佐倉慈先生と共依存したい。 作:朝潮
朝日に照らされ、ゆっくりと意識が浮上した。
ぼんやりとした視界の中、オレは朝を実感した。
そういえば、オレはシェルターから脱出したんだっけか…
こんなに眩しいと感じるのは久しぶりだな…
「ぁ…体、だる…」
布団の中でもぞもぞと動くが、なんだか身体中の気力が全て吸い取られたように怠い。
まるで、風邪の時ような感覚だ。
「!」
もぞもぞ運動していると、パッチリした目と目が合う。
世界一美しい女性が、寝起きのオレを覗き込んでいた。
「えっと、佐倉先生…?」
「! 櫂くん!」
がばっ!と抱きついてきた。
えっえっ、なにこの状況!?
オレは一向に構わない、というか嬉しさしかないけど…
「体に異常はない?ちゃんと動く?」
「大丈夫です…何ですか…?」
とりあえずここぞとばかりに抱き返してしなやかな肢体を堪能する。
オレ、こんなに美人な人とエッチなことしたんだよな…
無理やり襲ったこと、怒ってないのかな…
また頼んだら、してくれないかな…?
「…覚えてないの?」
「え?何をですか…?っていうか、どうしたんですか…」
「良かった…本当に、良かった…」
殴られるようなことをした記憶はあっても、抱きつかれる謂れはない。
それに、泣いてもいるようだし…本当に何があったんだろう。
泣いている先生を見ると、オレまで悲しくなってしまう。
「佐倉先生…泣かないでください…」
オレは、オレの肩に頭を押し付ける佐倉先生にドキドキしていた。
そして、緊張しながらも撫でやすい位置に置かれている頭の上に手を置いた。
よし…よし…
佐倉先生の頭を撫でる。その行為だけで、とても幸せだった。
お風呂に入れていないのにサラサラな髪が心地よい。
むんむんと薫る良い匂いの中に、汗の匂いが混ざっている。
オレは昨日の佐倉先生と交わった時、鼻に感じた香りを思い出した。
朝だということもあり、すごい、興奮する…
オレは元気になっている股間に勘付かれないよう、腰を引きながら慰めた。
「櫂くん、お昼までずっと眠ってたんだよ。」
「昼…?ああ、もうそんな時間なんですか…」
「先生、もう心配で心配で…」
体が気怠いのは寝すぎたからかな。
というか、そろそろ離れてくれないと我慢できなくなる…
「僕は大丈夫ですよ。佐倉先生。」
「本当に元気なのね?良かった…本当に…」
「そんなに心配することですか?ちょっと疲れてただけだと思いますよ。」
「…違うの、櫂くん。」
「へ?」
オレは、どうやら感染してしまっていたらしい。
昨夜、佐倉先生が薬を使って助けてくれたそうだ…
いや、全然気がつかなかったし、今でも信じられない…
だって、噛まれた記憶も苦しかった記憶も、何もないのだ。
佐倉先生が気がつかなければ、そのままゾンビになっていたかもしれない。
突然すぎて、恐怖すら感じなかった。
「そうですか…ありがとうございます。助けてくれて…」
全て説明し終えた佐倉先生は、オレに頭を預けたまま泣いていた。
こんなに悲しそうに泣いてしまって。オレはどれだけ心配をかけたんだろうか。
女の子を泣かせるなんて、最低だ。
「違う…違うの…全部、私が悪いの…」
「そんな事ないですよ。佐倉先生は、僕の事を助けてくれたじゃないですか。」
助けてくれたはずの自分が悪いと言い募る佐倉先生が何を考えているのか疑問に思っていると、佐倉先生が首を振った。
「櫂くんは、感染したことにも気づいてなかったんだよね?」
「はい。なので、今でも実感はないです。」
「…やっぱり。噛まれてないって事は、私から感染したに決まってるわ。」
「…!」
…予想していなかった。
佐倉先生も、半分ゾンビの仲間なのだ。
オレは甘かったんだ。
「ごめんなさい…謝って許されることではないけど…本当にごめんなさい…」
「佐倉先生は、何も悪くないですよ。」
「そんなわけない!」
佐倉先生が、ふさわしくない大きな声をあげた。
そんな先生に、オレは素直に驚いた。
「私、殺しかけたんだよ?殺されかかったんだよ?私が悪くないわけない!」
「そんな事ないですよ。」
「ある!私がいなければこんな事…」
「違います。それは絶対に違います。」
佐倉先生がいなかったら。
良かったはずがない。そんな事は絶対にない。
「僕は佐倉先生を助けました。佐倉先生は、僕を助けました。…これで、貸し借りは無しです。」
「でも…」
「何か、どうしてもお詫びをしたいのなら…」
オレは少し考える。セックス、は言い過ぎか。
となれば、結婚…は、こんな形で了承してほしくない。
絶対、いつか自分の力で振り向かせてみせる。
と、なるとあとは…
「キス、してください…」
「!」
佐倉先生は目を見開いた。
それほど、オレの言葉が予想外だったのだろう。
「赦してくれるの…?」
「はい。でも、とびっきり大人の、ですよ。」
佐倉先生は何度かパチクリ目を瞬かせ。
そして、涙を流しながら泣き笑う。
「…もう。エッチ…」
ゔっ…
結婚しましょう…
「ん…」
佐倉先生は、静かに目を閉じる。
それが、誓いのキスを待つ花嫁のようで。
「…んっ…」
「ん…はん…んっ…」
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…
啄ばむように唇をはみ、口をモゴモゴさせる。
佐倉先生も勝手がわからないようであたふたしていた。
「ちゅ…んちゅ…ちゅぷっ…」
「はん…はむ…はぁ…はちゅ…ちゅ…」
佐倉先生が驚いてしまわないよう、軽いものからゆっくりと、ねっとりしたものに変えていく。
キスなんて初めてしたため勝手がわからないのはオレも同じだ。
唇を舐めたり、口の中に含んだり、少し吸ってみたりしてみる。
ちゅっちゅ、といやらしい音が鳴って、佐倉先生とキスをしているという実感が湧いた。
「ちゅ…はむ…ちゅるるっ…ちゅ…」
「ぷちゅ…か、櫂く…ちゅ…はぁん…はむ…」
佐倉先生の緊張が解けるまで、唇の外側を責める。
そして、少しずつ口の中に侵入していく。
まずは唇の中に。そして歯茎。
「はむ…ちゅる…んちゅ…」
「ん!?…んんっ!?…ちゅる…はぁむ…」
そして、ついには歯の奥へと入る。
中に隠れていた舌を引っ張り出して、舐め回す。
「はぁむ…はちゅ…ちゅぷっ…ん…櫂く…何…これ…美味…んむ…」
佐倉先生がエロい声を上げる。
…だめだ、我慢できそうにない。
「ちゅずっ!ちゅ…ちゅるるっ!はぁむ…はん、はん…」
「はむ…はちゅ…ちゅるるっ!ちゅ…ちゅぷっ!…んはぁ…」
オレも、そして驚いたことに佐倉先生も。
互いに舌の動きが激しくなっていく。
舌にちゅうちゅう吸い付いたり、舐め回したり。
口の中で出来る限りの事を全てやり尽くす。
ガタッ!
大きな音が鳴り、オレと佐倉先生はびくりと震えた。
心臓が飛び跳ね、背筋に寒気が走る。
オレと先生は、ギギギ、と錆び付いた人形のように音の方向に目を向けた。
そこには、扉から顔を出した3人の女子生徒が…
それに気が付いた瞬間、佐倉先生はオレから唇を離す。
つう、と出来上がった唾液の橋がエッチだ。
「いっいやっ!わ、わたっ!ちが、ちっ、ちがっ!」
ぼふん!と顔を真っ赤にほてらせ、ブンブン顔を振って否定する。
いや、その反応は嘘だろ佐倉先生…
かくいうオレも、顔が真っ赤になっているのがわかる。
「い、いやいや!ちょっとびっくりしたけど、恋人がいるのは悪い事じゃないって…」
「そうですよ。私たちは別に…ねえ。」
「めぐねえおっとなぁ!」
「ち、ちがうのにぃ…」
こんなはずじゃなかった…
オレは赤くなった顔が見られないように俯いた。