「ネロはいる?」
藤丸は、カルデア内で彼の愛サーヴァントの一人の名前を呼ぶ。
「どうしたというのだ、マスター?」
赤いドレスを着た、薔薇の女帝が藤丸の後ろから声を掛けた。
「……少し時間が欲しい。私の部屋に来てくれ。」
藤丸は、いつもより真剣な顔をしてネロと自身の部屋へ行く。
そして、部屋の壁に行くようにネロに指示した藤丸はネロの顔の横にある壁に手を置いた。
「マスター、これは//」
彼女はドレスと同じ顔色になる。
藤丸は青い瞳でネロを見つめながら、彼女の顎を撫でる。
ネロは「ひゃん」と声を挙げると、藤丸はそのまま顔を近付けた。
二人は絡み合う紐のように、互いを引き寄せあった。
しかし、一回だけの引き寄せ合いでは足りないと言わんばかりに、お互いの背に手を伸ばす。
藤丸の片足はネロの内股のほうへ吸い寄せられる。
ネロは藤丸の服の背に指の跡が付くぐらいに、腕を絡ませた。
「マスターの背は相変わらず大きいな。それに貴様の身体は……」
「そうか、気付いてしまったか。私の体がどうなっているのかを。」
二人は秘密の会話を抱き合いながら話した。
その後、藤丸は自身の琴線が切れたかのようにネロをベッドのほうへと押し倒す。
「なっ」
「ごめん、我慢出来ないようだ。」
「~マスターっ。貴様という奴は~//」
藤丸は自身の身を軽くした。すると、普段は隠された適度に引き締まった体が露になった。
「マスター……やはり貴様は。」
藤丸はネロの発言に首を縦に振る。
すると、ネロも身を軽くした。
「私のところへ来てくれ、マスター…いや奏者よ。」
ネロの言葉が合図と言わんばかりに、藤丸は彼女の胸に顔を埋める。
その姿はまるで赤ん坊のようだった。
暫くすると、再び腕を絡ませ今度はネロが藤丸の背に爪を立て、藤丸の首筋を舐めた。
深紅の頭をした二匹の蛇が互いを絡み合わせる。
「……奏者よ。辛いときは辛いと言ってくれ。私からすれば、我慢している時の貴様ほど見ていて辛い物は無い。」
ネロがそう言うと、藤丸の目には泉が溜まっていた。
「ネロ……グスッ。一つの世界を……グスッ。壊さないといけないなんて……
辛いよ……辛いよぉ……!」
藤丸は思いっきりネロを抱き締めながら、その泉を一気に滝へと変えた。
「私も一緒だ……一人の少年少女の願いも叶えることが出来ぬのは……とても不憫な思いだ。私は貴様を決して一人にはしない。『ずっと』一緒だ。」
「あぁ、それを俺は臨んでいる。」
藤丸がそう最後に言うと、二人は再びお互いの傷を舐め合った。
愛で合った。そして、上下左右関係無く絡み合った。
二人は一つの籠に入ったかのようになった。
一つの塊がベッドの上で動く。
その塊は、二つの違う名前を呼びながら水と肉がこねられるような音を立てていた。
その音が止んだのは、朝から昼へと変わる時間になってようやくだった。
「あっ、今何時だ?」
「うむ…昼時だな。」
「結構寝ちゃったね。なぁ、」
「なんだ?」
「せっかくだからさ、手を繋いで行かない?」
「うむ、分かった。では行くぞ、マスター。」
二人は、荒野を渡ろうとしている。
二人の決心は、打ったばかりの鉄よりも熱く固かった。
その間にどんな障壁が立とうとも、二人はその壁を壊しお互いを引き寄せるだろう。