いつだったかテレビで『パークのホテルではフレンズと一緒に眠ることもできます』と聞いて耳を疑ったが、よくよく考えればフレンズは人間とは違う扱いなのだからそういう事もあるのだろう。
廊下を歩く間で酔いはどんどん抜けていった。元々滅茶苦茶に飲んだわけでもなく、これからの事を考えると頭も全身の力もはっきりとしてくる。手を繋ぎながら部屋の扉を開け、手招きをした。
「お邪魔します……」
既に頬を赤く染めているのは、この場に二人。俺も既に臨戦態勢でズボンを押しやる痛みで腰が引けている。おそらくカリフォルニアアシカとのやり取りの時に興奮していたせいでもあるのだろう。いきり立つ性欲はもう、止まらないと分かっていた。
まずはシャワーでも、と思っていた俺のプランはドアを閉めた途端に打ち砕かれる。真正面から抱き着いてきたリョコウバトは、潤んだ瞳に涙さえ滲ませて見上げてくる。
「ごめんなさい、ごめんなさいっ……でも、寂しいんです、今日あんな風に別れた時から私、おかしいんですっ。誰と話しててもお客様のこと、貴方のことばかりが浮かんできて……寂しかった……」
膨れ上がった涙の雫が彼女の頬を伝い落ちていく。目の色を失くしたリョコウバトの孤独が悲鳴に変わり、切れ切れの言葉として紡がれる。
酷く心が揺さぶられる。間違いなく同情だとわかっていても、想いを退けることなどできない。リョコウバトのフレンズである彼女の同族へ全滅して久しく、同じ動物のフレンズが二匹は生まれない現状では永遠に孤独なまま。そしてフレンズである彼女のツガイになれる――たとえ仮初であっても――ヒトは彼女をメスとして見ることは無い。残酷なことに『フレンズ』以外の扱いをされる事が無いのだ。
俺はそうやって理由をつけた。
そうでもしないと、カリフォルニアアシカに対して申し訳ないという気持ちがあった。それさえも身勝手の極致ではあったのだけれど。
「俺で、いい?」
「はい……はい、貴方がいいです。私をメスとして扱ってくれる貴方がいい……」
囁きの内容は酷く淫靡に聞こえた。
立ったまま彼女を抱き寄せ、唇を奪う。すぐに彼女も応え、貪るような口付けが始まった。
「ん、ふぅ……んむ、ちゅ、はぁ……嬉しい、です」
舌が絡み合い、離れると唾が垂れ落ちる。涙ながら微笑むリョコウバトが余りにも愛おしい。
無言のまま抱き上げてベッドに向かう途中、彼女はいつの間にか蕩けた表情に変わりつつあった。上気した頬と艶やかな唇は照明に煌いている。
思わず再び唇に吸い付く。彼女も積極的に舌を差し出し、俺の歯に絡め始めた。
「はふぅ、んぅ、アナタぁ」
粘り気の強い音が部屋に響く中、ふと現状を思い出す。互いに服も脱がないままでキスばかりが長引いているではないか。
このままではキスだけで何時間もいけてしまう。強い意志で顔を離してベッドに横たわらせると、彼女もこれからの行為に想いを馳せたのか恥ずかしそうに膝頭を擦り合わせている。
「服、毛皮は脱げる?」
「服ってこれですよね。一度、係の人に聞いたことはあるんですが……脱がせてもらえませんか」
「わかった。じゃあ体起こして」
リョコウバトは素直に頷く。首に巻いたリボンを外しベストを取る。そこまでは特に問題ない。
「次はスカートを下ろすから腰を上げてくれ」
「はい、こうですか?」
スカートを脱がせば見えるのは白タイツとその奥に隠れた薄い色の下着だ。俺が興奮しているのに対して、彼女は不思議そうに見ていることで認識の差に気付く。
「そっか、これは全部毛皮だから。もしかして恥ずかしくない?」
「全部脱いだら少し恥ずかしいかもしれませんが、これくらいは特に」
「なるほど」
思わず苦笑が漏れる。手を進めて下着姿にしても、リョコウバトの表情は特段不変だ。この後に期待している様子はあれど下着姿を恥じらうことはない。
笑みを浮かべる俺に少し不安な表情を浮かべたリョコウバトに、謝罪代わりに口づけをする。どうもキスが気に入っているらしく、うっとりと陶酔しながら唾液を混ぜあう。
ちゅぱ、と空気が唾液の中で弾けた。鼻先が触れ合い、かかる息で互いの熱も膨らんでいく。シャツのボタンがとにかくもどかしい。どうにか片手でズボンを下ろし全力で勃起したイチモツを抱えた下着一枚になり、リョコウバトを抱きすくめる。
全身で直に感じる女性の熱。フレンズだとしても全く違いを感じない。リョコウバトもすぐに俺の背中に腕を回し、肩に顔をこすりつけてきた。
「素敵……こんな日が来るなんて思ってもいませんでした。こうして誰かと、アナタとツガイになれる。本当に嬉しいです」
俺はその言葉に頷きを返せなかった。どんなに罪悪感を打ち消しても、心の中からカリフォルニアアシカが消えていない。だが違うとすら言えない俺は、オスとしても酷いのではないか。
その沈黙と逡巡にリョコウバトは笑った。
「ごめんなさい、アナタを困らせるつもりは無かったんです。大丈夫、アナタが誰か他の子と一緒になってもいいんです。ただ、ただ……今こうしている間だけは……アナタとツガイのメスでいさせてください」
リョコウバトの声は落ち着いている。震えも無く、それだけで十分だと本心から語っている。いじらしい姿に愛おしさを抱くのは間違いなのか、判断もできない。
衝動的に口が開いた。不道徳であってもいい。どのみち異常者だ。
「好きだ。好きになった。今からでも愛させて欲しい」
藍色の髪を抱き、囁く。彼女の表情を伺い知ることができないまま。
「今までリョコウバトが感じた寂しさ、これからは俺が埋めるから。お前一人だけとは約束できないけど、ツガイになって愛していくから」
最低な言葉を口走っているのは分かる。言い終えてからも彼女は動かないのが不安だったが、やがて俺の首筋へぐりぐりと頭を擦り付けてきた。
「ふふ、ふふふ。私もアナタが好きです。アナタだけのメスとして愛してください。私だけのオスでなくていいですけど、たまにはこうして二人きりでお願いします。ダメ、ですか?」
「まさか。何回だって、何回だっていいさ」
「良かった……好き。大好きです」
唇を合わせる。驚くほど単純な、重ねるだけのキスだった。互いの口を啄み、リョコウバトから香るかぐわしい匂いに鼻を鳴らすとリョコウバトは恥ずかしそうに身を捩じらせる。
「いやぁ、恥ずかしいです……そんなに嗅がないで」
「いい匂いだよ」
「わ、私は臭いでマーキングとかしませんから、そういうのわかりませんよぅ」
「じゃあこういうのは?」
首筋に口を付け、強く吸い付く。音に驚くリョコウバトを押さえながら舐めつけ、何度も何度も、時に永遠のように感じられるほど長く吸い続けていく。
やがて出来上がったキスマークを手鏡で見せる。見事に首筋には真っ赤な内出血が出来上がっていた。
「これは……」
「キスマークって言う、マーキングみたいなものだよ。俺のメスだって、そういう印」
白い肌に浮かぶ痛々しい痕を、リョコウバトは何度も指でなぞる。もちろん撫でた程度では消えないが、それを見た彼女の表情は驚きから、徐々に嬉しそうなものへ変わっていく。
「これでアナタのメスになれたんですね……ふふ、みんなに見せてあげなくちゃ」
その言葉に焦ったのは俺だ。さすがにこの後を人間が見れば、いくらフレンズ相手といえどももしかして、という疑念が生まれかねない。異常者でもいい、というのは覚悟の話であって、できるならやはり捕まりたくはない。異常者としてパークを追い出されては、リョコウバトにもカリフォルニアアシカにも会えなくなってしまう。
「いや、それは誰かに見せるものじゃないんだ。あくまで二人だけの、ツガイ同士でだけ見せるような印だから誰かに見せたらダメなんだよ」
「そうなんですか? でもそれだとマーキングにならないような」
「マーキングみたいなもの、って言っただろ。本当のマーキングは別にあるんだ。例えば指輪とか」
「指輪……じゃあ、私にもいただけますか?」
「ああ、もちろん」
言葉にして驚いた。結婚というわけではないが、彼女に指輪を送る事に躊躇を覚えない自分がいることに気付く。だが後悔は無い。俺の言葉に喜ぶリョコウバトを見られて満足だ。
藍色の絹のような髪を一握。そのまま頬を撫でる手に呼応して、リョコウバトは甘えてくる。
いつまでもこうしていたい、されどこのままではいたくない。相反する感情が天秤のように揺れる。しかし薄い照明で照らされる彼女の艶やかな肢体が手中にある状態で、均衡が崩れないわけがなかった。
「リョコウバト、好きだ」
下心に満ちた告白を女性はどう思うだろう。だが、結局男はそんなものだ。
リョコウバトの手がたおやかに口元を隠す。くすくすと、愛らしく。
「どうぞ来てください。交尾、しましょう?」
お許しが出たオスの動きは浅はか極まりない。髪と同じ色、藍のレースで編まれた下着をずらすと、零れ落ちた乳房が自重で形を変えてみせる。照明が若干暗いせいか、カリフォルニアアシカとは違って露わになった乳首は赤色が強い。舌を這わせるとぷっくりと膨らんだ乳輪で止められた。
「ふふ、くすったい……これが哺乳類の授乳なんですね。可愛い……よしよし」
口に含んで良し、甘噛みして良し。これもまた離れがたい魅力だけに、子ども扱いも悪くない。
自分の性癖にこんなものがあったとは、今日は次から次へと性癖の異常性が暴露されていく。
(もういいさ、なんだって)
恥ずかしいと思う気持ちも投げ捨ててむしゃぶりつき、後頭部を撫でられる心地良さに沈む。
それでもこればかりに溺れる訳にもいかない。ヒトの男としての見栄がある。手触りの良いショーツに手が忍び込み、なだらかな丘陵を撫でる。
「綺麗だよ、気持ちいい」
フレンズだから手入れ云々は度外視するつもりだった俺にとって、申し訳ないことだが意外だった。手のひらに合わせて流れる柔らかな陰毛は短く、それでいて触り心地が良い。愛すべき披裂に添えた指がグラスの縁をなぞるように曲線を描き終えた先には綺麗に整ったデルタがある。まるで、昨日今日に整えたような美しさだ。
「ここ、普段は触ったりする?」
「ひ、ぁあ……んっ、い、いいえっ……! そんな、ところぉ……!」
披裂を何度も擦るうちに、どんどんリョコウバトの呼吸が荒くなり、特に上端から内側へ、押し込むようにして指の腹で引っかくと大きく腰が跳ねる。胸や乳首ではこれっぽちも反応しなかった彼女は、秘所を擽る程度の刺激だけで快感に震えていた。
「どうしたんだ、突然可愛い声出したりして」
「そ、こぉ……おかしい、です、変なのが、来て……っ! あ、んんぅっ!」
ぎゅうっと目を瞑った彼女の顔は真っ赤になっている。唇を噛んで快感に耐えようとする姿がなんとも可愛らしく、手を握ると縋りつくように腕に抱きついてきた。
かといってリョコウバトのショーツの中、手を止めるわけもない。指の腹で押せるようになった秘肉の芽を慎重に摘まむように擦ると、どうにか逃れようと腰をくねらせる。その拍子に指先が少しだけ穴の中に滑り込み、驚いた膣口が慌てて締め付けてきた。
「なんです、か、これっ……こんな、交尾、知らない……っ!」
「ヒトは交尾の時こうするんだよ。大丈夫、俺に任せて」
「あ、は、はいぃ……は、はひぃっ!?」
「マカセテ」
安堵させるつもりの言葉も、快楽に染まった嬌声が響く中では棒読みだ。間近でこんなメスが乱れているのだから仕方ない。
彼女の緊張と膣をほぐすべく、啄むようなバードキスを唇に落としていく。断じて胸を弄っていても全く効果が無いからではないことは明らかにしておきたい。ド下手糞ではない、はずだ。たぶん。
「交尾の時はここが濡れるんだ。わかるかな、ほら、ここ」
膣口をマッサージするように撫で、指が動くようになると少しずつ奥へと、ゆっくり押しては引いていく。
思いきり締め付けてくる膣の中は温かく、ヌメリ気があった。中でもザラザラとした部分を撫でると、面白いようにうねり、愛液が染み出してくる。
「っは、あ、あぁあ、ひ、はひぃ……な、んでぇ……」
「そりゃあ挿れるためだよ」
「い、れる? なにを……」
本気でわからないと表情で語る彼女に、とっさに言葉を返せなかった。
後で調べたところ鳥類は総排泄口なる器官をこすり合わせるだけなのだとか。無知ととるべきか、知識のアンバランスさに困るべきか。いずれにせよヤる事は決まっている。
満を持してショーツを脱がせ、足を開かせる。しかし頬を染めてはいるもののどうも恥ずかしさというより、快感の余韻といった感じだ。閉じようとする様子もなく、隠すものが何もなくなった披裂をおっぴろげたままでいる。
俺もいても立ってもいられない。最後の一枚を下ろし、屹立した肉棒がようやく姿を現した。既に部屋に入る前から臨戦態勢に入っていたバカ息子だ。今か今かと涎を垂らし、頭は緊張して張り詰めておりシワは一本残らず消えていた。
「それ、なんですか?」
呆然と俺のイチモツを見つめるリョコウバトにとっては未知との遭遇らしい。
「哺乳類の交尾、見たことないかな。犬とか猫とかも同じだけど、オスのこれをメスの穴に挿入するんだ。そしてメスの中に子作りに必要なモノを注ぐと……」
急かす下半身を宥めすかし、リョコウバトの下腹部を撫で回す。さすがに彼女も察したらしく、陶酔した表情で甘い溜息をついた。
「そうやって子供のいる卵を作るんですね」
「ん? ああ、まあ」
間違いではないので正すこともないだろう。それよりも、そろそろ下半身が言うことを聞かず暴れ出しそうだ。
「行くよ、リョコウバト」
「はい……ください、アナタ」
無知な少女が、大人の体をしたメスが、オスの種と温もりを求めて股を開く。
僅かな静寂の中、遠くから潮騒が聞こえた。そういえばここはプライベートビーチに直結していたはずだ。他の音は何もなく、ただ小さな海の音と、エアコンの動く音、そして互いの昂った息遣いだけが耳を打つ。
汗と情欲に塗れたリョコウバトの体を間接照明がわずかな明かりで浮き上がらせ、鈍い輝きを返す秘所を淫靡に瞬かせた。さながら誘導灯か、血走った下半身に引きずられるように腰を掴み、肉棒の先端を膣穴にあてがう。
「っ、あ、ぁあああっ! き、てる……! わたしの、中に、いっ!」
「うお、おっ!?」
初物を引き裂き、強烈な締め付けを強引にねじ伏せ、押し込んでいく――とはならなかった。
それどころか亀頭の先が狭い膣口を超えた途端、堰を切ったように、まるで吸い込まれるかのごとくまとわりつく秘肉に搾り上げられていく。
ほとんど根元までが一息のうちに蠢く肉壺に引きずり込まれ、秘奥まで導かれる。そこで果ててしまわなかった自分を褒めてやりたい。
「イイです、アナタぁ……哺乳類の交尾、好きですっ、わたし、アナタとの交尾ぃ、好き、好きぃっ!」
うわ言のような嬌声とともに、彼女の膣からは愛液がとめどなく溢れてくるのを感じる。暴れん棒は押し入った場所が想定外の深みを持つ巣穴だったと知って、良くも悪くも固まってしまった。
「んはぁっ! あ、はぁあんっ! 好き、もっと、下さい、アナタの、ぉっ!」
「俺も好きだ、リョコウバトのこと」
「は、はぃっ! 嬉しい、すきぃ……」
どういう感情からか、リョコウバトの表情は淡い微笑みがくしゃりと歪み、玉のような涙が次々とシーツを濡らしていく。衝動的のくせに我ながらキザったらしく、零れる涙を指で拭った。俺の言葉で流れた感涙だと思うと指先の輝きがこの世に二つとない宝飾のように思えるから感情というやつは不思議なものだ。
柔軟な脚を大きく開かせ、腰を掴んで揺らす。ぐちゅ、と粘液が泡立つ音が性器同士の僅かな隙間から響く。
美しさや愛らしさが際立つ美少女ぞろいのフレンズの造形であっても、膣の肉壁は整っていない。つるりとした肉の締め付けと、ザラザラとした淫靡な壁が押し合いへし合い、俺の亀頭を潰そうと蠢いている。
「ひ、あぁ、そこ、いいですっ! そこ、好き、しゅきぃっ!」
最初はゆっくり、次第に強く擦り上げるように。亀頭の先が膣壁を抉るとリョコウバトの中はひと際強くうねり、汗ばむ肢体を躍らせる。重点的に責め立てるとどったんばったんと上半身を振り、徐々に腰が大きく跳ね上がっていく。
「んぐ、は、ああああっ! ひあ、あ、も、だめ、です、変です! 交尾で変になる、いやああああっ!!」
自動車のエンジンが唸りを上げるかのごとく部屋中を支配する卑猥な歌は盛り上がりを見せる。
今や、俺だって必死だ。少しでもこの快楽の中にいたい。リョコウバトが喘ぎのたうつサマを見ていたい。これまでの人生で類を見ないほどの我慢を強いられるイチモツは脳へ向かって強烈な不満を叩きつけてくる。下腹部から腰、脊椎、神経のすべてから突き上げを食らい、頭はパンク寸前だ。
「リョコウバト、りょこ、りょうこ、お前の中に出して、いいか。お前の中に、子種、残していいか!?」
呂律も回らぬまま、リョコウバトの顔を間近から見下ろして叫んだ。言葉を叩きつけた、というほうが正しいかもしれない。腰をぶつけ合う音がうるさいのだから仕方ないだろう。
「あ、ああ、赤ちゃん欲しい、ですっ! アナタとの子どもぉ、ほし、い……! そしたら、もう、寂しくないっ! ください、アナタのっ!」
「ああ、出る、出るっ!」
「はい、はいっ! ま、またぁ、くるっ、変に、おかしくなるの、またあああっ!」
ピストンの回数も、どれだけ深く挿入したかも覚えていない。最後はとにかく腰を振るうサルとなって一心不乱に膣肉を押し広げ、奥の奥まで押し込んだ。
か細い喉が奏でる嬌声は、リョコウバトの絶頂とともに絶叫へと変化した。初めての演奏に臨んだヴァイオリンが無茶苦茶に弓弾かれて糸が千切れるように、部屋中の音をねじ伏せる。そして一瞬の静寂の後、おそるおそるエアコンの空調が静かに嘶き始めた。
「気持ちよかった。今までの、どんな女のヒトよりも……リョコウバトが可愛かった」
長い、長い時間をかけた気分だ。脳を守る髄液まで一滴残らず金玉に分捕られたような気がする。射精に震える肉棒はまだ足りない、まだ足りないと要求し、今になって金玉がブラックな労働搾取の悲痛を訴える。しかし脳も体も、種付けの快楽を享受しているのだ。うるさい黙れと叱りつけられた金玉はついに萎縮していく。
強烈な射精の快感の波が引いていく。熱い産道の心地よさに震えながらイチモツを引き抜くと、うっすら白濁した粘液が腰までまとわりついていた。粘液が糸越しにリョコウバトの膣穴とつながったまま、ぐちゃぐちゃになったそこに俺の目は引きつけられる。
「はぅ……は、あぁ……アナタぁ……」
「どうだった?」
「どう……すごく、嬉しかったです……哺乳類って、こんなに幸せな交尾をするんですね……」
陶然と呟くリョコウバトの秘肉が揺れ、濡れた陰毛の下から白濁した液が漏れ出す。思わず生唾が溢れて次なる快感をと本能が訴えるが、一度満足したからか、振り切るのは案外簡単だった。
「リョコウバト、こっちに」
裸のまま彼女の隣へ体を寄せて向かい合う。抱き寄せ、全身で触れ合うと狂おしいほどの愛しさが湧き上がる。いったい、この数時間でどれだけリョコウバトへの想いが育っただろう。
「ありがとう。君と会えて本当に良かった」
「いいえ……私の方こそ、アナタに会えて良かったです」
腕の枕に乗った重さは信頼か、情愛か。羽毛のように柔らかい髪を撫でる行為に全く飽きない。業を煮やしたように彼女が体を密着させてきて、ようやくリョコウバトの身体が冷えている事に気付く。考えれば当然だ。熱を帯びて汗ばんでいたということは、それだけ熱を逃がしたはずなのだから。
「ごめん、寒かったか」
慌ててシーツを引き、当たり前のように抱き合ったままで体を包む。こういう気の利かない所が我ながら情けない。
「ふふっ。こうしていれば大丈夫ですよ」
シーツの中、彼女の腕が蠱惑的に胸板を撫でる。フェザータッチについ身体が小さく跳ねると、我慢できないように吹き出してから、背中に手を回してきた。
ならお返しだ。華奢な背を抱きすくめ、足を絡める。彼女もそれに引かず積極的に絡めあうから、互いの下腹部がこすれ合う。
それでも、まだ足りない。言葉を交わすことなく示し合わせたように視線を絡ませ、唇を重ねていく。舌は絡まないからこそ、唇が互いを貪るために啄むことを繰り返す。
「は、ぁ……あの、お願いがあります」
「ん、ああ、なに?」
「私から、このパークから……どうか、ずっと、ここに……」
徐々にリョコウバトの声が尻すぼみになっていく。やがて曖昧に、誤魔化す様に笑うと「なんでもありません」と明るく泣きついてくる。身を縮めて俺の胸元にじゃれ付いてくる、この子は。
顔は見えない。頬に触れても、額に口づけても、彼女は顔を上げてくれない。
俺は、なんと応えればいいのだろう。絆されて「わかった」と言えればどれだけ楽だっただろう。
そして――心に巣食う、あのフレンズがまるで消えないのだ。君の傍にいる、と言えない自分が恨めしい。腕の中にリョコウバトがいなかったら自分の頬を張り倒していたかもしれない。
沈黙と温もりに包まれたまま照明を落とす。真っ暗で静かな世界。ただ確かな事は、肌と唇を重ねた女が腕の中で震えていることだけだった。