佐倉慈先生と共依存したい。 作:朝潮
圭を守りながら、4階まで登る。
圭の護衛は、櫂たちが考えていたよりは難しくなかった。
そもそも、相手は足の遅くて鈍感。
囲まれたり追い詰められたりしなければ逃げるのは容易だ。
「こっちです!」
櫂と慈は、圭に先導されながらモール内を駆け上がる。
時に物を壊して引きつけ、時に邪魔な「彼ら」を殺し。
そこまで苦なく、櫂たちは系が暮らしていたと言う一室へと辿り着いた。
「ここです!ここに美紀が…」
隠れながら移動していた圭は、2人からパッと離れて1つのドアへと向かった。
この辺りにはいないようだから良いが、圭の行動はどこか危うい。
2人は慌てて圭へと続く。
「…あれ?開かない…」
ノブをガチャガチャ回し、扉を押し込む圭。
がしかし、扉は開かないようだ。
ドアの小窓から見るに、どうやら奥にバリケードとして大きな荷物が置いてあるようだ。
「美紀!お願い、開けて!」
圭が大声を出してしまったことに、2人は焦った。
この声で、「彼ら」を呼び寄せてしまうかもしれない。
「圭!待ってて、今開けるから…」
中で、何かガサゴソと音が聞こえる。
バリケードをどかしているのだろう。
小窓から、荷物が動いているのが見える。
「やっぱり無理だったんでしょ?だから、やめた方が良いって言ったのに。」
「違うよ、美紀。生きてる人、連れてきたよ。」
「…嘘でしょ?」
2人は知る由もないが、圭がここを出たのはたった十数分ほど前。
部屋の中の美紀なる女生徒が不自然に思うのも仕方のない事だった。
「あなたが、圭さんのお友達かしら?」
「ほ、本当にいたんだ…!」
慈が話しかけたことにより、中の人物が驚いているのが伝わる。
はたして、荷物をどけて現れたのは…
「櫂くんダメーーーーっ!!!」
瞬間、慈がビターン!と櫂の目に平手を打った。
櫂の痛覚は鈍化していて、痛くはなく、突然暗闇に包まれる。
櫂にしてみれば、突然のことで何が起こったのか分からなかった。
が、櫂の目には一瞬、ノースリーブのアンダーウェア。ガーターベルトに、その下のショーツまではっきりと写っていた。
一瞬すぎて顔までは見えなかったが、体と声が女性的なのできっと女の子なのだろうことは想像できた。
「みっ、美紀!ちゃんと服着て…!」
「うっ、うん…」
櫂と美紀は、互いに顔を赤く染めるような初対面となった。
「巡ヶ丘の人…ですか…?」
「あ、はい。1年の宮本櫂です。」
「後輩なんだ!私たちは2年だよ。」
「ちょっと、口挟まないでよ…それに、リボンで学年わかるでしょ。」
「あ。」
美紀がコツンと圭の腕をつつく。
圭は笑いながら、ごめんねと小さく謝った。
側から見るに、とても仲が良さそうな2人だ。
「私は直樹美紀。圭の言う通り、2年です。」
光に反射して輝く、パールホワイトの目に優しい髪が印象的だ。
櫂は初見じゃどっちが名前なのかわからないな、と思った。
「私は佐倉慈。巡ヶ丘で国語教師をしていたわ。」
「あ、先生だったんですね。」
教師という言葉に反応して、美紀が崩れていた姿勢を直す。
「いいの、いいの!先生って言っても、そんなに固くならないで欲しいな。」
「そうだよ美紀。めぐねえは生徒と仲良い事で有名なんだから。」
「あの、祠堂さん。めぐねえじゃなくて…」
「そのめぐねえって何?」
「えー!3年担当のめぐねえだよ!知らない?」
「知らない…」
ヒートアップする圭に、若干引き気味な美紀。
「美人の先生がいるから3年の国語が楽しみだ〜って皆言ってたよ。」
「私、そういうの興味ないし…」
「がーん!」
慈は一人、思わぬところでショックを受けていた。
櫂はそんな慈の背中をさすって慰める。
僕はいつでもどんな状況だって佐倉先生の味方ですよ…
「ところで。」
ガールズトークがひと段落したと察した櫂は、話を軌道修正させる。
「俺たちは今、巡ヶ丘の学校に住んでます。他に3人の生徒がいて、今日俺たちはここまで物資調達に来てます。」
「学校に?」
「ええ。そこで生き残った生徒同士、協力しあって生きてるの。よかったら、あなたたちも学校へ来ない?」
「…って事なんだけど、美紀はどうしたい?私は行きたいけど…」
後に、美紀が嫌なら、と続いた。
少し考えるそぶりを見せる美紀だったが、すぐに首を振る。
「やっぱり、ここを離れるのは危ないよ。」
「でも、私も外に出られたし…そこからは、先生の車があるから安全で…」
「死んじゃったらお終いなんだよ?」
美紀の言っていることは、櫂にもよくわかった。
今の美紀は、まるで地下シェルターから出られなかったあの日の櫂のようだった。
「…美紀は、ここで一生暮らしていくつもりなの?」
「それは…」
言葉に詰まる美紀。
だが、決断は揺らいでいない様子。
「美紀。学校には電気もきてるし、浄水槽もあるから水も綺麗なんだよ。」
「確かにリターンも大きいけど、リスクはもっと大きいよ。」
「そんなこと言ってたら、一生ここから出られないじゃない。」
「でも、私、あんな死に方、したくないよ…」
話は平行線。
二人の意見は真っ向から食い違っていた。
「…私たちは、もし2人が学校へ来られなくても、精一杯の援助はするつもりよ。食べ物とか、消耗品も運んできてあげるわ。」
そんな中、慈は美紀を擁護するような提案を持ちかけた。
これには、櫂や圭だけでなく美紀までもが驚いていた。
何を考えているのか、と櫂は慌てて慈へと耳打ちする。
「…良いんですか、そんなこと言って。学校で保護した方が良いんじゃ…」
「無理矢理連れては行けないもの。美紀さんがそういう選択をするなら、私はそれを尊重してあげたい。」
…そうだ。佐倉先生とは、こういう人物だった。
櫂は、慈の考えを決めつけていたことを恥じた。
笑う宝箱さん。
最高評価、コメントありがとうございます!
ーがっこうぐらし作品、もっと増えると良いですね。良作増えろ〜!
ポリダンプさん。粉みかんさん。
いつも高評価ありがとうございます!
モチベになってます。