※この作品はR-18です。

ようこそサカリパークへ   作:えろうら

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愛撫

 これでカリフォルニアアシカが既に居なかったら、俺の心と財布は甚大なダメージだけを背負って息絶えていたかもしれないが、幸い彼女はステージに腰かけ手持ち無沙汰に足を振りながら待っていてくれた。

「お待たせ。冷えてるのしか無かったけど、大丈夫でしたか」

「本当に持ってきてくれたんですね、それもカレー味! ありがとうございます。大丈夫ですよ、冷めても美味しいのがじゃぱりまんです。さ、どうぞ座ってください」

 少しだけ体をずらし、ぽん、と自分の隣を叩く彼女の体はすっかり乾いていたが、お尻の下はまだ湿っていた。丸いお尻の魚拓を二人で挟むように座り、じんわりと温もりの残る場所に手を下ろす。指先に触れた水気を通じて彼女のお尻に触れた気分になるのはどう考えても頭がおかしいのだが、要するにそれくらい狂っているのだ。

「いただきます。うん、やっぱり美味しいですね。シーフード味もいいのですがカレー味のピリッとした感覚がなんともいえません」

「確かに……これ、美味しいな」

 喜んで頬張るカリフォルニアアシカを横目にかじりつくと、想定以上の美味しさに目を見張った。冷めているのにふっくらとした生地に、ジャガイモベースのカレーフィリングがしっとりとしていてバランスが取れている。生地にジャガイモ、とあっては中々重いはずなのだがスパイスの辛味で食欲が刺激されてペロリと平らげられてしまう。

 あっという間に胃に収めてしまうと、今度は全身がポカポカと温まってくる。横目にカリフォルニアアシカを見ると、彼女の方はまだ半分程度しか食べていない。進んではいるのだが一口が小さく、それすら愛らしく感じられる。

「めちゃくちゃ美味しかったです。これを知らないままだったら後悔したかも」

「ふふ、そうでしょう? 特に冬は身体が温まりますから、寒いのが苦手なフレンズもよく食べるんです。ああでも毛皮の厚いフレンズは熱が籠るから、って苦手な子もいますね」

「毛皮、ですか。フレンズになっても毛皮が残ることがあるんですね」

「え?」

 意外そうな声がして彼女を見ると、丸くなった瞳がこちらを見つめていた。何か、妙な事を言ってしまっただろうか。

「フレンズになるとみんな人の身体になりますし、服になって毛皮が無くなるんだと思ってましたが……」

「確かにこの身体になると毛皮が薄くなることはありますけど、消えてしまうことはありませんよ。ほら、私だってこの辺りは素肌ですが体の方は残っているでしょう」

 白い指をつま先に置くには、屈まなければならない。柔軟な彼女の上半身は容易に胸を膝に押し付け、双丘が押され形を変える。そのまま膝を経て太ももへ流れた指は僅かな水着の段差を越え、わき腹をなぞる。やがて胸元、水着の上端に押さえつけられた乳房が反発するように膨らんだ部分に触れた。

「ただフレンズになった時の違いでしょうか。感触が以前とは少し違うのと、このひらひらしたものがあったりして不思議ではありますね。触っても分からないですし」

「へえ……どんなふうに違うんです? すべすべしてるとか、それともザラザラしてるとか」

「うーん、言葉にしにくいですね。触って貰えばわかると思いますよ、どうぞ比べてみてください」

 千載一遇のチャンスに食指を伸ばさないという選択肢などあるはずもない。「じゃあ失礼して」と距離を縮め、膝同士がくっつくほど近寄れば全身で相手の体温を感じるほどだ。

 パーソナルスペースという観点からすれば、余りにも近い。恋人のそれだ。だというのに彼女は俺の手に注意すら払わず、じゃぱりまんの残りを咀嚼している。

 どういうわけか悔しいと思った。いや、当然なのだ。彼女はフレンズで俺は人間、性的に、あるいは恋愛的に意識し合う関係には本来発展する理由が見当たらない。だがそれは……本来なら掛かるはずのブレーキが無効になる切っ掛けでもあった。

「ここは普通に感触があるんですよね」

「足は剥き出しですから。この足の裏のモノで歩く時の感触は違いますが、それ以外は大丈夫です」

「じゃあ、ここは?」

 膝頭に触れる。吸い付くような素肌に指の腹を当て、ゆっくりと手のひら全体を乗せる。そのまま太ももへとスライドさせていくと、しなやかな筋肉の筋を押さえる感覚があった。しかし女性らしい柔らかさ、脂肪の層も相応だ。特に太ももの内側は、小指を太ももの付け根に当てながら前後させると驚くほど滑らかだ。

「あ、ふふ、くすぐったいです。皮なのはもう少し上の部分ですよ」

「もう少し……この辺りは、確かに少し違いますね」

 もはや完全にセクハラ、犯罪的な絵面だろう。水着美女の間近に迫り、両手でまさぐるようにお腹と太ももに触れているのだ。ふと係員やさっきの少女が来たらどうしようか、という不安が首をもたげたが、くびれの温もりで即座に吹き飛んだ。

「どうですか、違うでしょう?」

「なんかツルっとしてて、でもざらざらとしてます。前に他のアシカを触った時はもっと……こっちの肌に近かったような気もしますね」

「そうですか? ん、あの、そこ……」

「痛いですか」

「いえ、痛いわけでは……ただ変な感覚というか」

 左手は彼女のへそあたりに親指を添え、くびれを手で包むようにしてゆっくりと上へ撫でる。水着に残った湿り気は既に彼女の体温で温かくなっており、押し出された水分が俺の手にしみ込んでくるようだ。正直言って感触はただの水着なのだが、そのぶん彼女の温もりを直に感じられる気がする。

 右手はもっと積極的、あるいは偏執的だ。太ももの裏側からお尻にかけて何度も擦り、今では擦るというより、優しく揉み解す動きへとシフトしている。手のひらでは包み切れないお尻はハリがあり、指を丸めても反発する柔らかさを持っていて、酷く劣情を刺激する。既に俺の下腹部はズボンを無理矢理押し上げている。

 最初、くすぐったそうに笑っていたカリフォルニアアシカはほんの少し、恥じらいに似た赤みを帯び始めている。ただ拒絶する動きは、まだ無い。

「じゃあ、こっちはどうですか」

 きっと、俺の呼吸は既に荒くなっているはずだ。懸命に抑えようとしていても、あるいは抑えようとしているからこそ自覚できてしまう。いつの間にか間近に迫った彼女のまつ毛を見据えつつ、思い切って肩を抱いた……もっとも触れる程度ではあるが。

 本当に思い切ったのは、もう片方の手だ。先程までお腹を撫でていた手は大きな胸の膨らみを水着越しに掴み、ゆっくりとほぐす様に撫で回していく。ここまで触れた彼女の身体の中で一番柔らかく、俺の脳を焼き尽くさんとするのがわかる。

「ん……そこは、赤ちゃんを育てるための……あっ、ん……」

「大きいですよね。元からこれくらいの大きさでしたっけ」

「い、いえ、これはフレンズになってから……あ、あの」

「凄く柔らかくて触り心地もいいですよ、なんだか凄く楽しくなってきました」

「待って、待ってください、そ、そこ、ぁんっ!」

 ひと際甲高い声と共に、彼女の背が反りかえる。

いつか見たアシカショーを思い出す。腹ばいになったアシカが上弦の月の如く背を反らす姿。だが今の彼女は当時の賑やかな思い出とは違い、艶のある声で鳴いていた。

もう他の音も情報も入らない。覆い被さるように彼女の濡れた唇を奪い、眼鏡越しの見開いた瞳と見つめ合う。混乱の極致に陥った彼女は完全に固まっていた。リョコウバトとは違い淫靡な色には塗れていない。

「ああ、やっぱり服なんだ。わかりますか、これ……皮の下に手が入ってるの」

 わかってはいたことだが、やはり彼女の身体を包んでいるのは水着だ。谷間の隙間に差し込み、引きはがすように胸を持ち上げる。締め付けようとする水着を手で広げてやるとすぐに彼女の豊かな胸が零れ出た。ぶるん、と音がしそうなほど揺れながら、赤みを帯びた桜色の乳首が露出する。

いつの間にかツンと立った膨らみの先端。夢中で、小さな子供が母親のソレに縋るように摘まんでいた。

「ん、ふぅうっ!? あ、んぅ、な、なんで、ぇ……!」

「可愛い、本当に可愛いです。これがフレンズ……知らなかった」

 痛くするつもりは毛頭ない。大きな胸を持ち上げ、指の腹で撫でながら乳首を優しく擦る。すると、途端に彼女の身体が跳ねた。

「やっ……あ、あぁあんっ!?」

 ギュっと眼鏡越しの目が強く瞑られ、噛み締めた唇が震えだす。真っ赤になった顔が瞬間的に強張り、それから徐々に力が抜けていく。

「あ、あ……? は、ぁあ……」

「もしかして、気持ちよかったですか?」

「きもち、いい……? わ、わかりません、これ、は」

 イった、というわけではなさそうで、もしかすると大きめの快感の波が襲ったのかもしれない。それでも彼女、フレンズにとっては普段感じ得ることのないモノだったのだろうか。

 ぼんやりと視線を放り投げる彼女は心ここにあらず、といった様子で、胸が零れていることさえ気になっていないようだ。

 チャンスかもしれない。腹の底から湧き上がる情欲が血潮を煮立たせていく。それでも彼女を胸に掻き抱くのには細心の注意を払う。傷付ける事の許されないガラス細工、心がけるのはそういった気構えだ。

 腕の中に収まったカリフォルニアアシカは、どこか小さい。ぐったりと抜けきった力の重さが嬉しい。尾を思わせる髪を撫で付けながら彼女の頬に口づけると、まだ呆けながらではあるが、くすぐったそうに身を捩じらせた。

「カリフォルニアアシカさん、好きです」

「え……」

「貴方が欲しい。もっと貴方の事を知りたい。貴方のショーを見て、俺はジャパリパークに来た事を心から楽しいと思えたんです。これから一緒に居てくれませんか」

「……」

 腕の中から俺を見上げる目は近い。絡み合う視線は十センチ程度の距離しかなく、瞳の中で揺れる困惑の色がはっきりと見て取れる。残念ながら――当然ではあるが、俺への好意は見当たらない。

 これで最後になるかもしれない。そう思って彼女を少しだけ強く抱きしめる。互いに呼吸の無い、空白の時間は文字通り瞬く間に過ぎた。

 彼女が俺の胸元に手を当て押しやった時、抵抗せず彼女を手放した。顔を伏せて胸元を見つめる彼女の表情は伺い知ることはできず、長い沈黙の後、零れた胸を戻して立ち上がる。

 そのまま背を向ける彼女にかける声は無い。全ては俺の浅ましい欲望に満ちた行為の結果なのだから。

 虚無感と絶望感、後悔に塗れたまま背中を見つめていると、ふと妙なことに気付く。彼女の足が、動いていない。

「カリフォルニアアシカさん?」

「……お客さん、あなたが何を言っているのか、私にはわかりません。でも……」

 再び沈黙の帳が落ちる。しかし、待つ。俺が縋るべき糸は声を掛けるだけで切れてしまいそうで、それだけはなぜか確信があった。

「でも、嫌では無かった、と思います。明日また来てください、同じ時間に」

 それだけ言うと俺の返事を待たず彼女は走り出し、階段を駆け上がると水槽に飛び込んだ。浮かんでくることも無かったのはもしかしたら水槽から繋がる海へ向かったのかもしれない。

 横たわった背中に彼女が残した水分が染み渡る。じわじわと、冷たさを感じる背中とは対照的に心は喜びが滲んでいく。

 ガッツポーズを天井に向け、勃起した下腹部も同じように天を突く。馬鹿馬鹿しい状況の中で夕暮れが差し込むまで俺はステージに寝転がっていた。

 

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