※この作品はR-18です。

佐倉慈先生と共依存したい。   作:朝潮

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かわる
第33話


 

 

 

行き先は、バリケードと防火扉の向こう側。

そして階段を降りていき、2階へとたどり着く。

今日は、櫂の屍処理班への就職試験をしている。

 

「…じゃ、あたしは少し離れた場所で見てるから。」

 

胡桃の採点基準は4つ。

周りにも意識を払い、しっかりと不意打ちを警戒できているか。

自分以外のものへ上手く「彼ら」の意識を逸らせられるか。

確実に動かなくなるまで、油断をしていないか。

短い時間で…出来れば、数回で倒せているか。

 

…そして、隠し採点として、これから何度も「彼ら」を殺していく事に耐えられそうか。

 

少し行った先で、胡桃が足を止める。

そしてジェスチャーで「彼ら」がいたことを伝えた。

壁から顔を覗かせると、一匹が彷徨っているのを見つけた。

この時間から2階にいるということは、昨夜から学校に残っていたのだろう。

 

(お勤めご苦労様だな、まったく…)

 

こうしてもう一度本物を見ても、「彼ら」を大して怖い存在と思えなかった。

これは、とても危ない考え方だ。

櫂はその甘い考えを払拭したかった。

 

(そりゃあ恐怖に震えて生きるより、多少なりとも安心感のあったほうが楽に過ごせる)

 

だが、それで死んでしまっては元も子もない。

 

「…いけそうか?」

「はい。」

「危なくなったら、すぐに助けるからな。」

「ありがとうございます。」

 

3階にあるものだけで武器になりそうなものは少ない。

櫂が選んだのは持ちやすいギターだった。

弦を切れば音は出ないし、もともと棍のような形をしている。

持ち歩くのが面倒な事。そして重いという点を除けば良い武器だ。

 

…が、時間が経つにつれて櫂の腕力は日に日に増していっている。

ギターを片手で掴んでバットのように振る程度なら軽い仕事だった。

 

(後輩…)

 

胡桃は、櫂がどんな人間なのか。そして、下でどんな生活を送ってきていたのかを知らない。

が、「彼ら」と一度戦ったことがある事は聞いた。

それも、慈を守ろうとしての行動だったようだ。慈が惚気よろしく語ってくれた。

蛮勇とも取れるが、人のために自ら死地に飛び込む勇気は評価したいところだ。

 

カランカラン…

 

櫂は、事前に用意させておいた音の出るものを遠くへ投げる。

これは目当ての個体だけを引きつけ、周りにいる「彼ら」を引きつけない程度の物音が好ましい。

「彼ら」が隙を見せた瞬間、死角から飛び出す。

ギターを、腐った頭をめがけて、力任せにフルスイング。

 

勢いの乗ったギターは、「彼ら」の頭を正確に捉えていた。

ギターに殴打され、吹き飛び、そのまま壁とギターで挟む形となった。

頭がパシャア!と勢いよく潰れた。

 

「うへぇ…お前、容赦ないな…」

「…いえ。殺さないと、殺されるだけなので。」

 

隠れていた胡桃が顔を出す。

「彼ら」は心臓が動いていないようで、シャベルで斬りつけても人間相手よりかは血が出ない。

…が、今回櫂は頭を丸ごと潰してしまった。

動かなくなった死体からは、血がジュクジュク流れていた。

 

櫂は血で汚れた服を掴み、割れた窓から放り投げる。

ドシャ!と嫌な音が鳴り、その場には大量の血と嫌な臭いだけが残る。

櫂はこの戦い方は掃除が面倒だな、と他人事のように考えていた。

 

「…う、うん。合格…」

 

胡桃はドン引きしながらゴーサインを出した。

ここまで度胸と力があるなら、周囲への警戒を怠らなければ大丈夫だろう。

 

 

 

血飛沫が飛び、血を浴びてしまった櫂をシャワーに行かせた後。

胡桃は学園生活部部室に、授業中の慈を呼んだ。

部室にいるのは、胡桃、悠里、慈の人。

由紀には少しの間自主だと伝えて、教室に残してきていた。

 

「で、どうだったの?」

 

慈は早速、とばかりに胡桃に問いかけた。

心の中で順位をつけているつもりはないが…

慈としては、胡桃には悪いが櫂にはあまり危険なことをやって欲しくはなかった。

 

「うん。文句なしで合格。すぐにでも戦力になると思う。」

「っ!…そう。」

 

「でも、気になることが1つあって…」

 

悠里も慈も、不思議な表情を浮かべた。

合格ならば、何が問題なのか。

 

「アイツ、頭を吹っ飛ばしても、平気そうな顔してた。」

 

頭を吹っ飛ばした。

その言葉に、慈と悠里は顔を見合わせる。

櫂からは、そんな事ができる印象を一切受けなかった。

胡桃の仕事を手伝うにしても、せいぜいが胡桃の後ろから援護をする程度だと思っていたからだ。

 

「本当に、何も感じてないみたいな顔だったよ。あたしが言える事じゃないかもしんないけど、あまりにも淡々としてて、ちょっと驚いた。」

 

胡桃がふうと一息つき、暫し沈黙が流れた。

胡桃にとって櫂は、「後輩」から「少し心配な後輩」へと変わっていた。

あの化け物を殺すという事が、どれだけの苦痛なのか。

櫂は、本当に平気なのだと考えてもいいのか。

 

「…でも、逆に危険かもしれない。平気そうに見えるのは、実は溜め込んでるからかもしれないし。」

「…そうね。胡桃はどうなの?」

「あたしはそういうんじゃないから平気。もう、作業みたいなもんだよ。」

「そう…」

 

それはそれで、大丈夫ではないのではないか。

悠里は、そんな言葉を飲み込んだ。

 

しばらくして、部室の扉が開く。

入ってきたのは、シャワーを浴びてほかほかになった櫂。

 

「戻りました。」

「櫂くん!大丈夫?怪我してない?疲れてない?」

「あ…はい。僕は大丈夫です。」

 

そんな櫂に駆け寄り、第一に櫂の体の心配をする慈。

悠里と胡桃は、慈のあからさまな対応の違いに顔を合わせて苦笑いした。

2人が…否。由紀も含めて3人が見てしまったあの日の2人のキス。

この2人が生徒と教師を飛び越えた特別な感情を持っているということは部内の周知の事実となっていた。

 

「シャワー、使わせてもらってすみません。」

「いいのよ。あなただって、もう学園生活部の一員なんだから。」

「…ありがとうございます。」

 

悠里が、淹れたお茶を櫂の座るテーブルの上へと差し出した。

櫂はそれをふうふうと冷まして、口をつけた。

 

…こんなに湯気が立ってるのに、生ぬるい…?

 

櫂もまた、少しずつ変化を迎える。

 

 

重要な分岐です。彼らは、どのようにお出かけをするのでしょうか。もちろん、1人助ければ、他の方は助けることができません。

  • 真っ直ぐ向かう(圭救済ルート)
  • 寄り道をする(るーちゃん救済ルート)
  • ラジオをつける(放送主の女性救済ルート)
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