佐倉慈先生と共依存したい。 作:朝潮
原作は現最新話まで読んでます。が、公式設定を無視して行きます。じゃないと話が終わるから…
地下シェルターに保管されていた試作品の抗生物質を血清に変更しています。
薬品に詳しくないので名称はかの有名なゾンビゲームから持ってきました。
感染してしまった「人間」に使用すると、原作で起きてしまったような副作用(体温の低下、ゾンビに狙われなく鳴る、眠れなくなるなど)はあるものの、潜伏期間内であれば感染を止めることができます。
第1話
ガタ…ガタ…!
宮本櫂は悪寒を覚えた。
この地下シェルターに逃げてから、何ヶ月たったか。
こんな場所にまで入ってくる「やつら」はいなかった。
…だが、この人為的になっているような音。
間違いない。ついにこんな辺鄙な場所にまで侵入してきたのだ。
カタカタカタカタ…
顎が震え、歯と歯ががぶつかり合い、ちいさな音を鳴らす。
それが聞かれてしまうのではないか、と思ってしまい、さらに恐怖が加速する。
パシャ!パシャ!
なぜか今朝から始まった浸水。
その水の上を進み、ゆっくりと近づいてくる。
人だ。明らかに人が歩いている音に聞こえる。
通り過ぎろ、通り過ぎろ、通り過ぎろ、通り過ぎろ…
外部との唯一の出入り口である部屋の扉。
櫂の願いは叶わず、足音の主は扉の前で歩を止めた。
そして、扉が開く。
ゆっくり、ゆっくりと。
鬼か悪魔か。
何が現れるのかと身を震わせるしかなかった櫂。
「ウ、そ…っ…こんなとこに…ひ、人…が…」
しかし、現れたのは女神だった。
桃色の、綺麗なウェーブのかかった肩まで伸ばされた艶やかな髪。
ふんわり系の見た目のうえ、ぴょこりと飛び出たアホ毛がもっと可愛らしさを助長させている。
「佐倉せんせ…っ」
それは、巡ヶ丘学院高校のマドンナ、佐倉慈先生だった。
国語教師であり、その圧倒的な「癒し」で異性は勿論同性も引き寄せる皆の姉さん的存在だ。
誰かが呼び始めた、めぐねえという呼称もあだ名として定着してしまったのがその最たる証拠だ。
そんな最早女神と言っても差し支えないような存在が今、極限状態な櫂の目の前に現れた。
櫂には、佐倉慈の姿が、希望そのものに。いや、神にすら見えた。
「来ないでッ!!」
…故に、拒絶された時の衝撃は大きなものだった。
突如現れた希望に縋りつこうとした櫂は、突然のことに呆然としてしまう。
がっくりと膝を床に打ち付け、その痛みを感じないまでに深く絶望していた。
しかし、慈にはそこまでしてでも拒絶せざるを得ない事情があった。
「うえで、かまれて…感染…血が…わた、も、頭が…」
いつものふんわりとした笑顔は何処へやら、顔には焦燥の色が浮かんでいる。
大きく開かれているはずの瞳も険悪なものになり、ただならない事を伝えている。
「そん、な…せんせ…」
「ごめんなさ…ぃ…にげて…」
櫂がどうして気づかなかったのか、と言うほどに、肩口から覗く赤い鮮血。
そして、今もその血はポタポタと腕を伝い床に流れ落ちている。
「っ…!ぁ!っ!っぁ…!」
その事にようやく気付いた櫂は、口をパクパクと動かす。
なぜか声が出ない。声にならない声が喉奥から空気と一緒に漏れ出る。
何分のも感じられた数秒が経ち。
慈は、ゆっくりと体を傾かせ…
「佐倉先生!」
どすん!とその軽い体を地面に投げ出した。
それを見た櫂は、躊躇わずに慈の元へと四つん這いで向かった。
腰は抜け、膝は笑っていて、側から見ればさぞ面白い光景だっただろう。
「佐倉先生…!佐倉先生!」
ようやく慈の元へ辿り着いた櫂が慈の体を揺するが、完全に意識が飛んでしまっているようで反応はなかった。
死んでしまったのかと思うと同時に、触った時についてしまったべったりとついた血を見て身震いする。
息が荒くなる。死んだ、死んでしまった…佐倉先生が…
「……うぅっ…!」
突然上がったうめき声に、櫂はびくりと体をすくませた。
しかしすぐハッと我に帰り、慈の口元に手を当てる。
櫂の手に、弱々しい吐息が触れた。からくも慈はまだ息をしていた。
それを確認した櫂は、急いで部屋を飛び出した。
戻ってきた櫂の手には、注射器のようなものに入った薬品が握り締められていた。
その薬品の保管されていた箱には、「血清」と書かれていた。