の行動というものが求められる。
使用人の仕事を奪ってまで自分の身の回りのことをしたがるのは、貧乏くさい道楽として周囲に捉えられ、軽んじられるきっかけにもなりかねない。
「あああ、シヅキが、シヅキちゃんがぁぁあぁ……」
が――まあ、そもそもそれ以前の話として、今のミリアは、涙どころか、あろうことか鼻水まで垂らしながら、手にした物語本の登場人物に感情移入しまくってむせび泣いたりしている訳で。美人が台無し、貴族らしい気品もへったくれも全くない有様となっている。
これが先代魔王を殺し、その血肉を食らいつくして己が体内に力を封じた現魔王だというのだから、世も末と言うべきか、世の中平和と言うべきか。
「あー……まあとにかく。明日は早いんだから程々にな」
「は、はい……ずびばぜん……」
と素直に返事しつつも、本を閉じる彼女の仕草は、心底名残惜しそうだった。
「何なんだかな、もう……」
気が抜ける。
明日から遠出をしようと言っているのに、結果的に参加者全員が夜更かしをしている状況になってしまっている。
(こんなに腑抜けてて良いのかね……)
明日以降の自分達の予定も、何より自分たちがしている「おつとめ」だって、ある意味戦時中と同じく、世界の命運を背負っているもののはずなのだが。
「とりあえず、コノミ。ミリアの荷造り、手伝ってあげてくれるかな」
「はいはい。了解ー」
流石に着替えの準備などで下着類を扱うだろうから、クリムが手を出す訳にはいかない。
コノミが依頼に上機嫌に応じてミリアに近寄っていくのを眺めながら、クリムはため息をついた。
まあ、平和なのは、それはそれで望ましい事なのだけれど。
#0-3
「わたしの事、孕ませてください」
先代の魔王オズバルドが倒され、魔王戦争が終結した、その数ヶ月後。
ミリアンドール=アバルスカが、英雄クリム=ロクサールを呼び出し、彼に投げかけた、そんな突拍子もない言葉が、全てのことの始まりだった。
ほとんど初対面の相手に、自分を抱いて孕ませろなどという――そんな理不尽きわまりない依頼に、当然ながら拒絶の意思を見せたクリムだったが、しかしその依頼の裏には、世界の命運を揺るがしかねない事情があることを、彼は知ることになった。
今世代の魔王は、血を分けた子らにその力と魔性を分け与え、互いに殺し合い、共食いし合うことで、その力と魔性を更に高める性質を持っているという。
世代交代の中で、自分たちの血を更に濃くし、魔王としての力を高めていくための血の掟。
そして先代魔王の娘、ミリアンドールもまた、その血の掟からは逃れられなかったらしい。
魔王である父を殺した後、その死肉から発する毒と瘴気が世界を汚染するのを防ぐために、ミリアンドールは父の死肉を喰らって腹に収める事しか出来ず――結果的に彼女は、最大最悪の魔王としての力と魔性を、その身に宿す事になってしまったのである。
このままではミリアンドールも、いつ魔王として「覚醒」し、再び世界に厄災をもたらす存在になるとも限らない。
今は何とか理性で持ちこたえているが、それもいつまで保つか分からない。
追い詰められたミリアンドールは、苦肉の策として、自らを苛む魔王の性質を、逆に利用する事を思い立ったのだ。
血を分けた子らに力を分け与え、互いに殺し合わせ、共食いし合うことで、その力と魔性を高める性質。
それは――逆に言えば、子を成し血を分けたものが増えれば、魔王としての力は生まれた子供の数の分だけ分割され、弱まることも意味している。
「なら、たくさんたくさん子供を産んで、そうして生まれた子供達をうんと愛して育てて、そうして魔王の力を弱めていけば良いんです」
そう。心優しき魔王であるミリアンドールは、自らの、女性として一番大事なはずのその胎を使うことで、彼女はたったひとりで、世界を守ろうとしていたのだ。
英雄クリムは、その相手として魔王ミリアンドールに見初められたのである。
世界を守るための子作り、その相手役として。
つまるところ――はじめからクリムに選択の余地などどこにもなく。
しかし同時にミリアのその覚悟に心を動かされた彼は、結果的に、むしろ自ら進んで、その依頼を受け入れることになったのだ。
そして――月日は流れ。
そんな奇妙なクリムとミリアの関係が始まって、そろそろ一ヶ月が経とうとしていた。
#1ー1
いきなりの計画だったこともあって、旅の移動手段として手配出来たのは、魔法駆動式の旅装車両一台のみだった。
旅装車両<マリーダ>は、もとは豪商や貴族などが地方を旅行したり視察したりする時に使用するための寝台車として少数生産されたもので、そのおかげか、旧式ではあるものの内装のしつらえや備えられた寝具自体はかなり質がいい。
が、一方で、食料を備蓄したり調理をする設備が殆どないのが少々問題だった。
尤もこれは、別に設計上の欠陥という訳ではない。
貴族などがこういった車両を使用し旅をする場合には、寝台車両一台のみで行動することはまずあり得ないからだ。少なくても五台以上の「お供」が常に行動を共にし、食料の備蓄や調理、外部との通信、外敵からの防衛などといった居住以外の機能は、そういった随伴する車両が受け持つのが本来の使われ方なのである。
だが――今回の旅行には、そういった「お供」の姿はない。
クリムと、ミリアと、コノミだけの旅路である。
当然そうなると、旅先で食材を入手したり、車外で自炊する必要が出てくる訳で――
「……まあ、車一台用意できただけでも儲けものだけどな。宿を探す手間が省けるし」
「ですね」
アルタレナ王城を出て2日目の昼前。持ち込んだ食料も早々になくなったため、クリム達は車を止めて、街道沿いにあるロッカの町に買い出しに出ることになった。
ロッカの町は、アルタレナから北征街道を北に下った先、3つめにある宿場町である。
北征街道沿いにある他の宿場町同様、元々はアルタレナから前線へと物資を届けるための、いわゆる中継基地として設置された砦の一つで――かつての魔王の影響圏内に食い込んでいた関係上、人口の割に大がかりな城壁で四方を囲まれており、その装いはどこか物々しい印象がある。
しかしそんな経緯が嘘のように、戦後の今となっては、通りを歩く人々の顔は皆明るい。物騒な顔つきの輩の姿を見ないではないが、軍事基地には似つかわしくない陽気な笑い声が、あちこちから絶えることなく聞こえて来ている。
ロッカに限らず、こういった前線基地跡のほとんどは、戦後、魔王の影響圏だった領域を開拓するための足がかりとして利用され、意外な繁栄を見せているという。条件によっては、そんな中から第2のアルタレナとして大発展を遂げるような町も現れることだろう。
「さて……」
そんな、予想以上にごった返す人混みの中、懐から買い物品をメモした紙片を取り出し内容を確認しつつ、クリムは慣れた足取りで、ミリアはどこか戸惑いながら歩いていた。
ちなみに、コノミの姿は見当たらない。彼女は留守番だ。
こういった辺境では、馬車、魔法駆動車問わず、盗難の被害が後を絶たないので、その用心のためである。
「……すごいですね。人がいっぱいです」
「アルタレナの方が多いけどね」
「そうなのですか? わたし、こういう所を歩くの、初めてなので」
「ああ、なるほど……そっか」
そんな益体もないおしゃべりしながら、きょろきょろと興味深そうにミリアはあちこちを見回している。
一目で人間のものではないと分かる赤毛を隠すため、ミリアは動きやすい旅装の上にフードをかぶっているが、その上からでも随分とはしゃいだ様子であるのがはっきりと分かった。
確かに城でずっと軟禁状態だった彼女からすれば、こんな何処にでもありふれた町通りでも、新鮮そのものの風景なのだろう。
雑貨屋。食料店。武器屋。仕立屋。軽食を食べさせる店、魔法具店。
そしてそれらの店舗を行き来する買い物客達。
規模こそ大きくない町だが、流通が活発なおかげでどの店も繁盛しているようだ。宿の数も意外に多い。
「活気がある」とはよく言ったものである。
こういった混沌とした人混みからは、混沌とした、雑然としているが故の、人間社会の力強さ、生命力のようなものを感じる事が出来る。
そしてこれこそが、ミリアンドールが魔王を倒し、守り抜いたものだ。
「……楽しい?」
「はい、楽しいです」
「そりゃ良かった」
何の気ない問いかけにこうも満面の笑みではっきり頷かれると、何だかちょっと面映ゆい。
そうしているうち、二人は少し迷いながらも目当ての食料品店にたどり着く事が出来た。
「へえ……結構、品揃え良いな」
「そうなんです?」
「うん。アルタレナから近いからかも」
なにやらミリアが興味深そうに眺めてきている視線を意識しつつ、買い出し品を探していく――と、いきなり店の奥からやたらと馴れ馴れしい声がかけられた。
「お、あれ? クリム? ヤヌカのクリムじゃねえか!?」
「うん……?」
声をかけてきたのは他でもない、この店の店主だ。
雑に髪を刈り込んだ、厳つい顔つきとたくましい体つきのその男に、一瞬、クリムはいぶかしげな視線を向けかけて――しかし店主の顔を眺めて、すぐに記憶が蘇ってきた。
「……あ! もしかしてジーニのおじさん!?」
「おうよ! ホント久しぶりだな! まさか生きて会えるとは思ってなかったよ!」
偶然というものはあるものである。どこかで見た顔、聞いた声だと思ったが――この店の店主、かつてクリムがいた里に出入りしていた商人だ。
「いやあびっくりした。ヤヌカが全滅したって聞いてよ、みんな死んだと思ってたら。まさかこんなところで生き残りに会えるたぁな! しかもあのチビのクリムがこんな別嬪さんな嫁さん連れてるなんてよ!」
「あはは……おじさんも元気そうで何より」
店主の遠慮ない視線と言葉に、どこか恥ずかしそうに会釈するミリアを横目で眺めつつ、それでも思わぬ再会に顔を綻ばせてしまう。
とはいえ、それこそミリアが傍にいるのに、延々昔話をする訳にも行かず。
談笑しつつ予定通りに買い物をして――太っ腹にも大幅に値下げをしてくれた――名残惜しい気もしたが、結局大して長居することもなく、クリムはミリアを連れて店を後にした。
「せっかく生き残ったんだから。達者に暮らせよ!」
見送られながら最後にかけられた台詞は、妙に恥ずかしくもあり、同時に、少し重くもあった。
さておき――これでとりあえず買い物は全部完了だ。
「これで……忘れ物はないか」
「はい、だと思います」
メモを二人して眺めて、頷き合う。
あとは車で待たせているコノミに手土産を一つ二つ買えば、もうこの町での用事はない。
空を見上げれば、そろそろ太陽も高くなりつつある。早めに帰って昼食の支度をしたほうがいいだろう。
「そろそろ戻ろうか」
「あ、はい」
と素直に返事しつつも、何か気になることがあるのだろうか、ミリアはしきりに来た道を振り返っていた。
「どうした?」
「あ、えっと。あの……」
少し躊躇うようなそぶりを見せて、それでも好奇心が勝ったのか、ほんの少しおずおずとした様子で、ミリアはクリムに問いかけてきた。
「さっきのお店の方、クリム様のお知り合い……なんですよね」
「ああ。昔暮らしてた――っていうか、故郷に出入りしてた商売人だよ。顔は怖いけど、気の良いおじさんでさ。よくお土産にお菓子とか貰ってた」
「あのお方は、クリム様が魔王殺しの英雄だと、ご存じないのですね」
「……ああ、そこか」
そこに気がつくとは思っていなくて、クリムの顔に苦笑が浮かぶ。
「俺が今の身体になったのは故郷が全滅した後だしね。それから後にはあの店長には会ってないし。まあ普通に死んだと思われてたんだよ」
「でも、クリム様ほどの英雄なのに。わたしも、顔、見られてしまいましたけど、魔王ミリアンドールだとも気付いておられなかったようですし」
「そりゃ、まあ。そりゃそうだろ」
「……そうなのですか?」
「この辺りは魔法通信の使い方も限定的だし。俺の顔もミリアの顔も知られてないよ。むしろ町の人全員に知られてるアルタレナの方が特殊」
「……はぁ」
説明を受けて相槌を打ちつつも、ミリアはどこか釈然としない様子でもあった。
しかし世の中とはそういう物だ。
魔王は死んだ、戦争が終わったと言っても、その細部なんて世の中の殆どの者が気にも止めていない。通信手段の豊富な都市部ならばともかく、人の世の大半は、魔王がどんな存在だったか、それを打ち倒したのは一体どんな名の者だったか――それすら知らないだろう。
そしてそもそも、そんなこと、世の人々が知る意味も必要もないのだ。
彼らにとって重要なのは、魔王が倒され、魔物の脅威が減り、以前より多少なりとも安心して日々の生活を送れるようになったこと――ただそれだけだ。
平穏な生活を脅かすのは、魔物の群れだけではない。
人間だって人間に酷いことをする。
ものを盗む。陵辱をする。挙げ句の果てに命を奪う。
人の世はいつでも生き残ることに精一杯だ。たかが戦争を終わらせただけの英雄の事を気にかける余裕なんて、人々にある訳もない。
「魔王を殺したって、生活に余裕が出来る訳じゃない。たとえば借金が帳消しになる訳でもないしね。みんな、明日のことで頭がいっぱいなんだよ」
「……そういうものですか」
「そういうものですよ」
感心したような呆然としたような、曖昧な表情のミリアに、笑いながらクリムは頷いた。
それで納得してくれるのかと思いきや。クリムとしては気軽に口にした台詞のつもりだったが、ミリアにとっては何か、「明日のこと」という言葉に、引っかかるものがあったらしい。
「明日――明日のこと……」
しばらくその言葉を繰り返し――やがて彼女は顔を上げ、どこか真剣な目をクリムに向けて来た。
「……ふと思い出したのですが」
「うん?」
「わたしの父を――魔王オズバルドを倒した後、それから何をしたいか……とか。クリム様は考えたことがありますか」
「………」
虚を突かれた思いで、思わずクリムはミリアの顔を見た。
澄んだ黄金色の瞳がこちらをじっと見ている。
責めるような表情ではなく、むしろそこにあるのは、共感だろうか。
「……そういえば考えたことなかったな」
人混みの中をゆっくり歩きつつ、少し空を見上げてそう呟く。
そもそもの話――クリムの戦闘能力は、何度も無理な改造を繰り返しても、それでようやく、なんとか先代魔王オズバルドと差し違えることができる程度のものだった。
戦いの後、生き残る可能性なんて、クリム自身全く考えていなかった。
魔王が倒された後も、まるで決戦兵器クリムの存在を持て余しているかのように、軍部は彼をあちこちの地方に飛ばして残党狩りに没頭させ、クリムはそれにかかり切りになっていた。
目の前には課された使命が山積みで、いつも忙殺されていて。
だから「自分が何をしたいか」は、いつも何処か、脇に追いやられているのが常だった。
「わたしは、何度か考えたことがあります」
のんびり歩くクリムに追いついて、真横に寄り添う位置につきながら。ミリアもどこか遠い目をしながら、訥々と語りかけてきた。
「考えて、悩んで……でも、いつも分かりませんでした。ずっとずっと、父を倒すことばかりを考えていたので。わたしには、他に何が出来るか、わたしは他に何がしたいのか……考えて、でも、思いつきませんでした」
「そっか……」
魔王と英雄。
正反対の立場であるというのに、クリムとミリアは本当に似たもの同士だ。
「でも……これからはそうじゃないでしょ」
「……あ、そうか。そうですね」
目を瞬かせ、少し驚いた様子を浮かべたのは一瞬のこと。頭の良い彼女は、クリムが何を言わんとしているかすぐに気付いたらしい。どこか嬉しそうに笑顔に切り替え、しっかり頷いてきてくれた。
そう。そんなふたりは、しかし既に、明日を見て生きている。
クリムが、ミリアを愛すること。
ミリアが、クリムを愛すること。
そしてふたりで子を産み、正しく育むこと。
きっかけそのものは、魔王を封じるための作戦として始めたことではあるけれど。
「ていうか……そうだ。ちょうど良かった。渡そうと思ってたものがあるんだ」
「はい?」
不思議そうに見つめるミリアの前で、何となく気恥ずかしい気分になりながらクリムは買い物袋に手を突っ込み、その中から一つの品物を取り出した。
「これ、さっき買ってたんだ。はいどうぞ」
言いながらミリアに示して見せたのは――小さな石飾りついたネックレスである。
飾りに使われているのはこの辺りで取れる魔法石で、簡単ながらちょっとした細工をされているらしく、淡く翡翠色に光っていた。
食料品を買い込む前に立ち寄った別の雑貨屋で、こっそりと買っておいたものである。
「あ、これ……」
ミリアも見覚えがあったらしい。少し驚いた様子で目を見開いていた。
「さっきの店で、ちょっと欲しそうにしてたでしょ」
「そ、それは。あの……はい」
否定しかかって、それでも認めてしまうのが、素直で真面目なミリアのいいところである。
「というわけで、これは心ばかりの贈り物です。何て言うか……まあ。これからもよろしくって言う気持ちを込めて」
「そ、そんなの、いただけません!」
しかし、返ってきた反応は予想外のものだった。
別に大した品でもないのに、何故かひどく慌てた様子でミリアは首を振ってきたのである。
「なんでさ」
「なんで、って、えっと、だって、そんな! 私にはもったいないです! 無駄遣いです!」
「何言ってんの」
あまりにも庶民じみたその反応に、ちょっと笑ってしまう。
クリムが買ったネックレスは決して高価な物ではない。使われている魔法石も、純度が低く本来の市場に出回らない物を加工して、装飾品としては見た目に遜色ないようしつらえたものだ。むしろ貴族に相当する立場であり、魔王を倒した英雄であるミリアに、こういった粗雑な品を贈る方がよほど不敬と言ってもいい。
そうだと知りつつクリムがこれを買ったのは、ミリアがよほど気に入った様子を見せていたからである。
「せっかく買ったんだし、受け取ってもらわないほうがよっぽどもったいないよ」
「う、そ、それは、そうですけれど……!」
「受け取ってもらえると、俺も嬉しい」
「……うう」
クリムのそんな台詞に、ミリアはしばし、心底途方に暮れたような表情を見せていたが。
「大丈夫、似合うよ」
「……っ」
付け加えるように口にしたクリムの台詞で、ようやくミリアも、決心が付いたらしかった。
「で、では。頂きます」
「うん」
言いつつ、おそるおそると言った様子でクリムの手からネックレスを受け取るミリア。
しかし、やはりそこは惚れた弱みというやつか。
受け取ったが最後、まだ遠慮はどこかにあったようだが、それでも改めて手の中の魔法石の輝きをじっくり眺め、彼女は心奪われたかのように感嘆のため息をついていた。
「……きれい」
うっとりつぶやくミリアの様子に、内心、クリムは少し安堵の吐息を漏らしていた。
こうして無理にでも旅行をしてみて良かったと、そんなことを思いながら。
元はと言えば今回のこの旅行、ミリアの身に生じているある問題がそもそもの発端だった。
問題というのは他でもない、クリムがミリアの依頼を引き受けてから一ヶ月経ち、日々「おつとめ」には励んでいるものの、ミリアが妊娠する気配が全く見られなかったのである。
専門家が思いつく限りの対策を講じても大して効果はなく――どうしたものかと関係者一同が頭を悩ませていたところに、打開策として今回の提案をしたのは、やはりコノミだった。
「気分転換にさ、お出かけとかしてみたらどうかな?」
あまりにも暢気なそんな提案に、状況をわきまえていないのではないかと周囲は呆れかえったが、しかしその発言はきちんとした理屈があっての事だった。
魔王、魔族はヒトとは違い、より精神生命体に近い肉体構造をしている。
名目上は賓客として迎えられつつも、実質アルタレナ王城に監禁状態にあるような現状では、当然、ミリアには少なからず心理的な圧迫がかかる。
もちろん、普通の魔王ならば、その程度の事で心理的な負荷を感じてダメージを受けるはずなどないが――今のミリアは、自分の内にある魔性を押さえ込むだけで精一杯の状況だ。
今の生活環境が、ミリアの生理に何らかの影響を与えていても不思議ではない。
アルタレナの政務を取り仕切る領主代理達の間からは、当然のように反対の声も上がったが、その中で特に発言力の強いシーリスからの後押しもあり――結局、監視付きという条件で、三人は旅行に出ることを許可された、という次第である。
そう。傍目には暢気な旅路に見えるかも知れないが、この旅行、実はは国軍の厳重な監視下にある。
こうして町の雑踏に紛れ込んでいる今でもなお、少なく見積もって8人以上の狙撃兵が一行を見張っていることにクリムは気がついていた。
ミリアとてその気配に気付いていない筈はないだろうが――それでもこうして、城とは違う空気に触れ、無邪気に笑っていられるのなら、多少なりとも旅に出た甲斐はあったと言う事なのだろう。
が――しかし。
世の中、そうそう上手くいかないように出来ているものらしい。
「……ぁ」
不意に。何かの予兆を感じ取って、ミリアが小さく、喘ぐような声を漏らした。
そして頭上に響くのは――みしり、と、大気そのものがきしむ様な音。
「あ。ああ……」
不安げな声をミリアが上げる。
それに誘われるようにして、次の瞬間、空から突如、何かどす黒いものが降ってきた。
気持ちよく晴れていた青空から黒い染みのような何かが滲み出し、途端にそれは渦を成して、ミリアを中心に、彼女を落下点として、このロッカの町にのしかかってくる。
町の住人達もすぐにその異変を感じ取ったらしく、皆一様に不安そうな声を上げて空を見上げていた。
「……これは」
流石に呻くような声がクリムから漏れる。
魔王の城で見た覚えがあるものだ。
生きとし生けるものの魂を狂わせ、あるいは死に至らしめる、瘴気の渦。
クリムならこの程度は吸っても何の影響もないが、普通の人が一度肺に吸い込めば、それだけで気が狂いのどから血を吹き出して死に至る。
間違いなくこれは、ミリアの仕業。
封印がほころび、彼女の魔性が漏れ出した、その結果である。
おそらく、気分が高揚して緊張が緩んでしまったのだろう。
「あ。あ……クリム様……」
顔を真っ青にして、ミリアがすがるような声を向けてくる。
つまるところこれが――アルタレナ王城の奥深くに、ミリアが監禁されていた理由であり、シーリス以外の領主代理達が、この旅行に反対した理由である。
厳重に何重にも敷かれた封印の中でないと、魔王である彼女は精神状態の上下に合わせて、すぐにこうして瘴気を撒き散らしてしまう。
そうだ――忘れてはならない。
ミリアンドール=アバルスカは、魔王なのだ。
ただそこにいるだけで、周囲を蝕み、破壊と混乱をもたらす、最強最悪の魔族の王。
「……大丈夫。大丈夫だから」
平静を装ってクリムはミリアに声をかける。
同時に、あらかじめ待機状態にしていた破邪の魔法を、簡易術式で励起。羽織っていたマントに付呪し、クリムはこれをミリアに覆い被せた。
長くは持たないが、これで空を覆う瘴気の渦の成長を、ある程度は食い止められるはずだ。
「とりあえず、コノミの所に」
「……はい」
力なくミリアが頷くのを確認してから、クリムは彼女を抱えて、コノミの待つ旅装車両まで一気に跳躍した。
#1-2
どうやらコノミの方も、こうなることを予見していたらしい。
クリムに抱えられたままミリアが旅装車両に戻ると、そちらでも既に諸々の支度は完了していたようだった。
「お、帰ってきたね。おかえりなさーい」
相変わらず気の抜けるようなのんびりした様子でこの短躯の獣人娘は出迎えてくれたが、口調とは裏腹にコノミの仕事ぶりはすさまじいものがあった。
旅装車両の周囲には恐ろしく細かな魔法陣が既に敷かれており、加えてコノミの両手は恐ろしい勢いで印を組み、その魔法陣に更に追加術式を何重にも付与している。
とんでもない力量である。
彼女が用意していた魔法陣は、人間の魔法使いならば一流の腕前であっても一ヶ月かかって仕上げるような規模のものだ。だというのに、それを彼女は、クリム達が買い物に出ていた僅かな時間で組み上げてしまっていたのである。
「コノミ、ミリアの方を頼む。俺はあの瘴気の渦を散らしてくる」
「ほいほい。あ、ついでにさ、ちょっとお使い頼まれてくれないかな」
ミリアを車両内のベッドに寝かせ、同時に買い物袋も床に置いて、再び早速飛び出そうとしていたクリムを、コノミはのんびりした口調で呼び止めた。
「ミリアちゃんの封印具の材料、世界樹の灰を聖別したやつ。思ったより減りが早くてねー。王城まで戻って追加で貰ってきてくんないかなー? 2袋程あれば十分だから」
「了解。少し時間かかるから、ヤヌカで合流ってことにしよう」
「あいあい。里の入り口でいい? 気をつけてね」
相当無茶なお願いをしているはずなのに、クリムは拒否するどころか、当たり前のことのようにこれを承諾。
そして次の瞬間、とん、と軽い足音のみ残して、クリムの姿はどこにも見当たらなくなっていた。
恐ろしいその脚力でもって跳躍したのだと、一体どれだけの人間が理解できるだろうか。
そして、更に――
「あ……」
呆けたような声がミリアの口から漏れる。
車の窓からもはっきりと見えていた、ロッカの町を押し潰さんとしていたあの瘴気の渦が、電撃の迸るような轟音とともに、一瞬にしてあっさりと霧散したのである。
先ほどのクリムの台詞から察するに、彼が何らかの力を使ってあの瘴気の塊を打ち消したのだろう。
(……英雄クリム=ロクサール)
彼自身は、自分は魔王を殺せなかった出来損ないであると自嘲してばかりだが、その実力はこれほどまでにすさまじい。
瘴気の渦が散らされた後も、クリムが帰ってくる様子はない。コノミの依頼通り、必要な品を補充するためにアルタレナまでとんぼ返りしたのだろう。
ここからアルタレナまで、片道でも早馬を使えば優に三日、魔法駆動車でも丸一日かかる距離がある筈なのだが――彼にしてみれば、そしてコノミにとっても、それは駆け足気分ですぐにたどり着いてしまう程度のものでしかないと言う事だ。
「ミリアちゃん、具合はどう?」
「あ、はい……大丈夫、です」
コノミがやっていた作業の方も、一通りの準備は既に出来たらしい。車外の様子をよく見れば、車両の周りに描かれた魔法陣が明滅し、ミリアの身体から微妙に漏れ続ける瘴気を中和してくれているようだった。
そのためだろうか――幾分か、気分も楽になったような気がする。
「じゃ、腕、出してね」
「……はい」
身を起こし、コノミの指示通りに腕をまくり上げると――ミリアの白い腕には、腕輪が何重にも巻かれていた。
「……」
血の気が引いた。
腕にはめられていた腕輪は、元々は白くつるりとした表面に、薄く細かい模様が刻まれていたものだった筈なのだが。それらが全て、焦げたように黒く変色し、焼け爛れたように醜く変形してしまっていたのである。
何重にもかけられた結界の中でしか人界で過ごせなかったミリアが、一時的にでもこうして旅行に出られているのは、この腕輪のおかげだ。
世界樹の灰を押し固め、コノミの手によって中に複雑な魔力回路が組み込まれたそれは、ミリアからにじみ出る瘴気を吸い取り無害な霊気へと変換してくれる。
尤もそれも限定的な代物で、数時間毎に取り替えないとならないし、ミリアの気分次第ではあっさりと許容量を突破して、先ほどのような事態を巻き起こしてしまう。
「じゃ、取り替えるからね」
一言コノミは断ってから、黒く変色した腕輪を慎重にミリアの腕から外し、あらかじめ用意していた新品に取り替えていく。
「……すいません。こんな、ご迷惑ばかり」
「いや-、別にこのくらい、ぼくもクリムも迷惑とも手間とも思ってないけれどね-。むしろごめんなさいは、ぼくの方かな」
ミリアの謝罪に、苦笑してコノミは答えた。
「旅行、気分転換になる良い案だと思ったんだけどね-。ぼくの見通しが甘くて準備不足なばっかりに、ミリアちゃんに『すいません』って言わせちゃってる。ごめんね?」
「あ、いえ、その」
コノミらしくもない、まっすぐな表情で謝られてしまって、むしろミリアは慌てた。
「その。はい。大丈夫です」
クリムから受け取ったまま、なんとなく首にかける機会を逸してしまい、握りしめたままになっていたネックレスをしばし見つめ――改めて今、思い出したようにそれを自分の首にかけながら、ミリアは言った。
「本当……楽しい、です」
そのミリアの言葉は、嘘ではない。
いつもいるアルタレナの城とは別の風景の中を、クリムと共に自分の足で歩くことは、本当に楽しい。世間知らずに育ってしまったミリアの目には、何もかが新鮮で物珍しく見える。
監視の目は確かに気にはなるが、それでもそれ以上に、二人にこうして外に連れ出して貰って良かったと、心の底からミリアはそう思っていた。
「そっか。ならよかった。あとでクリムくんと合流したら、その事、あの子にも言ってあげてね。きっと喜ぶから」
「……はい」
いとけない顔立ちに似つかわしくない、慈母のような優しいコノミの笑顔につられるようにして、だから、ミリアも自然と笑うことが出来ていた。
「ん。はいこっちも終わり―」
会話をしている内に腕輪の交換も全て終わっていたようだ。ふと窓の外を見やると、周囲に書き込まれていた魔法陣も全て消え失せてしまっていた。
あの魔法陣は、腕輪の取り替えが完了するまでの間、ミリアから漏れ出る瘴気を押さえ込んでおくためのものだ。そもそも魔王たるミリアの瘴気を無害化できる時点ですさまじいし、腕輪の取り替えに要する時間を予想して、ぎりぎりの容量で設計出来るあたりはまさしく神業という他ない。
「さて……じゃ、クリムくんとの合流地点まで、そろそろぼくたちも出発しよっか」
凄まじい技量を誇るでもなくそう言って、気楽にポンポンと肩を叩きながらコノミは立ち上がった。
そう言いつつも、旅装車両を自分で運転する気はないらしい。
コノミは先ほどミリアの腕から取り外した焦げた腕輪に呪文を更にかけ、懐から何やら小瓶取り出し、中に入っていた液体を数滴垂らす。見たところ何種類かの薬品を混ぜたものであるらしいが――一体何をしようというのか。
訝しむ間も僅かばかりしか許されず、その疑問の答えはすぐに出た。
腕輪はぐにゃりと輪郭をゆがませながら同時に大きく膨れあがり、そしてやがて、ぼんやりと半透明の、ヒト型のような物に形を変えたのである。
「じゃ、よろしくねー」
のんびりしたコノミのその一言に、口も目もないそのヒト型はのっそりと頷くような仕草を見せ、そのままのろりのろりと車の御者台にあがって――そして僅かな振動の後、窓の外の風景がゆっくりと動き始めた。
例のヒト型が車を運転しているのだ。コノミの指示に従って。
「……すごい」
あっさり見せたコノミの力量に、改めてミリアは思わず感嘆のため声を漏らした。
コノミが行使したのは、人工精霊を作り出す魔法である。
腕輪に吸い込まれたミリアの瘴気を原料にして、扱いの難しい旅装車両を運転するだけの知恵と技術を持ち合わせた人工精霊を、まるで片手間の用事のように作り出したのだ。
「さあて。じゃあぼくたちはご飯にしよっか。簡単にしかできないでごめんだけど」
王都所属の最高位の魔法使いですら卒倒しかねないような高難易度の術をあっさりと披露しながら、コノミは得意げな顔一つ見せることはない。
彼女にとっては、本当に何でもない事なのだろう。
ミリアの視線を気にもせず、彼女は鼻歌交じりでクリムの置いていった買い物袋からパンを取り出し、手頃な大きさにカット。同じく取り出したチーズ、それに燻製肉を薄く切ってパンで挟んで、最下級の火の魔法でほんの少し加熱。
しばらくするとチーズが溶けて、何とも食欲を刺激する、香ばしい良い匂いが漂ってきた。
「はい出来た、ミリアちゃんの分ね」
「あ、ありがとうございます……」
受け取った昼食を眺めながら……しかしミリアは、そのまま食べる気にならず、姿勢を正し、コノミに声をかけていた。
「あの。コノミ様。少し、よろしいでしょうか」
「んー、なあに?」
「コノミ様は、クリム様とは……古くからのお知り合いと伺いました」
「お知り合いって言うか、まあ、あの子のことは生まれた時から知ってるよー」
自分の分の昼食を用意しつつ、得意げに二股の尻尾を揺らしながら、あっさりとコノミは笑って答えた。
見た目通りの獣人ではないのは前々から分かっていた事ではあるが、それを今の台詞で改めて、コノミは自分の口で認めたことになる。
それ自体はまあ、今まで見せられた力量からすれば、何の不思議もない。予想の範疇だ。
では、とミリアは問いを続けた。
「クリム様も、コノミ様も、どういったお方なんでしょうか」
素朴に、疑問だった。
先ほどクリムがあっさりと瘴気の渦を散らしてしまった件にしろ、コノミが今行使した高難易度の魔術にしろ、どちらもただの人間、獣人に出来るようなものではない。
そもそもの話――クリム=ロクサールは、魔王を倒すために改造された人間兵器であると、確かにその話は聞いているが、しかし今の人類に、彼ほどの力を持った存在が作れる技術力があるようには到底思えない。
それに――いや、それ以前に、もっと気になることがある。
「クリム様は、今のようになる前は、どんな方だったのでしょうか」
思い出すのは、ロッカの町で出会った食料品店の店主とのやりとりだ。
彼は元々平民の出たという。世の人は彼のことを英雄だ、人間兵器だと言うが、それ以前に人間として、彼がどんな人格だとか、どんな過去を持つ少年だったかとか、そういった要素に興味を持つ者は殆どいない。
でも――こうして深く知り合って。男と女の関係にまでなって。一緒に旅行までして。
そうなれば、彼のことをもっと深く知りたいと、当然、そういう願いを持ってしまう。
「ふぅん?」
ミリアの言葉に、なにやらコノミは、妙にいやらしい笑みを浮かべていた。
「な、なんです?」
「てかさ、要するにミリアちゃんは、ぼくとクリムくんがどういう関係なのか、それが知りたいんじゃないのー?」
「えっと。その……」
まあ……図星だ。
気になる男性がいて、その側にずっと別の女性の影があるなら、やはりそれはどうしても気になってしまう。
「その…………はい」
恥ずかしそうにうつむきながらも頷くミリアに、しかしコノミは、妙に嬉しそうに、にっこりと微笑んできた。
「あははは、そっか。クリムくんのこと、そこまで気にしてくれてるんだ」
笑いながらコノミは上機嫌でパンに一口ぱくついて、「そうだな、どこから説明しよっかな」と楽しげに思案して――しかしすぐに、小さく頷いて見せた。
「……ま、いっか。時間もあるし全部しゃべっちゃお。長くなるけど、いーい?」
「は、はい」
そうして――コノミが語り始めたのは、ある辺境の、小さな集落の物語だった。
#1-3
常に魔物などの外敵の危険にさらされ、また同時に強大な霊格が普遍的に存在する辺境においては、人々の信仰も当然、都会部のそれとは随分と様子が違ってくる。
地域や文化によっても様々だが――大まかに言えば、より辺境に下り、ヒトの力が及ばぬ厳しい環境になるほど、力あるその土地土地の精霊格を土地神と崇め、供物を捧げる代わりに集落の守護を願うような、旧い形態の地域信仰を多く見かける傾向にある。
常に死と隣り合わせの環境で生きる辺境の者達にとっては、効果の程の知れない魂の救済よりも、なによりまずその日を生きることが大事なのだ。
アルタレナの北西に位置するヤヌカの里も、そういった典型的な古い信仰を持つ集落の一つであった。
ヤヌカの里において神と崇められたのは、ご多分に漏れず、強大な力を持つ精霊の一種――俗に龍と言われる亜神格類であったが、しかしこの神、少々風変わりなところがあったと言われている。
土地に元々根付いていた類ではなく、遠く東方からヤヌカの近くに流れ着いたというその神は、人の世を旅をしてきた事もあってか随分と人に慣れ、歳を取らぬ少女のような姿で人々の生活の中に混じり、時には里の子供達とともに、野原を駆けて遊ぶようなことすらあったという。
辺境で神と崇められた精霊の中には気性の激しい個体も多く、年毎に処女の生け贄を要求するようなモノも数多く存在する。そういった背景を考えるなら、ヤヌカの民は非常に恵まれていたと言えるだろう。
しかし――そんな平和なヤヌカの里の営みを、時代は許しはしなかった。
魔王戦争末期のある日。魔王の軍勢によりヤヌカの里は襲撃を受け、そして全滅したのである。
ヤヌカの里はロッカの町よりさらに魔王の影響圏内に食い込んでおり、人間側の軍勢が魔王の領地に侵入した場合、この場所は補給物資を運搬する中継点として、戦略的な価値が非常に高い位置にある。戦争が激化し、人間側が勢力を増してくるに従い、魔王勢はその存在を無視できなくなったのだ。
ヤヌカの里は、ロッカのようにあらかじめ砦として建造された集落でもないため、外敵からの襲撃を迎え撃つための満足な設備もなく、また神として崇められていた龍も、強大ではあるものの戦いに適した性質ではなかった。組織だった魔王勢の襲撃には到底敵うものではなく――結局、ヤヌカの里は一夜にして滅ぶことになったのである。
生き残ったのは、ただ一人だけ。
神が辛うじて守ることが出来たのは、襲撃を受けた折、運良く神の庵に遊びに来ていた幼い少年、ただ一人だけだった。
家族も、親しい友人達も、その全員を目の前で殺され、絶望のどん底に突き落とされて、虚ろな目をしながら静かに泣く少年を、傷だらけの腕で抱きしめながら――神は己の無力を悔い、そして一つの誓いを立てた。
自分は、力が及ばないばかりに、里の者達を守れなかった。
だから。ならば。せめてもの償いに、この子だけはずっと守り続けよう。
何があっても。自分の全身全霊をかけて。自分のこれからの全てを費やして。この子だけは幸せにしてあげよう。
しかし――運命というものはつくづく残酷に出来ているものだ。
村人達の弔いを済ませ、なんとか二人三脚での生活も軌道に乗り始め。暗く沈んでいた少年の表情にようやく笑顔が戻ってきたというその矢先、突如として少年は血を吐き、息絶えてしまったのだ。
原因は、魔王の軍勢が残していた最悪の置き土産だった。
ヤヌカの里が再び人の手に落ちぬよう、魔王の軍勢は襲撃をかけた際、この土地に、目に見えぬ程小さな毒蟲の卵を放っていたのである。
魔族の悪意に満ちた毒蟲がもたらした死は、おぞましく凄惨を極めたものだった。
少年の死体は――醜く胸元が膨張し、無残にも大きく破裂していた。
毒蟲がいつの間にか少年の体内に入り込み、心の臓の肉を食い破っていたのである。
血と肉片を辺りに撒き散らしながら、その血肉や、恐怖と苦痛にゆがんだ顔までもが大きく育った百足のような蟲に食い付かれ、死してなおその生を冒涜するように、少年は無残な肉塊となってむさぼられ続けていた。
あまりにも残酷な、凄惨な死に様。
神は、激怒した。
この子だけは何があっても守ろうと誓ったはずなのに。なぜこうなる。
どうしてこの子まで、こんな苦しみを味わわねばならないのだ。
――しかしそれでも、悲嘆に暮れつつも、少年の遺骸を葬り、冥福を祈り、弔う事が出来ていれば、その神も道を誤らずに済んだのかもしれない。
だがその時、悲嘆し錯乱していた神ならぬ神は、邪道を選んでしまったのだ。
神の身においても禁忌の業、蘇生を試みたのである。
それも――裂けた肉と骨とをつなぎ合わせ、針と糸で縫い合わせるという、恐ろしく幼稚な方法で。
普通ならば、そんな人形遊びじみたやりかたで、死人が蘇生するはずもない。
だがその人形遊びをしたのは、神と崇められる程の力を持った龍で。だからそんな杜撰極まりない方法でも、不幸なことに少年は蘇ってしまったのである。
そう――不幸なことに、だ。
そのような子供じみた方法で行った蘇生で、少年に負担がかからないはずはない。
そのような無理矢理な方法で生き返らされた少年が、苦しまずにいられる訳がない。
だから数ヶ月後、神の願いをあざ笑うかのように、少年は、今度は壊死した縫合部が腐り落ち、四肢がばらばらに解けるような格好で、再び息絶えてしまった。
当然、神は再び蘇生を試みて。
そして少年は再び、無理矢理な方法で蘇生して。
しばらくして、少年はまたもや息絶えて。
そうやって――少年は、何度も息絶え、そしてそのたびに、何度も何度も生き返らされることになった。
そんなことを繰り返せば、人ならぬ神の身でも、いつか正気を見失う。
何度も何度も繰り返していく内、神はいつの頃からか、罪悪感にも悲しみにも慣れっこになっていった。
どうすれば今度は上手くいくか、どうすれば少年を、きちんと強い身体で生き返らせることが出来るか。そんなことばかりを考えるようになっていった。
少年の腸が生まれつき病気を持っていたと知れば、墓を掘り起こして健康だった別の住人の腸をえぐり出し、それを真似て新鮮な腸を作って取り替えることにした。
魔王軍の襲撃の影響で、集落にうっすらと瘴気が残留していることに気付いた時には、少年がその毒に負けないよう、手近な魔物を狩って、少年の肺をその魔物のものに取り替えた。
何度も蘇生と死を繰り返す内に神経がボロボロになれば、魔法石を練り上げ針金状にしたものを神経繊維の代わりに使う方法を試みた。
そして――何年もの間、そんな「人形遊び」を繰り返し。
少年を生き長らえさせるという妄執にとらわれ、完全に道を外しきっていたその神を正気に戻したのは、皮肉なことにも、そうやって命をいじくり回されていた少年が口にした、たった一つの言葉だった。
「大丈夫だよ、僕、耐えるから。いつまでもコノミさまの、側にいるから」
何もかもを、否定された気分だった。
いつの頃からか……あるいはそもそも、初めからか。
神は、根本的なところで思い違いをしていたのだ。
少年のためを思って、少年の幸せを願って、神は少年を生きながらえさせてきた。
生きてさえいれば、必ずいつかは報われるときも来るだろうと、そんな根拠のない信仰をよりどころにして。
だが――そもそも故郷の全てを滅ぼされ、肉親も友人も殺され絶望した彼に、この世界に求めるものなど何があろう。
少年のためと言いながら、結局その神がしてきたのは、少年に両親や友人の元に行くことを良しとせず、孤独になった少年に、何度も何度も気の狂いそうな苦痛を与え、頼る者もいないこの世界に無理矢理引き留め続けるという、あまりに残酷な仕打ちにすぎなかったのだ。
何もかもが遅すぎた。
過ちに気づいたときには、少年の身体は既に「改造」が完全に完了していて――彼の命をもてあそび続けたその神の力をもってしても、その命を奪うことは到底不可能な身体になり果てていたのである。
生まれた時に母から授かった場所など、もう、どこにも存在せず。
強靱に作りかえられた少年の身体は、死ぬことすら許されない。
そして――それから更に数年の月日が流れ。
ヤヌカの里の跡地付近に、不死者の少年がいるという噂が軍部の耳に届くこととなる。
程なくして少年は軍によって「保護」され――人の心を持ちながら、魔王に匹敵する魔力と生命力を持ちうる存在、人類で唯一魔王を殺しうる希望として、人間兵器として、さらなる改造を受けることになった。
魔王殺しの英雄、クリム=ロクサール。
辺境の村に生まれたひとりの平凡な少年が、人外の力を持つに至った――これがそのいきさつである。
#1-4
「――つまり……その」
のどが渇く。上手く言葉を紡げない。
コノミによって語られた事実は、ミリアにとって想像を絶するものだった。
魔王を殺すべき兵器としてその身を改造されたクリムの身の上は、おそらく平穏なものであるはずはないと、確かにそう想像はしてはいた。
魔王の血族に生まれたミリアですら、父である先代魔王を殺すべく、血を吐くような思いを何年もしてきたのだ。同じ力を人間が得るのに、生半可な努力と苦労で済む道理などあろうはずがない。
でも――まさか、ここまでのものだったとは。
「では、その……その中の神様……というか、龍種の精霊が、コノミ様……」
「うん、そのとおりー」
打ちひしがれた様子のミリアに対し、一方で凄絶な告白をしたにもかかわらず、コノミ自身の表情はいつもと変わらない。あくまで気軽で飄々としたものだ。
「獣人っぽい耳とか尻尾付けてるのはね、まあ何て言うか変装? 龍っぽいカッコより、このほうが里の子達も安心するでしょー? 長い間ずっとこのカッコしてたから、ぼく自身も結構、なんだかんだで気に入っちゃっててねえ」
「……はぁ」
呆然とした様子のミリアを尻目に、コノミはさっさと自分の分の昼食を食べ終えてしまっていた。ひと心地ついたようにほっと一息付き、ゆったりと流れていく窓の外の景色を眺めながら、コノミはあくまでのんびりと言葉を続ける。
「それに、このカッコが、クリムくんにとっての『コノミ様』だからねー? 昔の事を忘れたくなくてね。ずっとこのカッコしてるの」
「……」
「昔のぼくは、ほんと、バカでねえ。気付かないうちにクリムくんに、一生かけても償いきれない程、酷いことしちゃったから。だから決めたんだ。せめてこれからは、最後まで、クリムくんの側にいて、あの子を幸せにしなきゃって」
頑ななまでに変わらぬ、あくまで気軽なその口調。
だが、ふとミリアは、そんなコノミの様子に、不思議と腑に落ちた気分になった。
そんなコノミの態度は、彼女なりの、不動の決意の表れなのだろう。
遠くを見つめるその目の奥にも、ごくごく自然に、静かに固い意思をにじませているようにも見えた。
「……そうだったんですか」
「だからまぁ、結婚なんかもしちゃってるしねー」
「そうだったんです…………へっ?」
しんみり頷きかけて……思考が停止する。
今……コノミは、のんびりまったり笑いながら、何かとんでもない発言をしなかったか。
「けっこ……え。えっ?」
「あれ、知らなかったー?」
窓から視線を戻したコノミは、混乱するミリアを見ながら、にたー、とやたらと楽しげな、いたずらっぽそうな笑みを向けてくる。
「ぼくとクリムくん、結婚してるんだよ」
「…………」
今度こそ聞き間違いではない。
結婚。
結婚と、確かに言ったのだ。このちいさな龍の神様は
「……えええええええええええええええええええッ!?」
「わはっ、あははは。ここまでびっくりするとは思わなかった」
「だって、え? あ、あれ? け、結婚? え? してるん、です!?」
「だって。名字一緒じゃん」
「いや、え。……あ! た、確かに! でもいやそうですけど! てっきり義姉弟的なものなのかと思っていたん、です、けど……! え、ええぇぇ……?」
「あーなるほど、あっはっはっは。そういう風に納得しちゃってたんだぁ」
だって、そう解釈しないと本当に訳が分からない。
クリムに城で初めて会って、「自分を抱いて種を付けて欲しい」と依頼をしたそのとき、コノミだって同じ場所にいたのである。
もし夫婦という話が本当ならば――コノミの立場で考えるなら、つまりあの時、目の前で夫が別の女に関係を迫られていたという構図になるはずだ。
だというのに、コノミは平然として笑っていたのである。
それどころか、むしろクリムをけしかけるような言葉すらかけていなかったか。
「いやまー。夫婦って言ってもぼくたちは訳ありなんだけどねー」
ミリアの反応を存分に堪能して、一応は満足したらしい。目をぐるぐるにして混乱しっぱなしのミリアの側に寄って、けらけら笑いながらミリアの背中を撫でて宥めつつ、コノミは気軽な口調で言葉を続けた。
「クリムくんの身体、ちょっと特殊なことになってるからねぇ」
「と、特殊……です?」
「あの子、兵器になっちゃってるからね」
コノミが言うには――魔王との決戦が長期戦にもつれ込んだ時のために、クリムの身体には、数種類の魔力源が仕込まれているらしい。
そのうちの一つ、補助導力として組み込まれているのが、彼の精巣に刻み込まれている魔力抽出装置だ。
淫魔の生殖能力を移植された上で、クリムの精巣には、魔力消費量が一定量以上増えると自動的に励起状態になり、精子を「生け贄」として捧げて魔力を抽出する魔法陣が組み込まれているのだという。
「知ってる? 男の子が出す精液ってね、その中に赤ちゃんの元になる、精子って名前の小さな小さなオタマジャクシみたいなのが、一滴あたりで何万も入ってるんだよ?」
「そ、そうなんです?」
そしてその精子は、言ってみれば「命の種」だ。
だから適切な魔法陣を組んで、未来の因果に干渉したうえで生贄に捧げれば、精子一つで人ひとりを生贄にしただけの霊威を引き出すことができる。
これを利用し、精巣に蓄えられた何万何億もの精子を全て生け贄として捧げれば、そこからは膨大な魔力を手に入れる事ができる――ということらしい。
「普通の男の子なら1日で1億くらい精子が作れるらしいんだけどね。クリムくんのは特別製で、その数百倍とか数千倍とかのペースで精子作っちゃうようにしてるの。そこから魔力抽出して、ほかの器官と合わせて不眠不休で何ヶ月も戦い続けられるようにね。で、まあ戦闘状態ならまあ良いんだけど――そうじゃないときは『溜まっちゃう』んだよねえ」
「えと……つまり」
「そ。改造で精力増した分、すっごーく、性欲が強くなっちゃったの、あの子。そのあたりは、ミリアちゃんだって知ってるでしょ?」
「それは……えっと。そ、そうなんです?」
いきなり同意を求められてしまったが、ミリアとしてはいまいちピンとこない。
きょとんとした表情を見せるしかないミリアに、コノミは何かを察したようで、にまー、と意地悪い笑みを深めた。
「あー。そっか。そうだよね、ミリアちゃん、クリムくんしか男の子知らないもんねー? そういうのわかんないか」
「えっと、それは……はい」
あけすけに指摘されて、さすがに顔が赤くなる。
しかし、コノミの言う通りなのだ。
性知識も満足なものなど持ち合わせておらず、肌を重ねた相手もクリムだけのミリアは、そもそも「人の身の普通」が分かっていない。
そんなだから、ミリアの性行為の価値観は、あくまでクリムとの経験だけが基準となっているが――どうやらそれはかなり偏ったものであるらしいと、今の会話で気が付いた。
「言っとくけどね、クリムくん相当だよ? 普通、三刻の間ずっと抜かずで中出し7連発とか、朝2回やって昼にも3回やってその夜に6回やるとか、そんなん無理だから。死ぬから」
「し、死ぬんですか」
「えっちだって、けっこう体力使うものなんだよ? そんなん毎日やってたら過労で死ぬよ」
「はぁ……」
ひたすら感心して頷いて――間抜けなことに、一拍遅れて羞恥に顔が真っ赤になった。
コノミが口にした抜かず中出し7連発とか、朝昼晩の連戦とか、まさしく5日前と4日前、ミリアとクリムが興じていた内容そのままではないか。
なんだろう、真面目な話だったはずなのに、何やら急に雲行きが怪しくなってきた。
「あうう……」
「でまあ、話を戻して。当然クリムくんも男の子だからね、貯まりすぎると精神的にも良くないし、あの子の性欲処理をしなきゃいけなくってねー?」
要するに改造を受けて増強されたクリムの性欲に、普通の人間の女性が耐えられるはずもなく、何よりそれ以前に、相手を見繕えるような状況でもなかった、という事らしい。
だから結局、ちょうどクリムの傍にいた龍の神であるコノミが、彼の相手をする事になったのだという。
しかしそうなれば、人間兵器として、魔王を倒す英雄として常に衆目に晒される立場でありながら、見た目ちっこすぎる女の子であるコノミの身体を貪るような習慣があるのは流石に体面が悪い、という意見も出てくる事になる訳で。
「で、まあね。苦肉の策っていうか――『夫婦であるなら、えっちを毎日のようにしても何ら不都合ないよね』ってことで、結婚しちゃったの。書類上だけのもんだけどね。いちおう」
「……ええー……」
「あ、遺伝子って言うか……クリムくんの身体いろいろ弄くっているけど、生殖能力自体は問題ないからね。普通の子供が生まれるようにしといたから。って、まあそれも身体弄くってそうなるようにしたんだけどね。とりあえずそこは安心していいからね」
「……いえ、あの」
ものすごく混乱した様子のミリアに何を思ったか、コノミはそんなフォローを入れてきたが、勿論ミリアが気にしたのは、そんなことではない。
釈然としない。ますます意味が分からない。
だって、そうではないか。
コノミの茶化しを無視して、起こった事実だけを整理すれば、彼女は、クリムの心と身体を守るために、彼に自らの身体を捧げて肉体関係を持ち、さらにはクリムの立場を守るために婚姻関係を結んだ、ということになる。
確かにコノミがクリムにした事の中には、道を外れたものもあったかも知れない。
でも、コノミが今までクリムにしてきた行動は、その全てが彼を思ってのものばかりで。
ならばこれが、愛情でなくて何だというのか。
羨ましい、と素直にそう思うことが出来れば、あるいは二人を祝福することが出来れば、どれほど良かったろうとミリアは思う。
しかし彼女の立場では、そんなことは許されない。二人の関係を目の当たりにして、平常心でいられるわけがない。
だって――
(……これ、わたし。もしかして、浮気とか、不倫というものをしているのでは)
クリムとコノミに深い感情で結ばれた絆があるというのに、そうとは知らぬまま、ミリアは自分の都合を押しつけ、二人の間に割って入ってしまったのだ。
ぞっとした。
知らなかった、で許されることではない。
もちろん、この大陸において一夫一妻制は絶対のものではない。王侯貴族の殆どは正妻の他に妾を囲っていたりするし、クリムもまた英雄という立場ある訳で――複数の妻を持っても何ら問題ない地位にある。
でもそれも、あくまで「きちんとした道義上の手続き」があってのことの筈で。
一夫多妻が普通の貴族の間でも、略奪愛の醜聞は枚挙に暇がない。
「……もしかして嫉妬した?」
急に深刻な顔になって青ざめていくミリアに何を勘違いしたか、コノミは苦笑しつつ、そんな若干的外れなことを言ってきた。
「し、嫉妬!? あ、いえ! 違います!」
そういう発想がなかったので、むしろミリアはびっくりしてしまった。
間抜けな話で、まず罪悪感でいっぱいいっぱいになってしまって、そっちの方まで気持ちを回す余裕がなかったのだ。
しかし考えてみれば確かに、普通ならば、これはミリアの側も嫉妬してしかるべき場面なのかもしれない。
気になる人が出来て。その人と関係を持って。
でもその人には色々と複雑な過去があって。そのことを自分は知らなくて。
そしてその人の側には、昔からずっと、別の女性の影があって。
そう考えると、確かに胸が、つんと痛くなった気もしたけれど――でも。
「いえ、しません。嫉妬は、しません」
首をもたげ始めた暗い気持ちを首を振って追いはらい、ミリアは努めて決然とした口調で言った。
「わたしは、嫉妬していい立場ではありませんから」
どう考えても悪いのは自分だ。
二人の事情を確かめもせず、二人の間に割って入った自分が悪い。
それに――
「わたしは、魔王ですから。嫉妬のような気持ちを抱えては、いけないんです」
そう。ミリアは、暗い気持ちに支配される事を許されない。
暗い気持ちを糧にして、自分の中の魔王が、その魔性が、どんどん力を付けてしまう。
「………そっか」
思い詰めた表情でそう語るミリアを、しばし無言でコノミは眺めていたが――やがてふんわりと、どこか嬉しそうな笑みをこぼした。
「いい人だね、ミリアちゃんは」
「……いい人、だなんて」
「まあぼくの方は気にしなくて良いよ。あくまで結婚も書類上のものだし。えっちしてたのも必要に迫られてのものだから。クリムくんもねえ、あの子も真面目だから、ぼくを「性処理の道具として使ってた」ってことで、罪悪感が強かったんだろうねえ。ミリアちゃんとえっちすることになって、ぼくとえっちせずに済むようになって良かった、とか思ってるぽいし」
「……」
相変わらず、自分こそ嫉妬の感情を全く見せないコノミの表情に、やっぱりミリアは、釈然としない気持ちでいっぱいだった。
このままでいいはずはない。
表情こそ平然としたものだが、ここまで熱心にクリムのことを語るコノミが、彼にこだわりを持っていないはずがないと思うから。
でも、だけど――
「お」
複雑な視線を送るミリアに平然と微笑を返しつつ、食後の茶を飲んで――ふと何かに気付いた様子で、コノミは窓の外を見やりながら小さく声を上げた。
「着いたみたいだね」
「え? ぁ……」
コノミの言葉につられ、ミリアも車窓の外に視線を向けて――不覚にも彼女の口から思わず感嘆の声が漏れてしまった。
「わ……」
美しい景色が、そこには広がっていた。
釈然としない気持ちを、一瞬ながらも忘れさせてしまう程に。
白く雪化粧された山々に囲まれた小さな盆地。
山肌の切り立った辺りからは滝が流れ落ち、その流れと、他にも山々から生まれたばかりの複数の清流が合流し、あるいは枝分かれし、陽の光に煌めくいくつかの小さな湖を作り出している。
そしてその湖に面して、青く茂る森の中に小さな家々がぽつりぽつりとちりばめられているのも見て取れた。
「ここが……」
「そ。ここがヤヌカの里」
呟くミリアに、コノミがほんの少し得意げに頷いて見せた。
東方から流れた龍神コノミを土地神として奉じ、そして十年ほど前に滅んだ――北方の小さな小さな集落。
クリム=ロクサールの故郷である。
「……お。丁度タイミング良かったみたいだね」
そして、どこか嬉しそうにコノミが声を上げる。
彼女の視線の先。
恐らく村の入り口を示すものだろう、小さなこしらえの門のそばに、大きな袋を三つ抱えたクリムの姿があった。
#2-1
戦争が終結してから数ヶ月。
魔王の影響圏内にあった地域は、ロッカの町ような砦を足がかりにして順次開拓が進められているが、当然、その開発状況には様々な条件によって偏りが出てくる。
ヤヌカの里は、物資輸送の中継点であるロッカにも近く、さらにもともと一定以上の人口を育んていた土地でもあるのに関わらず、この地方では特に再開発の遅れている場所の一つだ。
遅れているというか――戦時中に魔王の軍勢により全滅して以来、人の手が再び入ることなくほぼ手つかずのまま放置されてしまっている、と表現したほうが正しい。
襲撃時に放たれた毒蟲の毒が未だ微量ながら残留しており、クリムやミリアのような存在ならばともかく、普通の人が暮らせる環境ではなくなってしまったためである。
景観そのものは美しくとも、この地は人の命を飲み込む魔界に等しい。
コノミの手により毒蟲は駆逐されたものの、土地に染みこんだ毒素は根強く残留しており――この地が元通りになるまでには、少なく見積もってあと50年はかかるだろうと考えられている。戦時の功績でクリムとコノミに領地として与えられたものの、ここに住む気には流石にはならず、最低限の手入れをコノミの作り出した人工精霊に任せて放置しているような状況だった。
そんな人影の一つない廃村の中、ミリア達はもともと領主の館として使われていた屋敷に泊まることになった。
里の中で最も大きい建造物であるこの屋敷も、他の廃屋同様に人の気配がなくなって久しいが、たまに墓参りをするときなどに利用することを見越して、コノミが管理用に人工精霊を常駐させている。おかげで埃が積もることもなく、寝具も清潔に保たれており、逗留場所としては最低限以上の用意が整えられていた。
ちなみに、食事に関しては自炊である。炊事についても実際は人工精霊に任すこともできるらしいが、このあたり、コノミには少しこだわりがあるらしい。料理の内容自体はシチューと燻製肉のソテーにパンと言った簡単なものだったが味は良く、まったり和やかに歓談しながら腹を満たし、少し休憩すれば、もう陽も完全に落ちてしまった。
そして、あとは――そう。これから寝るまでは、「おつとめ」の時間である。
昼間のこともあり、魔王の瘴気が漏れることを心配したミリアだったが、コノミが言うには、ことこの場所に限ってはその手の心配は一切無用らしい。
というのもクリムに様々な改造を施した際、ミリアと同様の瘴気がクリムから吐き出されたときのことを考慮し、この地にはアルタレナ王城と同様以上の結界が張り巡らされているのだという。また、よしんばその結界が破られたとしても、この土地には瘴気に曝され被害を被るような人間は、そもそも住んでいない。
また都合の良いことに、この地に入ってからは監視の狙撃手の視線も感じなくなっていた。
どうやら監視の者達も、毒に侵されない範囲まで待避しているらしい。
一応、ミリアも女の身である。同性のコノミならばともかく、やはりクリムと睦み合っている様を他の男性に監視されるのは、気分の良いものではない。
だからと言って「気にせずがっつりみっちりどうぞ―♪」などとあからさまな事を満面の笑みでコノミに言われると、やはりそれはそれで、微妙な気分になってしまうミリアだったが。
しかし、そうこう言いつつも、クリムに初めてを捧げて一か月。
既に「おつとめ」は、ミリアにとってもお楽しみの時間になっている。
「……ぁ、っは、ぁ……♥」
行為を始め――どれほどの時間、クリムの腕に抱かれていただろうか。
絶頂して。射精されて。それからしばらくずっと抱き合って。
余韻に流されるままにキスを繰り返し、しかしそれでも流石に、そろそろ一段落付ける空気になっていた。
数刻はミリアの中に入りっぱなしになっていたクリムの男性器が、ようやくクリムとミリアは元々別の生き物だったのを思い出したかのように、ゆっくりと引き抜かれ始めた。
ゆっくりと、ゆっくり。じわじわと。
未だに膣内射精の喜びに震え、貪欲にひくつく膣ヒダを、カリ首でなめずるようにして、膣口に向かって動いていく。
「う、ンんんっ……」
我慢できずに、ミリアの口から甘い吐息が漏れた。
絶頂の余熱がくすぶる膣粘膜にとっては、それだけの緩慢な摩擦でも気持ちいい。
性急な、絶頂に押し上げられるような快楽ではなく、波が引くように静かになっていく余韻の中で、もう一度だけ、ほんの少しだけ大きな波が押し寄せてくるような、そんな感覚。
幸せな寂しさだ。
しかし、そんな独特な快楽に浸れるのも、ごくごく僅かな間だけ。
じっくりゆっくり引き抜かれていても、当然ながらクリムの性器にも、ミリアの膣の奥行きにも限りがある。
やがてその全てがミリアの外に出てしまい――名残を惜しむように、あるいは優しくキスをするように、二人分の体液に濡れた亀頭と秘唇が僅かに触れ合い、そして二人の結合は完全に解かれることになった。
「……う、っはぁぁぁぁ……」
充実感を胸に、二人そろって、熱い吐息を漏らす。
慣れてきたこともあるのだろう、最近は無駄に体力を消耗することもなくなり、その分ミリアは「思う存分に」行為を楽しむことが出来るようになってきたと思う。
具体的に言えば、睦み合っている時間と、絶頂回数と、そしてクリムに膣内で射精される回数が、増えたような気がする。
(……すごい)
なんとなく自分のおなかに手のひらを当ててみて、ミリアは思わず声を上げそうになった。
気のせいかもしれないが、なんだか、「たぷたぷ」してる気がする。
いうまでもなくこの重さは、先ほど胎の中に出された、クリムの精液のものだ。
(……うう。クリム様の精子、すごいです……)
たっぷり出された子種の存在を胎に感じ、同時に今更我に返って、何だか恥ずかしくもなってしまう。
今日も、すごかった。
延々正常位で抱かれたにもかかわらず、後半はクリムと同じくらい激しく腰を動かして、快楽とその末の精液をおねだりしていたような気がする。
こっちが貪欲になった分、クリムもより「濃い」精液を出してくれるので、「おつとめ」としてはそれが望ましいことではあるし、純粋に女としても、嬉しいことではあるのだけれど。
しかしそれはそれとして、性行為のさなか、感極まると、「もっといっぱい出して―」とか、「壊れてもいいからもっときもちよくしてー」とか、正気とは思えないような言葉を連発しまうのはなぜなのだろうと、ほんのちょっぴり世の無情を感じるミリアでもあった。
恥ずかしい。
行為の後のこの瞬間には、未だにミリアは慣れる事が出来ず、クリムの顔もまともに見れない。
クリムの方もミリアのそんな思いを察してくれているだろう、睦言を囁くでもなくじっとミリアが落ち着くのを待ってくれるのが、ここ最近のパターンになっていた。
「……」
そんな、行為の後の独特のけだるげな時間が、穏やかに、静かに流れて。
「何か、ちょっと疲れちゃったかな」
やがて、そんな沈黙にも気恥ずかしさを覚えたのか。しばらくの間、ミリアのすぐ側に座り込んでぼんやりしていたクリムだったが、ふと思い出したようにそう言って小さく笑いかけてきてくれた。
「てか、どろどろだ」
「あはは……ほんとに」
冷静になって周囲を見てみると、優に三人はゆったり眠れる大きなベッドの上は、相当酷いことになっていた。
シーツはくしゃくしゃの皺まみれ、ミリアとクリムのいる場所を中心にあちこちに二人分の汗と体液が散乱し、染みこんでいる。
部屋に漂う性臭も相当濃厚で――おそらくこの様子では、壁紙全体にまで染みついてしまっていてもおかしくない。
「……ぁ」
少し意識して匂いを嗅いでみると、どうやらクリムの精液も、結構な量がシーツに染みこんでいるようだった。
基本的には「おつとめ」の目的が目的なので、ミリアを少しでも確実に孕ませるよう、クリムの絶頂時には必ず膣内に射精して貰うようにはしているが。それでもそもそもクリムの射精は勢いも量もすごいので、子宮口に一度に通りきらず逆流し、少なくない量が外に出てきてしまうのだ。
(ちょっと……もったいないかったでしょうか)
改めて腹部にたまった精液の温かさを感じながら、そんなことを思ってしまう。
コノミの説明を元にするのなら、どちらにせよ妊娠したとして、子としておなかに宿ることが出来るのは、吐き出された何億何兆という精子の内の、たった一つだけなのだけれど。
(クリム様の精子、全部子供になって産めれば良いのに)
まだまだ行為の最中の夢心地が抜けていないのか、土台無理とわかりつつ、そんな馬鹿げたことも考えてしまったりするミリアだった。
「ちょっと汗流した方が良いかな。少し片付けするから、先にお風呂に入ってなよ」
「あ、はい」
クリムのそんな言葉が、今日のおつとめはこれでおしまいの合図である。
彼の言葉に甘えて、下着も着けず、ローブだけを羽織ってミリアは部屋を後にした。
この屋敷に着いたときに軽く案内をして貰ったので、一人で歩いても迷うことはない。
記憶を頼りに浴場に向かって一人歩きつつ――しかし何となく、そのまま目的地に直行する気にならず、ミリアは廊下の半ばで立ち止まってしまった。
手近な壁によりかかり、どこからか僅かに漂ってくる涼やかな夜風を火照った頬に感じながら、ほう、と小さくため息を漏らす。
「……」
今日の「おつとめ」も、気持ちよかった。
いつもより時間に余裕があったし、何よりコノミの見立て通り、今までの旅路で気分が幾分か晴れたおかげもあるのだろう。いつもより絶頂した回数も、二割増しで多かった気がする。
だけど、それと「気分が乗れたか」どうかは、また別問題だ。
いつも通りに気持ちよかったけれど、いつも通りに幸せを感じていたけれど、でもそれらを、心の底から楽しめたかというと――今日はそこまで気持ちが盛り上がれなかったというのが、正直なところだ。
理由は――まあ、単純だ。
昼間にコノミの口から語られた、クリムとコノミの二人の関係が、どうにも心の中で引っかかっている。
あんな話を聞かされて、何の後ろめたさも感じず平気な顔でクリムに抱かれるなんて――そんなこと、出来る訳がない。
(今日の「おつとめ」……やめにして貰った方が良かったでしょうか……)
さんざんイかされ中だしされて本当に今更だが、そんな事も思ってしまう。
せっかくいつも通りに抱いてくれたのに、結果的に、こんな中途半端な気持ちで性行為を「済ませて」しまったのが、クリムに申し訳なくてたまらない。
「ん? あれー? ミリアちゃん? どうしたのー?」
「……コノミ様」
しばらく立ち尽くしていると、どうやら暇をもてあまして屋敷の中を散策でもしていたらしいコノミが、ミリアに気付いて声をかけてきた。
(…………)
間が悪い。
しかし一方のコノミは、ミリアの気まずい気持ちなど我関せずといった様子である。とてとてと気軽に近づいてきて、そしてミリアの下腹部を一瞬だけ一瞥し――そして彼女はミリアに、にっこりと笑いかけてきた。
「わ、クリムくん、こんなたくさん中出ししたんだ。よかったねえミリアちゃん」
「……」
何なのだ、その台詞は。
当てつけなのか。単純に状況を楽しんでいるだけなのか。うらやましがっているのか。あるいは、その全てか。
自然と色々勘ぐってしまって、結局ミリアは、何も返答できずじまいになってしまう。
「ミリアちゃんも気持ちよかった?」
「え、えと……あの……は、はい」
「そっか。よかったねえ。あの子、そんなこと興味ありませーんとかそんな顔しといて、すっごい、えっち上手いでしょー?」
「えっと。あの、あの……その………はい」
あまりにも開けっぴろげな物言いに、どう反応すればいいかわからない。
ただ、なにか急かされたような気がして何も考えずに頷いてしまって――あとから何に頷いたかに気付いて、ミリアは赤面してしまった。
コノミを前にして、先ほどやったクリムとの行為が気持ちよかった、だなんて。
何て恥知らず。
しかし、黙り込むミリアを前にしても、コノミはどこまで行ってもマイペース。
「これからお風呂? じゃどうせだから、一緒に入ろっか」
つまるところ、要するに。
今のミリアに逃げ場など、何処にもありはしないのである。
#2-2
クリム達が宿として使っている元領主の屋敷はそれなりの広さがあり、部屋数も客間だけで十近くがある。今はクリムとコノミが連名で所有者となっており、まあそういう意味ではどう使っても誰も文句は言わないのだが、そこは根が庶民の二人である。数日泊まるだけで複数の部屋を使うのもどうかと言う事で、「おつとめ」をした部屋でそのまま休もうという事になっていた。
とはいえ、流石に汚れきったままの、性臭まみれのこの状態で寝る訳にもいかない。ミリアを浴場に送り出した後、せめて最低限、身体を休められるだけの環境を整えようと、クリムは簡単に後片付けをすることにした。
「さて、と」
と言いつつ――片付けと言っても、大してやることがある訳でもない。
基本的な掃除洗濯はコノミの用意した人工精霊がやってくれる。汚れたシーツをまとめて担当の精霊に渡して、換えのシーツを受け取って簡単にベッドメイキング。あとは窓を開け、ついでに匂い消しの魔法を練り込んだ香を焚いて、部屋に充満している二人分の匂いを何とかすれば、それでもう作業は完了である。
他には別に、やることがある訳でもない。すぐにミリアの後を追って自分も浴場に向かえば良いのだが、しかしどうにも、クリムはそんな気分にならなかった。
たまには、一人でゆっくり物思いにふけりたい事だってある。
片付けが一段落したところでクリムは部屋にしつらえてあったソファに腰掛け、旅路の供として持ち込んでいた茶器で即席の茶を沸かし、一服することにした。
「……」
火をおこし。湯を沸かし。ポットの中に多めに茶葉をいれて湯を注ぎ、待つことしばし。
できあがった濃いめの茶を舐めるように飲みつつ、クリムは小さく、一つ息を吐いた。
数種の薬草を混ぜ込んだこの手の嗜好品は、戦場においては、気付け薬として兵士の間で常用されていたものだ。染みついた日課はなかなか抜けないもので、気分を落ち着けたいとき、こうして一人で一服する習慣がクリムにはある。
もちろんクリムは、正しい茶の煎れ方の作法など知らない。そもそも戦場では茶葉をそのまま噛む事の方が多かった。自己流で適当に煎れた茶は渋く苦みも強いが、だからこそ気付けには丁度いい。
「どうかしたのかな……」
独り言が口を突いて出かけて、しかしクリムはそれを、口に含んだ茶と一緒に飲み込んだ。
気にかかっているのは他でもない、ミリアの件だ。
どうにも今日、褥と共にしていたときの彼女の反応がおかしかった。
言動が控えめなのはいつものことだし、またそうである一方で、一度快楽に流されれば、恥ずかしがりながらも気持ちよさそうに腰を自分から振り始めたりもしていたが。
なんというか――それはそれとして、何となく全体的に、妙にぎこちないというか、どこか躊躇うような仕草を端々で垣間見せていた気がする。
そんな気持ちも必死に隠そうとしていたようだが、ミリアはあまり嘘をつくのが上手い方ではない。そんな彼女が、互いに裸になり肌が触れ合う性行為の場で、気持ちなどそうそう隠し通せる訳もない。
何かあったのだろうと思う。
基本的にミリアは感受性が豊かで繊細な娘だ。
普通の人が気にも留めないところにいちいち気付き、喜んだり気に病んだりする。
知らないところでクリムが無自覚にミリアを傷つけていた可能性もあるが――何となく、今日は違うような気がする。彼女の様子がおかしくなったのはロッカの町でいったん解散した後、ヤヌカで合流してからの事だったからだ。
「……コノミが何か言ったのかね」
ぼそりと独りごちる。
あるいは昼間の、瘴気が漏れた一件を気に病んでいるのか。
どちらもありそうな話だが、コノミが原因だとすると、どうすべきか少し面倒くさい。
まあとにかく、どちらが理由にせよ、あとあとフォローはしておくべきだろう。
そんなことを考えながらクリムはカップの中を飲み干し、2杯目を注ぐでもなく空になったそれを指先でもてあそびながら、ぼんやりとクリムは天井を見上げた。
「……」
ミリアと出会い、関係を持つようになって一ヶ月。
日中は他愛ないおしゃべりをして、夜になれば性行為をするばかりの単調な毎日だが、それでも彼女は、はじめの頃に比べても、様々な表情をクリムに見せてくれる様になったと思う。
ちょっとしたアクセサリーに目を輝かせたり。
相手のことを気にして心を痛めたり。
ベッドの上で見せる感極まったような女の顔も、見とれてしまう程美しい。
もっと言えば――先日出発前に見せていた、小説を読んで一喜一憂して、時には感情移入のあまりみっともなく泣いてしまうのも、感受性豊かな少女のようで愛らしいと思う。
そういった変化は、やはり同じ時間を共に過ごして、クリムに対し気を許すようになってくれた結果なのだろう。元からあまり他人に対して壁を作ることができるような器用な娘ではなかったようだが、それでも馴れ初めが馴れ初めであり、また元の立場が立場だったのだ。顔合わせした当初は、多少なりとも緊張めいたものを抱えていたようだった。
触れ合えば触れ合う程、二人の間にわだかまっていた緊張が解けていき――そうして、初めて彼女に相見えた時に感じた直感が、確信へと変わっていく。
魔王だとか、そんなことは関係ない。
ミリアンドール=アバルスカは、ただの普通の、女の子だ。
ただ業の深い運命を背負ってしまっただけの、普通の女の子。
大切にしたいと、心の底からそう思う。
周りの目が彼女をそうは見ないからこそ、なおさらに。
魔王の城で始めて顔を合わせたとき、その美しさに心奪われた。
こうして関係を持つようになって、彼女の内面の美しさにも触れることが出来るようになって、その気持ちがどんどん強く大きくなっている。
「……あー。これは……惚れてるって事なのかな。俺」
自嘲気味の笑いが漏れた。
情けない話で、正直なところ、実はクリムは、それがいまいち分かっていなかった。
ミリアと初めて関係を持つ夜、彼女に「自分を愛せ、その代わり自分はあなたを愛してみせる」と豪語しておきながら――そもそもクリムには恋愛感情というものがよく分からない。
遠い昔、故郷で実らぬ初恋を経験してから後は、ずっと血にまみれた生き方をしてきたのだ。その結果として、そのあたりの感覚を育てることなく彼はこの歳まで育ってしまった。
だけど、この感情は、なんというか悪い気分じゃない。
恋愛感情など分からないが、分からないなりに、この気持ちを大切に育てていけば良い筈だと、そんな確信は確かにある。
そうすればいつの日か、そうやって育て暁に芽生えたものが、彼女に対する愛情だと、そう確信を持って言える日も来るだろう。
「……そろそろ、俺も風呂に行くか」
カップを近くの卓に置き、気持ちを切り替えるために少しだけ伸びをして、クリムはソファから立ち上がった。
楽な道のりじゃないにしろ、まあこれからも何とかなるだろうと、呑気にぼんやり、そんなことを考えながら。
――当然のことながら、この時のクリムは知る由もなかった。
彼がのんびり構えるその裏で、ミリアが何を決意し、どんな行動に出ようとしているかなど。
#2-3
「おっふろー♪ おっふろー♪」
脱衣場に着くなり、コノミは服を脱ぎながら妙に上機嫌に鼻歌を口ずさみ始めた。
こういうときの彼女は、正真正銘見たままの少女のように見えて、本当に可愛らしい。
昼間に打ち明けてくれたような、かつてこの土地を統べていた龍種の神とは全く見えない振る舞いだ。
「アルタレナのお城のもいいけど、ここのも風情があって好きなんだよねえ。久しぶりだから楽しみー♪」
無邪気にはしゃぐコノミに、しかしさて、一体どう反応したものか。
「……」
「ミリアちゃん?」
「あ、は、はい」
コノミは気軽な手付きで例の豪奢なドレスを脱ぎながら、先ほどからずっと深刻な顔をしているミリアに、ふと野暮用を思い出したような気軽な様子で声をかけてきた。
「何か考えてることがあるなら、ため込まずにきちんと口にした方が良いかもよ?」
「…………」
にこやかな瞳がミリアを見つめて来ている。
一見無邪気でいとけないその双眸に灯る光は、しかし確かに、世の総てを洞察するような鋭さが感じられた。
意を決して、少し改まった気持ちでミリアはコノミに頷く。
「えっと、はい」
「真面目な話かな?」
「……はい。すいませんコノミ様。少し……確認したいことが」
「はいはいー、なんでしょう?」
衣装を脱ぐ手を止め、コノミも改めてミリアに身体を向けてきてくれた。
流石に改めて服装を正すまでのことはしなかったが、それでも話をはぐらかさず、ミリアの話を聞く気にはなってくれていたらしい。
いまいちつかみ所はないが、やはりコノミもいい人だ。
ふざけてばかりでなく、しっかり物事と向き合うべき時には向き合ってくれる。
こういう所を見ると、たしかにコノミがクリムを育てたという話にも、何となくしっくりくるものがあった。本人たちはどう思っているか知らないが、こういった根本的なところで二人はよく似ている。
「昼間……わたしがクリム様とコノミ様をアルタレナにお呼び出しする前から……お二人は、ご結婚されていて、それでその……夫婦生活もされていたと聞きました」
「うん。そーだねぇ」
「それでは……その」
間を置いてしまったのは……やはり躊躇いがあってのことだ。
ミリアの立場でこの台詞を口にするのは、やはり辛い。
「コノミ様は、わたしに嫉妬しないのかとお聞きになられましたけど。それで気付いたんです。コノミ様も、わたしに嫉妬されてたんでしょうか。クリム様に、これからももっと抱かれたいとお考えだったんでしょうか。お話を伺う限り、コノミ様はクリム様を愛しておられるように思いました。なのにわたしが、クリム様にあんなお願いをしてしまって――」
意を決して一気にそこまで言って――しかし結局そこから後は、言葉を続けることが出来なかった。
いろいろ考えたり感じたりしたことはあるはずなのに、いざそれを伝えようとすれば、どんな言葉を口にすべきか、さっぱり分からなくなってしまう。
一方でコノミは、ミリアのその言葉を聞いて「……あーあ」と、何だか呆れたような声を上げていた。
「そこ突っ込んじゃう?」
「はい。教えて欲しいです」
「……ほんっとに真面目だねえ、ミリアちゃんはー」
ミリアの言葉にコノミが返したのは――おおよそ彼女らしくない、どこか疲れたような大人びた苦笑だった。
わざわざ自分から、自分が傷つくことが明白な質問をしなくても良いだろうにと、そんな、多分に呆れの感情をにじませた笑顔。
あるいは、むしろそれこそが、無邪気に振る舞うことで隠していた、彼女の素の表情なのかも知れない。
コノミは――少し困ったように頬をかいて。
やがて「ま、いいか」と緩い諦観をにじませたため息を小さくついて、改めてミリアに笑いかけてきた。
「……うん。まあねー。ぼくも女の子だからねー? 嫉妬はするよ、普通に。クリムくんのことはずっとずっと前から愛してたしねえ。クリムくんにももっと抱かれたかったって、そりゃ思ってたよー?」
そしてコノミは、もはやためらうことなど全くなく、自分の気持ちをあっさりと口にした。
「でもねえ、昼間も言ったけど、クリムくんはそうじゃないから。ぼくとえっちするの、ずっと罪悪感あったみたいだったしね。だからまあ、しょうがないかなーって思ってた。ぼくはクリムくんが幸せになればそれでいいし、ぼくとえっちすることで、あの子が辛くなるなら、やめるべきでしょ……ってね?」
溜め込んでいた気持ちを打ち明けながらコノミが見せてきた、むしろ晴れやかとすら言えるその笑顔の奥に、どれだけの思いが込められているかを、ミリアは推し量ることは出来ない。
悲嘆か。嫉妬か。それとも諦観か。
ポッと出のミリアには想像も付かない程の深い心の交わりが、クリムとコノミの間にはあったはずで。
そして――同時に、その二人の積み重ねを土足で踏みにじったのは、他ならぬミリア自身である。
「だからぼくね、今、絶賛失恋中なの」
「……申し訳ありません」
「別に謝ることじゃないよー? ミリアちゃんの使命だって、とてもとても大切なことじゃん。それこそただ一人の女の感情なんかで立ち止まっちゃいけないものでしょー?」
「そ、そんな訳にはいきません!」
飄々と、まるで他人事のように言うコノミの笑顔が辛くて、むしろミリアの方が悲鳴じみた声を上げていた。
「わたし、そんなの嫌です。わたしの勝手なのは分かっています。でも、それでもわたし、コノミ様の事も好きなんです! コノミ様の気持ちを無視してわたし一人がクリム様に抱かれて幸せになってるなんて、そんなの納得できません!」
そう。
クリムを慕う気持ちとはまた別方向で、ミリアはコノミと触れ合う内、彼女の親しみと敬愛の感情を抱いていた。
なかなか「おつとめ」を果たせないミリアの不調を誰よりも深く洞察して、この旅行を発案してくれた。放っておけば良いのに漏れ出る瘴気の処理などまで買って出てくれた。
コノミにとってミリアは、単なる無関係の他人――どころか、恋敵でしかしかないというのに。
もちろんそれらの行動の裏には、彼女なりの何らかの狙いがあるかもしれない。
でも、それでも、コノミの諸々の気遣いでミリアが救われたのは事実で。
その恩を仇で返すような、そんなことをして良いはずがない。
だから、ミリアはひとりで、昼間からずっと考えていたのだ。
このジレンマを、自分たちなりに解決する方法を。
そして――たどり着いたのは、一つの答え。
「コノミ様。これからはクリム様には、二人一緒に愛して貰う事にしませんか」
「……………うん?」
流石にその発想は、想定外だったのか。流石のコノミもぽかんと呆れて口を開けている。
「えーと、それって、つまり3人でするって事かな?」
「そうです。……いや、えっと。同時にやる必要はないかもしれませんけれど。でもクリム様にはコノミ様の事も愛して欲しいんです。わたしも、使命がありますし……それにクリム様のことを個人的にもお慕いしています。だから申し訳ありません、わたしも引くことは出来ません。だから、だったら、三人で一緒にすればいいと思ったんです。コノミ様のクリム様への気持ちも、わたし自身のクリム様への気持ちも、切り捨てたくないんです!」
「……あーつまり、一夫多妻って言うか、ぼくらふたりとも、妾とか本妻とかなく、むしろ二人一緒に本妻にしてもらおう、って感じ?」
「はい」
「…………」
決然としたミリアの肯定に、コノミはしばし呆気にとられたように黙り込んでいたが。
じわりじわりとその表情が気の抜けたようなものに変化して。
そして――
「……あっはははははははははっ!」
何かの堰を切ったかのように、コノミは突然、腹を抱えて大笑いし始めた。
「こ、コノミ様?」
「あはははははっ、あー、やば、おもしろいなぁミリアちゃんは! まさか真面目をこじらしてこんな提案してくるとは思わなかった! はははははっ」
「……あ。……あの、わたし、もしかしてすごく変態な提案してたりとか」
「いやまあ変態かもだけどね、うん。良いと思うよ。ぼく、こういうの大好き! あはっははははは!」
目尻ににじむ涙を拭いつつ、なおも笑い転げるコノミは、笑ったまま、ふとミリアの背後に視線をやった。
「だってさ。どうするクリムくん?」
「……へ?」
愕然と振り返ると、そこには今し方ミリア達に追いついたのだろう、脱衣場に入ってきたばかりの様子のクリムが、何とも言えない、バツの悪そうな顔をして二人の会話を眺めていた。
「は、話……聞かれてたんですか」
「あー……いや。うん。すまん」
「あ。えっと……」
どうしよう、これ。
どちらにせよクリムにも相談しなきゃいけないことな訳で。だからよくよく考えれば、別に聞かれていても何ら問題ないはずなのだが。それでも何だか無性に恥ずかしい。
互いにかける言葉が見つからず、ただクリムとミリアは顔を合わせたまま、何となく気まずいような、恥ずかしいような、複雑な表情を浮かべるしかなくて。そんな二人を楽しそうに眺めながら、コノミは今日一番の晴れやかな表情で口を挟んできた。
「じゃあさ。じゃあさ。こういうのはもう、思い立ったが吉日だね。さっそく三人でやろっか?」
強引にそう言って話をまとめてしまい、コノミは唖然とするクリムとミリアの目の前で、改めて衣服を脱ぎ始めた。
そして――
「……へ?」
ミリアは、再び間抜けな声を漏らした。
ただ――まあ、そんな反応も、今度ばかりは無理もない。
流石に想定外に過ぎるものを、ミリアは目の当たりにしてしまったのである。
ドレスを全て脱ぎ去って、最後に残ったショーツもずり下ろされ、あらわになったコノミの股間部。
なめらかで控えめな曲線を描くその下半身。そこに――クリムのものと同じくらいの大きさを誇る、どう見ても男性器としか思えない器官がくっついていたのである。
さらにその陰茎部が、フリルとレースで可憐にあしらわれた輪っか状の布飾りで着飾られていたりするものだから、なおさら質の悪い悪夢でも見ているような気分になってしまう。
「こ、コノミ様……? それ……」
「あれ? ミリアちゃん、おちんちん見たことなぁい?」
コノミの股間を指さし唖然とするミリアに、コノミは物凄く意地悪な笑みを浮かべてくる。
そんな訳あるはずない。つい先ほどだって、クリムの勃起を口で愛撫したばかりである。
「こ、コノミ様、男性だったんですか!?」
「なにいってんの。ちーがうって」
動転するミリアにけらけらと笑いかけながら、コノミは股間のものに手を添えてそれを持ち上げて見せた。
「ぼくね、龍でも性別が分かれる前の古い種類だから。両性具有なんだよ。ほら」
そう言いながら見せてきた陰嚢の奥には、たしかにミリアと同じくらい未成熟な作りの女性器が、その割れ目が見て取れた。
神話の時代のいちばんはじめの頃、かつて生き物には性別がなかったという。
太陽神が世に生まれ出たことによって世界は光に照らされ、陰が生まれた。それと同時に世界には昼と夜が生まれ、生と死が分かたれ、そして地に這う生き物たちは雄と雌の区別が出来たと言われている。
つまりコノミは、そんな古い時代に生まれた、世界で最も古い龍のひと柱だということだ。
「ま、気にしなくてもいいよ? ぼく、基本的に人格は女の子だからね? おちんちんを使う気はないし」
笑ってそう言いながら、コノミはとうとう全裸になった。
確かにその細身には、慎ましいながらも僅かの女の子としての膨らみを見せる乳房を備えている。
腰回りも、控えめながらまろやかな丸みを帯びており、股間に生えているものを除けば確かにその体つきは女の子の造形だ。
なおも言葉を失うミリアに、コノミはおどけた様子で「うりゃっ」と無邪気に抱きつくる。
(……う)
妙な気分になってしまう。
当然そんなことをされれば、少し興奮して僅かに熱を持った男性器部分も、ミリアの太股に押しつけられることになる訳で。
しかしまた同時にコノミの股間部から漂ってくるのは、間違いなく少女の愛液のにおいだ。
そして。
言葉を失うミリアにじゃれながら、コノミはしゃいだ声で、改めておねだりして来るのだ。
「ね、ね。ぼくもう我慢できなくなってきちゃった。はやくしようよ、三人でえっち♥」
#3-1
悪戯気分でノリノリになったコノミを止めるのは、付き合いの長いクリムであっても至難の技と言っていい。
そもそもの話、普段の言動からはあまりそうは見えないが、コノミは実は、基本的には思慮深い人物なのである。ふざけた言動が多いのは事実だが、周りが心底嫌がったり、致命的な迷惑を被るような事は絶対しない事をクリムは知っている。
要するに彼女は、悪ふざけをする時と場合をきちんと選んでいるのだ。
だが、だからこそ彼女のおふざけはタチが悪い。
ふざける時にもいちいち最低限の筋を通しているだけに、説得もきかないし、力ずくで止めるなどもってのほか。それでいながら、いざやるとなったら徹底的にやる訳で――はっきり言って厄介なことこの上ない。
対処法はただ一つ。すべてを諦め苦笑しながら、コノミが満足するまで付き合うしかない。
そして――クリムより付き合いの短いミリアが、そういったコノミの悪ふざけのいなし方を心得ているはずもなく。
「えっと……」
コノミに流されるままに仕度させられて、ミリアはクリムの前で困惑の声を上げていた。
無理もない。クリムとは出会ってから何度となく肌を重ねてきたミリアだが、性を「遊び」として楽しむやり方について言えば、彼女はまだまだ素人もいいところだ。
だから3人同時にセックスするという方法や楽しみ方についても、当然、具体的にどうすればいいかなんて、見当もついていないはずで。
そんななのに、いきなり「じゃあじゃあミリアちゃん、二人で一緒にクリムくんの、舐めてあげよっか?」などとと言われても、戸惑わずにはいられないだろう。
「あはは、固くなってるー」
一方、コノミは当然のことながら上機嫌だ。久しぶりにクリムと睦み合う事が出来るということで、よほど盛り上がっちゃっているらしい。
三人がいるのは、ヤヌカの領主の館にある浴場だ。
大小様々な岩を組み上げて湯船の形にした、いわゆる露天式のもので、庭園の一部となっているため景観もとてもいい。冬場の雪化粧したときなどは特に美しく、コノミが密かにお気に入りにしているのも確かにうなずける。
近くに沸いている温泉から湯を引いているため、定期的な手入れが必要ではあるものの、どんなときも冷めることがないのも特徴の一つで、里が魔王の軍勢によって滅んだ後、ここにこっそりお邪魔してコノミと共に暖を取ることもしばしばあった。そういう意味でクリムにとっても、思い出深い場所でもある。
あるいはコノミにとってこの場所がお気に入りなのも、その思い出があるからなのかもしれない。
まあ、それはさておいて。
結局、コノミに促されるままに脱衣場で服を脱ぎ、浴場に入って。
足だけ湯につける形で大きめの岩に腰掛けた自分の前に、揃って跪く姿勢でミリアとコノミが並んで湯につかり、自分の股ぐらに揃って頭を突っ込んでいるこの有様を見ると――何と言うべきか、周囲の風情ある景観だとか、過去のコノミとの思い出とか、いろいろなものを冒涜しているような気になるクリムだった。
「……いきなりこれはハードル高くない?」
「んー? そうでもないと思うけど―。むしろ基本じゃない? Wフェラ」
「基本……かなあ。それどこの世界の基本なんだろ……」
「いやあ、いっぺんやってみたかったんだよね。ミリアちゃんとふたりでクリムくんにご奉仕プレイ☆」
そんな益体もない会話をしながら、大きく開いたクリムの股ぐら、その右側に陣取ったコノミが、ではでは早速ー、と言わんばかりに楽しそうにクリムの性器に頬ずりをして来た。
片や左側のミリアはまだ状況に乗り切れていないらしく、呆然としたままコノミの様子をうかがっているだけの状況だ。
「何かごめんな、付き合わせちゃって」
いろいろ勝手気ままの限りなコノミに代わって、クリムはミリアに謝罪の言葉をかけた。
といいつつ、クリムはクリムでコノミの柔らかでねちっこい刺激を受けてしっかり勃起をしているので、あまり格好は付いていないが。
「いえ……その。わたしが言い出したことですし」
「ほらほら、ふたりともおしゃべりばっかりしてないで、たのしも?」
そろって妙に神妙な表情になるクリムとミリアをせかすように、コノミは本格的な愛撫を開始した。
ちろりと小さな舌が小さな唇から伸びて、まずは味見とばかりに竿を1往復。
ゆっくり、ちろちろと舌先を小刻みに動かしつつ、付け根からカリ首に至るまでを、執拗に、念入りにくすぐる動きだ。
「……っ」
久しぶりの、コノミのご奉仕。
さすがに身体がびくりと大きく反応してしまう。
コノミは、こういった口での戯れが大好きだ。戦場でもほぼ毎日「処理」をして貰っていた訳だが、あまり場所や時間の余裕がなく、本格的に交わることもなく口だけでお願いすることも多かった。そんな経緯もあり、コノミの口技には、経験に裏打ちされた確かな技量がある。
半勃ちだったクリムのものが、コノミのそんな熟練の口技に敵うはずもない。
ぞろりぞろり、ぴちゃりぴちゃりと、程よく水音を添えながら、勃起の裏筋をなめずる動き。ねっとりした湿り気と暖かさにいいように弄られ、結局クリムは、なすすべもなく射精欲を刺激されてしまう。
「う、っは……っ」
「~♪」
難なく性欲をほじくり返され、腰を震わせうめき声を上げるクリム。
口愛撫を続けながら、それを楽しげに、熱い瞳で見つめるコノミ。
構図としてはただそれだけのものだが、傍らのミリアは、どうやらそんな二人の間に、互いの呼吸を知り尽くしているが故の「慣れ」を見出したらしい。ただただ圧倒されたかのように、彼女はクリムとコノミの睦みあいに見とれるばかりとなってしまっていた。
「んー? ミリアちゃん、どうしたのー?」
そんな魔王のお姫様に、コノミはいたずらっぽく声をかける。
飼い主に甘える仔猫のようにクリムの勃起に頬ずりする様を見せつけて、うっとりと目を細めながら――しかしミリアに投げかけるのは、明らかな挑発の言葉だった。
「遠慮なんかしてると―、ぼくがクリムくんのおちんちん汁、ぜんぶぜーんぶ、もらっちゃうよー?」
「あ、わ、わたしもしたいですっ」
「んふ、どうぞどうぞ」
結局上手い具合に乗せられて、慌てた様子でミリアも口奉仕に参加し始めた。
まず初めに、ちろりちろりと、コノミのものからすれば酷く控えめで、恥ずかしげに聞こえる水音が聞こえて。
そして、陰茎に触れる暖かさが、二重になる。
(うあ……)
なんだか、すごい。
それは、今まで感じたことのない種類の気持ちよさだった。
ここ最近はミリアも口で愛撫してくれることは再々だが、コノミとの性格の違いもあるのだろう、まだまだ彼女は技量的にも未熟で、舌使いもおっかなびっくりなところがある。
それはそれでミリアのひたむきさが感じられて、別段不満も覚えてはいなかったのだが――しかし肉体的には、なかなか射精に至れないもどかしさを感じていたのも事実で。
しかし今、だからこその感動だった。
熟練の娼婦のような、コノミの積極的で貪るような舌使い。
未成熟な処女のような、つたない、でもひたむきで一生懸命なミリアの舌使い。
その二重奏が、クリムの欲望を包み込んでくる。
(……二人の舌、こんなにも違ったんだ)
快楽に酩酊しながら、クリムに触れる2人の舌の感触が、明らかに違うのも背徳感に拍車をかけていた。
体温はミリアのほうがやや高く、唾液の粘度は僅かにコノミの方が上だろうか。コノミの方が舌の表面がざらざらしていて、一方で大きさや肉厚はミリアの方が遙かに上。
二つの異なる愛撫。
二つの異なる舌の動き。
二つの異なる体温、吐息。
慣れ親しんだ2人の、しかしまったく異なる口奉仕。それが今一体となって、まったく別種の強烈な快楽となって、クリムの性感を押し上げていく。
久しぶりに味わうコノミの熟練の技が、どこかたどたどしくもどかしいミリアの愛撫が、一緒に手をつないでクリムを快楽のどん底の引きずり落としていく。
「あは。わ、すっごーい♪ クリムくんのおちんちんの味、精子の味……ひさしぶりー♪ んちゅっ それにこれは、ミリアちゃんの愛液の味もしてるっぽい?」
舌先でクリムの裏筋を舐めながら、わざわざそんなことを口に出して言うのは、ミリアの対抗心を煽るためか。
「……っ」
そして、こういう時のミリアは本当に素直で単純だ。
コノミのちょっとした挑発に触発され、舌使いがやたらとねちっこいものに変化する。
たどたどしいのは相変わらず。しかしクリムの勃起の表面に浮き出た血管に舌を這わせ、丁寧に隆起の形を確かめるその動きは、確かな積極性を感じさせるものだった。
「ん、は、あ、ああ……♥」
そうこうしているうち、ミリアも本格的に発情してきたらしい。
だんだん濃くなる雄の匂いに中てられ、それを舌先で直で感じ取って。それだけのことで、とろん、と夢見るように瞳が蕩けていく。
「あっは、ミリアちゃん、すっごいエロいねぇ、いっつもこんな事、クリムくんにしてあげてたんだぁ?」
「ん、ふぁぁ……ッ♥ あ、んんんっ」
続けざまに少しいけずっぽい台詞をコノミは投げかけていたが、もはやミリアには返事をする余裕もない様子だ。
あるいは、もう完全にコノミの言葉など耳に入っていないのかもしれない。一心不乱に、むしゃぶりつくようにして、ミリアはクリムの性器に全身全霊の奉仕を続けるばかりだ。
「……むむ」
皮肉なもので。むしろ逆に、ミリアの様子に、コノミが対抗心を煽られてしまったようだ。
負けじとコノミもがっつくようにクリムの腰に食らいついて――気がつけば、二人の舌先での奉仕は、クリムの性器の「領土争い」のような様相を呈してきた。
コノミはふてぶてしい舌使いで縦横無尽に、ミリアはやや気弱げに、それでも負けじと。
ふたりは各々の舌で、クリムの表面をどれほど占領できたかを競うようにその勃起の上を舐めまわし、唾液をまぶし合い、舌先でできうる限りの情欲をなすりつけていく。
たった一本の性器の上で、上書きし合い、絡み合い、混ざり合う二人分の唾液。
献身的でひたむきなそんな二人の愛撫によって、クリムの勃起はあっという間にその全体が、二人分の唾液で完全に覆われきって、どろどろになってしまう。
それでも二人は舌での奉仕が止まることはない。
延々と、代わる代わるに、クリムのもの全体がなめ回されていく。
(う、これ……)
ちょっと、やばい。
ぞわぞわと背筋が泡立つ。否応にも昂ぶってしまう。
(これ駄目だ、知っちゃいけない種類の気持ちよさだ……)
何せ、自分の性器を、二人の少女が取り合っているのだ。
自分たちが踏み出しては行けない領域に片足を突っ込んでいることを自覚しつつも、しかしあまりにも気持ちよくて、クリムは結局、二人の待ったをかけることが出来ない。
そして――逃れようもなく、背徳は次の段階へと進んでいく。
「……っは、う……」
「……ぁ」
意外にも、クリムの反応の変化に先に気づいたのは、ミリアのほうだった。
あるいはコノミのほうは、久しぶりにしゃぶることの出来たクリムの性器の味に、夢中になりすぎていたのかもしれない。
「ん、あ!? ああっ ミリアちゃんずるい!」
一拍遅れてミリアの行動の変化に気付き、コノミは批難の声を上げたが、もう遅い。
クリムの鈴口に透明な先走りがにじみ出ていたのに気づいたミリアは、今まで押されっぱなしだったことの仕返しとばかりに、我先にとその先端へとキスをしてきたのである。
ちょん、とご挨拶をするようにすぼめた唇を軽く触れ合わせた後、ミリアは伸ばした舌先で鈴口のワレメをくすぐるようにして、とくとくとにじみ出てくる子種交じりのその雄の涎を、唾液と絡め合わせていいたく。
「ん、ふ、ぁ。んんんっ、っちゅ、んむ、んんぅ……ぁぁ……はぁぁ……♥」
そして、唾液と絡め合わせたその淫液を嚥下した途端――まるでこの上ない美酒を舐めたかのように、ミリアの顔が弛緩した。
それが、ここ最近ミリアが見せている一番の変化である。
ここ一ヶ月、毎日「おつとめ」をしていた成果だ――とも言えるかもしれない。
勃起した性器からにじむ匂い。
独特の男くさい汗の匂い。
そういった匂いを嗅ぐと、今まで何度も抱かれ、馴染まされ、刻み込まれ、射精とともに子宮に覚え込まされた悦楽のその味を、条件反射で思い出してしまい、ミリアは途端に発情してしまうようになっていた。
現に今も、つい先ほどまでコノミと争っていたことすらすっかり完全に忘れた様子で、文字通り一心不乱に、先走りに吸い付き、口内から鼻腔に広がるその臭いに耽溺し、さらにあろうことか、彼女は自らの股間に手を添えて自慰まで始める始末である。
「……」
コノミはしばし呆然と、そんなミリアの変貌ぶりを眺めて。
ミリアのその蕩けきった表情に、対抗心とは別の感情が湧き出たらしい。
「……いいなぁ」
少しすねたような口調で、そう呟く。
やけに子供っぽいその言葉に乗せられた感情は、明らかな羨望だった。
クリムというひとりの男の肉体に、そこまで耽溺できることが。それがひとりの女として、同じくクリムと交わったことのある女として、彼女は羨ましかったのだろう。
だからだろうか、次にコノミがミリアにかけた言葉は、どこか懇願めいた響きすらあった。
「ね、ミリアちゃん……ぼくにもクリムくんのおつゆ、舐めていい?」
「ん……ふぁい」
素直なミリアは争うようなこともなく僅かに身体をどかし、コノミが顔を近づける分の空間を確保する。
ありがとね、コノミは小さく礼を言い、そして彼女は、出来るだけミリアの舌の動きを邪魔しないように気を使いつつ、ミリアと同じように、ミリアよりさらに小振りな舌先を鈴口に触れ合わせてきた。
「ん、ふ、んんんっ、ん、ちゅ、ん、ん……っ♥」
「ふぁ、あっ、濃いぃ、あ、んんん、っちゅ、ちゅううっ♥」
コノミの小さな舌がクリムの鈴口を撫で。
次にミリアの舌がクリムの先っぽをつつき。
ひたすら交互に、止めどなく流れ続ける先走りを、分け合っていく。
「ん、ふ、んんっ」
「ぁん、んむ、んんんっ」
だけど、今までは独り占めできていたクリムの雄エキスを半分こするのだから、それで二人が満足など出来るはずがない。
しばらくはそうしてお互い譲り合いながら、分け合うように舌先で先走りを絡めとり味わっていた二人だが――でもどうにも、二人揃って、どことなく物足りなさそうな表情を浮かべ始めた。
ならば――限りある資源を今まで通りに存分に味わうなら、道はもう一つしかない。
「ミリアちゃん」
「ん、はい……」
「……っ!?」
さすがに、クリムはちょっと驚いた。
どちらともなく、具体的になにを言い合わせるでもなく、まるでそうするのが至極当然のことのように、ふたりは互いに顔を寄せ合って、唇を重ね始めたのである。
「ん、ふ、っちゅ、んんっ」
「む、んぁ、あ、っは、あ、あんんんっ」
ぴちゅり。にちゅ。くちゅ。
絡まりあう二人分の少女の舌。
時にはミリアが、時にはコノミが、またあるときには二人同時に舌先を伸ばしてクリムの鈴口から先走りを舐めとり、キスを通して存分にその味わいを楽しむ二人。
(……なんだ、これ)
母親からお乳をもらう子猫の姉妹のようにあどけない表情を浮かべながら、同時に性的欲求の赴くまま、ふたりは女同士でキスをして雄のエキスに酔いしれている。
ミリアとコノミ、ふたりの美少女が、一心不乱に、クリムの性器に、クリムの先走りに、ここまで一生懸命になって貪っている。
くらくらする。
否応なく昂ってしまう。
大した刺激を受けている訳でもないのに、股間の辺りが切なくなって仕方がない。
じわじわと股間を苛む快楽が、やがてクリムの腹部で、一つの明確な欲求を形作っていく。
射精欲。
精液を吐き出し、この乙女の顔を汚したいという、征服欲。
そして。そんな欲求でより濃くなった彼の発情臭を、二人は揃って敏感に察知したらしい。
舌と舌を絡め合って。唾液と唾液と先走りを交換して。
唇と、唇と、そして鈴口でキスを繰り返して。
そんな風に女同士で艶めかしく絡み合いながら、どちらともなくミリアとコノミは口を離し、互いに視線を交わし、小さく頷き合って――そして潤んだ瞳をそろってクリムに向けてきた。
クリムの性臭で発情し、二人一緒に高まった欲求を口にしたのは、やはりコノミの方が先だった。
「ね、ね。クリムくん。もうそろそろ、精子も欲しいな?」
「……」
息も荒く、いつも澄ました顔も紅潮して台無しだ。
大きな瞳を潤ませ懇願してくる相棒の声。
両性具有である彼女の股間には男性器も備わっている。その部分も当然ながら興奮を示し、クリムと同じように大きくそそり立って、湯の中で先走りを吐き出し始めていた。
辛抱貯まらなくなったのか、彼女は彼女でクリムの性器に頬ずりをしつつ、自らの両手は自分の股間に添えて緩くしごいて自慰を始めてしまっている。
ミリアも、何も言わなかったが、同様だった。
コノミに先んじて自慰を始めてしまっていた分、むしろ彼女の方が追い詰められてしまっているようにも見える。よくよく見れば、先ほどから自分自身で慰めているミリアの股間部から、じわりと湯の中に、白いものが滲み出しているのも見て取れた。
先ほどの性行為でクリムが注ぎ込んだ精液が、発情して膣が緩くなったために、お湯の中に漏れ出てきているのだ。
――ぞくぞくする。
「ミリアちゃんも、ほしいよね? クリムくんのえっちな妊娠汁、ほしいよね?」
「えっと、あの……」
恥ずかしがり屋なミリアは、コノミとは違って、顔を赤くしてほんの少しだけ躊躇って。
それでも結局彼女は、自分の欲望の素直に、赤面しつつもしっかりと頷いてくれた。
「あの……はい、クリム様の精液、コノミ様と一緒に、ほしい、です」
「……―――」
こんなひたむきなおねだりを拒絶するなんて――そんな選択肢、あるはずがない。
「いいよ。どうぞ」
だからクリムは、自分からしごいて絞り出すようなことはもちろんせず、ただ一言そういって、ほんの少しだけ腰を突き出し、陰茎をふたりの差し出すような仕草をした。
ここまで来れば、やはりふたりの愛撫でだけで射精したい。
そんな欲求をそれだけの行動で察してくれた二人は、おあずけを解かれた子犬のようにそろってクリムに飛びつきむしゃぶりついてきた。
「う、おっ」
二人一緒の口愛撫ということで、二人とも口にくわえようとはしなかった。
代わりに二人が選んだのは、左右両方から竿を唇でくわえ込み、吸い付く動きでクリムを刺激するやり方だ。
「う、わ、すご……っ」
実際の性行為や、口でくわえて貰う時のように、陰茎全体を粘膜で包み込まれるような充足感はない。
感覚的には粘液で濡れた手でする自慰のような感じだろうか。自分の手でやるような締め付けの強さもしごく速さも期待できないが、かわりに左右両方から不規則にやってくるミリアとコノミのざわめくような舌の動きが、クリムの快感を射精へと押し上げていく。
「……っ」
すごい。
すごい、気持ちいい。
もともと先ほどまでさんざんミリアと抱き合ったばかりなのだ。ただでさえ性感が余熱として残っているのに加えてこの未知の快楽は、到底耐えられるものではない。
そしてそもそも、耐える必要なんて何処にもない。
ぞろりぞろりと、クリムをしごく二つの唇。二つの舌。二つのよだれ。二つの体温。
向かい合って女同士でキスをするような体勢で、しかしやっているのは、クリムをただただ射精に導くための、二人三脚の唇奉仕。
「ん、っふ、ん、ぁ、んんっ」
「んむ、っは、ああ、ん、っちゅ」
唇から二人の声が漏れる。
明らかに発情した吐息。
二人は唇でクリムに奉仕をしながらも、自慰行為をやめてはいなかった。
ミリアは自らの女陰を指でかき回して。膣に残ったクリムの精液の感覚を改めて味わって。
コノミは自らの男性器をしごいて、あるいはそれは、一緒に射精しようとしているのか。
そして同時に鼻腔をくすぐる、二人分の女の匂い。
クリムはそれぞれの匂いを知っている。
ミリアを抱いたとき。
コノミを抱いたとき。
ミリアに口で奉仕されたとき。
コノミに口で奉仕されたとき。
これは二人がそれぞれ発情したときに決まって放つ、貪欲な雌の匂いである。
「ん、んっ、あ、っは。あ……クリム、様……っ」
「ん、ふ、あ、ふぁぁ、ん……クリムくん……っ」
二つの声に呼びかけられる。二つの声に求められる。
吸い付かれ。
しごきあげられ。
なめずり回され。
そうして――二人分の発情を隅から隅までなすり付けられて。
二人分の淫らな性臭に包まれて。
こんなの絶対、我慢なんて出来るはずもない。
だから――あっけなく、クリムは限界を迎えてしまった。
――どくんっ。
「う、あっ」
どく、どくっ。びゅ、びゅるるっ。
精液をねだられた手前、確かにあえて我慢して性感をため込むようなことをしなかったが、それにしてもあまりにも早い射精だったと思う。
脈動する男性器。吐き出される白濁の欲望。
「わ、あははは♥ すご、久しぶりだぁ、クリムくんの精子だぁ」
「わ、やっ、ぁ……すごい…さっきもあんなに出していたのに、まだこんなに…」
全然すごくはない。
本気の射精でない分、量も濃さもクリムのものとしてはたいしたことはない。
でも、それでもとりあえずの、二人に奉仕に応えるための「ご褒美」としては十分なもので。クリムの勃起の目の前にいた二人は、そろってほぼ均等に、顔や、首筋や、鎖骨の辺りまでをべっとりと精液で汚されていた。
「あはは。べっとべとだぁ」
「本当……すごいです」
雄の欲望で顔を汚らしくデコレートされながらも、コノミもミリアも上機嫌だ。
お礼をするように二人揃って、射精の余韻も治まらぬクリムの亀頭にそっと優しいキスをして。そしてコノミは改めて、ミリアに向かって、にこー、笑顔を向けていた。
「ね、どうお? こういうのも楽しいでしょー?」
「う、はい……」
まあ途中から完全にミリアもノリノリだった訳で。彼女の性格上否定することなど出来るはずもない。
クリムもそれは同様で、結局気持ちよくなってしまった訳で、ここまで来てしまえばもう文句も言いづらい。
「いつもいつもコノミは強引なんだから」
「良いじゃん別にー。終わりよければ全てよし、ってねー?」
そして、クリムのせめてもの憎まれ口をにこりと笑っていなしながら、今度はコノミは何を思ったか、ミリアに抱きついて改めて彼女の頬にキスをし始めたのである。
「わ、わっ!? な、何です?」
「いやあ、ぶっかけされるのも好きだけどー、やっぱり精子、もったいないかなぁって」
「あ、え? あ、やっ」
――いや、違う。キスをした訳ではない。
ミリアの顔や首筋にぶっかけられたクリムの精子を、コノミはちろちろと舌を動かしフェラチオをするような丹念さで、舐め取っているのだ。
「や、あははははっ、っちょっと、コノミ様、くすぐったいですっ」
「いいじゃないいいじゃないー。あーおいし。クリムくんの精子の味、なつかしいなー」
「もぉ、じゃあお返しですっ」
「え。あ、あははははっ。あ、ほんとだコレなんか恥ずかしいしくすぐったいっ」
で、今度はミリアまでもがコノミの真似をして、コノミに組み付き、コノミのかかった精子を舐め取り始めたりして。
「っは。ぁ……」
「ん、ぁぁ……」
しかし、ふざけてじゃれ合っていられたのは、その途中まで。
ふたりとも、クリムとのセックスの味を、その身に奥の奥まで刻まれた女の身。
クリムの濃厚な精子の味は、身体の奥底まで刻み込まれた欲望を掘り返す引き金になってしまったらしい。
互いの顔を舐め合う内に、抱き合った姿勢のまま、ミリアとコノミ二人の腰がなまめかしく、もどかしげに揺れ始めている。
無理もない。彼女たちはクリムと違い、さっきから自慰にふけっていながら、まだ絶頂には達していなかったのだから。
生殺しの状態で、媚薬に等しいクリムの精液を腹に収めれば――そんなの、欲情せずにはいられないだろう。
「……ぁ、ふ」
「んん……」
やがてふたりは、互いに顔にかかった全部を舐め終えて。
互いに舌の上に残ったままの精子のその残滓まで、キスをし、舌を絡め合って交換して、互いの唾液と共に飲み込んで、その精子の匂いのわずかな名残まで、全部全部を味わって。
「ね、クリムくぅん……」
やがて、辛抱たまらなくなった顔で、女同士で重ね合っていた唇を離して。
「ね、ね。お願いだから、いいでしょお? ぼくね、ぼく、もう限界なのぉ」
そして――コノミがクリムに向けたのは、背筋が泡立つ程に淫靡な、切なげなおねだり顔だった。
「ぼくと先に、おまんこ、して?」
#3-2
後背位とか。背面座位とか。あるいは背面側位だとか。
コノミとするときは、昔からずっと、後ろからの体位でするのが決まりだった。
理由は至って単純で、コノミの股間にぶら下がっているもう一つの生殖器官――男性器の存在のためである。
向かい合って抱き合う体位だと、どうしてもそれがクリムと触れ合う形になってしまう。両性具有でありつつも、少なくてもクリムに対するときのコノミの精神は、完全に「女」のものだ。女としてクリムに抱かれているとき、自分の中の男としての部分に触れられたくないと――そういう思いが彼女の中にあったのだろう。
彼女ほど魔法に優れた存在ならば変化の術で男性器の存在一つどうにでもなってしまいそうなものだが、こればかりはどういう訳かうまく行かないらしい。
だから当然、久しぶりに抱き合う今日も、コノミは後ろからの体位を要求してきた。
湯船の中に立って、クリムに背を向け、手頃な岩に手をついて。
そうしてコノミは、小ぶりなお尻をクリムに向かって突き出してきた。
「ね、クリムくん……おねがぁい」
甘えたおねだりに、ぞくぞくする。
コノミの肌には染みなど一つも存在しないが、東洋系由来のためか、ミリアに比べてやや色が濃い。
そのぶん明かりに照らし出されて肌に出来る陰影は淡いものとなり、全体的に身体の凹凸もあまり強調されず――むしろ小柄なその肢体を更にいとけないものに見せている気がした。
滑らかな曲線を描くお尻の中心部では、ぴっちりと閉じた割れ目が、そしてお尻の穴までも、ひく、ひく、と蠢いて切なさを訴えていた。僅かに透明な淫液をお漏らしし始めているのも見て取れる。
これまでずっと我慢して、だからこそこの久しぶりの交わりに、もう彼女は我慢ならなくなっているのだ。
「……」
相棒のそんな淫靡な痴態を前に、しかしクリムの胸にあるのは、この期に及んで躊躇いだった。
ヤヌカの里の土地神として、コノミはクリムのことを、生まれたときから知っている。成長し、今のような姿になるまでをずっと見守ってくれていた存在だ。だからクリムは、コノミが自分に向ける気持ちは、母親が子供に対するものだとばかり思っていたし、性処理として肉体関係を結んだのも、そういった、保護欲に近い気持ちの延長線上にあるものだとばかり思っていた。
いや――それは結局、あくまでクリムが勝手にそう思っていただけなのだろう。
長年ずっと一緒にいて、確かにクリムの方も、コノミには親愛の情を抱いてきた。
家族の情という意味で言えば、はばかりなく愛していると断言してもいい。
だからこそ、クリムにとって、コノミを抱くことは苦痛を伴った。
彼女は自分のことを男として愛してくれている訳ではないと思っていたから。
必要に迫られて、互いに同意の上での行為ではあったけれど、それでも自分がやっていることは、陵辱と大差ないもののように思っていたから。
だから自分がやっていたのは、必要に迫られ、母や姉を組み敷くのと何一つ変わらぬ行為だったのだと。そう思っていたのだ。
だけど――
「……コノミ」
「ばーか」
途方に暮れた呼びかけに返ってくるのは、可愛らしい罵倒だった。
「まったくもー、ここでヘタレないでよねー? さっきから言ってるじゃない。ぼく、クリムくんのことずっとずっと大好きだったんだよ? だからいいの。こういうことして、いいの」
コノミは、女として、クリムのことを愛しているから。
だから今からするのは、ありふれた男と女の愛の行為だと。彼女はそういうのだ。
そんなの卑怯すぎると、心の底から切なくなった。
「……今更になって、そういうこと言うなよもう」
「だってさ、言っても信じてくれた?」
「………それは」
「信じなかったでしょ?」
ぐうの音も出ない。
それは確かにその通り。
たぶんコノミの心からの愛情表現も、傷つくクリムへの慰めと受け取ってしまっただろう。
しかし、それでも。そんな告白を今更されても、困ってしまう。
今のクリムは、無邪気なままコノミのその気持ちを受け入れることが出来ない。
クリムは、ミリアと関係を結んでしまったから。
ミリアのことを愛すると、そう約束してしまったから。
「……いいんだね?」
その確認は、だからミリアに向けたものだ。
「あ、は、はい」
どもりつつ、赤面しつつも、はっきりとミリアは頷いた。
「わたしは、こうなりたいんです。わたしも、クリム様にたくさん愛して貰いました。だから、コノミ様のことも、いっぱい愛してください」
「……わかった」
なら、もう、クリムも躊躇うことなど許されない。
生まれたときから傍にいてくれたコノミ。
魔王城で見(まみ)えた瞬間に心奪われたミリア。
どちらもクリムにとっては、もとから代えがたい大切な女性で。
だからクリムとしても、彼女たちの気持ちには、きちんと答えたい。
ならば――確かに答えは単純だ。
残された道は、ミリアの示したものしかない。
ミリアと、コノミ。
二人の女性を、一緒に愛すればいい。
「……ぁっ」
一度決心してしまえば、行動は早かった。
突き出されたコノミの腰をつかむ。
久しぶりに触れる彼女のお尻は、最近慣れ親しんでいたミリアのものよりも更に細く、貧弱で、小ぶりな作りだった。
こんなにも小さな身体に自分は毎日のように欲望を注ぎ込んでいたのかと内心改めて戦慄しつつ、しかし同時に、心のどこかでしっくりくるものを感じてもいた。
手に馴染む、この感触。
コノミとは、ミリアと出会うまでは、ほぼ毎日、何度も何度も肌を重ねてきた。それこそミリアの何十倍、何百倍もの回数、快楽を共にし、貪りつくした肉体がそこにある。
常に罪悪感が共にあったとは言え、その気持ちよさは魂の奥底にまで刻み込まれている。
その記憶が、快楽への期待が、躊躇いの心を鈍らせる。
「いくよ」
「うん、きて、きてぇ……っ!」
彼女としては本当に珍しい、焦れきった、急かすような切ない声に後押しされて、クリムは腰を進ませていく。
「あ、っは、あぁ……っ♥」
ずぬりと、あっさりと大人サイズが一気に飲み込まれていき、途端にコノミが喜悦に全身を震わせた。
むせび泣くような感極まった激情が、大きな塊となってその小さな口から吐き出される。
感激のあまり力も入らなくなっているらしい。体重を支える彼女の細腕もがくがくと震えて頼りない。体勢が崩れ、岩肌にその繊細な肌が触れる直前、とっさにクリムは後ろからその短身を抱きしめ支えてやると、嬉しそうに小さくコノミは鳴き声を上げて、後頭部をクリムの胸にぐりぐりと押しつけて甘えてきた。
ほんの少し、懐かしさを覚える。
そういえばだいたいこれが、いつものパターンだった。
「あぁ。ああ……♥ やっと、やっと挿れてもらえたぁ♥ ひさしぶりのクリムくんのおちんちん、お帰りなさいだぁ……っ♥」
「や、やめろよその表現、なんか笑える」
「冗談なんか言ってるつもりないよぉ♥ ね、ね、はやく犯してぇ♥ ずこずこってぇっ♥」
当然、身長差のある二人でこの体勢ではキスも満足に出来ない。だからコノミは自分を抱きしめるクリムの左手を取って、その手の甲にキスをし、ディープキスの代わりに指先をしゃぶってくる。
しばらく左手は離してくれそうもないので、仕方なく右腕一つでクリムはコノミの身体を支え、そして抽挿を開始した。
ずちゅ、ずりゅっ。ぐちゅっ。ぬちゅっ。ずちゅっ! ずちゅッ!
いきなりの本格的な抽挿。
すでに濡れそぼったコノミの女性器は激しい水音を奏で、同時に彼女は喉から甘い喘ぎをためらいなく吐き出していく。
「あ。あっ……♥ あ……きもちいいっ♥ これ、あっっ♥」
「……コノミ様、すごい……」
いとけない小さな身体にも関わらず、クリムの大サイズの性運動を難なく受け止めるその様子に、傍で黙って様子を見ていたミリアが、信じられない、と言った様子で声を上げていた。
無理もない。普通の人間の基準で考えるなら、股が裂けてしまうのではないかと思える程の体格差がコノミとクリムにはある。であるにも関わらず、平均より遙かに大きいクリムの太さと長さを、コノミはあっさり無理なくくわえ込んで、その上快楽に酔いしれているのである。
「あ、あん、っは、あ、いい、きもちいい♥」
しかもそればかりか――もっともっとと、コノミは自ら腰を振り始めた。
蠱惑的な、娼婦さながらの熟練の腰使い。
こうなると、たまらないのはクリムである。
「うあ、あ……っ」
「あはは♪ クリムくん、やっぱかわいっ♥」
「う、うっせ!」
(……コノミの中、相変わらずすごい……っ)
小さな身体に似合わず、コノミの性器の具合でもっとも特徴的なのは、実はその柔軟さだ。
肉厚の膣ヒダに満遍なく覆われている産道は、極小の入り口からすれば意外に思えるが、締め付け自体は緩くもないが決して強いものではない。絞り上げるような激しい快楽を与えるのではなく、まったりマッサージをしながら、迎え入れた男性器を暖かく包み込むような、そんな優しい感じのおまんこなのだ。
襞の隙間から滲む愛液も量はかなり多いが、粘度は低くさらさらしている。そのおかげだろうか、どんな激しく無理のある抽挿を加えても、彼女の淫液は十分な潤滑を示し、柔らかな快感となって男をおもてなししてくれる。
関係を持ってからずっとこうなのではない。
何度も何度も身体を重ねる内、クリムがコノミを、こういう風に馴染ませたのだ。
何度も何度も身体を重ねる内、コノミがクリムを受け入れるために、自らの身体をこういう風に作り変えていったのだ。
どんな獣じみた昂ぶりも柔軟に優しく受け止めてくれる、母性溢れるエロまんこに。
「あはっ」
コノミが笑う。
傍で見ているミリアに向かって、彼女は優しく、どこまでも淫乱で、ほんのちょっとだけ悪戯っぽい笑顔を投げかけていた。
「ん、ごめんねミリアちゃん、っあ、あんんっ、久しぶりだから♥ あ、っは、もうぼく、たまんなくって♥ ああっ♥ ふあっ♥ もうちょっと、ちょっとだけで良いから、クリムくんのこと、独り占めさせてねっ?」
「ぁ……え……は、はい」
呆然としながら、ミリアは流されるままに頷いて。
そんなミリアの表情に、なおさらコノミは気をよくして満面の笑みを浮かべ、どんどん腰の動きを激しくしていく。
勃起がコノミのおまんこでしごかれる。
全部おちんちんを飲み込んで。目一杯まで引き抜いて。長い長いストロークを、何度も何度も繰り返す。
先ほどまでミリアの膣を責め抜いていたクリムのおちんちんが、コノミの愛液まみれに上書きされる様子を、これ見よがしに見せつける。
悪戯半分の挑発。
そして――実は残りの半分もまた、挑発だ。
ただし、それはミリアではなく、クリムに対してのもの。
頭を後ろに回して、こっちを見てくる。
淫に蕩けた、しかし優しい笑み。
親子同然に過ごしてきた相棒である。普段のふざけた言動をしているときならともかく、快感で蕩けて素直になった今なら、それだけの目配せで、彼女が何を考えたのか、何を求めているのか、クリムにはすぐ分かってしまう。
「……ずるい人だよ、ほんと」
「えへへへー♥」
コノミが目線で求めてきたのは――とてととても単純なことだった。
――「我慢しなくていいから、いっぱい気持ちよくなってね?」
――「もっともっと、思う激しく存分犯して来ていいからね?」
そういえば、旅に出る前の晩にもそんなことを言っていた。
『ミリアちゃんとのぬるーいママゴトセックスじゃ満足できないって感じ?』と。
バレていたのだ、何もかも。
満足していなかった訳じゃない。
ミリアとのセックスも気持ちいい。彼女のいちいち可愛らしい反応にはいつも心打たれるし、興奮もしている。
でも、一方で、確かに欲求不満はあった。
なぜなら、ミリアとのセックスで、クリムは手加減をしていたから。
まだまだミリアの身体はセックスに慣れていない。そもそも今の彼女は、その身の内に魔王を抱えて、体力的にも不安定な状態だ。だからどうしても――彼女の身体を気遣うように、あまり自分の性欲を優先しないようにと、自分自身を律しながら彼女を抱いている部分が確かにある。
そうなれば当然、快楽を貪るにもブレーキがかかるわけで。
でも、コノミは違う。
クリムの手によって何年もの時をかけて調教された、クリム専用のコノミのおまんこは、ミリアと違い、そんなクリムの全力の欲望を全部受け止めることが出来る。
クリムの全身全霊の欲望を受け入れることで自分自身も気持ちよくなってくれるような、そんなやさしいおまんこを、コノミは持っている。
クリムが、そういう風にコノミを仕込んだのだ。
その事をクリムは知っている。
身体の奥の一番根っこに、そのことを教え込まれてしまっている。
「……ごめん」
罪悪感を覚えて、思わず謝罪の言葉が漏れた。
幸か不幸か、その言葉はミリアには届いていなかったようだ。
音としては聞こえてたかもしれないが――目の前で繰り広げられるクリムとコノミの淫靡な空気にすっかり中てられた様子で、彼女もまた、二人の結合部を凝視しながら自慰にふけっていたから。
(ああもう……なんか……)
もう、なにもかもめちゃくちゃだ。
ただ一つ確かなのは、もう、止まれないということ。
「あは♥」
クリムの気持ちの変化を察して、コノミは今まで占領していたクリムの左手を離す。
それは、猛獣の枷を外すのと同じ事。
自由になった左手もコノミの身体に改めて回し、クリムは両腕を使ってしっかり彼女を抱きしめる。
掌に触れる、ミリアより更に小ぶりな胸元の柔らかさを感じながら――今度こそクリムは、思いっきり腰を動かし始めた。
――ずんっ!
遠慮など一切ない、破城槌を打ち込むような一撃。
衝撃を受けて二人が使っていた湯が大きな波紋を描き、コノミの黒髪がぶるぶると震える。
「あ、っは……♥」
でも、コノミが顔に浮かべるのは、どこまでも嬉しそうに蕩けた笑顔。
性器に伝わるのは、どこまでも柔軟なおまんこが、肉厚の膣ヒダ全体を使って「よしよし」となでなでしてくるような、そんな感覚。
悪酔いしそうになるほど包容力に富んだおまんこの感触が、クリムをますます狂おしい気分にさせる。
「もっと、もっとだよ、クリムくんっ♥」
「……っ」
わかってる。
言わなくても分かっている。
もっと、もっとだ。
ずんっ。
ずんっ。
ずんっ。
ずんっ。
文字通りの、全身全霊。
体中の筋肉全てを使って、体中に充填されていた欲求不満を、生殖衝動を、全て性運動に変換して、コノミにたたきつけていく。
ミリアには一度たりとて試したこともない、全力の抽挿。
一ヶ月間我慢していた全力でのセックスを、今、クリムは久しぶりに味わっていた。
「あ、あっ、すごい、やっぱりいいよぉクリムくんっ♥ 触手でやるオナニーなんかとぜんぜんちがうぅっ♥」
「そ、そんなことやってたのかよ!?」
「んぁ、だって、だってだって、クリムくんずっと犯してくれないんだもんっ♥ ぼくのことここまでイヤらしく調教したくせにっ♥ 最近ミリアちゃんばっかり相手してたんだもん♥ 浮気したくないし、そもそもっ、他の男のおちんちんじゃ絶対こんな気持ちよくなれないしっ♥ あ、ああっ、でも、でもでも指だけだったら全然ものたりないしっ♥ ならそうやってオナニーするしかないじゃないっ♥ あ、あっ、それいい♥ もっとやって♥ ずんずんって、ぼくのこともっとおもちゃにしてぇっ♥」
とんでもない告白をしながら、頭を振り回し、お尻を震わせてコノミも歓喜の声を上げる。
それでもおまんこ自体は快楽に翻弄されることなく、コノミのその場所はどこまでもどこまでも優しく柔らかく、クリムの欲望を受け止め、受け入れ、そして甘やかしてくる。
――いいよ、もっといっぱい、していいよ♥
――コノミおねえちゃんのこと、自分勝手に、いっぱい、犯していいんだからね♥
「………――――――~~~~~~ッッ」
意識がとろける。コノミの温かさが思考を緩ませる。
もう訳が分からない。
だからもう後は、欲望の赴くまま。
腰を動かし、彼女をむさぼり、彼女に甘えることしかできない動物と化していく。
柔らかですべすべの膣肉がクリムを包み込んでくる。
ざわりざわりとうごめきながら、それでもぴっちりと、完全に隙なくクリムの全てと密着して、その上でクリムの破壊的な突き込みを、快楽として感じ取ってくれる。
何もかもがあいまいに溶ける中、何となくその余裕綽々ぶりが気に入らなくて、突き込みの角度を変えてコノミの弱点をカリ首ででごりごりとこすりつけてやる。
「あっ♥ あっ、♥ んうぁぁぁぁぁっ♥」
狙うのは、入り口から少し奥に行った辺り。恥骨の裏側。
膀胱から尿道を刺激するような感じでこすりつけると、途端にコノミのあえぎ声から余裕が霧散した。
「あ、あっ♥ ああっ♥ ふぁぁっ♥ あ、やば、これだめぇっ♥」
細い腰ががくがくと震える。
結合部からびしゃりびしゃりと透明な愛液と潮が噴き出して、もう二人の太股はどろどろだ。それどころか、両性具有のコノミを後ろからがつがつ責め立てて腰を振るものだから、勃起しきったコノミの方の先端からも精液交じりの白濁とした先走りが漏れ出て、クリムからの突き上げがあるたびに、そのいやらしい粘液をあたりにまき散らしていた。
当然そうなれば、お湯も汚れ、僅かに白く濁って、淫らなスープに変えわっていく。
構いやしない。
どうせ此処には、クリムと、コノミと、ミリアしかいないのだ。
みんな体液まみれになってしまえばいい。
我慢などせず、恥も外聞もなく、絶頂まで上り詰めてしまえばいい。
「あん、あっ♥ あっ♥ね、ねえ、クリムくん♥ まだ? 精子、まだくれないのっ?」
「っ、も、もうちょっと……っ」
「っや、やだぁ♥ やだやだやだぁっ♥ もうぼく我慢できないからぁっ♥ はやく、はやくぅっ♥ せーえきちょうだいよおっ♥ せーえき♥ せーえきっ♥ せーえきっ♥」
膣肉の動きが、一際激しくなる。
あくまで優しく受け身だった動きが一転して、奥へ奥へと吸い上げるようなものに変わってきた。
突き上げるたびに亀頭に触れる子宮口も柔らかくなって、精子を受け止めるためにくぱりと緩く開いて、粘度の高い本気汁をしたたらせている。
もう、コノミは限界が近いらしい。
「っ、先にイっていいぞっ」
「やーだぁっ♥ やだやだやだあっ♥ ひさしぶりだもんっ♥ ひさしぶりにクリムくんのおちんちんでイくんだからっ、いっしょにいきたいのぉっ♥」
そう喘ぎながら、それでも健気にコノミは腰を振ってクリムの性感を煽って来て。
「………ッ、うっ」
でも――それはもう、完全に逆効果。
ぐういいいいいっ、と、コノミの弱いところにクリムの亀頭が押しつけられて。
「あ、あっ♥ あっ ああっ♥ ふぁぁぁぁっ♥」
コノミの声が、いっそう高くなる。
見た目通りのいとけない、でも見た目通りの女の子なら絶対出さない甘い声。
「あ、あっ、もう、あ♥ やだ、やだやだやだぁっ♥ やだぁっ♥ もう、だめっ、いっちゃいそ……っ♥」
切羽詰まって、だだっ子のように甘えた声を上げて。
コノミは、この期に及んで涙まで流して絶頂の予感を拒絶する。
「ん、ううっ、んんんん―――っ んんんっ んんんん―――っッ♥♥」
声を出すのすら我慢して。
無駄だと分かっていながら、きゅっと全身を息ませて。
そんなことをするものだからおまんこの締まりも、ぎゅっと握りこむように強くなって。
「……っ、う、あ……ッ!」
幸運なことに――無我夢中でコノミがやらかしたそんな反応が、クリムにとっても最後の決め手になった。
「っは、ぁ――……♥」
抽挿を止め、改めてコノミの身体を抱きすくめる。
最後の瞬間まで秒読みにはいった、その痙攣しっぱなしの小さな肢体をめいっぱい抱きしめて、そして、子宮口にぐいっと亀頭を押しつけ、子宮口と、鈴口を重ね合わせる。
体格差でキスが出来ない分の穴埋めをするように、子種を受け入れてくれる唇と、子種を吐き出す唇同士でキスをして。
限界が訪れるまでに、何とかその状態までこぎつけることが出来た。
「ぁ……♥」
安堵したかのような吐息が、コノミの口から、かすかに漏れた。
間に合ったのだと。
クリムがイくまで、自分は我慢できたのだと。
だから――それなら。
もう、我慢する必要など、もう、どこにもありはしない。
――どくんっ。
「――……ッっ♥」
吐き出した。
吐き出さざるを得なかった。
全身全霊を。あらん限りの欲望を。
どくんっ。どくんっ。どくんっ。どくんっ。
とく、とく、とく、とくっ。
「あ。あっ。ふぁぁぁっ。 あああ―――ッッ♥♥」
かすかに感じる別の脈動の気配は、おそらくコノミの方の射精の律動か。
ぼんやり白く煙った意識でそのあたりに視線を向ければ、確かに可愛らしい彼女のおちんちんから、白いものが迸ってもいた。
でも、今クリムにとって大切なのは、やっぱりコノミのおまんこだ。
コノミの女の子の場所は、絶頂のさなかにあってもずっと優しく甘やかし上手で。
はしたなく欲望を吐き出す駄目なクリムのおちんちんを、えらいえらいと優しく撫でてくれて。
クリムも、そんな優しさにあらがうことは出来なくて。
溶け合って。
蕩け合って。
抱きしめ合って。
ひっついて。
そんな風にして――久しぶりに味わう絶頂感と多幸感にたゆたって、二人はどろどろに溶けていった。
#3-3
「あははは♥ すげー。やっぱりクリムくんとのえっち、きもちいー♥」
絶頂の余韻が収まるまで、コノミは密着を解かせてはくれなかった。
猫のように身体全体をクリムに擦りつけて、呼吸が整ってからもしばらく経っても、コノミは上機嫌に彼に甘えて来る。
「……さ、じゃあ、クリムくん? 今度はミリアちゃんともやってあげてね?」
「……もういいのか?」
「いいのいいの。だって、このあとも明日からも、いっぱいいーっぱいえっちしてもらえるんでしょ?」
だから――相変わらず抱きしめたままのクリムの腕を愛おしげに撫でながら、開けっぴろげにコノミがそんな事を言ってくるのは、少々意外でもあった。
元々随分とお預けを食わされていた事もあるし、この調子だと、もっともっと自分と一緒にセックスしようと、そんなことを言ってくるとばかり思っていたのだが。
「だって――ほら。ミリアちゃん、もうたまんないって顔してるもの」
いぶかしむクリムにくすりと笑いながら、気軽に言ってコノミが示した先では――確かに彼女の言うとおり、ミリアがとんでもないことになっていた。
「う、っは、うう……」
いつの間にか、お湯から上がっていたらしい。
湯船を構成する岩の内の一つに座り込んで、切なそうに膝頭をすり合わせながら、ミリアは切なそうな涙目で自分の秘所を弄くり回している。
彼女自身の両手でかき回された彼女のその女の子の場所からは、固まりかけたクリムの精子と真新しいミリアの愛液の混合物がかき出され、彼女のお尻の辺りにどろどろの沼を形成し始めていた。
自慰をしているのは、まあ、先ほどからずっとなのだが。その表情がちょっと酷い。
瞳は潤み、口は呆然と薄く開いて、あらく息をつくばかり。
実のところ、それ自体は、クリムにとっては見慣れた顔――ではある。
イき顔だ。
要するに彼女、クリムとコノミのセックスを見て、よほど興奮してしまったらしい。オナニーして、オナニーを止めることもできず、もう何度かイってしまっているようだった。
彼女が感極まったときに発する独特の獣くさい匂いも、そういえば温泉の硫黄の匂いに混じってかすかに漂ってきている。
「ああ、う、クリム様……コノミ様……っ」
「……ね? かわいそうだし」
「……まあ、確かに」
流石にこのまま放っておくのも気が引ける。
一息ついて、ようやくここで、クリムはコノミの中から自分自身を引き抜き始めた。
抽挿に苦労することはない、滑らかで柔らかいコノミの性器だが、このときばかりはやはり寂しいのか、僅かに締まりを強くしてきた。じっくりゆっくりとひり出されていく愛しいクリムの生殖器の感触を、そうやって名残惜しんでいるようでもある。
「んっ。はぁぁ……あ、もうそんな動きしないでよ……またやりたくなっちゃうぅ♥」
「無茶言うなって……くっ」
切なげなコノミの声に後ろ髪を引かれながら、それでも最後まで引き抜いて。
そのままクリムはミリアに寄っていき、彼女の肩に手をかけた。
「クリム様ぁ……」
涙に濡れた懇願するような瞳が、クリムを射貫く。
ここまで強烈なおねだりをされたら、後ろめたさなど易々と吹っ飛んでしまう。
「やろうか」
「はい、はい……お願いします……っ」
しかし――さて、どうしようか。
流石に岩だらけのこの場所で、彼女を冷たい岩の上に寝そべらせる訳にもいかない。
先ほどのコノミと同じ体勢でやっても良いのだが、どうせなら少し趣向を変えたくもある。
少し考えて、クリムはミリアを抱きかかえ、そのままの格好で自分が岩の上に座り込むことにした。
座位の格好だ。これなら彼女の肌が岩場で傷つけられることもない。
あとは――まあ、正直なところ、単なる好奇心というか、悪戯心もある。
「ミリア」
「あ、はい……」
優しく名を呼んで促し、ミリアは促されるままに素直にキスをしてくる。
絡め合った舌に僅かに残る生臭さは、おそらく先ほど、コノミと一緒に口でして貰ったとき、クリムが吐き出した欲望の残滓だ。何となく微妙な気分にも一瞬なったが、しかしこの異臭も、彼女がひたむきに「ご奉仕」してくれた結果だと思えば愛おしくなる。
ミリアが密着を求め、両の細腕をクリムの背中に回してきた。
それに応えるように、ごくごく自然とクリムもミリアを抱きしめ返し、そして――そのまま彼女の身体を、クリムの中心部へ向けて誘導する。
「ん。ぁ……ぁ♥」
キスの感覚に酔いしれていたミリアが口を離し、僅かに視線を下へやる。早速触れあい睦み合おうとしている男性器と女性器の位置関係に一瞬見とれ、そしてほんの少し恥ずかしそうに頬を染めた。
「あ。の……」
「ん?」
「そういえば、その……人の目があるところで、こう言うことするの、初めてです……」
「ああ、そういえばそうか……」
実際には、城でセックスをしているときにも、しっかり記録を取られてコノミなどにその内容を確認されているはずだが。
それでもまあ、確かに実際に他人の目がそこにあるかどうかで、やはり気分も変わってくるものなのだろう。
と、ニコニコと不気味なほど上機嫌で二人の睦愛を眺めていたコノミが、いきなり横やりを入れてきた。
「恥ずかしさなんて、そのうちどうでも良くなるとおもうけどー」
「そ、そんな、こと……あ、う、っは、んん……♥」
「ミリアちゃんも、とっくにクリムくんのおちんちんの虜だもんねえ?」
「あ、う……♥」
コノミの台詞に見せた躊躇いの表情も、実際、保ったのはほんの一瞬だけ。
ねちり、ねちゅりと粘っこい音を伴いながら、触れ合う膣口と亀頭の感触に、途端にミリアは官能を刺激され、甘い、おねだりするような声を上げ始めた。
そう、恥ずかしがっても実際はその通り。
クリムの性器に夢中になっているのは、ミリア自身が自覚していることだ。
だから、もう、準備は万端。
「いくよ」
「はい……♥」
両手で抱えたミリアの腰を、ゆっくりと下ろしていく。
ぬるりとした、緩やかな挿入感。
風呂に入るまでずっと堪能していたミリアの膣が、今また再び、クリムの勃起をくわえ込んでいく。
数刻に渡る性行為と、つい先ほどまでミリア自身がやっていた自慰によって完全に蕩けきっていたミリアの女の子の場所は難なくクリムの剛直を受け入れて――そして何の障害もなく、腰と腰が密着し、クリムの全てがミリアの包み込まれる形となった。
(……あ、しまった)
この段階に来て、クリムはひとつ、失態をしてしまったことに思い至った。
先ほどまでコノミとまぐわっていたままの勃起を、彼は今、全く洗いもしないまま今度はミリアに挿入してしまっている。
当然、いまミリアに挿入したクリムの性器には、コノミの愛液と、コノミの生殖器で気持ちよくなって吐き出した精液がべっとりとまとわりついている状態な訳で――
「あ、あっ、クリム、さまぁ……♥」
しかし欲情に囚われたミリアは、どうもそんな発想に思い至らないらしい。
さんざん焦らされた上で念願の性器をくわえ込む事が出来て、ミリアはただただ、心底感極まっているようだった。
彼女は全身を震わせ、口元から熱い喜悦の吐息を吐きながら、きゅっとクリムにしがみついてきた。
「……っ」
感極まったのはミリアだけではない。
暴力的で貪欲な快楽がまとわりついてきて、クリムもまた、背中をのけぞらせた。
「あう、は、うっ」
気のせいか。
あるいは、先ほどコノミの膣内で絶頂したばかりだからだろうか。
敏感になりきったクリムには、ミリアの性器の感触がいつもよりもずっと生々しく感じられるような気がした。
(いや――違う。違う!)
これは気のせいでは、断じてない。
「……う、あっ」
コノミのおまんこ。ミリアのおまんこ。どうしてもその二つを、その二つの具合を、比べてしまう。
皮肉にも、さきほどコノミと交わったおかげで、その対比で、ミリアの性器の具合がどのようなものか、今まで以上にはっきりと感じられてしまった。
まず始めにはっきりと感じたのは、膣の熱さの差だ。
これは単純に種族の違いによるところも大きいのだろう。コノミに比べてミリアのそこは酷く熱く、中に収まっているだけで炙られるような感覚がある。コノミの時のように、ぬるま湯の中で性器同士が溶け合い一つになるような、そんな優しい一体感はない。しかし代わりに、むしろ熱く熱せられているが故に、膣肉の形状や蠢動の様子、ミリアのおまんこの様子の一つ一つが際立って、「ミリアのおまんこを犯している」というその事実を、強く強く強く感じる事が出来る。
次に感じたのが、膣の締まりの違い。
コノミに比べれてまだまだ経験が浅く、クリムの性器に「馴染みきって」いないと言う事もあるだろうが、体格差とは裏腹に、ミリアのその場所の締め付けは、実は遙かに小柄なコノミよりもだいぶ強い。奥行きも、若干ミリアの方が狭いだろうか。
膣ヒダの様子もだいぶ違っており、肉厚のぷっくりしたヒダがあるコノミに対して、ミリアは薄いヒダがびっしりと膣道を覆っている。
更に言うなら、にじみ出る愛液の様子までもが大分違っていた。
コノミがさらさらであまり粘度のない愛液を多量に分泌するのに対し、ミリアが膣ヒダから滲み出す愛液は、量こそ並だがどろりと粘度が高く、僅かに白く濁って、香りもずいぶんと獣くさいものだった。
そんな彼女の愛液は、粘り気が強い分すぐに泡立ってしまって、抽挿をする際にはそれが結合部から漏れ出て、独特の淫臭をあたりに撒き散らしていく事になる。
当然そうすれば――おまんこの具合や熱さだけでなく、その匂いからも、クリムは、ミリアがどんどん発情している様を感じとって、否応にも興奮が高まってしまう。
つまりミリアの愛液は、媚薬としての性質が色濃いのだ。
「ふぁ、あ、んんんっ♥ っ、あ、ふぁっ、ひぁ、んんんんっ♥」
「……ぅあっ」
動けば動くほど、ますます二人の違いが際立っていく。
クリムの性運動に対するそれぞれの性器、膣の反応までも、好対照。
まったりとクリムの欲望を受け止めてくれるコノミの反応を受動的と評するなら、ミリアのそれは、超能動的。
性経験が浅いくせに――いや、あるいは「だからこそ」なのか。
ミリアのおまんこは、とにかく「余裕」がない。
性急に、貪欲に、執拗に快楽を求め、そしてその末の性的絶頂と精液を出来るだけ早く欲しいと、そう懇願するような動きをしてくる。
「あ、っや、あ、ああっ♥ きもち、いいっ♥」
ざわりざわりとうごめくその膣肉は、くわえ込んだ男性器をなで回し、なめ回し、吸い付き、しゃぶり付き、絞り上げるようにして、射精衝動をどんどん刺激していく。
コノミの性器に感じた安心感や甘やかさは、そこには一片たりとも存在しない。
ミリアの性器は、ひたすら絶頂まで一直線に最短距離で駆け抜け、膣内射精という最大の喜びの瞬間を貪る――いわばじゃじゃ馬だ。
(っ、なんだこれ、とんでもない……っ)
正直、どちらが気持ちいいという比較は出来ない。
同じ女性器といえど、味わいの方向性が違いすぎて優劣を決めることなんてできない。
だけど――それでも、一つだけ確かなことがある。
コノミの性器もミリアの性器も、どちらも極上の名器だ。
そして。だから――
「……っう、あぁっ」
最高の気分だった。最悪の気分だった。
そんな、異なる二人の性器。異なる二人の極上まんこ。
その二つを、クリムは今日、同じ夜に味わい、同じ夜に犯し抜き、同じ夜にイかせ、そして同じ夜にその中に膣内射精するのだ。
そんなとんでもない事を、普通に考えれば倫理にもとる事を、今自分はやっているのだ。
普通に考えれば、こんなこと、倫理にもとる事だというのに――
ああ――でも。そうだ。こんなの、溺れざるを得ない。
下半身の灯った火が、燃えさかるような感覚があった。
腹の中の一番奥が熱くなる。
この雌たちを孕ませろと、その中の獣が囁いてくる。
「あ、あっ♥ っや、く、クリム様ッ、あっ♥ さっきより、んっ、はげし……っ♥」
「っう」
激しい?
何の話だ。とんだ勘違いだ。
対面座位の体勢で、今のクリムに許された動きにはごくごく僅かな自由度しかない。だというのに、ミリアが今夜で一番激しいあえぎ声を聞いている。
今のこのセックスで、主に動いているのはミリア自身だ。
おまんこにくわえこんだクリムのおちんちん。そこに込められた興奮がどんどん大きくなっていくその熱さ、脈動に感化されて、自分自身もクリム以上に興奮してしまって、身も世もなく、切なげに声を震わせながら、他ならぬミリア自身が動いているのだ。
「ふぁぁぁっ♥ クリムさまの、おちん、ちん♥ おっき、あついぃ……♥ これ、あっ、すご、あっ、だいすきぃっ♥」
腰を前後に動かし、左右に動かし、円を描いてねっちりと動かす。
その動きは全て、膣内のあちこちに点在するミリアのおまんこの「気持ちいいところ」に、クリムのおちんちんを押し当てさせ、摩擦を得るためのもの。
つまるところ、明らかにそれは、自分自身が気持ちよくなるための動きである訳で。
「ふぁぁぁぁぁ……♥」
クリムとセックスしているのか、クリムでオナニーしているのか、もう彼女自身、区別が付いていないのだろう。
しかしそれを軌道修正する余裕は、もうクリムにはない。
だってこれは、あまりにもこれは――気持ちよすぎる。
彼女の膣は激しくはしたなくざわめいて、その蠢動だけで、童貞ならば一瞬にして昇天しかねない程の破壊的な快楽を、ずっとずっとクリムにも与え続けているのだ。
殺人的な快楽。交わる相手を快楽のどん底に引きずり落とすような、そんな快楽。
(っ、ここまですごいかよ……)
そもそも――クリムがこの体位を選択したのは、ちょっとした悪戯心からだ。
今のように興奮しきった状態で、クリム側があまり動けない体位を選択すれば、当然ミリア自身が動くしかなくなる。
何だかんだで今まではいつもクリムが動いて彼女を気持ちよくさせるのが主だったので、こういった体位をとれば、彼女がどういう風に腰を振るかをじっくり観察出来るかと思ったのだが。
だが、読みが甘かった。
確かにミリアの腰使いは堪能できたが、じっくり観察する余裕なんてありはしない。
こんな快楽、少しでも気を抜けば精も根も吸い尽くされる。
「っっは、あ♥ ああっ、クリム、さまぁっ、くりむさ、まあっ♥ クリムさま、くりむさまぁっ♥」
さらに性質が悪いことには――根の深い極悪の快楽で男を苛みながら、彼女自身もまた、制御の利かない快楽に翻弄されてしまっているのだ。
自分がやっていることだというのにどうすることもできず、クリムの背に腕を回してすがりつき、少しだけでもと、心の平安を求めて密着を求め、甘えてくる。
コレがつまり、ミリアとコノミの差、経験の違いによる決定的な差だ。
理性を飛ばすような圧倒的な快楽を与えながらも、コノミにはどこかしら余裕がある。性行為を楽しむ余裕がある。それがミリアには一切ない。
自らの名器によってもたらす快楽で相手を悪酔いさせ、自らもその感度の良さによって快楽に悪酔いし、共に破滅の道へと誘う、破滅的な性行為。
「……っく、み、ミリア……っ」
「はい、はい、クリム、さまぁっ♥」
だけどクリムは、そんなミリアが、愛おしくてたまらなかった。
その余裕のなさ、その不器用な仕草は、言い換えればひたむきさと表裏一体のものだ。
こんなにもまっすぐに彼女はクリムを求めてくれる。
こんなにも一生懸命にミリアはクリムとセックスをしてくれる。
こんなにもめいっぱい、ミリアはクリムで感じてくれる。
ならば、なおさら、ミリアはクリムの手で守らねば。
守りたいと思う。愛らしいと思う。
だけど――だというのに。
「あは♪」
ミリアは、笑ったのだ。
笑いながら、言ったのだ。
「わたしのなかで、コノミ様の愛液と、わたしの愛液、まざってるぅ……♥」
「――……ッ!?」
気付いていたのだ。
彼女も、とっくに。
クリムがついに指摘する事の出来なかった、背徳の根源のことを。
「あは♥ すごい、あ、わたし、すごいです、興奮してます♥ これ、あっ♥きもち、いいっ♥」
「……」
僅かながらに動いていたクリムの腰の動きが、とまる。
ミリアはそれに気付いた様子はない。
ひたすら――まるでクリムの性器で自慰行為をするように、ただただ蕩けた顔で腰を振り続けている。
そこには、昼間見せていたような、おしとやかな表情はもうどこにもない。
淫に蕩け、自ら腰を振って快楽と精液を貪る、淫乱の顔だった。
すっと心に冷たいものが差し込んでくる。
何をしているんだ。自分は。
こんな事をして、本当に良かったのか。
――ぐちゅり。
しかしクリムのその逡巡をあざ笑うかのように、二人の間で奏でられたその淫音が、残酷にクリムの聴覚から毒を注ぎ込んでくる。
ぐちゅ。ぬちゅ、くちゅ。
混ぜられていく。
二つの粘度を持った、愛液が。
コノミの膣で果てたクリムの精液が。
ミリアが、彼女自身が気持ちよくなるために動く、その腰の動きで。
ミリアが、自分で自分自身を穢していく。
ぐちゅり。ぐちゅ。にちゅ。むりゅ。ぬちゅ。くちゅ。
(ああ――)
魔王でありつつも彼女はどこまでも清純で清廉なお嬢様だった。
「あ、んぁ、きもちい、ああっふぁっ♥ ああっ♥」
だというのに――彼女は今、自身を冒涜して、そんな自傷行為にすら、快楽を覚えている。
ミリアはもう、戻れない。
「――もう。ほんとクリムくんは真面目だなぁ」
今更の後悔を狙い澄ましたかのように、いつの間に後ろ側に回ったのか、背後から別の気配が沸いて出た。
コノミだ。
性的興奮の最中にあるミリアと比べれば若干低い第二の体温が、そっとクリムの背中に抱きついてくる。
「真面目も行き過ぎるとただのヘタレだよー? クリムくん?」
「な、なんだよ、それ」
「ミリアちゃんは自分で真剣に考えて、3人でしよって、3人で愛しあおって決めたんだよ? 普通にフタマタかけたりウワキしたりして、誰かが不幸になる構図じゃないんだよ。みんなが幸せになるためにしようって決めた事なんだよ?」
「それは――」
その通りかも知れないが、しかし――
「もっとさぁ。一般論じゃなくって、自分が向き合っていく目の前の女の子のことを気にしてものを考える視点もあっていいと思うんだよねえ?」
「……」
コノミの言葉に、クリムはミリアの顔を見た。
「あは♥ クリムさまぁ♥」
目が合って、何となくそうしたくなったのだろうか。
相も変わらず腰を動かしながら、ミリアはクリムの顔に寄せてキスをしてきた。
「…………んっ」
舌を絡め合い、唇を食み合い、ひとしきりいちゃついて唇を離す。
そして――蕩けたままの顔で、緩みまくった笑顔で、ミリアは言った。
「そんなの、なんでもない、ですっ、んあっ♥ くりむさま♥」
「……ミリア?」
「わたし、うれしいん、ですっ♥ むしろこうすることで、なんだか、ほっと、したんですっ♥ コノミ様とクリム様のえっちに、まざってるみたいで……っ んぁ、ああっ♥」
「……ミリア」
――おそらく。ミリアにも葛藤はあったのだろう。
三人ですることについても躊躇いがあって。あるいはコノミとクリムとの関係を知って、嫉妬も抱いていたかも知れない。
でもだからこそ、あえてミリアはこうしたのだ。
コノミと先ほどまでえっちなことをしていたクリムを受け入れること。
自分より先に愛しいクリムとえっちしていたコノミを受け入れること。
「そうだよ、クリムくん?」
後ろからコノミが抱きついてくる。
「別にいいじゃん、もうどうでも。ぼくも、ふたりとも。クリムくんのこと大好きだから。ね? みんなできもちよく、なろ?」
つられてそちらを向くと、コノミも同じように幸せそうに笑みを深め、ごくごく自然にクリムに唇を合わせてきた。
こちらも同じようにディープキス。まだコノミの唾液が残るクリムの口内を、何も気にする事なくなく、むしろ嬉々として舌でなめ回し、自らの唾液と混ぜ合って嚥下している。
ふたりとも、発情しきってはいるけれど、どちらもとても幸せそうで。
「そうやって、いろいろ悩むクリムくんも、可愛いけどね?」
「…………」
「クリム様」
コノミの台詞に揺さぶられている最中に、だめ押しのようにミリアが声をかけてきた。
呼ばれるままにそちらを見れば、酷く切なげな瞳がクリムを捉えていた。
「あの、えっと……」
逡巡は、しかしほんの僅かのこと。
続けてその愛らしい口元から紡がれた言葉は、クリムの胸をえぐるのに十分なものだった。
「あの、わたしも、コノミ様みたいに、めいっぱい、だいてほしい、です……」
「………」
考えれば、当たり前だ。
先ほどのコノミとのまぐあいを目の当たりにして、ミリアが気付かないはずがない。
自分とのセックスと、何か様子が違うと。
クリムがミリアに対し遠慮をしていると。
心底情けなかった。
結局自分は――二人を愛する覚悟なんて口先だけで言っているだけで、何も出来ていなかったということではないか。
女二人はとっくに気持ちを決めて、それを実際の行動に移しているというのに。
心のどこかで保身の為の遠慮が働いて、最も大事なことを脇に置いてしまっていた。
(――ああ、もう……)
何が英雄だ。
こんな事すら出来ないで。
だから――もう。うじうじするのは、これでおしまいにしよう。
「……――ミリア」
「……はい」
「今までごめん。もう、遠慮しない」
「……はい♥」
唇を半ば無理矢理重ね、舌を絡めあう。
「ん、ふ、ぁ……っ♥」
絡み合う唾液。交換される吐息。
肌と性器のみならず唇でも密着を与えられ、安堵感にミリアの腰の動きが緩んだその隙を見計らって、クリムは体勢を変える事にした。
ミリアの両太股をつかみ、立ち上がる。
「あ、わ……っ!?」
彼女は驚きの声を上げるが、気にしない。
地に足が着いているのはクリムだけ。クリムがミリアの全体重を支える体勢だ。
今度は逆に、これではミリアが自由に腰を動かせない。
でも、それで構わない。
「ミリア、しっかり捕まってて」
「あ、は、はい……」
素直なミリアは、しかしその指示だけではクリムがどういう動きをしようとしているか、察する事が出来なかったらしい。どろどろに蕩けた意識の中で、ただ言われるままに、甘えるように彼女はクリムにしがみついてきた。
胸元に密着する彼女の肌の暖かさを、そしてその奥に感じる心臓の鼓動にこの上ないいとおしさを覚える。
(……よし)
身体を揺する。
クリムの膂力によって易々とミリアは一瞬宙に浮かび上がり、そして重力にしたがって落ちて――
ごちゅ。
「―――~~~~~っっ、あ、あっ♥」
杭を打ちつける。
ミリアの全体重をかけた突き込みが。発情しきって、射精を待ち望んで緩くなりかけた彼女自身の子宮口に。
「あ、うっ、あ、ああ……っ」
突然の衝撃に驚いて、ミリアは全身を戦慄かせた。
クリムの背に回された両腕に力が込められ、同様にミリアの膣もきゅうううっと、クリムにしがみつくように締め付けが強くなる。
ただでさえ狭い膣道が更にすぼまり、普通に挿入しているだけでは外にひり出されかねない程に細くなる。
「あ、あっ♥ ああっ♥」
喘ぎながらミリアが、がくがくと痙攣する。
そのたった一撃で、クリムはミリアから主導権を奪い去っていた。
しかし当然、これで終わりではない。
もう一度。ミリアの身体を浮かせ、そして落とす。
ごちゅ。
「っあ、あっ、っひ、う、ああ……っ♥♥」
狭くなりきった膣道を、掘削し、性器をねじ込み、無理矢理こじ開けるようなその一撃。
「っや、あ、あっ♥ んぁぁぁっ♥」
痛みを感じているような様子はなく、ミリアはただその圧倒的な快楽が股間から突き込まれるその感覚に、耐えかねるように熱く蕩けた息を吐く。
更にもう一度。ミリアの身体を浮かせ――そして。
ごちゅっ。
「あ、ああっ……♥ ふあぁぁぁぁぁぁぁ……っ♥♥♥」
3度目の突き込みで、ミリアの具合が、がらりと変化した。
固くなりきっていた膣肉が柔らかさを取り戻し、締め付けはそのままにヒダの動きも激しくなる。ざわめくその動きは次第にクリムのものをしごいて精子を搾り取るようなものになり、さらに、こんな不自由な体勢にもかかわらず、クリムの性運動に合わせてミリアは腰を動かし始めた。
そう。そのたった3度の突き込みで、ミリアの淫乱なその身体は、この強烈な責めに順応し、自分のペースに取り込んでしまったのだ。
(っ、流石……)
もちろん、それは全て、ミリアにとっても無意識の事。
相変わらずミリアは快楽に翻弄されっぱなしだ。
クリムに今まで仕込まれて、えっちにできあがった身体が反応しただけのこと。
でも、だからこそ――
(ああ、これは……駄目だ。まずい)
絶望的にクリムはそう思った。
これは、戻れない。
遠慮しながらのセックスでも、存分に猛威を振るっていたミリアの女の子の場所。
それを存分に犯すならば、その分、摩擦も、膣の感触も、今までよりずっと凶悪なものになるのも当然のこと。
男を取り殺しかねない凶悪な快楽。
一往復毎に理性が削り取られていく。
単なる、快楽を求める獣になりはてていく。
このままでは、彼女を孕ませる、ただそれだけのためのための生き物になってしまう。
でも、止まらない。止められない。止められるはずがない。
ごちゅ。ごちゅ。ごちゅ。ごちゅ。
ごちゅ!ごちゅ!ごちゅ!ごちゅ!
「ん、あ、っは、ああっ♥ んぁ、あう、ああ、いい、きもち、いいです、んぁっぁぁぁぁっ♥♥」
動く。動く。動き合う。
きもちいい。あつい。切ない。ムラムラする。ドキドキする。
「っく、はっ」
もう――限界だ。
何も考えられない。何が何だか分からない。
おなかも。
股間のものも。
胸も。
顔も。
全てを触れ合わせて、こんなにも気持ちよくて。
もう、気持ちよさしか分からない。
「クリムさまぁ……♥」
ミリアも、それは同じだったようで。
「ミリア、っ」
互いの名を呼ぶ。
心も体も一つになる。
今はもう、それだけで構わない。他の言葉など何も要らない。
欲しいのは、ただ、ミリアがそこにあるという、彼女と触れ合っているという実感。
激しく喘ぎながら潤んだ瞳で見つめられ、たまらなくなってその唇をクリムは求めた。
何の驚きもなくミリアもクリムを受け入れ、不自然な体位の中でごくごく自然に二人は粘膜の密着を増やしていく。
まじわり。とろけ。混ざり合い。溶け合い。一つになって。
しだいにもう、自分たちがセックスをしている事すら分からなくなって。
それでも確かなのは、ミリアと一つになっていると言う事。
とてもとても、気持ちよくてたまらないと言う事。
真っ白に溶けた視界の中で、熱く激しい何かに包まれて。
――ああ。もう。無理。
キスをして。
舌を舐め合い。
唾液を混ぜ合い。
吐息を混ぜ合い。
呼吸が一つになって。
そして――
とくんっ
ぴく、んっ
とく、とく、とく、とく、と。
止めどなく精液が吐き出され。
びく、びく、びく、びく、と。
絶頂に蠢きながら、ミリアの膣奥がそれを残らず飲み込んでいく。
(ああ……イくときの動きも、こんなに違うんだ)
なぜだか妙に静かな気持ちになって、絶頂するミリアの膣ヒダや子宮口の反応を勃起で堪能しながら、クリムはそんな事にも気付いてしまっていた。
「っ、♥ クリム、さ、あ、あっ♥ んぁっ♥ っや、あ♥ しゃせ、きもち、んんっ、んぁ、ああっ ふぁぁぁぁぁっ……♥」
自然と離れた唇から、そんな風に蕩けきった声で、ミリアはクリムに甘えてきている。
キスを放してもまだ密着が欲しくてクリムに頬ずりして、身体全体を密着させて絶頂感に震える全身の反応をクリムに肌で伝えてきてくれる。
でも、やっぱりその彼女の性器の動きだけは、甘やかさなんて全然ない。
しゃぶりあげ、子宮口を亀頭に押しつけぱくついて、膣肉全体で更にしごいて。陰嚢に残る精子を一つ残らず欲しいと言わんばかりに、バキュームじみた吸い上げまでしてくる始末。
どこまでも貪欲で、孕みたがりなおねだりまんこ。
「クリムさまぁっ、クリム、さまぁっ♥」
でももちろん、それにあらがう必要など、どこにもない。
ミリアと密着し、ミリアの反応を楽しみつつ、ミリアを孕ませるために。
クリムはむしろ、自ら望んでミリアのイき狂う、その暴力の塊のような性器の蠢きに身をゆだね、何度も何度も吐精を繰り返した。
#3-4
流石にこのまま風呂で睦み合っては湯冷めしかねないということで、一同は浴場から退散し――しかしどうにも昂ぶりが収まりきらないので、再び寝室で続きをすることになった。
3人のうちでもっとも羽目を外してしまっているのは、意外にもクリムだった。
盛りの着いた犬のようになった彼によって、寝室に着くなり早速ミリアは組み敷かれ、そのままセックスを再開。正常位で抜かず3発程膣内射精され、彼の絶妙な腰遣いによってミリア自身も5回も絶頂をあっさりと迎えてしまった。
「う、は、ううっ……♥」
「……ごめんミリア。なんか、抑えが利かない」
「……ん。いえ……♥」
それでもどこかクリムは申し訳なさそうに言うが、むしろそれは、殺し文句だ。
こんなにも自分とのセックスで発情してくれていることが、心底嬉しかった。
それは、今までの彼との行為ではなかった事だから、なおさらに。
なんとなくだが、今までの自分との行為では、クリムはどこかしら遠慮している様子だったことにミリアも気づいていた。
それは当然彼の優しさからくるもので、だから不満などはなかったが――でも、彼の本機に付き合えない自分にふがいなさを感じていたのも事実で。
今回の行為で、初めて彼の欲望に肌で向き合えた気がする。
「……♥ ああ……クリム様」
だからミリアは、心の充足を情欲に変えて、組み敷かれたまま脚をクリムの腰に絡めてぐっと引き寄せ、射精に震え、脈動する彼の性器の動きを存分に堪能するのだ。
やっぱり、彼との行為は幸せだと、そんな気持ちをかみしめながら。
「あはは、仲がいいねえ。ラブラブだぁ」
「……ぁ」
そして――連続絶頂に一段落付いた頃合いで横からかけられた声に、ミリアははっと我に返った。
しまった。いつの間にかコノミをほったらかしにしてしまっている。
彼女は睦み合うミリアとクリムから少し外れたところで腰掛けて、絶頂に歓喜する二人の様子をオカズに自慰行為をしていた。
両性具有の彼女は、自慰の仕方も独特であるようだった。大きく腫れ上がった怒張を右手でしごきながら、一方では左手を女性器に突っ込んで、指で中身をかき回している。
男の性感も女の性感も併せ持つという感覚は、ミリアには想像もつかない領域のものだが、さぞかし気持ちのいいものなのだろう。いつも余裕綽々な様子のコノミが、とろけ切った笑みを浮かべて、自分の吐き出す精と、割れ目からこぼれ出たクリムの精が混ざりあう感覚に耽溺しながら何度も絶頂を迎えていた。
いとけない外見の彼女がするそんな行為は、酷く蠱惑的で、背徳的で、女の身のミリアの目から見ても魅入ってしまう。
しかし同時に、ミリアは申し訳ない気分で胸がいっぱいになった。
この構図は、先ほどと正反対のものだ。
コノミはすぐにミリアに気付いてクリムとの睦み合いを譲ってくれたのに、自分はこの体たらく。結局自分の快楽を優先してしまっている。
(……わたし)
だから、改めて思う。
やっぱりこういうのじゃ、だめだ。
せっかくコノミと一緒に、ふたりでクリムに愛して貰おうと決めたのに。もうひとりに辛い気持ちにさせているようじゃ、意味がない。
「……コノミ様」
ゆっくりと引いていく快楽の余韻の中、ぼんやりした視線をコノミに向ける。
「どうか、こっちにいらっしゃってください」
「……ミリア?」
いぶかしげな声を上げるクリムに視線を戻して、ミリアは呼吸を整えながら、ゆっくりと考えていることを口にした。
「あの。恥ずかしいですけど。やっぱりわたし、クリム様とコノミ様と、三人で一緒に気持ちよくなりたいです。せっかくここに三人一緒にいるのですし。二人でする行為だと、残り一人をほったらかしにしてしまいます」
「……」
ミリアとしてはごくごく当然の提案だったのだが、また何かおかしいことを口走っていたようだ。困惑の色をにじませた顔でクリムとコノミが顔を見合わせ――そしてコノミが、愉快そうに笑い声を上げる。
「あー。あはははは。なんていうか。調子乗ってきたねぇ、ミリアちゃん」
「え、は……へ、変でしょうか」
「いやー、いいんじゃないかな。それでどうする? ぼくはどう混ざればいいかな?」
「あの……えっと。それでその、思ったんですけれど。コノミ様、性行為されるとき、ずっと女性器ばかり使われてますよね?」
「そりゃね。気持ちは女の子だしね? そっちのほうがしっくりくるって言うか」
「でも……おちんちん、触ってますよね、さっきから」
「あーそれは、まあ。普通にボッキすると気持ちいいからね? 確かにオナニーするときはよく弄ってるかも」
どうやらあそこまで激しいオナニーをしておきながら、半ば無意識だったらしい。
でも、だからこそ、それこそがミリアが気にかかっていた点だった。
「わたし思ったんです。……なんといいますか、コノミさまのおちんちん、さびしそうだなって。かわいそうだなって」
「……」
さしものコノミも、その発言には流石に度肝を抜かれたらしい。
「えっと。それは……」
ちらりとコノミは、同じく困惑顔のクリムを見やって。そしてどうしたものかと言う表情で視線をミリアに戻してきた。
「……ぼくのおちんちんで、ミリアちゃんのおまんこ、つかっていいってこと?」
「はい。駄目でしょうか?」
「駄目っていうか、え? でも、ぼくの精子、普通に女の子を孕ませられるよ?」
「何か問題、あるでしょうか……?」
「ええ……と? うん? 問題ないの? クリムはどう? いい?」
珍しくコノミはクリムに意見を問うていた。
そういえば最初に、コノミは両性具有であるものの精神的には完全に女だと自分で言っていたが。どうやら混乱しているらしいところを見ると、男性器を備えて自慰までしてはいるものの、コノミは三人同時に愛し合う局面においても、それを使う気はそもそもなかったらしい。
「どう……といわれてもな」
クリムはクリムで、困惑顔でしばし思案していたようだが。やがて小さくため息をついた。「理屈からすれば……まあな。拒否するもんじゃないよな」
「理屈は聞いてないよ。ここはクリムくんの気持ちの問題でしょ?」
なんだか難しい顔をさせてしまった。
不安になってくる。
ミリアはクリムとコノミの子を孕む。
コノミはミリアを孕ませ、クリムの子を孕む。
クリムはミリアとコノミを孕ませる。
そうすることで、三人は三人を愛することが出来る。
ミリアからすれば、それはごくごく自然な理屈として思いついたものなのだが。
「……いや。うん。異存は無いよ」
やや間を置いて、しかし改めてクリムは賛同の意を示してくれた。
「だって、ミリアは俺とコノミ両方の事を真剣に考えてくれたんだ」
「……まーねぇ。それもそうだね」
クリムの言葉に、すこし厳しくなっていたコノミも表情を緩ませ、ふっと二人で笑い合っていた。
どうやら。ようやく意見がまとまったようだ。
何だか、二人のそんなやりとりが、ミリアには少し嬉しかった。
クリムとコノミ。二人の関係の中に、ようやく入る事を認められた気がしたから。
そしてそうなれば、こういう時、切り替えが早いのは、決まっていつもコノミの方。
「さあて。じゃ、まずは――どうしよっか?」
いつもの調子を取り戻したコノミのそのひと声によって――今日の夜の、第二幕が始まった。
#3-5
とはいえ、体位自体は、大して特殊なものではない。
騎乗位で、ミリアがクリムが交わっている体勢。
一つだけ大きく違うのは、クリムの腰に馬乗りになった体勢のミリアの顔に、横からコノミの勃起が突きつけられている点だ。
ちなみにこの体勢、コノミのリクエストによるものである。
コノミの立場からすれば先ほどまでずっとお預けを食らっていた訳で、いきなりミリアとセックスしたいと言い出すかとも思ったが、どうやらそれは当てが外れた――というより、コノミのことを甘く見てしまっていたらしい。
「まずね、いっぺんね、フェラチオをしてもらいたいなぁって思ってたの♪」
というわけでまあ、この有様という訳だ。
「……」
3人同時にしたいと言い出したのは確かにミリア本人だが、何というか、妙な気分だった。
ミリアの胎内にはクリムの勃起がしっかりと収まっている。だと言うのに目の前には「ご奉仕しろ」と言わんばかりの、別の人の男性器がある。これで男二人に輪姦されているというのならともかく、女二人と男一人の睦み合いだというのだから、世の混沌極まれりである。
「えっと、それじゃ……」
「うん」
はじめの合図はミリアから。おそらく他の二人とも、何だかんだで彼女の気持ちが決心を付けるのを待ってくれていたらしい。
「ん……ふ」
まずは、横から突き出されたおちんちんに意識を向ける。
どうせ本気になってクリムの動きに感じ始めたら、綿密な口奉仕なんて出来なくなる。
最初にコノミのものをしっかり感じさせてあげてあげないと、彼女をまたほったらかしにしてしまうから――まずはコノミのことを第一に考えよう。
顔を横に向け、舌先を突き出し、様子見をするようにちろりちろりと舐めていく。
「あは、あ、これ何か面白い」
「お、面白い?」
「ん-、なんか大した刺激じゃないけど、ミリアちゃんにやらしいことさせてる感がハンパなくて結構興奮する……♪」
困惑声のクリムにコノミはなにやら上機嫌でそんなことを話しているが――一方でミリアは、その会話に混ざる余裕は、既に殆どなかった。
(あ、これ……『違う』)
まず最初に感じたのが、違和感だ。
ミリアの知っている男性の生殖器――クリムのおちんちんと、違う。
ぱっと見はよく分からなかったが、こうして間近に愛撫をしてみると、クリムとコノミのおちんちんは、まったく別物だということがはっきり分かった。
おそらく太さはクリムの方が圧倒的に上だろう。しかしその一方、堅さと長さではコノミの方が勝っているようだった。
勃起して浮き出る血管もクリムに比べて随分と少なく、色も黒ずんでいなくて――何となく愛らしい気もする。
(……何だか、変な気分です)
クリムと別の人のおちんちんに触れている事に、別段嫌悪感は沸かなかった。コノミの気配が傍に濃厚にあって、そのおちんちんがコノミの――クリムに一緒に愛して貰う女性のものであるという安心感があるからかもしれない。
むしろ、なんというか――
(……わたし……)
ちょっと、自分でも意外だった。
ドキドキしている。興奮してしまっている。
あるいはそれも――股間に収まっているクリムのおちんちんのおかげかもしれない。
クリムの勃起は、ミリアにとって即効性の媚薬のようなものだ。
匂いを嗅いだだけでおまんこが濡れてくる。
舐めて口に頬張っただけで幸せな気持ちになってしまう。
おまんこにハメて貰っただけで、ドキドキが止まらなくなってしまう。
そして――クリムもまた、どうやらドキドキしているらしかった。
ミリアが別の人のおちんちんを舐める姿を見て、そんな状況に、クリムはおちんちんを硬くしているのである。
そんな興奮が、ありありと膣内のヒダを通して伝わってくる。
全体が脈動にひくつき、とくに亀頭のあたりが熱くなっている。
蠢く膣ヒダのに耐えがたくなったのかもぞもぞと腰が動き、僅かなそんな摩擦に理性が炙られていく。
(あ、これ……まずい、かも……)
確信を覚えた。
たぶんこの行為、すごく気持ちいい。すごく、すごくすごく、興奮できる。
――股ぐらが、じゅん、と濡れたのが分かった。
「ん……その。コノミ様。咥えてもいいですか?」
「あ、うん、おねがいねー」
たまらなくなって口にした提案に、あっさり了承を得られるや否や、ミリアはすぐにコノミの勃起を頬張った。
「わ、にゃっ!?」
傍でコノミが何とも愛らしい悲鳴を上げるのを聞き流しながら、ミリアとしてはそれどころじゃなかった。
(ああ、やっぱり違う……これ、クリム様のじゃないおちんちんなんだ)
感激、だった。
口に頬張ってみて、こうして舌と口の粘膜で改めてじっくり触れてみて、なおさら二人の生殖器の違いが浮き彫りになったのである。
温度は、クリムの方が圧倒的に熱い。
一方で、匂いはたぶん、コノミの方がずっと強い。
あるいはこれは、手入れを何処まで丁寧にしているかの差なのだろうか。コノミのそこは、汗臭いような、ほんのちょっとおしっこ臭いような、濃厚な匂いが頬張るなり口の中に広がったような気がした。
なんだか、すごい。
男性器とは、おちんちんとは、人によってこんなところまで違うのだ。
そして当然、女の本能が想像してしまう。
――このおちんちんは、どういう風に気持ちいいんだろう?
アソコの部分があつくなる。きゅんきゅん切なくなってしまう。
愛液がにじみ出るのが、濡れてしまうのがもう止められない。
そして――その瞬間を待っていたかのように、にちゅりと粘っこい水音を伴って、秘部に摩擦が加えられはじめた。
ミリアの興奮を察知してくれたクリムが、ゆるゆると腰を動かし初めてくれたのだ。
(あ、あ……っ♥)
与えられた性運動はごくごく優しく緩やかなもの。今日の行為が全体的に激し目だったのもあって、じっくりと快楽を掘り起こしてくれるその腰使いは新鮮にも感じられた。
それに――だけど。だからこそ。
(あ、これ、すごい、すごい……♥)
流石と言うべきか。彼の動き、腰使いは、ミリアの快楽のツボを完全に心得たものだった。
ゆっくりした抽挿は激しい快楽こそないが、そのぶん自分の胎内の奥深くに食い込んでいるクリムの性器の造形がつぶさに感じ取れてしまう。
はっきりとクリムのおちんちんの自己主張をしておきながら、一方でコノミへの口奉仕の集中出来る程度の、まったりした腰使い。
(あ、あ♥ すごぃ、すごいすごい……♥)
コノミのおちんちんを咥えている。
クリムのおちんちんも咥えている。
口に含んだコノミのものと、股間で咥えたクリムのものとの違いが今この瞬間、実感としてはっきりと分かって、それがまたミリアの興奮を加速させていく。
欲望の炎は、どんどん大きく激しくなっていって、止められない。
「ん、っは、あ、あむ、んん、ん、ふぁぁっ♥」
当然、口でのご奉仕も知らずの内に力が入ってしまう。
出来るだけ優しく。心を込めて。
唇をきゅっとすぼめてゆっくりと陰茎をしごいて、舌をまったり裏筋に押しつけて、陰茎の体温と薄皮の奥の脈動を感じ取りつつ、カリ首の裏側を舌先でくすぐって。
「わわ、これ、ほんと、ん、は……ふあっ♥」
ああ、何だか面白い。楽しい。
今ミリアがやっているのは明らかに男の人に対するご奉仕なのに、返ってくるのは女の子の甘いあえぎ声。薄目を開けて目の前に見える腰も、まろやかな曲線を描いた女の子のもの。色は白く、僅かに生える陰毛も薄く柔らかい。
そういえば、当然と言えば当然なのだけれど、ミリアが自分の愛撫で、他の女の子の快楽の声を引き出すのは初めてのことだ。
それだけのことでも妙に何だか新鮮な気分にもなってしまう。
「あ、やば、これ、ほんとなんか不思議な感じ、きもちいいっ♥」
更に加えて、コノミのあえぎ声が、何かいちいち面白い。
だって、こんな可愛くて驚きっぱなしのあえぎ声を、他ならぬコノミが上げているのだ。
慣れない感触に時折びくんと身体をわななかせ、腰が若干引け気味になるあたりなんか、なんだかいつもの、飄々とした佇まいのコノミらしくない。
(……あ、そっか)
今更気付いた。
コノミは今まで何度もクリムとは交わってきたとは言っていたけれど、男の子の器官は自慰をするばかりで、性行為で使ったことはないと言っていた。
つまり、要するに。
コノミは、男としては童貞なのだ。
そして、これから。
ミリアは、コノミの筆卸をするのだ。
――ぞくぞくしてきた。
だから、裏筋をちゅっと吸い上げてみた。
「っちょ、まって、まって、まってっ!? ミリアちゃん、そこちょっと、ぼく、んぁ、弱いかもっ あ、ふあっ♥」
「んふふ、だーめ、です」
「な、なんだか性格かわってないー!?」
ほんのちょっとだけ悪戯っぽい気持ちになりながら、それでも胸を満たすのは、酷く穏やかで優しい気持ちだ。
今までこれほどコノミのことを可愛いと思ったことはない。
いっぱい、いっぱい、優しくしてあげたい。
気持ちよくしてあげたい。
その気持ちをめいっぱい込めて、どうやらコノミの弱点らしい亀頭の丸みをレロレロとなめ回す動きを繰り返してやる。
「あ、っや、わ、んんんっ、や、それだめ、あっ、あんんんっ♥」
本格的に余裕をなくしたコノミが、がくがくと腰を震わせて半ば腰砕け状態になっていく。
ミリアはそれを両腕で抱きしめて支えつつ、しかし愛撫の手を止めるようなことはせず、執拗にコノミの童貞棒をねぶり続けた。
つるりとした亀頭をなめ回し、時に鈴口を舌先でくすぐり、あふれ出る先走りを舌にからめて亀頭全体にまぶしていって。
唇をきゅっとすぼめて時折しごく刺激を加えていって、射精衝動を促していく。
「ふあぁぁぁっ、っや、だめ、あ、だめだめだめぇっ♥」
楽しい。可愛らしい。もっと愛したい。もっと優しくしたい。もっといじめてあげたい。
舌で執拗にコノミを責め立てながら、ふと初夜の晩、時折妙にいじめっ子になっていたクリムのことを思い出していた。
(クリム様も、処女のわたしの相手をしてくださったとき、もしかしたらこんな気持ちだったのでしょうか)
なるほど確かにこれは、こんな風についついいじめてしまう気持ちも分かる。
(……ああ…)
また、濡れてしまった。
初めてのセックスの時のことを思い出してしまったのである。
あれから何度クリムとの交わってきただろう。あれから何度、ミリアはクリムのおちんちんによって快楽を刻みつけられてきただろう。
確かにそれはコノミに比べたら大した回数ではないかもしれない。
でも、それでも、抱き合った分だけミリアは快楽をより強く受け入れられるようになって。クリムによって、クリムのおちんちんで、ミリアはどんどん身体を淫らに開発されてきた。
そして――そうだ。忘れてはならない。忘れられるはずがない。
こうしてコノミの童貞おちんちんで戯れている今もなお、ミリアのおまんこには、クリムのおちんちんが刺さっている。
コノミより若干短く、コノミより僅かに太く、コノミよりほんの少し堅さはないが、コノミのものより遙かに熱い、クリムのおちんちん。
心の優しいクリムはコノミへの愛撫の邪魔にならないよう、しかし確実にミリアを興奮に導こうと、まったりと、しかし的確な腰の動きでミリアを気持ちよくしてくれている。
クリム自身の快楽を求めていない、ミリアの快楽のためだけの動き。
でも――そんなの、寂しい。もったいない。じれったい。
だって、クリムももっと気持ちよくなって貰わないと、精液を貰えない。
とくんとくんって、あの野性味あふれる脈動と共に吐き出す粘っこい欲望の固まりを、おなかの奥にぴゅうって出して貰うことが出来ない。
――そんなの、許せない。
だから自然と、腰が動く。
コノミのものを口に咥えながら。
クリムのものも、存分に下の口で味わいたくて。
コノミも、クリムも、同時に気持ちよくなって欲しくて。
口を動かし。腰を動かし。
できる限りの快感を二人に同時に与えていく。
「っは、あっ♥」
「う、くぁっ」
隣でコノミが。下からクリムが、同時に喘ぎ声を上げる。
(……あ。これ……)
すごく、いい。
自分の身一つで、クリムも、コノミも、自分の快楽の虜にしているのだ。
気持ちいい。
身体が気持ちいい。気持ちも気持ちいい。とてもとても気分がいい。
だからこんなの、やめられるはずが、ない。
だから、もう。一も二もなくスパートをかけていく。
くちゅ。じゅ。にちゅ。くちゅ。
「っは、あ、んんっ、んはっ、あ、あっ、だめ、それ、だめ、だめだめだめっ♥」
「……うおあっ!?」
口をすぼめて。
おまんこを締め付けて。
口を吸い上げて。
おまんこをゆっくり引き抜いて。
キスをするように舌を絡めて。
膣ヒダでクリムのものをしゃぶり回して。
口でしごいて。
おまんこでしごいて。
なめ回して。
なめ回して。
締め付けて。
締め付けて。
――そして。とうとう。ついに。
「……っ、あ……♥」
最初に限界を迎えたのは、コノミだった。
ミリアのつたない口愛撫でも、やはり未知の快感は抗えぬものがあったらしい。
「っひ、あっ♥」
息を飲むような喘ぎと共に、無理矢理、頭を捕まれた。
舌で間断なく送り込まれる愛撫が本格的に堪えたらしく、コノミはかなり強引にミリアの頭を固定し腰を引いて、しばらくぶりにその亀頭を大気に晒す。
強すぎる快感から逃れるために思わず取った行動なのだろうが、むしろそれが徒となったようだった。
圧迫されていた輸精管が、尿道が解放され、弁が緩み――そして。
「あ、やっ、やっ……♥」
ぴゅ、ぴゅくっ
愛らしい律動。
ぴくぴく、ぴくぴくっ、と震えながら、やや及び腰の状態のまま、コノミは精液を吐き出していた。
「あ、これ、あ。あっ、すごい、ああ……♥」
「あ、っわ、あつい……っ」
当然、鈴口の至近距離にいたミリアの顔面に、白い欲望の固まりがぶっかけられることになる。
クリムとは違う匂いがする、しかし確かにおちんちんから吐き出される、女を孕ませるための子種汁。
クリムに比べれば量も粘度もたいしたことはないが、しかし熱く、匂いの強いそれが、ミリアの顔を、首筋を汚し、緩やかに垂れて胸元までを淫らにデコレートしていく。
「あ、はっ♥」
イった。
うれしい。
ミリアの愛撫で、コノミが、童貞の男の子が、射精したのだ。
ぞくぞくする。
背筋がわななく。
おまんこがきゅんきゅんする。
生殖衝動が高まって――粘っこい愛液で膣の奥がどろどろになってしまう。
そして――その淫らな有様が、発情してねちっこいおまんこの動きが、その変化が、クリムにとっても決定打となったらしい。
「……く、あ……っ」
コノミのおちんちんにばかり耽溺するのを許さないとばかりに、いきなり乱暴な手付きで腰が捕まれた。
もちろんミリアはクリムのことを忘れた訳ではない。
むしろ逆だ。ミリアはずっとクリムのことを感じ続けていた。
しかしクリムは嫉妬心をそのまま叩きつけるような勢いで、腰を押しつけ、子宮口と鈴口が密着させてきた。
(……あ、ああっ♥)
予感に、確信に、全身がわななく。あそこがキュンキュンしてしまう。
嬉しくて、切なくて、胸がいっぱいになってときめいてしまう。
それはクリムが射精するときに決まってする動きだ。
ミリアとの性行為の、「おつとめ」としての側面を忘れていない彼は、膣内で射精するときいつもこういう風に子宮口とおちんちんの先端をくっつけてくる。
そうして、できるだけ確実にミリアの胎内に精液を送り込もうとしてくれる。
もちろんそれは義務感だけじゃなくって、彼の生殖本能の現れでもあるのだろう。
そう――クリムは、ミリアを孕ませたがっている。
心の底から。全身全霊を込めて。
ミリアも同じだ。
クリムの子を孕みたい。
だからこんなに気持ちよくて、ドキドキして、たまらなくなっている。
「……っ、ミリア、そろそろ、っ」
「っはい、はいっ♥ 射精して、くださいっ わたしのなかに、あっ、あっ♥ いっぱい、いっぱいいっぱいいっぱい、ッ だしてくださいっ♥」
気持ちを爆発させるように、そうふたりで気持ちを再確認しあって――そして、それが限界。
どじゅっ。
はじけた。
おなかの中で、ミリアと、クリムの欲望が。
どくっ。どくっ。どくっ。
どくっ。どくっ。どくっ。
「ああ、んぁ、あっ♥ んあぁぁぁっ♥ あ、あっ♥ っや、あっ♥ あ、またクリム様の、あ、せーし、ああっ♥ しゃせ、あっ♥ いっぱい♥ あああっ、あああああっ♥」
ああもう、すごい。
しあわせ。
こんなの、もう、すごい。
すごい。
すごくてすごくてすごくて、たまらない。
注ぎ込まれている。
幸せ。
種付けされている。
しあわせ。
孕まされている。
しあわせ。しあわせ。もう、もう――ほんとにしあわせ。
その幸せをコノミとも共有したくて、絶頂の余韻も冷めきらず勃起を維持し続けていたコノミのおちんちんに、ミリアは再びかぶりついた。
全力で吸い付いて、コノミの中に残った精液をすすり上げる。
クリムに比べれば随分小ぶりな陰嚢を揉み込んで、マッサージして、さらなる射精を求めてしまう。
「あ、やっ!? み、ミリアちゃん!? あ、ふぇ、んぁぁぁっ!?♥」
コノミは、あっさりとおかわりの射精をしてくれた。
クリムがおまんこにしてくれたように、コノミもまた、ミリアの口の中に、ミリアの粘膜で、心地よく、同時に、欲望を吐き出してをしてくれたのだ。
とくん、とくん、とくん。
どくん、どくん。どくん。
愛らしい律動を舌に伝わらせながら、コノミは苦く、生臭い粘液をミリアの中に吐き出していく。
激しい律動を膣奥に響き渡らせつつ、クリムは熱く、粘っこい子種汁をミリアの子宮に注ぎ続けていく。
「ん、ふ、む、んんんっ、んぁ、あ……っ♥ はぁぁぁぁ……ッ♥」
二つの粘液で汚されていく。
二つの粘液を、その臭いを、粘りけを、染みこまされていく。
今まで感じたことのない熱いほとばしりに、ミリアは骨の髄の隅々まで酔いしれた。
#3-6
尿道に残る精子を残らず吸い上げて。
その全てを残らずめいっぱい飲み込んで。
絶頂の律動が収まるまで、ずっとそうして口に頬張ったおちんちんの反応を楽しんで。
射精の脈動から、その余韻が完全に静かになるまで、童貞っ子の絶頂のプロセスを全て楽しんだミリアは、ようやくそこでコノミを解放した。
「……はぁぁ♥」
熱い息が漏れる。
吐いた吐息は自分でもはっきり分かる程に青臭くなっていた。
精子の匂い。
クリムじゃない、他の人の――コノミの精子の匂い。
先ほどから見ている限りだとオナニーをするときは男性器部分も刺激しているようだったから、まさか今回の射精が精通と言うことはないだろうが、それでもこれは、おそらく女性からの愛撫で初めてコノミが発射した精液の匂いだ。
そう思うと無性に愛しいもののように思えてしまう。
そして――なにより。
「あ……」
頬を炙るような熱さを感じる。
絶頂から解放され、口の粘膜から解放されても、いまだコノミの男性器部分は全く萎えることなく、最大径の興奮を示し続けていた。
ひくん、ひくんと緩やかに脈動し、その先端からは僅かに先走りをお漏らしして、切なそうに刺激を求めている。
千里眼でもってコノミの陰嚢に意識をやると、まだまだ精力十分と言ったところ。
むしろ、はじめて口奉仕での絶頂を迎えたことで、コノミの奥底に眠っていた男性部分の生殖本能が刺激されてしまったようで――先ほどむしろ精子の活動が活性化しているような気がした。
(……こういう、精力底なしなのって、親譲りって事なのでしょうか)
同じく自分の胎内で、全く萎える様子のないクリムの男性器の存在を感じながら、そんなことを思うミリアだった。
「……」
ちらりと、なんとなくミリアは一瞬クリムの方に目をやり。
そしてほんの少し躊躇って、あらためてコノミの表情を見る。
快楽に蕩けた顔。しかし、その顔には何となく、物足りなさそうな感情がうっすらと見えた気がした。
(そうですよね……ここまできて、はいおしまい、というのも、変ですよね……)
ぼんやりそう考えて、しかしやはり躊躇い混じりに、ミリアは口を開いた。
「あの……コノミ様」
「ん、なぁに」
努めて平静を装っている笑顔だが、真っ赤に怒張したおちんちんが彼女が平気でないことを如実に物語っている。
「その……あの。そろそろ」
「…………」
まあ、さすがにこの期に及んで、コノミにとってもミリアのその発言は予想外のものではなかったらしい。
とうとう来たか、みたいな表情を浮かべ、しかし何やら思うところがあるのか、コノミは少し悩んでいるような仕草を見せた。
「んー個人的には願ってもないお誘いなんだけどね-。最後にもっかい確認するけどさ、クリムくんは……それでいい?」
「ここまで来て駄目ってのはおかしいだろ」
答えつつも、クリムもコノミと同じような表情をしていた。
「でも、さっき言ったとおりだよ。ミリアが俺たちのことを真剣に考えてくれた上で提案してくれた事だし……俺はそういう事思いつかなかった。だからこの話に乗って試してみるのは、アリだと思うんだ」
「……ま、そだね」
苦笑に苦笑で返し。
それでも、まいったなぁ、みたいな表情を浮かべならが、ふたりは揃って体勢を変えた。
コノミはいったんミリアから身を離し、クリムもミリアの腰をつかんでゆっくりと怒張を引き抜いていく。
「ん……っ」
カリの太いクリムのおちんちんが、膣肉をひっかくように外に出て行くのはそれだけで気持ちいい。
気持ちよさに身を任せて、ゆるくなった膣口から精液が漏れ出てはもったいないので、めいっぱい膣口を締めるものだから、余計にクリムの存在を強く感じてしまう。
「ん、ふぁぁ……♥」
じっくりゆっくり引き抜いて。気持ちいいのを堪えておまんこに力を入れて。
何とか一滴もこぼすことなく、クリムのものを全て引き抜くことが出来た。
しかし一息つくまもなく、今度は身体を入れ替えてコノミがミリアの正面に陣取ってくる。「えと……初めてだし、正常位がいいです?」
「ん、そだね。まずは基本って事で」
若干間抜けにそんな事を言い合いながら、ミリアはシーツに寝そべり、コノミはミリアに覆い被さる体勢を取る。
……間抜けな話で。今更のようにここで一つ気がついた。
ごくごく自然な流れでコノミとだけ交わる体勢を取ってしまったが、これではクリムがほったらかしになってしまう。
迂闊だった。これではさっきまでと同じことになってしまうではないか。
「あ、えと……クリム様は……」
「あー……いや。ちょっと休憩するつもりだったんだけどな」
「え、でも……」
「こんな場面で言うのも変かもしれないけれど、一応、コノミの初体験?になるわけだし」
だからまずは普通なプレイで、という、まあ、クリムなりの気遣いらしい。
「うーん……」
なんとなく釈然としないが……まあ、そういうなら、よしとしよう。
しかしやっぱり何となくクリムの存在を感じてはいたかったので、クリムにはミリアの背後に回ってもらい、コノミとの最中、後ろから抱きしめてもらうことにした。
「ん、よし……」
体勢を整え、ミリアの女の子の場所に男性自身を宛てがいかけて、ふとコノミがその動きを止めた。
「あ、そだそだ。実はさ、ちょっと考えたんだけどさーミリアちゃん」
「は、はい」
少し神妙な表情のコノミにつられ、ミリアも何となく居住まいを正した気持ちで反応する。「おちんちんを一時的に女の子に生やす魔法あるから。それであとで――今日じゃなくてもいいけど、ぼくのことも種付けしていいからね?」
「は、はい……?」
「いやぁ、何て言うか。ぼくのおまんこだけクリムくん専用ってのは、やっぱりねぇ? やっぱり不公平な気がするから。まあ考えといてよー」
「……はぁ」
いきなりなんでまたそんなことを言ったのかと思ったが、まあさすがにすぐ気がついた。
確かに今のままだと、ミリアのおまんこはクリムとコノミの二人に使われることになるのに、コノミのおまんこはクリムだけしか使わない事態になってしまう。
つまりそれは、言い方を変えれば、コノミだけは、おまんこをクリムだけのものとして独占できてしまうと言うことになる訳で――そこにコノミは、ひとりの女として不公平を感じたらしい。
妙な提案だが、しかしそんな心遣いは嬉しくあった。
同時にちょっと、おかしくもなる。
「……ちょっと、羨ましいです」
「うん? 何が?」
「クリム様とコノミ様、こんなにそっくりなんですもの」
「…………」
そろって何だか不思議そうな顔をして顔を見合わせるのが、なおさらそっくりで。
そんな二人の仕草に、くすりと小さく笑いを漏らしてしまうミリアだった。
「わかりました。考えておきます」
「ん、こんな話、いきなりして悪かったね。じゃ、やろっか」
「は、はい……」
そして――あっさり話題を切り上げ、コノミは勃起をミリアにあてがってきた。
ちゅくり、と、既に濡れきったミリアの膣口に、同じく先走りと射精の残滓でどろどろになったコノミの鈴口が、あっさりと触れる。
「……あ」
「? 大丈夫?」
「あ、い、いえ、何でもない、です……」
思わず、この場にあるまじき声が出て、しかしそれを慌てて引っ込める。
でも、それが失敗だったかも知れない。
再びコノミの先端が改めてミリアに触れ――ようやくミリアは、自分の気持ちを理解した。
(あ、ぁ……っ これ、ああ……っ)
ミリアの胸に瞬時に沸き上がったのは、危機感だ。
これは、まずい。
これは、よくない。
まったく、なんと情けない話。
自分からこの行為を提案しておきながら――いざ自分の秘部に触れるコノミの男性器の感触に、ミリアは今更、強い忌避感を覚えたのである。
違う。
これは、違う。
いつもと違う、クリムのものと違う温度のものが、一番守らなくてはいけない場所に押しつけられている。
(わたし、わたし……っ)
強烈な困惑が胸を締め付ける。
こんな事をしていいのか。
こんな事をして、本当に良かったのか。
しかし――そんな躊躇いを覚えるのは、明らかに今更で。
何もかも、遅すぎて。
コノミに待ったをかける言葉をミリアが発するよりも早く、その肉塊はミリアの中に侵入を開始してしまったのである。
にちゅ、と、僅かに聞こえたその水音は、閉じきっていた膣口がコノミの亀頭で押し開かれ、中にたまったクリムの精液が漏れ出た音。
クリムとミリアの、二人の快楽の結晶を潤滑油代わりにして、コノミのものは、あっさりとミリアの中に吸い込まれてしまった。
「あ、あっ……すご、あったかい……♥」
「う、ぁ……っ」
先ほど口で愛撫した際に感じたコノミとクリムのおちんちんの違い。
その熱さ。
その太さ。
その堅さ。
その長さ。
その違いが。それぞれの違いが。
性的興奮により敏感になった秘粘膜が、そこから送られてくる圧倒的快楽が、ミリアを苛んでくる。
まず最初に感じた違和感は、その熱さだった。
灼熱を感じさせるクリムのそれとは違い、コノミの性器は性的興奮の最高潮の状態にあっても、それほど熱くは感じない。
というか――奇しくも、コノミのおちんちんは、ミリアのアソコと、かなり近い温度になっているらしかった。
だからだろう、クリムに入れられる時に感じる圧倒的な「熱く滾る欲望をねじ込まれる」感覚は殆どなく、男性器が差し込まれているという感覚が希薄なままに、気がつけば、ミリアはコノミの挿入を、あっさり受け入れてしまっていたのである。
「あ、あっ、っひ、あっ」
しかし、すんなりとした挿入が成されるのはそれまでのこと。
次に強烈に感じたのは、その太さ、堅さである。
コノミのものは、太さで言えばクリムに劣り、堅さに関してはクリムのものに勝る。
挿入の時には圧倒的な存在感を示していたクリムのものは、いったん挿入されると一転してその太さと柔らかさを活かして、ぴっちりとミリアの膣肉に密着し、一体感を求めてくる。
燃えるような熱さが、じわりじわりと一体感が増しつつ緩やかな抽挿されるのが得も言われず心地いいのだが、これがコノミに関して言うと、全く具合が異なっていた。
「ひう、あっ、あ……っ♥」
一体感など、全くない。
固いその表面はミリアの膣肉との密着を望まず、やや細めの直径であることも活かして、その存在を主張しながらも一直線に、深く、ミリアの最奥を目指してくる。
長さにおいてクリムのものより勝っている事も、その感覚をさらに助長するものがあった。
ゆるく抽挿をし、かるく腰と腰を触れ合わせる程度に差し込まれるだけで、その異物によって強く強く子宮口が圧迫されてしまう。
経験が全く浅い乙女ならばそんな突き込みなど苦痛以外の何物でもなかったろうが――むしろ半端にクリムに開発されていたことが、ミリアにとって不幸だった。
要するに。
こんな興奮状態で子宮を小突かれれば、感じないはずがないのである。
「ふ、ああ……っ はぁううっ♥」
ぐに、と子宮が、子を成しはぐくむ聖域が、押し上げられる。
(ああ……ああっ♥)
気持ちいい。
ああ、気持ち、いい。
そう、気持ちいいのだ。
コノミのおちんちんよりは劣るとは言え、クリムのものだって長さで言えば相当のものだ。
クリムに何度も何度も抱かれて。奥を突かれて。奥を突かれる快感を知って。中に出される喜悦を教え込まれてきた。
だが、だからこそ、皮肉なことに、いまも気持ちよく感じてしまう。
「う、動くね?」
「あ、あ、ああっ♥」
加減を知らないコノミは、残酷にもミリアに一息つかせるような心遣いを見せてはくれなかった。
おまんこをいきんでも易々とすり抜けていくコノミのおちんちんが、クリム以上の激しさでもって子宮口をどしんどしんと突き込んで来始めたのである。
どしん。
どしん。
どしん。
どしん。どしん。どしん。どしん! どしん!!
「あ、うっ、ああっ、ふぁぁぁっ♥」
一瞬で、蕩けてしまう。
コノミの童貞おちんちんに、童貞の腰使いに、翻弄されてしまう。
「あ、やば、ああっ、これ、ミリアちゃんのおまんこ、すっごい、いい……っ♥ クリムくん、こんなのいっつも味わってたの? ずるいよぉっ♥ んぁ、あっ♥」
「あー。ミリアのそこ、すっごい肉食系だからなあ」
「うん、あっ、あっ なんかすっごい♥ しぼりとられちゃううっ♥」
「あ、そ、そんなの、ふ、あ、ああっ♥」
やめて。
そんなこと、言わないで。
おまんこで感じてることを、クリムじゃないおちんちんで感じていることを、言葉で改めて言わないで。その事を認識させないで。
「あはっ♥ ミリアちゃんすごっ♥ おまんこすっごいきゅんきゅんいってるぅ♥ ぼくのおちんちん、気に入っちゃった? ぼくの精子で孕みたくなっちゃってる?」
そんなこと言わないで。
感じてるけれど。
確かにすごく、すごくすごく、気持ちいいけれど。
クリム様と同じくらい、すっごく感じちゃってるけれど。
クリム様がそこにいるのに、今、わたしの後ろにずっといるのに。
そんなこと、言わないで。
「は、あっ、っや、ああ、やだ、ううっ♥ や、うっ♥」
いやいやとかぶりを振る。
理性が悲鳴を上げる。
でも、本能が歓喜する。
腰が自然に動いてしまう。
奥へ奥へ。もっと奥へ。おちんちんを、精子をもっと奥へ。
「あ、っ、ふ、ああっ♥ んぁ、あう、ッ♥ ああっ♥」
きもちよくて。
子宮口も降りてきちゃって。
おまんこがどんどん柔らかくなって。
でも、ああ。でも。でも!
「……なんか」
――唐突に。
妙に冷めた声が、背後から聞こえた。
「やっぱりなんか、ちょっとむかつくなぁこれ」
状況に見とれてしまっていたのか、結局茶々を入れることもなく、ただ後ろからミリアを抱きしめるだけになっていたクリムが、ぼそりとそう呟いたのだ。
ちょっと、怒ったような声だった。
当たり前だ。
ミリアが目の前で、別の者のおちんちんに犯されているのだから。
クリムがいる前だというのに、別のおちんちんで気持ちよくなって、はしたなく腰を振ってしまっているのだから。
背中に触れる彼の体温に胸がきゅうっと痛くなる。情けなさと、つらさと、申し訳なさと。
心が千々に乱れてしまう。
でも一方で。やっぱり気持ちよくてたまらなくて、もうなにも考えられなくなってしまう。
ああ。ああ。もう、こんなの、どうすればいいというのか。
そして――
「あ、あっはは♥」
ごちゅりごちゅりと、腰を深く激しく動かしながら、コノミが心底愉快そうに笑い声を上げた。
「クリムくんもようやく分かった? ぼくたちが抱えてたつらさ?」
そのサディスティックな視線にからめとられて、クリムがどくんと反応する。
背中に感じる体温が熱くなる。背中に触れる心音が激しくなる。
お尻に触れているクリムの勃起もより固く熱くなって、また先走りをこぼしてミリアの背中とお尻をぬるぬるに汚し始めていた。
「ミリアちゃんとクリムくんがえっちしてるとき、ぼくいっつもこんな風に悔しかったんだよ? ミリアちゃんだって、クリムくんとぼくがえっちしてるとき、こんな風に辛かったんだよ? 目の前で好きな子がえっちしてるのって、犯されるのって、イヤでしょ? むかつくでしょ? 許せないでしょ? ぼくたちいっつもこんな思いしてたんだよ? 気付くのおそいよばーかっ♥」
鬱憤を晴らすようなその口調と共に、コノミの腰使いがより激しくなった。
「っや、あっ、あ♥ ああああっ♥ っひ、あっ、っや、はげしっ……っ♥♥」
今まで「男」としては童貞だったコノミには、テクニックなど全くない。
クリムはどれだけ腰を激しく打ち付けても、最後の一線ではミリアに対する優しさが垣間見えた。ミリアを気持ちよくさせようという情愛が見て取れた。
でも、コノミは違う。
セックスの相手が、ミリアが気持ちよくなっているかどうかなんて関係ない。
自分の快楽を貪り、自分の欲情をたたきつけるように、一心不乱に腰をたたきつけるような動きしかしてこない。「童貞」のコノミに、そんな気配りができるわけもない。
しかしだからこそ、その率直な、いらだちと、欲望と、心地よさを直接乗せたようなその腰使いは、ミリアの骨の髄までをも圧倒的な快感で塗りつぶしていく。
だからこそ気持ちいい、と、そんなことすら思ってしまう。
「あ、うっ♥ くり、む、さまぁっ♥ クリムさまっ♥ ごめ、ごめんなさい、わたし、あっ、うっ♥ わたしぃっ♥」
せめてこの困惑を何とかをごまかそうと、ミリアは背後のクリムに縋り付いた。
背中にめいっぱい体重を預け。身をよじって背後に出来るだけ振り向き、彼の身体を抱きしめる。
それでもそんなことはお構いなしにコノミは腰を打ち付けてきて。
それが、もう。ものすごく気持ちよくて。
だから――ああ、だから。
「ね、ミリアちゃん。きもちいーい?」
無邪気な、意識の狭間に直接差し込まれるように囁かれたコノミのその言葉に、ミリアは、思わず反応してしまったのだ。
「あ、う…・・・っ」
「ほらほら、教えて欲しいなー? ね、ね? どうお? ぼくのおちんちん、気持ちいい?」
「あ、はううっ」
言いたくなかった。
心はもうどれほどその事実を認めていても、口に出してしまうのは、何かが決定的に終わってしまうような気がしたから。
でも――
「ほうら?」
ずん、と、亀頭を押しつけてくる。
熱く滾ったコノミの生殖衝動が、子宮にキスをしてくる。
「あ、っや、あっ」
「ね? どうお、気持ちよくない? おしえてほしいなー?」
「あ、うっ、あっ、あっ」
そして、またひと突き。
つらい。きもちいい。もうどうして良いか分からない。
なおも泣き顔で口に出すのを躊躇っていると、ふいにコノミが顔を寄せ、小さな声で囁いてきた。
「大丈夫だよ。認めちゃいなよ。こんなことでクリムはミリアちゃんの事を嫌ったりしない。だから正直に答えて欲しいな?」
言いながら、またひと突き。
「う、ううう、ううっ」
思考力が削られていく。
何も分からなくなった頭に言葉を注ぎ込まれ、流されていく。
「ね? おしえて? ぼくのおちんちん、きもちいい?」
もうひと突き。
子宮がうずく。
おまんこがどうしようもなくなっていく。
そしてその欲求を見逃さなかったコノミは、ミリアの頬にキスをしながら、最悪の言葉を投げかけてくるのだ。
「ね? ぼくのせーし、欲しくない? 孕みたくない? おまんこの奥に、びゅーって、注いで欲しくない? ミリアちゃんは知ってるよね? クリムくんにたっくさん、中出しされたものね? ぼくも中出しされるの、大好き♥ おなかの奥にあっついの注ぎ込まれると、すっごい満たされた気持ちになるよね? あの感覚、欲しくない? 中出しされてイっちゃいたくない? ね、思い出して? 正直に教えてくれれば――いくらでもぼくのせーし、中出ししてあげるよ?」
「……――……ッ」
もう、駄目だ。
「き、気持ち……っ、いい、ですっ……♥」
(ああ……)
認めてしまった。
口に出して、認めてしまった。
認めてしまえば、もう、なんだか。どうでも良くなった。
どうでもいいはずないのに、どうでも良くなって。
何だか、理不尽に気持ちが楽になった。
「き、気持ち、いい……っ♥ きもちいいんですっ♥ コノミ様のおちんちんなのにぃっ♥ これ、クリム様のおちんち、じゃ、ないのに、っ♥ わたし、きもちいいんですっ、っは、♥ きもちいいの、これ、あっ、あっ♥ 深く突かれてっ♥ 腰使いも、んぁっ、ずっとずっと、ん、ふあぁっ♥ はげしくって、あんっ♥ たまんないんですっ♥ もうわたし、あっ、いっちゃいそうなんですっ♥」
ああ、なんだろう、これ。ホントなんだろう、これ。
もう、わかんない。何もかも分からない。
ああ、クリム様。クリム様。
他の人のおちんちんで、気持ちよくなってます。
他の人のおちんちんで、しあわせになっちゃってます。
他の人のおちんちんで、これから絶対、イかされます。
他の人のおちんちんで、射精されます。
他の人のおちんちんで、射精されたくなってます。
他の人のおちんちんで、孕みたくなっちゃってます……っ♥
「うぐ、ふぇ、あっ♥ ぐすっ、あっ、あっ♥ んぁ、ふえ、ッ♥ んあ、ああああっ♥」
気付けばミリアは、泣いてしまっていた。
気持ちよくて。もうどうしようもなくて。
訳が分からなくなって。でも、気持ちよくて。
クリムに抱きつき、縋り付き、抱きしめて、彼の体温を感じて。
でも、同時にコノミのおちんちんに酔いしれて。
そんな自分自身が分からなくって。
ミリアはもう、泣きじゃくるしかなかった。
泣きじゃくりながら、精子が欲しい、精子が欲しいと、腰をうねらせるしかなくなって。
「っ、あ、もう、ぁ、ミリアちゃんの、ほんといいっ♥ いきそう……っ」
「あ、っや、あっ、だめっ♥ だめっ♥ それだめぇっ♥ なかでだしちゃっ、ああっ♥ああっ♥」
ぶるん、とミリアの中でコノミのおちんちんが震えた。
ぐっと急激に大きくなり、独特の脈動が大きくなる。
これだけは初めて差し込まれる男性器でもはっきりと分かる、射精の予兆。
そして――
「っ、――、く、クリムくん、ちゅー、したい……」
「――ぇ」
コノミのその、切なそうな言葉に、間の抜けた声を漏らしたのは、クリムとミリア、さてどちらだっただろうか。
改めてその事を再確認する暇もなく、コノミは腰をぐっと前に押しやってきた。
クリムやミリアに比べ遙かに体格の小さいコノミがキスをするためには、大きく身を乗り出さないとならない。
当然、そうすればミリアの子宮口に、今までにないくらいの強さで亀頭が押しつけられる形になって――
「かふっ、っや……っ う、あっ♥」
「あ、ちょ、コノミっ!? んんんっ!?」
苦しくなって思わず身をよじったのが、更に失策だった。
そうして出来た隙に身体を割り込ませてコノミはクリムに身を寄せ、そして呆けたままのクリムの唇を、無理矢理奪ったのだ。
(あ、あ……っ)
びくん、と、お尻にあたったままになっていたクリムの性器が、興奮に震えたような気がした。
「あ、っぐ、うう……っ」
こんなの、ひどい。
今、コノミとセックスをしているのは、ミリアなのに。
最後の、本当に最後の、初めて女の中で迎える射精の瞬間に、コノミはよりにもよって、セックスの相手であるミリアではなく、クリムとの一体感を求めたのだ。
絶頂の直前、ものすごく切なくて辛くて不安になるのは分かる。ミリアだっていつもそうだ。しあわせで、気持ちよくて、でもそれがもう少しではじけて消えてしまう圧倒的な絶望感に、いつもいつもミリアも身もだえする。だからミリアは、その不安を何とかしたくて、クリムに甘えたくて、絶頂の時にキスを求めたり彼の体温にすがったりする。
だから、コノミがそういう気持ちになるのも分かる。そして彼女がすがるなら、その相手はクリムになるのが普通であることも。
だから、コノミの気持ちもわかる。分かるのだけど――でも。でも。
「ああ……ああ……っ」
至近距離で、目の前でクリムとコノミがキスをしている。
切なげに吐息をこぼしながら、コノミは射精直前の焦燥感を、クリムとのキスで耐えている。
そして――おまんこの中で、コノミのおちんちんが、ふるりと嬉しげに大きく震えて。
ついに、残酷な射精が、始まった。
―――どびゅ。ぶびゅ。びゅぐっ。
「っひ、あ、あっ、あああああ……ああああああ……っ♥♥」
射精慣れしていないからだろうか。あるいは単に体質か。それともそもそも、比較対象であるクリムが異常だったのか。
口で愛撫して吐き出されたときと同じく、コノミの精子の量は、やっぱりてんで大したことがなかった。
粘り気もクリムに比べれば全然だし、射精の勢いだって可愛らしいもの。
クリムに中出しされるときに感じる、びちりびちりと子宮口に発情の塊が打ち付けられるような、あの圧倒的な充実感はどこにもない。
でも。ああ――でも。
「あっ、あう、ああっ♥ んぁっ あ、あつい、コノミ様の、あ、あっあついぃっ」
そう。
熱かった。
陰茎の温度差とは対照的に、コノミの精子はクリムの精子に比べて、物凄く熱かったのだ。
「ああっ、やだ♥ あっ、や、あっ♥ ああっ♥ はぁぁぁぁぁああっっ♥♥」
その熱が、その熱さが、染みこんでくるのだ。
クリムのものに比べて遙かに熱い、ミリアを孕ませるために放たれた精子が、何重にも折り重ねられた膣ヒダの奥まで染みこんでくるのだ。
ただでさえ生殖衝動が刺激されて降りきっていた子宮が、その入り口がその熱さでほだされて、緩く、だらしなく開いてしまって。
そして、そうした開いた子宮口を、コノミの精子があっさりとくぐり抜けていくのが、なぜだかはっきりと分かってしまった。
「あ、あっ、っや、あっ、あああっ、ああああああああっ♥」
混ざっていく。
ミリアの子宮にため込まれていたクリムの精子の中に。今までそこにはクリムの精子だけがため込まれていたのに。
別のおちんちんから放たれた熱い精子が、混ざり込んでいく。
ミリアを孕ませるために。
ミリアと、赤ちゃんを作るために。
「あ、う、いや、ああっ いや♥ あっ、ああっ、ひぁぁぁぁぁああッ♥♥」
駄目なのに。
こんなの、クリムが傍にいるのに。
でも、その熱さが。身体の隅々までコノミの精子で汚染されていく感覚が、声を出さずにいられないくらい、全身を引きつらせてしまうくらい、どうしようもなく気持ちよくて、たまらなくて。
だから、ミリアもまた、絶頂を迎えてしまって。
(あ……あああ、ああ)
そうして――とうとうその中で、ミリアの中のいちばん大切な何かが、音を立てて砕けた。
#3-7
やはり射精の絶対量が少ないからだろうか。
コノミの射精の律動は、案外持たずにすぐに収まっていった。
膣内でなりを潜めていく欲望を感じながら――しかしミリアの絶頂の余韻は、一向に収まることがなかった。
あれだけ激しく絶頂したのにもかかわらず、体の芯にともった熱が、粘つく欲情が、まったく衰えてくれない。
「あ、う、ああ……っ」
切なくて、じれったくて、辛くて。
だからミリアは何よりもまず、クリムに口づけを求めた。
なによりとにかく、今は彼の存在を感じたくて。
「……ミリア?」
「クリムさまぁ……っ」
困惑気味の視線を向けてくるクリムに縋りつきながら、ミリアは思いのたけを、口にしてぶちまけるしかなかった。
「クリム様。お願いします。えっち、してください。わたしにもっともっと中出ししてください。コノミ様に出された分、もっと、もっと、コノミ様に出された何倍も、クリム様に孕ませて欲しいです……っ」
もう恥も外聞もない。
ただただ、今のミリアが望むのは、それだった。
今、ミリアの胎内には、コノミの精子がある。
コノミに股を開き、セックスして、そして中出しされた証が子宮の中にある。
勢いを衰えさせながらも、コノミの男性器はまだ僅かに射精を続けている。
それは、彼女自身が望んだ結果ではあるけども。でも――でもやっぱり。
「……ん、ぁっ あはは。正直だなーミリアちゃんは」
むしろ活発になった膣の動きに残った精液を搾り取られ、甘く喘ぎながら、しかしコノミがミリアに向けてきたのは、どこか同情の気持ちが混じった苦笑だった。
「す、すいません。でも。でも……」
「うん、わかるよ。やっぱりそうだよね?」
謝るミリアに、慈母のような優しい笑みが向けられる。
「クリムくんの女としては。やっぱりクリムくんで気持ちよくなりたいもんね?」
「……う」
穏やかな瞳でそう指摘され、呻くしかない。
そう。
結局、それだったのだ。
こうして実際に、クリムではない人に抱かれて、イかされて、中出しされて、そして改めて思い知った。
やっぱり自分は、クリムじゃないと嫌なのだと。
男性として好意を抱いているのは、クリムで。
だから抱かれたいと思うのは、やっぱりクリムで。
だから、セックスするときは、クリムのおちんちんで気持ちよくなりたい。
要するに、ミリアがそんな気持ちになるのをあらかじめ予見して、だからコノミは自分たちでセックスするのを「本当にいいのか?」とあれほど念押ししてくれていたのだ。
なのに考え知らずの自分は、そんな彼女の気遣いを無視してしまったことになる。
それが申し訳なくて――くやしい。
「あ、あ、あの。でも、コノミさまとの、えっちも、気持ちよかったんです!」
「うん」
「でも、でも……やっぱり違うと思ってしまって。やっぱりクリム様ともえっちしたいんです。やっぱり最後はクリム様なんですっ。クリム様の精子で、気持ちよくなりたいって、おもっちゃうんです……っ」
なんだか、自分でもよくわからなくなってきた。
でもそれでも、コノミはすべてをわかっていた顔で、穏やかにうなずくばかり。
「うんうん。わかるよ。ぼくもさっきミリアちゃんとえっちしてて、クリムくんともっとえっちしたくなったもの。ぼくは女で、ぼくのおまんこはクリムくんとえっちするためのものなんだって、再確認したくなったもの。ミリアちゃんも、そうだよね?」
「……う。はい」
「ごめんね。やっぱりこういうことするの、やるにしても時期尚早だったね」
「いえ、その……」
謝られても、困る。そもそもこの事態は、ミリア自身が言い出したことが発端なのだ。
それに――コノミとの行為だって、ミリアの立場からすれば、否定してはいけないはずなわけで。
(どうすればいいんでしょう……)
泣きたい気持ちになった。
やっぱり自分は、クリムの女でいたい。
感じるならクリムのおちんちんで感じたい。
でも、コノミを放っては置けない。
彼女が両性具有なら、彼女の女の部分も、男の部分も、余すことなく三人の関係に取り込みたい。
さっきのコノミとのセックスでは、その矛盾する気持ちが浮き彫りになっただけだった。
今まで、これほど自分が、単なるわがままで考えなしのバカだと思ったことはない。
「困ったね……どうしようか」
「……」
すこし一同で考えて。しばらく一様に黙り込んで。
そして――何か、ヘンな回路がつながっていたのかもしれない。
唐突に、どこからかミリアの脳裏に、一つの考えが下りて来た。
「あ……そうだ……」
しかし――後になって思えば。
あるいはその思いつきは、ミリアの中の、淫に堕した魔王の部分が導き出した、破滅への一歩だったのかもしれない。
#3-8
仰向けになったクリムの上に、ゆっくりと腰を下ろしていく。
正上位と並んで騎乗位はクリムとよくする体位のひとつだ。そういう意味で、やり方自体は流石にミリアも心得たものだが、実のところ、慣れたかと問われればそんなことは全くない。
女性上位のこの体位だと、どうしても動きやすいために、他の体位に比べ腰が激しく動いてしまう。
自分の意思でクリムや自分の快楽のために腰を動かすのはやっぱり恥ずかしい。
特に行為の後半は、もうどうにもならなくなって、毎回、無意識に腰を振ってしまうので――そんな様子をクリムにじっくり観察されているのかと思うと、いつもいつも行為の後は恥ずかしくて死にたくなって、まともに彼の顔も見れなくなってしまう。
だから、好きか嫌いか、得意か苦手かとと言われれば、好きではあるけれど、一方ですごく恥ずかしいので苦手――というのが、ミリアの正直なところである。
でも、いざ騎乗位でしようと決まれば、やはり興奮に股ぐらが熱く蕩けて濡れてしまうのも、また事実。
そして何より、今日の自分は、なんだか変だ。
コノミとセックスしてしまったせいで、外してはいけないタガが外れてしまっている気がする。
はやく、はやくクリムのおちんちんをまたおまんこに入れないと。
はやく、またクリムの女であることを実感しないと。
そう気持ちが急いてしかたがない。
だから今日ばかりは何の躊躇いもなく、むしろ自ら望んで、ただただ期待感を胸に、ミリアはクリムの勃起を膣内に咥え込んでいった。
「う、はうぅ……っ♥」
熱く濡れた秘部にクリムの先端が触れる。
今日はいつも以上に何度も抱かれたというのに、先ほどコノミとセックスをしたと言うだけのことで、なんだかクリムに入れられるのが随分久しぶりのようにも感じてしまう。
それはやはり、クリムに対する思い入れがあるからなのだろうと思う。
だから――彼の先端が触れるその感触は、それだけでミリアにとってとてもとてもしっくり来るものだった。
コノミのものに比べて酷く熱い、雄であることを主張するその欲望の塊。
あるべき場所にあるべきものがある、そんな感覚。
抵抗があるのは最初だけ。心理的な抵抗は元から全く、全然ない。
熱い塊が股間の奥深くに侵入してくるその感覚に感動すら覚えて、感極まったミリアはたまらず熱い吐息をこぼすのだった。
「あ。はあぁぁぁぁ……♥」
気持ちいい。これだ。やっぱりこれだ。これがやっぱりしっくりくる。
クリムの生殖衝動のその熱が、じわりじわりと膣ヒダを通して染みこんで、そして性器と性器が、その粘膜が境界をなくし、溶け合うような、そんな感覚。
(あ……やっぱり、コノミ様とも交わって、よかった、のかも?)
都合のいいもので、多幸感の中でそんな不躾なことも考えてしまった。
コノミとのあのセックスを1度やってしまったことで、クリムとのセックスがどれほど満たされるものだったのか、改めて自分の中で再定義が出来たような気がする。
心地よさが大して変わった訳じゃない。クリムから感じる熱量も、膣ヒダを通して感じるその熱に秘めた情熱も、肌に触れる掌から伝わるその優しさも、いつも通りのものだ。
でも――それがとても嬉しいものに思えた。
嬉しい――そう嬉しいのだ。
クリムと交わることが。クリムのものを受け入れる事が、こんなにも暖かで嬉しくて幸せなものだったのかと、改めてミリアは再認識することが出来た。
そして、その暖かさ、嬉しさは、気持ちよさに直結していく。
コノミと交わったときには一片たりとも感じられなかった、安心感を伴う性的快楽。
それが股間から背骨に、背骨から心臓に。心臓から全身にくまなく循環し、身体全体をトロめかせていく。
「あ、っは、あ……♥ ふぁぁぁぁ……♥」
クリムが慣らすように数度腰を振る。
快感を求めると言うよりは、反応を確かめるような、様子見程度の優しい腰の動き。
だけどそれだけのことで、密着した性感粘膜が僅かにこすれ合うだけのことで、ミリアはより強くクリムの男性器の存在を感じて、心地よさに身も心も蕩けてしまう。
(ああ……)
安堵と、感嘆と、快楽の入り交じった吐息が漏れる。
骨抜きにされる、というのは、つまるところこう言う事を言うのだろう。
「大丈夫?」
気遣わしげなクリムの声は、しかし最高に最悪の追い打ちだ。
耳をくすぐる雄々しく優しいその言葉がミリアの全てを縛っていく。
身も心も、全てが彼のものになっていく。
「あ、はい。はいぃ……♥」
返事をし、それだけでは全く物足りなくて、ミリアは騎乗位の体勢のまま身体を倒し、彼と密着を求め、そしてキスを求めた。
クリムもそれに抗うことなく舌を絡めて来てくれる。
「ん、ふ、……ミリア」
「ぁ。んむ……クリム様……」
唇同士で戯れながら互いを呼び合う。求め合う。
これこそがミリアの、女としての至福の時間。
だけど――しかしこれは、全ての始まりに過ぎない。
「んー、どれどれ」
睦み合い、絡み合っていた二人の傍に、それまで傍観を決め込んでいたコノミが近づいてきたのである。
何かを検分するような目で二人の様子を眺め、そして何やら彼女は神妙な表情で指を伸ばして来た。
「っひゃ、あう!?」
「あ、ごめん痛かった?」
「あ、いえ、あう……そ、そうじゃなくて……」
「あらら、じゃ、気持ちよかったんだ。あははははごめんねー」
「―――~~~~~っ うう」
無遠慮なコノミの笑い声に、ミリアが赤面するのも無理はない。コノミが触れた先は――あろうことか、二人の結合部だったのだから。
最大径まで張り詰めたクリムの生殖器官をめいっぱい頬張っているその陰唇部分にそっと手を触れ、そして一体何を判断したのか「ふむ」と満足そうな表情で一つ大きく頷いていた。
「うん。だいじょーぶそうだね。」
「…・・ほんとにやる気?」
一方でクリムは、妙に腰が引け気味だ。唇を離し、多分に困惑と躊躇が入り交じった台詞を、コノミではなくミリアに投げかけている。
なにせ、今回の行為の発案者はミリア自身なのである。
「は、はい、大丈夫です」
「ほんとそういうとこ気遣いしすぎだよねークリムくんは」
「そうはいうけどな……」
言って、心配そうな顔をミリアに向けて来る。
(……優しい人なんですよね、クリム様は)
つくづく、そう改めて思う。
彼がここまで食い下がるのは、これからする行為がミリアに負担をかけないか心配してのことだ。
膣に感じるクリムの脈動は激しくなる一方だ。
彼の生殖本能自体は明らかに昂っているのに、それより彼は、ミリアへの体調を優先してくれているのだ。
(……うん)
そして――だからこそ、ミリアの気持ちは固まった。
「クリム様。わたし、ほんとに大丈夫ですから」
「しかしな……」
「わたし、魔王ですから。このくらいへっちゃらです」
きっぱりとした物言いに、クリムは気圧されたかのように黙り込む。
まっすぐな視線を交わしあい――やがてクリムはふっと小さく吐息を漏らした。
「分かった。……悪かった。もううだうだ言わない。ここまで来たらもうとことんやらないとな」
「……はい」
そうして、笑顔を笑顔で返して。
「じゃ、やるねー」
それを合図に、コノミが宣言をしながら、とうとう、最後の一歩を踏み出した。
勃起に手を添え、コノミはつながり合う二人の元に身を寄せ、そして――その結合部に自らの先端を添えたのである。
そう――実のところ、ミリアが思いついたその提案は、発想そのものは実に単純きわまりないものだった。
ミリアは、コノミとも子作りをしないと不公平だという。
一方で彼女は、クリムではなくコノミに抱かれ、コノミの男性器で感じることに抵抗があるという。
なぜなら、やっぱりミリアは、クリムに抱かれていたいから。
ならば単純な話だ。
クリムと、コノミが、同時にミリアを抱き、同時に種を付ければいい。
つまり――
「あ、あ……っ ああ、あああ……っ」
みちりと膣口がこじ開けられる感触に、ぞっと背筋が震え上がる。
傷みはない。元々その器官は男性器を迎え入れるだけでなく、産道として、胎の中で育てた赤子を産み落とすための器官でもある。赤子の巨大な頭部が通るだけの柔軟性はそもそも最初から持ち合わせているはずのものだ。
だというのに――ならばこの圧迫感は何なのか。
やはりこれは、精神的な拒絶感から来るものなのか。
その事を冷静に考え直す余裕などもはやあろう筈もなく、とうとう、みっちりとクリムのものでいっぱいになった狭い膣道に、もう一本、コノミものが差し込まれてきた。
コノミの亀頭が。
コノミのカリ首が。
コノミの肉竿が。
先ほど抱いた違和感の塊が、ゆっくり、しかし着実にミリアの中に侵入してくる。
もう、すでにミリアの中はクリムのおちんちんでいっぱいなのに。
「あ、や、や……あぁ、ああ……っ」
絶望的な声が漏れる。がくがくと体中がわなないてしょうがない。
クリムの極太をくわえ込むだけで精一杯と思われた狭いミリアの膣道は、しかし結局、決定的な拒絶を示すことなく、ゆっくりと咀嚼するように、蛇が自らより大きな得物をゆっくりと飲み込んでいくように、コノミのものすらも咥えこんでいく。
そして――やがて。
「あ……」
「ふぁ……♥」
完全に、はまり込んだ。
クリムのカリ首とコノミのカリ首が、クリムの竿とコノミの竿ががっちりとかみ合うように重なり合う。
元からミリアの腰に密着し合っていたクリムの腰に加え、コノミの女の子らしい柔らかで滑らかな腰も、ミリアの尻たぶに密着してきた。
「あ、う、あっ、はっ」
「うあ、これ……」
「あは、これきっついね、さすがに……♥」
クリムとコノミも一緒に声を上げている。強烈な圧迫感を感じているのは、同時にミリアの膣に挿入している二人も同様のようだった。
未知の感覚だった。
二つの体温が、二つの脈動が、二つの射精衝動が、同時にミリアの膣内に入り込んでいる。 クリムに取ってみても、コノミに取ってみても、こんなのは初めての体験だろう。
自分が挿入している女性器の感触と、もう一本同時に入り込んでいる他の男性器の感触。
二人がどんな感覚を味わっているかなど、そもそも男根を持ち合わせていないミリアには想像の付かない領域だ。
(でも……クリム様と、コノミ様は、それを今、一緒に味わっているのですよね……)
どこかで思考能力が麻痺してしまっていたのかもしれない。こんな異常な体位をしておきながら、何となく、ミリアはのんびりぼんやりとそんなことを考え、そして二人を羨ましくすら思ってしまった。
そういえば先ほどコノミは、男根を生やす魔法を使って、ミリアに自分を孕ませていいなどと言っていたが。クリムと一緒にこんな形で彼女を抱かせて貰うのもありかもしれない。
「っ、み、ミリア、大丈夫か?」
(―――。ああ……)
むしろ自分の方が余裕のなさそうな表情をしているのに、クリムがそんな言葉を投げかけてくれて、ミリアはもう胸がいっぱいになった。
挿入前にもそんなそぶりを見せてくれたが、こんな状態になっても彼は自分のことを何よりもまず心配してくれるのだ。
(うん。やっぱりわたしは……)
確信する。
ミリアンドール=アバルスカは、クリム=ロクサールが大好きだ。
大丈夫。彼ならきっと、こんな自分でも受け入れてくれる。
さっき自分のものじゃない、他のおちんちんで善がっているミリアを目の当たりにしても、彼はミリアを見捨てなかった。嫌いにならなかった。今もこうして、今まで通りにミリアを抱いてくれて、そしてミリアを気遣ってくれる。
だから――そう。きっと、大丈夫。
「はい、はい……。大丈夫、です……っ という、か、♥ すごい、すごい……っ、きもち、いい、です……っ♥」
――そう。
そうなのだ。
心配なんて、要らない。
だって、だって。すごく気持ちいいのだ。
辛くなんて全然ないのだ。気持ちいいだけなのだ。
だって、そうじゃないか。気持ちよくならない訳がないじゃないか。
クリムのおちんちんとセックスしている。
ミリアの初めてを捧げて、それからも何度もミリアのことを抱いてくれて。犯してくれて。種付けしてくれて。骨の髄までセックスの快楽というものを教え込ませてくれたこの雄々しい、愛しくて愛しくてたまらないクリムのおちんちんに、今また、抱かれているのである。
コノミのおちんちんとセックスしている。
ミリアが先ほど筆おろししてあげた、女の味を覚えたての初々しい童貞おちんちんが、クリムの優しい腰使いとは全然違う、自分の欲望だけに忠実に、激しく剥き出しの生殖衝動をたたきつけてきたあの童貞おちんちんが、またミリアのことをハメてくれているのである。
そして何より――さっきのコノミとの行為でずっと感じていた、クリムのものでないおちんちんを咥え込んでしまっているという違和感や拒絶感も、今はもうない。
なぜならクリムのおちんちんも一緒にいるから。
今、彼のものでも、ミリアは感じているから。
「あ。っは、ああ……♥」
気持ちよくない筈がない。
たまらない。すごい。こんなのすごい。たまらない。ずるい。ふたりともずるい。
だからもう、もっと気持ちよくなりたいとしか考えられなくなって、自然に腰が動いてしまっていた。
「あ、んんっ、やだ、これ、ああ、勝手に動いてしまいますぅ……っ♥」
「……何かすごいな、ミリア」
「あはは。ミリアちゃん、もう完全にたがが外れちゃったねえ。おまんこの具合も、さっきさせて貰ったよりなんか柔らかくなってる感じがするし?」
少し戸惑うような声を上げるクリムと、愉快そうに笑うコノミの声が、どこか遠くに聞こえる。
何となく、二人揃ってそんな優しい声音で会話しているのが、ちょっと不満にも感じてしまう。
「クリム様ぁ、コノミ様ぁ、いちゃついてないで、もっと、もっとわたしのこときもちよくしてくださいいっ……♥」
「あー。あははごめんね?」
「ほらぁ、クリム様も♥」
「ああ、ごめんなミリア」
口で謝るだけじゃ全然たりなくて、だからミリアはキスを求めた。
クリムとコノミがさっきいちゃついてたののお返しに、こっちも舌を絡めず、いちゃつくような、ついばむような柔らかなキスを繰り返す。
「ん、は、あっ、ああ……っ♥」
それを合図に、性運動がだんだんと本格的なものになっていく。
一番最初に本調子になったのはやはりコノミだった。
2回目のセックスでもその野性味あふれる腰使いは健全で、遠慮会釈のない突き込みでミリアの子宮を揺さぶってくる。
「うう、あっは♥ んんんっ♥ はげ、しっ、あ、あっ♥」
狭い穴を掘削するような、そんな粗暴な動き。
クリムより長く固いそのおちんちんを思う存分使って、ごつごつと子宮に衝撃をたたき込んでくる。
「あ、ふあっ♥、あっ、♥ っや、あ♥ そのごつごつ、っ、あ♥ きもち、あああっ♥」
これが、すごい気持ちいい。
(ああ、や、すごい……クリム様とコノミ様の精子、ゆさぶられてるぅ……♥)
クリムとの初めての性行為で淫紋を刻み込んでしまった結果、ミリアの子宮の中にはずっと、始めての時から今まで中出しされた精子が生きたまま残っている。中出しされた精子を排卵のタイミングまでずっと生きたまま保管し、確実に子を孕むためだ。もちろん、今日クリムに中だしされたものも、コノミの筆おろしの時に出されたあの熱い精子も、この中には混ざっている。
「んはっ♥ ああっ♥ らめっ、せーし、っ、クリム様のせーしっ♥ ゆらさないでぇっ♥」
そう、それが、揺れるのだ。
ごつんごつんとコノミの突き上げが激しくて、たぷりたぷりと揺さぶられ、中にため込んだ精子の重さを無理矢理に性運動で感じさせられるのは、今までどれかでクリムと、そしてコノミと交わってきたかを如実に示すもので――ちょっと。何か、もうこれ駄目すぎる。
「う、お、っちょっとコノミ、これ激しすぎっ」
「っはう、だってミリアちゃんの、きもちよすぎるんだもんっ♥ ぼくだってもう、あ、あっ♥ とまれないよおっ」
「そ、そりゃわかるけどっ」
「あ、あっ、や、クリム様もおちんちんおっきくなって、あ、あはう、あっ♥ ああっ♥」
キスを放してそんな言い合いをしながら、クリムもだんだん本調子になってきた。
クリムの動きは、やっぱり優しくどこかまったりしたものだった。
でもそれが全然悪いという訳じゃない。
「ふあぁぁぁっ♥ やぁ、クリム様の、あ、あっ、なんだか、ああっ♥」
むしろすごく、すごくきもちいい。
むしろその優しさがまずい。本当にミリアを駄目にする。
「は、あ、ふぁぁぁ……♥」
彼の暖かさを感じて頭の芯からおまんこの奥まで蕩けてしまう。
身も心も彼に委ねざるを得なくなって、その快楽に甘えてしまう。
「あぁ……♥ ん、あっ♥ あああっ、あっ♥」
その一方で、やっぱり彼もどこか貪欲で。
百戦錬磨の彼の腰使いは、運動量で言えばコノミの十分の一にも満たないというのに、的確にミリアの弱点を責めてくるのだ。
じっくり膣ヒダの一枚一枚を丁寧にめくりあげるようにカリ首を膣道にねっちりとこすり合わせ、そしてそのカリ高で同じように膀胱の裏側の弱いところをぐいぐいずりずりと刺激してくるものだからもう溜まらない。
ひっかかれ。こそぎあげ。つきあげられ。
その度に、ミリアはどんどん、身も心もほだされていく。彼の虜になってしまう。
「あ、っや、あっ♥ いつもより、あっ♥ くりむさまの、おちんちんっ♥ おちんちんっ♥ んあっ♥ いつもよりっ♥ はっきりっっ♥ ふあぁぁっ♥」
そんな――どうしようもない快楽の二重奏。
二つのおちんちんが、同時にミリアの膣の中で、そんな別々の動きをするのだから、もう、訳が分からなくなる。
「あ、っや、あ、ああっ、んんんんっ♥ んんんん―――――っ♥」
耐えられるはずがない。一発で腰砕けになってしまう。ミリアだって腰を動かして二人を気持ちよくしてあげたいのに、そんなこと、これじゃ全然出来やしない。
「あ、っや、あ、ふあぁぁぁっ♥」
「あ、んんっ、っあはは。やっぱりクリムくん、ミリアちゃんを感じさせるの上手いんだぁ♥」
「コノミだって、う、ぁ、じきに上手くなれるよ……ほら。ミリア」
「あ、う、んんぁ、っ、はい。はいぃ……っ♥」
呼ばれて、今度はクリムから口づけを求められた。
優しいキスだった。
舌を絡めて、味蕾の一粒一粒で互いの味をかみしめて。
唾液を飲み合い、吐息を吸い合い、そうして一つに溶けていく。
そんな中で、下の方の口はそうも言ってはいられなくて。
只でさえ彼の優しさに蕩けていたのに、そのキスでもう完全にミリアは骨抜きになってしまって。
ふたり分の全く異なる性運動を受け止め、自然と締まりを強くしていたミリアのおまんこが、キスで安心して、ほんの僅かにまったり緩む。
(あ……)
それが、要するに隙となった。
きつい締まりが緩んだおかげで、二人の動きに自由度が増す。
クリムとコノミの腰の動きが、変わった。
「んんっ、ああ、あむっ♥ んんんっ♥ んんぁぁぁぁぁぁっ♥」
(あ、これ、あ、あ……っ♥ すごい♥)
混ざっていく。
二人の動きが。
クリムは、コノミの傍若無人な腰の動きに感化されて、ミリアのいいところを的確に押さえながらもその突き込みに、だんだん自分勝手な野性味が滲み出してくる。
コノミもクリムの優しい腰使いをだんだん真似てきて、自分勝手に腰を振るだけじゃなくてミリアの気持ちいいところを探る優しさが芽生え始めてくる。
そして、さらに――
「あ、あっ。これ、あっや、あ、すごい、すごいすごいすごいいっ♥ すごッ♥ あ、これいいのっ、きもちいいのぁっ♥」
(ああ……ああっ♥)
あつい。
ミリアを挟み込んでいる、クリムとコノミの体温が熱くなった。
二人の息づかいが余裕をなくし、その気配も焦れたような、必死なものになっていく。
クリムも、コノミも、ミリアを感じさせながら、自分の快楽を求めるようになったのだ。
「あ、っや、それ、ああっ、だめぇっ♥ ああっ、やだやだ、それ、きもちよすぎて、ああ
っ♥」
「っう、あ、コノミ、ちょっといきなり、うまくなり過ぎっ」
「あは、♥ クリムくんだって、あ、あんっ♥ どんどんはげしくなってるぅっ♥」
流石は、親子同然に過ごした二人。
抽挿の動きで最大限の性的快楽摩擦を得られるように、呼吸の合う二人は、当然のように、交互に突き込みをするようになっていく。
(これ、駄目です。ほんとう駄目すぎます……っ♥)
そう、交互にだ。
クリムが突き込みをして子宮口をぐにぐにするときは、コノミはぎりぎりまで引き抜く動きで膣全体を擦り上げ。
クリムが引き抜く動きでミリアを性摩擦で責めあげるときは、コノミは子宮口を破城槌のごとき勢いでぶち破ろうとしてくる。
「ああっ♥ んんぁっ♥ やっ♥ すごいっ、もうらめっ♥ こんなの、だって、ああっ♥ これ、♥ なにもかんがえられなくなっちゃいますううっ♥ ああっ♥」
そんな全ての動きは、全て何もかもが快楽のため。
クリムと気持ちよくなるため。
ミリアと気持ちよくなるため。
コノミと気持ちよくなるため。
そしてその暁に――子を成すため。
「あ、ああっ、いい、いいのっ♥ いいですっ♥ これすごいっ♥ くせになるっ♥ これ、駄目♥ だめなのっ♥ だめですっ♥ だめになっちゃう、ばかになっちゃうっ♥ ああっ♥ あああああっ♥」
おちんちんの形は二人とも全然違うのに。その体温も、堅さも、熱さも太さも全然違うのに。腰の動きだって全然違うのに。なのに二人のおちんちんは、今や一つの異形の生殖器官となって、ミリアをどんどん快楽の高みに押し上げていく。
(ああ、わたし、これ、だめ、きもちいい、きもち、いいっ)
だから、ミリアも、どんどん貪欲になっていく。
コノミのものを受け入れたときに感じた後悔も抵抗も、もはや完全に消し飛んだ。
むしろ、もっと、もっとを求めてしまう。
クリムともっと愛し合いたい。
コノミとも、もっと気持ちよくなりたい。
クリムのおちんちんで、もっと開発して欲しい。
コノミのおちんちんのこと、もっと深く知りたい。
――ああ。
これだ、と思った。
自分は、これがしたかったんだ。
三人でえっちがしたいと言ったとき、では具体的にどうすればいいかなんて、全く分かっていなかった。
だから試行錯誤して、クリムとばかりえっちしても、どうにもいけないと思ったし、コノミとえっちするとクリムとえっちしていないと言う事実に胸を焦がされた。
でも、今は違う。
みんなで気持ちよくなっている。
みんなで愛し合っている。
だから。だから。その暁に。
――孕みたい。
そんな風に思えたのは、だから当然のことで。
「―――――……ぁっ♥」
自覚が欲望の鍵を開ける。
柔軟にふやけて降りきった子宮口が、ぬちゃ、と小口を開けて、せっかちにも最後の瞬間を求めてしまう。
「あ、あっっは、ああああ――っ♥」
ふたりの鈴口が、キスをしてくる。
互いの先走りでその先端をべとべとにして。ちゅ、ちゅ、と自分の精子をその聖域の入り口に触れ合わせてくる。
交互に触れ合って。二人の先走りがミリアの子宮口で混ざり合う。
「すご、あ、んんんっ、ああっ、ふぁ、あっ、い、あっ♥ ああっ♥」
そしてこらえ性のないミリアは、もうそれだけで我慢の限界で。
「あ、あ……っ♥ ごめん、なさい、わたし、もう、あ、だめ。だめだめだめっ、いきますっ、あああっ♥」
欲望が、はじけた。
「――――――――………~~~~~~~っっっっ♥♥♥」
びく、びくびくびくっ、ぞくぞくぞくぞくぞくっ。
声にならない、言葉にならない嬌声が、高らかに響き割った。
背中がのけぞる。あごが上がる。大口をあけた奥から、喘ぎ声だけでは快楽を表現しきれなくて、自然と舌を尽きだしてしまう。
びくびくと震え。背中が痙攣し。おまんこは蕩け、膣肉はざわめいて二人のおちんちんにしがみつき、ああもう、あとはもう何が何だか分からない。
「あ、っや♥ ぼくももう、ああっいくっ♥」
絶頂し痙攣する膣ヒダの、甘やかで激しく情熱的な蠕動運動に堪えきれなくなったのは、やはりコノミが先だった。
小さい身体が倒れ込み、縋り付くようにミリアの背中に密着してくる。クリムとミリアの身体の間に細腕を滑り込ませミリアに抱きついて、腰をぐっと押しつけて子宮口に鈴口を押しつけて――そしてもう、それが彼女の限界だったらしい。
「あ、っや。あっ。ごめんねくりむくんっ、ぼくまたいっちゃうっ♥ ミリアちゃんのおまんこに中だししちゃうっ♥ ああ、んんんっ ふあぁぁぁ……っ♥」
「っ、ああっ。あああああ――――っ♥」
そして、出された。
また、出された。
熱い精子。どこかとろみの少ない。でも元気いっぱいの子種汁。
びゅく。びゅく。とくっ。とくっ。とくっ。
「あ、おっ ああ……っ」
そして―――とうとう、こんどはクリムの番だ。
ミリアのおまんこが絶頂して。コノミのおちんちんが射精して。
その二人の女の子の絶頂反応を直接おちんちんで味わって、そんなのいくら彼でも、耐えられるはずがない。
「あ。ああ……っ♥」
クリムのおちんちんが、久方ぶりにコノミのおちんちんと整列する。
亀頭が亀頭に、カリ首がカリ首に、肉竿が肉竿と触れあい、そして鈴口はコノミのものと争うようにして子宮口に押しつけられて。
クリムも密着を求めて、身体の大きな彼はコノミをひっくるめて二人分の背に腕を回し抱きしめてくれた。
「あ。ああ……♥」
あふれ出る多幸感。身体の全てが、心の全ても緩んでいく。
「……く、あっ」
そして――本当に余裕のない声を上げるクリムが、本当に愛おしく思えて。
それが、もう本当に最後の瞬間だった。
ごびゅっ。
すごい音がした。
すごい勢いだった。
ごびゅっ。ごびゅっ。どぎゅっ。どぎゅっ。
どちゅっ。ぶびゅぐっ。どじゅっ。どじゅっ。
粘っこい精液。
物凄い量の精液。
クリムの孕ませ汁。
(ああ……)
混ざっていく。
クリムの精子が、コノミの精子と混ざっていく。
クリムの、粘っこくて量が物凄くて、元気のいい精子が。コノミの、熱くて匂いのきつい、元気のいい精子と、混ざって、溶け合って、一緒に手をつないで、ミリアの子宮に吐き出されていく。ミリアを孕ませる為に、二人一緒になって絶頂しまくっている。
「あ、ああああっ、ふぁ、んぁぁぁっ あああああっ♥ んんんっ♥ んんっ♥ んんんんん―――っっ♥♥♥」
そんなのもう、どうしようもなくて。
なすすべもなくて。
ミリアは二人の射精に絶対服従するしかなくて。
二人のおちんちんの種付け奴隷になるしかなくって。
そして――異変が訪れた。
かっと、ミリアの胎に刻み込まれた紋が、光と放つ。
彼女の欲望を受けて活性化し、そしてぞわりと、うごめいたのだ。
「あ……っあ、あっ♥」
全身にみなぎる魔力が紋に吸い寄せられ、紋の魔術回路を循環することで一つの明確な「力」を型作り、そして――それがミリアの身体を変えていく。
紋から、血のように赤い、鈍く光る魔力が幾筋も流れ。それは蛇のように蛇行しながらミリアの下腹部を這いずり回り、そしてクリムとコノミの勃起を加え込んだ秘部に入り込んでいって。
「ああ……ああああっ♥」
そして、物理的な形を持つまで濃縮された魔力の塊が、まとわりついた。
ミリアと。クリムと。コノミに。それぞれの性器に。
「あ、え。あ!? なん、だ? これ!?」
「あ、や、ああっ♥」
途端――絶頂が止まらなくなった。
コノミの射精が。クリムの射精が。ミリアの絶頂が。
二人の亀頭から迸る射精の勢いが、全く衰えない。
何度も何度も、最高潮のその瞬間の脈動でもって子種をミリアの子宮に打ち付けてくる。
ミリアもそれは同様で。一番感極まったあの瞬間の心地よさがずっと続いて、もはや呼吸もままならない。
危機感を抱いたのか、とっさにクリムとコノミがミリアから男根を引き抜こうとするも――なぜかそれもかなわない。
「っ、あ、……―――…♥♥」
すべては、先の魔力の塊の仕業だ。
ミリアが、願ってしまったのだ。
もっと射精してほしいと。ずっと射精してほしいと。
そうして――ずっと自分も幸せのままイき続けたいと。
だから、魔力が紋を通して、それが実行されてしまった。
クリムとコノミにまとわりついて、射精時の快感で二人の感覚を固定して。
精力も精子の生産も魔力で全部補って。
ミリアの膣ひだにも、同じように食い込んで、ずっと絶頂を、強制的に維持して。
「あ、あっ♥ ああっ、あ、あんんんっ♥ んぁぁぁぁああっ♥♥
あ、これ、あった、こんなの、あ、あっだめ♥ だめだめだめっ♥ いく、あっ♥ あ、あっ♥ ああっ♥ い、あっ♥ ああっ、 あああああ――――ッッ♥♥」
快楽の虜になりながら、絶頂に絶頂を上書きしながら、ミリアは子宮口で、その精子のミックスジュースを、全て飲み込んでいくしかなくて。
(ああ……わたし……)
喘ぎ声をあげつつ絶頂を繰り返し、しかし内心ミリアは、笑うしかなかった。
たぶん、この事態は、ミリアが感じていた快楽が、彼女のどこかにあった自滅願望と結びついて、魔王の魔性を活性化させた結果だ。
彼女自身制御の利かない魔王の力が、あらかじめ完成されていた紋を通して具体的な効力を得、三人を快楽地獄の沼に引きずりおろしてしまった。
絶望的な、滅びの予感すら漂う連続絶頂の快楽の中で、しかりミリアは、ひどく甘やかな気分になってもいた。
ああ――もう、いいや、と。
自分の力は、破壊と殺戮にしか使えないと思っていた。
でも、今は違う。自分が淫に堕して、セックスにはまって、セックスにおぼれた結果、こんな形でもって顕在することになった。
でも――これなら、こんな形なら、別にいいんじゃないだろうか
だって、気持ちいいし。
だって、幸せだし。
それに、これなら、これだけどんどん射精されれば、きっと赤ちゃんもできるはずで。
だからこれは、溺れていいはず。
そうして――ごくごく限定的なものではあったが、ミリアは、自分の中に潜む魔王の魔性に、その身をゆだねてしまったのである。
――結論から言えば。
それからずっと、三人は、ミリアの紋が生み出した魔力の塊の影響で、結合を解くことも許されず、延々と絶頂し続けることを強いられて。
魔力が尽き、行為をやめることが出来たのは、それから丸3日が経った後の事だった。
#4
「では……失礼します」
一礼をしてシーリスの執務室から出る。
別に憂鬱な気分でもないのだが、自然とクリムの口からはため息が漏れた。
廊下の外に見える景色も曇天模様で、今にも雨が降り出しそうな暗く重い雲の下、綺麗に整備された城内の庭園も心なしか精彩を欠いて見える。
こういう時くらい晴れていても良かろうにと内心思いながら、彼が向かう先は、アルタレナ城のほぼ中心部、地下十階。
地上階に設けられた詰め所に声をかけ、そこから延々と暗い螺旋階段を下ることしばし――どこまで続くのかとそろそろ不安になってくる頃合いで、突如として眼前に現れる巨大な鉄扉を開けると、そこには異様な空間が広がっていた。
50人ほどが余裕を持って入ることが出来る円形の広間。
破邪の魔法陣を敷かれた、ミリアとクリムが「おつとめ」をするための「交合部屋」――なのだが、当初とはその様子が随分と様変わりしていた。
魔法陣の中央部に天蓋付きの大きなベッドが置かれているのは相変わらずだが、部屋の隅ににあれこれと、その空間には似つかわしくない調度が増えているのである。
クローゼット、本棚、執務机。果てはバスタブまで置かれている。隅の方にはそこだけ仕切りがしてあって――あれは用を足すためのスペースだ。
バスタブやトイレ設備を除けば、その殆どはミリアの居室から移されたものである。
「あ、クリム様……」
「おかえりークリムくん♪」
近づく足音に、部屋の主達はようやくクリムの存在に気付いたらしい。
部屋の中央にあるベッドに身体を横たえ、彼を迎えるその視線は二組。
言うまでもない、ミリアと、コノミである。
まだ昼間だというのにどちらも淫靡な下着姿のみを着て、互い身体を絡ませあっている。
揃ってその股間部には男性器と――そして女性器の割れ目からは白濁とした粘液がこぼれ出ているのが見て取れた。
先日の旅行以後、いろいろとタガの外れた感のあるミリアは、コノミが用意してくれた魔法で男性器を一時的に生やし、コノミを抱くプレイを興じるようになっていた。
何のツボにはまったのか、ミリアは随分とその行為がお気に召したらしい。こうしてクリムがいないときには二人で睦み合っていることも多いようだった。
今日も今日とてご多分に漏れず互いに挿しあい出しあって、どうやら今し方、ようやく一段落が付いたところらしい。
「シーリスちゃんからの呼び出し、なんだった?」
精液をこぼすミリアの女陰を優しく弄りつつ、ごくごく気軽な様子でコノミが訪ねてくる。
ミリアも気になる話題のようで、コノミの指使いに熱い吐息を吐きつつも、潤んだ瞳はしっかりクリムの方に向けてきていた。
「とりあえず朗報……かな。先日の検査の結果が出たんだよ」
ベッドに近づき、鼻孔をくすぐる二人分の淫臭を意識しつつ、クリムは報告を続けた。
「ふたりとも、妊娠してたってさ。たぶん十日前くらい――前の旅行の時くらいの種が付いたんだろうって」
「わ、やった」
聞くなり歓声を上げたのは、コノミの方である。
が――一方でミリアと言えば、どことなく浮かない顔。
どちらかと言えば、妊娠したかどうかが重要なのはミリアの方なのだが。
「どうした、ミリア?」
「いえ。あの……すいません」
「ようやく赤ちゃん出来たのに、うれしくないのー?」
「い、いえ! そんなことは!」
コノミの言葉に、ミリアは慌ててかぶりを振って否定する。
「……もしかして、初めての赤ちゃんだから不安?」
「あ、そうか……そうだよな」
ふと思いついたような様子のコノミの言葉に、そこまで考えが至らなかった自分をクリムは恥じた。
そうだ。これから彼女は母になるのだ。
魔王の業を背負わされたとはいえ、精神的にはただの娘に過ぎない彼女が、これから始まる初めての経験に、新しい命を育むという責任に、プレッシャーを感じるのも無理はない。
それに――それ以前に、誰の種でも孕むような身体に作られたと聞いてはいるが、ミリアがそれを今まで実践したことはない。
きちんと自分の胎で子を育むことが出来るか――それを不安に思うことだってあるだろう。
「大丈夫だよきっと。ぼくも一緒だから。一緒にがんばろ?」
「俺も……出来ることはするから」
「あ、いえ、そうではなくて。そういう事じゃないんです……」
しかしその予想は外れだったようで、申し訳なさそうにミリアは再び首を振る。
そして恥ずかしそうに俯きながら、ちらりちらりとクリムの顔を伺いながら、ミリアは言葉を続けた。
「その……赤ちゃんが出来たのは、うれしいんですけれど……えっと。そのあいだ、えっちなこと、出来ないのかなって」
「……………」
「……………」
さすがに、その言葉には。
クリムは、コノミと気の抜けたような顔を見合わせてしまって。
「……ああ」
そして少し遅れて、ミリアがどういう発想をしたかに思い至る。
やはり彼女はどこかしらズレている。
ここまで、日がな一日クリムやコノミと交わるほどに淫に堕しておいて、彼女はまだ根っこのところで「性行為は子を成すための行為である」という前提がそのままになっていたのだ。「あっははは。ホント真面目だなぁミリアちゃんは♪」
コノミも、同時に同じ結論に達したようだった。彼女は横からミリアをぎゅっと抱きしめ、頬ずりして魔王の娘を慰めていた。
「別に良いじゃん。えっちをする目的はたしかに赤ちゃん作る為だけど。でも、ミリアちゃんは知ってるでしょ? えっちは『楽しむためにするもの』でもあるって」
「………えっと」
「赤ちゃんに悪影響ない範囲で、クリムくんにいっしょに愛してもらお?」
「………」
コノミの後押しを受けて――ミリアの潤んだ瞳がクリムを再び捉える。
その瞬間、広間に漂う空気が音を立てて変質した。
「あは……♪」
最も反応が顕著だったのは、コノミの股間部だ。
一旦は性行為を通して満足して、半萎えとなっていたコノミの股間のものが、ふたたび欲情を示して屹立していく。
何も触れていないというのに最大径を示し、早速その赤黒く腫れた先端からは精子混じりの先走りがこぼれ始めているのが見て取れた。
もっとも、ズボン越しだから目立っていないだけで、実はその変化は、クリムにも同様に起こっていた。
今素っ裸になっていれば、目の前にいる半裸の少女二人にかぶりつくように覆い被さっていたことだろう。
――元いた居室を追い出され、ミリアがこの「交合部屋」に住まいを移動せざるを得なかった理由が、これである。
すべては、魔王の魔性がなすところ。
性行為の味を覚え、それに溺れることにハマったミリアは、ことある毎にこの媚毒の瘴気を周囲に撒き散らす様になったのである。
この変化のきっかけになったのは、間違いなく先日の旅行での行為だ。
最後のあの三人での交合のさなかに、ミリアが理性で押さえつけていた魔王の力が、ごくごく一部であったが現在化し、あろうことかそれを彼女は受け入れてしまったのである。
コノミの魔法具の力を持ってもそれは抑えきれるものではなく、もとから強力な魔法陣を施していたこの部屋に更に改良を重ねることで、なんとか城外への魔素の漏洩を押さえ込んでいる状態だ。
改良の材料に使われたのは、コノミ自身。
コノミはミリアの「暴走」を許した責任を、自ら進んで負う形で、魔法陣の回路の一部に自分自身を組み込み、より濃くなったミリアの淫気と瘴気を何とか押さえられるようにしたのである。
当然、コノミもミリアと同じく、もうこの部屋から出る事は許されない。
コノミのもくろみ通りあの旅行でミリアは子を成すことが出来たが、しかしそのために払った代償はあまりにも大きすぎた。
そして、ミリアとコノミをこの部屋から解放しようとするなら、クリムに出来ることは一つしかない。
さらにミリアを抱いて。
さらにミリアを孕ませて。
そうして――彼女の身体の中から、魔王の魔性を減らしていくしかない。
淫に堕した彼女を救うことが、さらに彼女と淫行に励むことしかないというのだから、本当――皮肉というほかない。
「クリムさま……」
もう、ミリアは我慢が出来なくなったらしい。
いつの間にか彼女の股間に生えていた男性器は消失し、完全なる「女」に戻って、クリムを受け入れる準備を進めていた。
クリムの目の前で股を開き、自らの指で陰核を撫で回し、自慰をしながら膣口のひくつきを見せつけて誘ってきている。
先ほどまでコノミと抱き合っておきながらこの有様である――というより、あるいはむしろ、「だからこそ」、なのかもしれない。
ミリアも、そしてコノミも、やはり抱かれるのはクリムが良いという。
互いに抱き合い、挿入し合い、中出しし合っても、しかしそれはあくまで前哨戦。
どれだけ互いに男性器をはやして、膣内を勃起でえぐりまくって中出しを繰り返しても、それはあくまで、彼女たちにとっては、クリムとのセックスを楽しむための「下ごしらえ」にすぎないのだ。
そうして熟し、発情し、イきまくって、とろけきったおまんこを、さらに全力でクリムで愛されるのが、最近の彼女たちのお気に入りなのである。
「あ、んん、は、はやく、はやく、おねがいします……♥」
「ああ……わかった」
だからクリムも、もう限界。
どうせクリムも種馬の身だ。ミリアを孕ませる以外に仕事などない。
急いで服を脱ぎ、ミリアに覆い被さる。
子を孕んだばかりの膣に勃起を宛てがい、孕み腹に更に射精を注ぎ込むため、腰を進めていく。
「あ。あ……♥ ん、クリムさまぁ……っ♥」
こうなれば一発でミリアは蕩けきってしまう。
膣の具合も上場だ。
むしろコノミと二人がかりで抱くようになった分、その熟れっぷりも以前より底がなくなってきたような気がする。
ちゅくりちゅくりとひとりでに蠢いて水音を垂れ流す、その熱く滾る柔らかい肉道の感触に感極まっていると、横からその様子を眺めて自慰をしていたコノミが、甘えたようにしなだれかかりながら、クリムの頬にキスをしてきた。
「コノミにも、あとでしてやる」
「んふ♪ ありがとー♥」
頬ずりをして、コノミも愛おしそうにミリアのおなかを撫でていく。
種が付いたばかりの小さな命と、ミリアの子宮と、そこに入り込んでいるクリムの性器、その全てを労るように。
「んふふ♪」
そして――しかし彼女は、コノミは、このときばかりは酷く酷薄な表情で、クリムに小さく笑いかけてきた。
「この子――いったい、どっちの種の子だろうね?」