※この作品はR-18です。

葛木さん家のお子さん   作:ぴんころ

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第三話

「さあ、終わらせましょう。バーサーカー」

 

 

 聖杯戦争開始前に脱落させるつもりで、イリヤスフィールはキャスターの根城にやってきていた。

 バーサーカーが最強だと信じる気持ちは強く、たとえ工房が完成していたとしても負けるとは思わないが、それでも面倒になるところは早く終わらせてしまいたい気持ちもあった。

 衛宮士郎という男を殺すことを個人としての目的で来日したイリヤスフィールは、そちらにたっぷりと時間をかけるためにも潰せる輩は先に潰す予定だった。

 そんなつもりで彼女は柳洞寺の門をくぐり、正面の階段から山門を見上げる。

 

 

「え……なんで……」

 

 

 そこで、見るはずもない存在を目にした。

 

 そこにいたのはバーサーカー。彼女が乗っているのもバーサーカー。

 つまりバーサーカーが二騎存在しているというわけで、彼女はたったそれだけで混乱の極地に至った。

 彼女は知らないことだが、山門で構えるバーサーカーはアルターエゴによって呼び出された彼女の守護者。

 ”イリヤスフィール”という少女に対して傷をつけることをせず、”イリヤスフィール”という少女を傷つけようとするのであれば、それが自分であったとしても許すことはない。

 

 

『■■■■■■■■■■■ーーー!』

 

 

 二人が同時に咆哮し、全く同じ軌道で飛びかかる。

 先手必勝、やらねばやられる。

 全く同じ思考を持つ鉛の巨人は、真正面から全く同じ拳を叩きつける。

 同一の英霊、同一のクラスともなれば、そのぶつかりあいを制するのは間違いなくマスター同士の力量差。

 そういう観点で言えば、間違いなくイリヤスフィールは最強。

 ”マスターとしての性能”だけを見るのであれば、間違いなくこの二人のコンビは最強だった。

 

 

「バーサーカー!?」

 

 

 けれど押し負けたのはイリヤスフィールのバーサーカー。

 なぜ、ありえない、そんな気持ちで彼女は叫ぶ。

 

 

「ふふっ、これも当然よね」

 

 

 それを彼女の視界に映らない程度には遠くから眺めていたキャスターは、アルターエゴの能力に思わぬ副産物があったことに余裕を持って微笑む。

 アルターエゴの持つ魔術で召喚された”守護者”は彼女の依り代がもっとも信用していたバーサーカー。

 純は豊富な魔力を持つために、この霊脈の恩恵を受けられるようにキャスターの手で調整されている現状、バーサーカーのスペックをイリヤスフィールと同等にまで押し上げられる。

 よって、マスター同士の力量差はほとんど存在しない状態であり、さらに”マスターによる援護”という点も、今動けないマスターの代わりに神代の魔術師(キャスター)が行うために純の側に軍配があがっていた。

 

 

「頼んだわよ、アルターエゴ」

 

「わかってるわよ、キャスター」

 

 

 アルターエゴから念話が返ってくる。

 彼女はキャスターからも少し離れた場所からその光景を眺めている。

 バーサーカーが一切の遠慮なく戦うにはそうする必要があると今の彼女は知っていて、そして何よりも今の彼女であればバーサーカーの援護をすることもできたから。

 あそこのイリヤスフィールのようにただ呆然と眺めるだけしかできないわけではなく、サーヴァントとしての力をも従えてきた今のシトナイならばバーサーカーを勝たせるための援護ができる。

 その事実が、彼女を少し離れたところに導いていた。

 

 そんな彼女の絶対の信頼を受けて、バーサーカーは吼える。

 全く同一の技術と思考を持つために純粋なステータス差と援護が明確なまでの効果を持つ状況まで来ているために、所詮はマスターとして最高峰でしかないイリヤスフィールでは魔術師として最高峰のキャスターには敵わない事実が、はっきりと見て取れる。

 

 

「■■■■■■■■■■■ーーー!」

 

「バーサーカー!」

 

 

 拳が、Aランクを超える威力を叩き出してイリヤスフィールのバーサーカーの心臓を打ち抜く。

 『十二の試練(ゴッドハンド)』の使用のために魔力が吸い出される感覚からイリヤスフィールもそのことに気がついたが、彼女には何もしようがない。

 彼女は、バーサーカーを最強だと信じていたが、信じていたからこそ全く同じヘラクレスという英霊と戦うことになったこのタイミングで疑問を抱いてしまった。

 それゆえの悲痛な叫び。その叫びの根底はバーサーカーへの信頼だからこそ、彼女の言葉に奮起してイリヤスフィールのバーサーカーも吼えた。

 

 

「アオォォォォォン!」

 

 

 そこに、さらなる介入者が。

 誰の瞳にも明らかな乱入者はシロクマ。

 バーサーカーの瞳はそれが宝具だと看破して、同時にそのシロクマもキャスターの強化を受けてバーサーカー同士の取っ組み合いに対して肉弾戦車となりながら特攻する。

 ランクEXの精霊宝具。その全力をアルターエゴのバーサーカーが蹴り出す形でさらに勢いをつけてイリヤスフィールのバーサーカーの体に突撃させる。

 ヘラクレスの耐性は、元々の威力ではなく最終的な威力によって抜けるかどうかが変わってくる。

 彼一匹の全力+キャスターの援護魔術+バーサーカーの蹴り出しによって、その一撃は十二の試練を抜く程度には強力に、一回分の命を奪い取った。

 

 

「■■■■■■■■■■■ーーー!」

 

 

 そうして一回死んだために完全蘇生までの間、わずかに動きの緩んだイリヤスフィールのバーサーカーにアルターエゴのバーサーカーが絡みつく。

 それは彼が師匠から習った世界最古の格闘技、拳闘と組技を組み合わせた『全ての力(パンクラチオン)』の動き。

 全力で押さえ込めという命令を実行するための動きは、彼の体が覚えていた。

 宇宙一の腕力で抑え込まれたイリヤスフィールのバーサーカーは、その視界にキラリと光った何かを見た。

 その先にいるのはイリヤスフィールとまるで同じ容姿の、けれどイリヤスフィールとは似ても似つかぬ戦闘能力を内包した少女。

 それがイリヤスフィールのバーサーカーに対して、わずかに哀悼の意が混じった視線を向けていたために反応に遅れた。

 

 

「バーサーカー!」

 

 

 直後、突き刺さったのは歪な形をした短刀、その真名を『破戒すべき封印の符(ルールブレイカー)』。

 本来ならば十二の試練によって刺さるはずもない武器なのだが、刺した相手に対して能力を発揮する関係で、その武器に対する強化魔術そのものは不可能ではない。

 さらにそこにアルターエゴの宝具『吼えよ我が友、我が力(オプタテシケ・オキムンペ)』による氷の弓の攻撃に矢として番えて放った。

 それら後付けの強化によってバーサーカーの肉体に刺さるようになった、ありとあらゆる魔術を初期化する能力を持ったその短刀の効果によって、バーサーカーとイリヤスフィールの間に結ばれていた契約が解ける。

 

 

「ダメェェェ!!」

 

 

 言葉は遅く、イリヤスフィールとバーサーカーの間の契約は完全に解けた。

 バーサーカーが生き残る道はたった一つ、その魔力で編まれた肉体が完全に消失するよりも先に再契約を果たすこと。

 けれど、そんなことをされてはバーサーカーとイリヤスフィールの間の契約を絶った意味がない。

 キャスターが『高速神言』によって転移魔術を完成させる。

 その対象はイリヤスフィールであり、バーサーカーがその転移の魔術から連れ出すことは抑え込まれている現状不可能。

 数秒後イリヤスフィールはその場から消失し、バーサーカーも完全消滅するまでの間、アルターエゴが召喚したバーサーカーによって抑え込まれたままなのだった。




いやー、イリヤちゃん(シトナイ)がバーサーカーの戦いを見守るだけじゃなくてちゃんと援護する形で一緒に戦えるのは素晴らしいことですね
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