佐倉慈先生と共依存したい。 作:朝潮
「佐倉先生、ちょっといいですか?」
「なあに?櫂くん。」
「どうぞ。」
櫂が取り出したのは、綺麗に折りたたまれた紫の布。
慈は見覚えのあるその布を手に取り、広げてみる。
「これ…!私の服?」
「はい。洗っても取れなかった血は、毎日手洗いで少しずつ落としました。」
「すごい!綺麗になってる…!」
慈が、てっきり地下へと置いてきていたと思っていた服。
肩口にべったりと付着していた血は、綺麗さっぱり消えていた。
少し袖がよれてしまってはいるが…
それも言われなければ気づかない程度だ。
「これはお礼なんです。…佐倉先生。いつもありがとうございます。」
「櫂くん…ありがとう。」
慈へ気を使ってか何かを言われるような事はないが、巡ヶ丘の制服を着てから、チラチラと見られている気がするのだ。
現役の女子高生である彼女たちにとっては正装だが、慈にしてみるとただのコスプレでしかない。
見る人が見れば大興奮もののその衣服。慈は、裸の時と同様に今もなお毎日辱めを受けながら生活していた。
「ありがとう…本当に、ありがとう…」
慈は真摯にそう思った。
由紀を寝かしつけた慈は、未だマニュアルと睨み合う部員達を見つけた。
省エネと外へ光が漏れにくいようにと、蛍光灯ではなく小さなライトが付いていた。
そのこともあって、雰囲気が暗いように見える。
遅くまで起きている事もあるが、それ以上に暗い話をしているのかと心配になる。
「なにしてるの?」
「…佐倉先生。」
学園生活の部員達は慈も話に加える。
胡桃は特に進んでいない話し合いの内容を掻い摘んで聞かせた。
「隅から隅まで読んでみたけど…これじゃ、手がかりが少なすぎるな…」
「手がかりって言うと?」
「なんつーか、組織?薬とか、施設とか準備してたやつらのさ。」
「そうねぇ。」
もし櫂や慈が投与した薬がたくさんあれば、この中の誰が感染したとしても症状を抑えることが出来る。
更に、このウイルス?や薬を作成した組織が残っていればこの薬を複製、あるいは作成する事だって出来るはずだ。
本来三本あった血清も、櫂と慈が使った事により残りは一本。大切に使っていきたい。
と言っても、生徒達が感染するような事には慈が命を張ってでもさせないが。そしてそんな事は櫂が命を張ってでもさせない。
「
「えーと、確か…」
「ランダル・コーポレーション。」
あせあせと思い出そうとする慈。
しかし、それを櫂が止めた。
セリフを取られた慈はしょんぼり顔だ。
「巡ヶ丘を取り仕切る大手の製薬会社です。」
「この市の学校や病院。ショッピングモールなんかも大体がこの会社の傘下ね。」
「あ、聞いたことあるな。悪そうじゃん。」
「確かに…いかにも黒幕、って感じしますね。」
?マークを浮かべる慈や悠里と違い、櫂は胡桃の話へと乗った。
それを目敏く見つけた胡桃は切り返す。
「後輩。さてはなかなかのゲーマーだな?」
「ははは…」
本家通りなら仲間内に黒幕がいてもおかしくはないのだが。…まさかね。
「そもそも、学校の施設内に血清とかある時点でゲームっぽいと言うかなんというか。」
「確かに。そんなゲーム的なご都合主義が通るなら校内にポーションでも植えといて欲しかったけどな。」
続くゲーム談義に、これは終わらないなと思い話を逸らそうとマニュアルをペラペラと捲り、とあるページを開く。
──ランダル・コーポレーション本社。巡ヶ丘学院高校に、聖イシドロス大学。
開くのは、巻末の、連絡先一覧。
「マニュアルの最後に、連絡先が書いてありますよ。」
「ランダル・コーポレーションに、聖イシドロス大学、かあ…」
「大学もあるんですね。」
「大学…ここみたいに、誰かが生活してるかも?」
「その可能性はあるわね。」
「それに、もしかしたらここと同じように地下があって…」
「薬が置いてあるかもしれない、か…」
悠里たちは、揃って頭を悩ませる。
もしもの時のため、薬は欲しい。が…
やはりリスクが大きすぎる。
学内が彼らで溢れているだけならまだ良い。
少しずつ引き寄せたり間引いたりして時間をかけて安全にしていけばいい。
だが、もし生きている人が生存していたとして、そう簡単に薬を手に入れられるかが問題だ。
誰だって感染を抑えられる薬があるのなら持っておきたいと思うだろう。
一番怖いのは物を考えられる人間の方だ。
「進学か、就職か…」
「え…?」
「あ、いや。この2つの選択肢って、まさにそんな感じだなって…」
「確かに。まさにそんな感じだな。」
将来的に、このどちらか、あるいは両方に行くのは確定だ。
どこにどんな情報があるのか。そんな事実際に行って見なければわからない。
櫂は冗談めかして話を進める。
「オレは、なんとなく進学するのかなって思ってました。…胡桃先輩は?」
「あたしは就職がいいな。」
「意外です。胡桃先輩は、進学かと…」
───私、先輩と同じ大学に行きますから───
「…いや。やめたんだ。」
「へえ…どんな仕事を目指してるんですか?」
「永久就職して、お嫁さん…になったり、とか…」
それ、就職でいいのか…
櫂がツッコミを入れる前に、慈が大きく反応を見せた。
「だっ!?だだっだっ!誰のッ!?」
ガタン!と立ち上がった慈は、噛んだりどもったりしながら胡桃に詰め寄る。
その様は見ていてこちらが恥ずかしくなるほどの慌て振りだった。
急に雰囲気の変わった慈に、他のメンバーは驚く。そして、誰よりも早く慈の勘違いに気が付いた胡桃は慌てて訂正する。
「ち、違う違う!…別にめぐねえの彼氏を取ったりしねえって…」
胡桃は慌てて胸の前で手を振り、そんな意図がないことを告げる。
今の所、この世界で生きていることが確認できている男はここにいる宮本櫂ただ1人。
慈が慌ててしまっているのはそのせいどろうか。
「かっ!彼氏じゃありません!それにめぐねえでもありません!!」
「ごめんごめん。佐倉先生。」
胡桃が悪気なく謝る。
そんな中、当の本人である櫂は気恥ずかしく縮こまっていた。
内心嬉しさが勝っていて、勝手に上がる口角を抑えるのに必死だったが。
raraさん。最高評価、コメントありがとうございます。
ーありがとうございます!もっとエッチにしていきたいな…
danonvioさん。最高評価、コメントありがとうございます。
ーそんな恐れ多い!その行動力に大きな賞賛と感謝を。とても嬉しいです!
そして、津軽海峡さん。安心アンコールワットさん。ジョ力さん。
評価コメントありがとうございました。