※この作品はR-18です。

佐倉慈先生と共依存したい。   作:朝潮

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ほんとは時間に間に合ってたんです…
間違えて別作品の方へ投稿してたんです…


第41話

 

 

 

全員に、一通り水を飲ませ終わった。

教室内で生きていたのは、男子が1人、女子が3人。

男子の方がまだ比較的元気で、自分でペットボトルを持って水を飲めていた。

櫂と慈がそれぞれ助けた女子2人は、かなり衰弱していた。

もう一人の女子も弱ってはいるものの、水を飲んだ事で動けるようになっていた。

 

「みんなの名前を教えて?」

「わたし、木原みゆです。」

「みゆちゃん。よろしくね。私は…」

「さくらせんせえ?」

「そうよ。」

 

その女子…美優は、一番慈へと懐いていた。

少しツンツンした、クラスのリーダータイプだ。

 

ここは、佐倉先生に任せた方が話が早い。

そう考えた櫂は、水を飲ませている子の相手をしながら会話を全て慈へと一任していた。

水を飲んで、たまに咳き込むため目が離せない。その度に、櫂は背中をさすってやる。

 

「俺はたくや。」

 

続いて男子が。

 

「はなです。」

「るり…」

 

それから女子が答える。

花は慈が水を与えて、今も横で面倒を見ている。

瑠璃は、櫂が飲ませた水をいまでもチビチビと飲んでいる。

 

「…おにーさんは…」

 

黙っていた櫂に、瑠璃が小さな声で問いかけた。

瑠璃を抱くように体を支えていた櫂は少し驚いた。

 

「オレは櫂。よろしくね、瑠璃ちゃん。」

「うん…」

 

名前を聞いた瑠璃は、またすこしずつ水を口に含む作業に戻った。

さっきから何度も口をつけているはずが、ペットボトルの水は全然減っていない。

一気に飲むよりはこっちの方が良いだろう。

 

「みんな、ここから移動しない?ずっとこんな場所にいたら、病気になっちゃう…」

「やだ…」

 

一番に口を開いたのは、美優。

慈の手をぎゅっと握って、必死に抵抗している。

 

「みんなと、離れたくない…」

 

女の子は、大粒の涙をこぼし始めた。

先生や友達が目の前で死んでいくのは、この子達にはつらすぎる。

だが、ずっとこんな場所に、それも死体と一緒においておくわけにはいかない。

 

「皆、あなたに生きて欲しいって思ってるわ。」

 

…ただ、この人数を一度に移動させるのは無理かもしれない。

できるとしても、慈の小さな車では2度に分ける必要がある。

 

「でも、いなくなっちゃったら、あきらくんが…」

「あきらくんって、誰?」

 

新しく出た登場人物に、慈は首をかしげる。

 

「今、外にご飯撮りに出かけてる。」

「お友達?」

「うん。」

「あきらは、帰ってこなかった先生に変わって何回も食べ物を取ってきてるんだ。」

 

美優の言葉を拓也が引き継ぐ。

話し口調から、友達のような関係だったのが伺える。

 

「まさか、1人で?」

「うん。1人の方が逃げやすいからって。あいつ、木登りがうまいから。」

 

木登り、ねえ…

櫂は話半分に聞いていた。

確かに、「彼ら」には知能が見られない。

高い場所に登れば、「彼ら」は見失うかもしれない。

 

「でも、何日も帰ってきてなくて…もしかしたら…」

「やめてよ!」

 

頼むから喧嘩しないでくれ…

真摯にそう思った。

この子は大きな声や喧嘩が苦手なようで、

 

「もう大丈夫よ。私たちがいるから。」

 

慈は、荒れる子供達を抱いて慰める。

慈はこういう事をさせたら右に出る者がいない。

 

「じゃあ、教室だけでも移動しましょ?隣の教室なら、あきらくんが帰ってきた時もわかるから。…ね?」

「…うん…」

 

美優は、泣きながらも慈の提案を了承した。

慈は、指で美優の涙を拭う。

そして立ち上がり、生徒たちを教室の外へと誘った。

 

あの腐った匂いは、櫂にとってもつらいものだった。

慈が美優を説得してくれたことはとてもありがたかった。

 

「瑠璃ちゃん。立てる?」

「ん…」

 

櫂は、体に力の入らない瑠璃に気を使う。

瑠璃はやはり動くのは少しつらいようだった。

櫂がゆっくりと移動する瑠璃に付き添う事で、拠点の引越しは終了した。

隣の教室は多少荒らされているものの、さっきまでの部屋とは比べ物にならないほど綺麗だ。

 

「…佐倉先生。今日は、ここでへ泊まっていきましょう。」

 

窓から空を見ると、もう夕日が落ちて真っ赤に染まっていた。

夕方と朝は、一番「彼ら」の移動が激しい時間だ。

昼夜に屋内へと入っていた「彼ら」が、移動のために道路へと溢れ出す。

 

そして、夜は車の運転が適さない。

ヘッドライトを付ければ、光に反応した「彼らが」わらわらと寄ってくる。

櫂たちならば襲われることはないが、道を塞がれると厄介だ。

つまり、車を走らせるなら昼が一番都合が良いのだ。

 

「私たち、今日ここに泊まってもいい?」

「うん!」

 

どうやら許可は得られたみたいだ。

櫂は、じっとこちらを見つめてきた瑠璃の頭を撫でる。

それを合図に、こちらに体を預ける瑠璃はうとうとし始めた。

 

「このまま寝てもいいから。しっかりと眠るんだよ。」

「…」

 

瑠璃は櫂に寄りかかったまま目を瞑り、規則正しい呼吸を始めた。

他の子達は慈と何やら話している。櫂は、一番大人しい子で精一杯だ。

先生って職業は凄いな、と感心した。

 

 

 




たわしのひ孫さん。
最高評価コメント、ありがとうございます!

まるぼろーさん。gesyoさん。パイポさん。
高評価ありがとうございます!
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