佐倉慈先生と共依存したい。 作:朝潮
第18話
櫂は物資の中にあった大きな巾着袋に荷物を入れていた。
元々、15人が1ヶ月保つ程度の物資が設備されていた。
そんな袋程度では全ての物資は入りきらない。
「…これも、持っていきましょう。」
櫂は、追ってきた慈に手に持った箱を見せる。
「それは?」
「血清です。先生に使ったものと同じものです。」
「それって…」
「3つありました。1つは使ったので、残りは2つです。」
いつになく真剣な顔で、櫂は続ける。
「先生の体が完全に治ったとは限りません。もしもの時のため、持って上がりましょう。」
「…それは…」
「もし、そうなったら…私は見捨てて、生徒たちのために使ってあげて。」
自分が薬によって完治しないのなら、何度薬を使っても同じ結果になるだろう。
だとしたら、自分以外の人間に使って欲しかった。
それは本心からだったが、同時に「彼ら」になってしまうのも怖い。
「…もし、その…学園生活部?の人たちが感染してしまっていて、間に合いそうなら、使いましょう。」
櫂の返答に安心する。
私は生徒たちが守れるなら、それで…
「でも、佐倉先生を見捨てるつもりはありませんから。」
「…うん。ありがとう。」
櫂に否定された事で、少し救われた気がした。
そう、言って欲しかったのだろうか。
…だとしたら、私は、とてもズルい人間だ。
「?」
慈は頭を振って話題を逸らそうと視線を彷徨わせる。
そして櫂の隣に積まれている物資の中で、見慣れないものを発見した。
小さな箱型で、正面には大きく0.02と書かれていて…
「えっ…これって…」
まさか、と思い、慈はその小さな箱に手を伸ばした。
「コンドームです。」
「えぇっ!?」
慈は何事も無く応える櫂に驚いた。
えっ、コンドームって、えっ!?
「ど、どこでこんな物…」
「救急物資の中に、薬と紛れて入ってました。」
「へ、へえ…そう、なんだ…」
いくら日用品が常備されているとはいえ、これは流石に…
というか、何故こんな世界で
いや、私が言えたことではないのだが…
「って!どうしてある事教えてくれなかったの?あるなら…」
付けていたのに。
「…だって、生でしたかったから…」
拗ねたようにツンと口を尖らせる櫂を、少し可愛いと感じた。
こんな櫂の、悪戯っぽい所も愛嬌だと思ってしまう。
「でも、赤ちゃんっていうのはね…」
「知ってます!…子供じゃないんですから。」
高校一年生の15歳など、慈にとっては充分子供だったが。
「じゃあ…」
「それでも、僕は佐倉先生に子供を産んでほしいです。結婚…したいです。」
「だ、だから…」
慈はあわあわしながら嗜める。慈はこの手の話には弱かった。
「それじゃあ、行くわよ。声や足音は出来るだけ小さく。わかった?」
「はい。」
「…もし、「彼ら」がいたら、「彼ら」がいない事を確認した場所まで戻って、見つからないように隠れること。もし見つかった場合は、すぐに先生に知らせる事。」
慈は注意事項をつらつらと並べるが…
その前に、櫂にはとても気になることがあった。
「「彼ら」の数がとても多かった場合、すぐに引き返す事。それから…」
「あの…先生。」
「なあに?」
櫂は、ポヨンと揺れる悩ましい慈のおっぱいを見ながら問いかけた。
「裸で行くんですか?」
「え?…あっ!」
いくら一週間ずっと裸だったとは言え。
手足の拘束を解いて安心してしまったのだろうか。
慈は素でポンコツの娘だ。
慈は物資内の衣服を確認して、ガックリとうなだれていた。
「な、何でこれしかないの…」
用意されていたのは、女子用の制服と男子用の制服が数着のみだった。
元々着ていた服は血だらけになってしまって着るに着れない。
本当に、これを着るしかなさそうだ…
「この歳でこの服はちょっと…」
「まだ大丈夫ですよ。先生、まだ若いので!」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど…でもこれは…」
「じゃあ、裸で行きますか?」
「着る!ちゃんと着るからぁ!」
慈は、大切な何かを失ってしまうような気がした。
結局、制服へ着替えるしかなかった慈は、自分の姿がどう見えるのか戦々恐々としていた。
胸はぎゅうぎゅう。腰はパツパツ。そもそも、ギリギリとは言え体が収まったのすら奇跡だ。
裸よりは多少マシだが、慈は自分の姿がどうなっているのか確認する勇気はなかった。
教師が制服って…絶対、コスプレ、だよね…?
「ね、ねえ…本当に大丈夫?やっぱり、きついでしょ…?」
「大丈夫です。というか、最高です…!」
「あのね…」
慈は馬鹿なことを言う櫂にお小言を言ってあげたかったが、これ以上考えないほうが身のためだと思い直した。
服のことは、もう考えないようにしよう。
「あ、それと…これ、どうぞ。」
「?」
櫂が慈に差し出したのは、何の変哲も無い湿布だった。
慈は、櫂がそれを自分に渡した事を疑問に思う。
「それ。最初だけでも隠したほうが良いかもしれないと思って。」
櫂が言っているのは、慈の頬にまで達している感染の証拠。
皮膚が引き攣ったようにしわくちゃになっている部分だった。
「…そうね。ありがとう。」
そこまで頭の回らなかった慈は、櫂の好意に素直に感謝した。
確かに、いきなりこんな傷を見てしまったら驚いてしまうだろう。
どうして自分が生きているのか。自分がどうなってしまったのか。
しっかりと話して、もし受け入れられなかったらきっぱりと諦めよう。
慈は、もう隠すつもりはなかった。
「櫂くん。貼ってくれる?」
「わかりました。」
傷を隠すように貼るのは、1人では難しい。
慈は櫂に頼み、傷が目立たない程度に綺麗に貼ってもらう。
首筋から肩にかけて露出している部分はどうしようもなかったが。
「行きましょう。櫂くん。」
「…はい!」
私たちは、地下シェルターから脱出する。
作者が言う事じゃ無いけど
続きが気になる…