※この作品はR-18です。

佐倉慈先生と共依存したい。   作:朝潮

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おはよう
第6話


 

 

 

この深い睡魔に誘われるがままに、このまま眠ってしまいたい。

ちょうど、世界一気持ちの良い布団に包まれているのだ。

このまま微睡みの中、深い眠りに寝入ってしまいたい。

 

…しかし、股間のネバっとした嫌な感触がそれを許してくれなかった。

櫂は、もはや抱きついているといっても良い慈から離れて、股間の洗浄を行なった。

 

 

 

地面に直接寝転がされていた慈は、寝苦しさを覚えて目が覚めた。

 

「うぅん…」

 

状況を理解できない慈は、眠気眼でもぞもぞと動く。

慈は寝起きがあまり良い方ではなく、朝が弱かった。

手足の擦れるような淡い痛みと動き辛さに違和感を覚え、しっかりと体を起こす。

数秒うとうとと微睡みの中で船を漕ぎ、意識を覚醒させる。

 

「きゃあっ!?」

 

慈は、ようやく自分の置かれている状況に気が付いた。

ショーツは残されてはいるものの、服とブラジャーを脱がされている。

更には、手と足がロープのようなもので結ばれ、拘束してあった。

これでは満足に動くことができない。そもそも、立ち上がるだけでも大変だ。

 

「な、なに…?これ…」

 

慈には、こんな状況になった経緯を思い出せなかった。

自分がこんな状況に置かれている理由が全く理解できない。

 

「…おはようございます。佐倉先生。」

「っ!?」

 

慈は人の声を認めると、咄嗟に結ばれている手で胸を覆い隠す。

手首のあたりで纏められていたワンピースがぱさりと落ちる。

その服を胸の前に持ってきて、せめて大事な部分だけでも隠した。

 

「だれ…?」

 

慈は、自分の服を脱がしている時点で相手がまともな精神状態ではないと判断した。

声のした方向をキッと睨みつけて、反抗心を前面に押し出す。

しかし、相手が巡ヶ丘学院の制服を着た幼い少年だという事に気が付き毒気が抜かれた。

 

「あっ…そ、その…ぼ、僕は1年の宮本です…」

 

櫂は、慈が起きるまで部屋の隅で体育の時にするような三角座りをして、慈の寝顔を見て時間を潰していた。

なにをすることもなく、死にながら生きてきた櫂にとって、慈の寝顔を見ているそれだけで至福の時間と思えた。

慈は、そんな櫂が自分を裸にひん剥いて手足を縛っている意味がわからず、混乱していた。

そもそも、学園生活部以外の生存者がいる事や、自分が全く知らない場所にいることにも理解が追いついていなかった。

 

「な、何でこんな事…」

「昨日のこと、覚えてないんですか?」

 

昨日のこと?

と、慈は思い返す。そういえば、昨日何があったのか思い出せない…

 

「うっ…」

「大丈夫ですか!?」

 

櫂は、突然頭を抑えてうめき声をあげた慈へ咄嗟に声をかけた。

それを、慈は手で制して心配いらないことを伝える。

キリキリと頭が痛み、ゆっくりと昨日の記憶がフラッシュバックした。

 

 

 

…あの日。久しぶりの…こんなことになってしまってから初めての雨が降って。

それを嫌ったのか、雨なのにしっかりと「登校」してきていた「彼ら」は校舎になだれ込んできた。

「彼ら」が生前の記憶を模倣しているのにはうっすら気がついていた。

それなのに、私はこんな単純なことに気がつかなくて。

 

バリケードが破られて、何百人もの「彼ら」が押し寄せてきて…

それに気づいた頃には、もう手遅れになっていて、屋上まで逃げることすらできなかった。

あの子達を、防音のため頑丈に作られた鍵のかかる、放送室に押し込んで…

 

「うっ…ううっ…」

 

ぽた…ぽたぽた…

いつの間にか慈の瞳からは、自分の情けなさに涙が溢れていた。

少し考えれば気づけたはずなのに、あの子達を危険に晒してしまった。

 

「佐倉先生…」

 

櫂は、泣いている慈の事が不憫に思えてしまった。

大人でも、こんなに泣いてしまうことがあるのか、と。

櫂は、慈の涙が止まるまで背中をさすっていた。

 

「先生が、傷付いたままこのシェルターに入ってきたんですよ。覚えてませんか?」

 

慈は、なんとか自分が感染してしまうところまでは思い出せたが、覚えていたのはそれまでだった。

しかし、状況からしてここが自分が向かったあの書類に書かれていた「地下区画」だろうということを理解した。

そして、彼がここで生活していて、自分はそこに感染した状態で入り込んでしまったのだということも。

 

「…でも、あれ…私、確か噛まれて…」

 

そう。慈はその後感染者に傷を付けられ、自我すらも怪しくなっていた。

最後に残った意識を、なるべく学園生活部から離れるために使ったはずだった。

その朧げな記憶が確かなら、慈はこうして起き上がり、喋り、泣いている事はおかしい。

そもそも、あれは性の悪い夢だったのではないか。そんな考えが頭を過ぎった。

 

「血清を使いました。」

 

しかし、そんな希望は櫂の発言によりすぐに打ち砕かれた。

 

「血、清…?」

「はい。この場所には色々な薬があるみたいで…」

 

櫂は、慈にこの場所のこと、そしてランダルコーポレーションという大手企業が作った試作品である血清のこと。

知り得るすべての情報を慈に伝えた。

 

 

 

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