佐倉慈先生と共依存したい。 作:朝潮
第40話
「助けに行きましょう。」
それを見た慈の判断は早かった。
即断即決。逡巡も見せずに言い切った。
「僕も異論ないです。」
あれから、もう2ヶ月近い。
これを描いた人間はもう全滅している可能性もあるが…
リスクがないなら、様子を見に行かない理由はない。
「鞣河小学校…か。一応母校なので詳しいですよ。」
「本当?それじゃあ、案内よろしくね。」
「任せてください。」
…それにしても、よく考えたものだ。
物資調達に出た人員がもし感染してしまっても、歩く広告塔になってくれるのだ。
転んでもタダでは起きないというか、なんというか。
やはり、教師がいて、そいつがこの方法を考えついたのだろうか。
櫂たちが見つけたのは、小学生の「彼ら」。
もし、教師が教え子に遠征を任せているのだとしたら…
胸糞悪い。相容れないな。
「まだ生きているといいですが…」
「…え?」
アレが「彼ら」になっているということは、最低でも一度、遠征は失敗したのだろう。
襲われていなくても、餓死している可能性も高い。
「あれがいつ書かれたかわからないので何とも言えませんが、この人たちがまだ生きてる可能性は低いと思います。」
「生きてる。きっと、生きてるわ。」
「…そうですね。」
櫂は、慈には悪いとは思いつつもそうは思えなかった。
この世界には、もう希望なんて残ってない。
車を走らせ、鞣河小学校へと数分もしないうちにたどり着く。
最寄りの小学校というだけあって、かなり近い。
校門を抜け、「彼ら」が自由に歩き回っている校庭へと侵入する。
「ここね。行きましょ。」
荒くブレーキを踏んで、すぐにでも車を飛び出そうとする慈。
それを櫂が呼び止めて、まずは物資を車から降ろす。
今車の中にあるのは、櫂たちの食料として持ってきクッキーやブロック、ゼリー飲料などの栄養食品。
そしてコンビニから調達したお菓子が数袋。缶詰が20缶、ペットボトルが5、6本。
生存者がいた場合に備えて、コンビニの袋に入れて全てを持ち出した。
「1つ1つ教室を回っていきましょう。」
校舎へと入り探索すると、1階なだけあって「彼ら」も多かった。
そもそも、こんなところにいたら1日も持たないだろう。
となれば、上階の可能性が高い。
「足跡…」
階段にはいくつもの足跡が残されていた。
しかも、前後両方の向きのものだ。
つまり、一度外に出た後帰ってきている。
歩幅も向きもしっかりとしていて、意思を持っているように感じられた。
それも、どれも小さいものだ。まさに、小学生くらいの大きさか。
「きっと、この先ね。」
期待を高める慈に、櫂は不安を覚える。
これで、この先の人間が全滅していたら…
階を上がるたびに、防火扉を閉めていく。
近場にいた「彼ら」は、生存者がいた時のために窓から突き落とす。
これでかなり安全は確保できたはずだ。
続く足跡は、一番上の階の教室へと続いていた。
窓はどこから持ってきたのか、数枚の小さな板を木々で打ち付けて申し訳程度に補強されていた。
中の様子を覗こうにも、擦りガラスになっていて中の様子はよく見えない。
「開けるわ。気をつけて。」
「はい。」
慈は櫂へ一言声をかける。
櫂は一歩下がり、教室の扉を油断なく見つめる。
そして、前にいた慈がくぼみに手をかけ、横開きの扉を開く。
「っ!」
とある教室の扉を開けると、椅子と机でバリケードが貼ってあった。
これはあからさまに、人為的なものだ。
「誰かいますか!」
防火扉を閉めてきたため、一応声を出しても大丈夫のはずだ。
教室全体に届くように声を張り上げる。
「いませんか?」
慈も声を張り上げるが、帰ってくるのは静寂のみ。
やはり、中で餓死してしまっているのだろうか。
櫂は真相を確かめるため、押しのけようとバリケードをガタガタ動かす。
「…だれですか?」
か細く、問いかける声が聞こえた。
櫂と慈は、素早く顔を見合わせた。
「わたしは佐倉慈。別の学校で先生をしているわ。この中にいるの?」
「…」
そこから、声は途絶えた。
慈は慌てて力づくで押しのけて、教室へ入った。瞬間、鼻に付く腐った臭い。
すぐにでも出て行ってしまいたいほど、ひどい臭い。
こんな場所にずっといるだけで病気になってしまいそうだ。
床には何本ものペットボトルやお菓子の袋などが散乱している。
他にも、死体がそのまま放置してありどう考えてもそこが臭いの発生源だった。
そんな屍の中に、何人かの、壁に寄りかかっている「人間」がいた。
「皆、人が来たぞ。」
「せんせえ?」
「助けが来たの?」
「ぁ…ひと…」
中には、今にも死にそうな顔をしている子供もいた。
皮膚も、唇もパサパサ。顔色も土のように悪い。
その子を心配しているのか、他の子と比べて元気な男子が状況を伝える。
「こいつ、何も食べれなくて、どんどん元気が無くなってるんです。」
「先生、早く水を…」
「そうね!」
慈は最後に口を動かした少女の口へペットボトルを近づける。
すると、少しずつこくこくと飲み始めた。
それに倣い、櫂も慈が相手にしている子とは違う生徒を介護し始める。
自分で動ける子もいるようだが、栄養失調の症状が見られる子もいる。
顔色の悪い子供を優先して飲料を口に含ませる。
「うん、そうそう。…ゆっくり飲んで。」
これだけ衰弱していれば、食べ物を食べるのだってつらいだろう。
まずは流動的なものを口に含ませるところからだ。
時ノ家02さん。
評価コメントありがとうございます!
ーアンケは暫くないとは思いますが、次回は是非ご参加ください!
ホーリー36さん。くららんさん。カール・クラフトさん。ポリダンプさん。かたかたなるさん。
高評価ありがとうございました!
シャッターは防火扉で統一しました。
今まで気になっていて、これからもモヤモヤが続くのと
全てを変更する労力を天秤にかけて、修正した方が良いと判断しました。
報告くれた方、一括変換機能を教えてくださった方。
この作品を読んでくださっている皆々様。
ありがとうございました。
ところで、最近おばいとの掛け持ちをはじめまして…
これまで通り別作品含め何話も投稿するのが難しくなってます、すみません…
シフトが1日ない日は頑張ります。