※この作品はR-18です。

臓硯憑依もの   作:ぴんころ

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第十一話

「……さすがにこれは予想してなかった」

 

 俺が想定していたのは『桜がメドゥーサ以外を召喚する可能性』であり、ましてやこんな可能性など考えることもなかったのだが。

 

「まあ、ありえないことではないか」

 

 ああ、そうだ。別にありえないことではない。

 遠坂凛が父親がギルガメッシュ召喚に使った触媒を発見する可能性とどちらが高いのだろうか、などと考えているあたりまだ冷静ではないのだろうが、それでもきっと俺は冷静だ。

 

「まさか衛宮士郎が召喚したのがセイバー・リリィだとか。一体誰が想像してるよ」

 

 衛宮士郎というマスターの元、まともに契約を結んでいないためにステータスが低下していることは間違い無いのだが、その状況下でランサーを撃退したのはまさしく百合騎士、俺の知るセイバー・リリィと呼ばれる類のサーヴァントだった。

 

「……まあ、撃退とは言ってもランサーが退いてくれただけなんだけどな」

 

 令呪の効果で戻っただけであり、きっと次の戦いの折には本気のランサーが見られることだろう。そうなればセイバーの敗北は必至。とは言え。

 

「そんなことをさせるつもりはないがな」

 

 言葉にして、こちらもこちらで準備を整える。

 明日に行う予定である真アサシンと呼ばれる存在の召喚。外法らしいが、臓硯の知識の中にはちゃんとある。よって召喚に関しても特に苦労することはないだろう。召喚に成功してもあいつがこちらをマスターとして認めてくれるのかは謎だが。

 

 

◆

 

 

「さて、アサシン。俺はお前のマスターとしてふさわしいか?」

 

 翌日、召喚に成功したアサシン。それは未だ俺のサーヴァントではない。召喚したのは俺でありながらも、触媒には”キャスターが召喚した”アサシンのサーヴァントである佐々木小次郎を使用したのだ。つまり、未だ彼女に縛られているまま。

 だから俺は一人で部屋の中で呟く。

 彼が俺のサーヴァントとして活動するために必要となる、キャスターとの契約破棄が行われるまでの間、俺にできることは一つしかないのだから。

 

「さてと、キャスターを捕らえる準備をしておくか」

 

 蟲を放つ。正直、セイバーがセイバーではなくてセイバーリリィだったためにちょっと予定が変更されている。『王の選定のやり直し』なんてことを望んでいないであろう若かりし頃のアーサー王なのだ。そんな相手が焦ったかのようにして勝ちに行くと楽観することはできない。

 アサシンを召喚したことで、いいやそれよりも先にアーサー王ではなくセイバーリリィが召喚された時点で、俺の知る『Fate/staynight』の物語を元にした作戦はほとんど通用しない。

 アサシンを召喚したのはいいが、これでもしも『衛宮士郎が桜以外を選ぶ』ことがあればそれこそ俺の知らない物語だ。

 一応、昨日衛宮士郎のことを監視していたので。イリヤスフィールに敗北してアヴァロンによって復活したことも知っている。ただ、遠坂凛と衛宮士郎の間の会話までは聞き取れなかった故に『遠坂凛と衛宮士郎が手を結んだか』まではわからない。

 つまり、衛宮士郎が一人で夜の見回りをしてキャスターにたどり着くかどうかはわからないということ。

 

 なのでアサシンに葛木宗一郎を虫の息にさせることでキャスターとの契約を破棄させることを持ちかけさせる。その上で潰す。原作のようにそれでキャスターを殺してしまえば、こちらの手駒がさらに増える。ライダーとはほとんど敵対関係と考えてもいいだろうから、この時点では二騎が配下に入るわけだが、逆に言えばその程度だ。

 

「マジかよ……」

 

 蟲を送りながらもアサシンと視界を同調させてキャスターの姿を捉える。

 そこに見つけたのはキャスターの姿なのだが、俺の思っていたキャスターとはまるで違う……というわけではないが確かに違う存在。

 

「キャスターまでリリィとか……」

 

 さすがにこれは想定していなかった。……これは、キャスターとの契約を破棄できるのだろうか?

 アサシンとの視界を共有していると、やはりキャスターが少女時代(リリィ)であるとは言え神代の魔女であることが幸いしてか、彼女自身の魔術の腕で契約を解除させることに成功した。

 そのまま回復するよりも早く彼女の霊格を砕いたことを確認して、心臓に埋め込んだ第三次の聖杯の欠片を介して大聖杯から魔力を引き出す。「この世全ての悪」も同時に己の心臓を通じて引き出され、その思考を悪性のそれへと染め上げて行く。

 今はまだ桜とは違って理性は働くようだが、それもどこまで保ったものかわかったものではない。

 今のうちに、やらなければならないことを済ませる必要がある。

 

「さて、キャスターを喰らい尽くせ」

 

 ほぼ死体と化しているキャスターの中に蟲が入り込んで行く。死体を犯す趣味はないが、その周囲をも蟲が取り囲み、キャスターの体を俺が魔力とともに引き出した泥を使ってキャスターを取り込んで行く。

 

「……明日はキャスターを完全に支配下に置くことに集中するか」

 

 おまけで慎二を助ける方向性で。

 俺の記憶が正しければ、そして衛宮士郎が遠坂凛との同盟を結んでいなければ、慎二がライダーを衛宮にけしかけてぼろ負けする日のはずだ。

 それまでにはキャスターをしっかりと支配下に置いておきたい。

 自らの中にとても大きな何かが入り込んできたことを理解して、それが痛くて、けれどこれも必要なことなのだと理解していたから、どうにか1回目のこれは耐えることができた。

 これに耐えていたとなると原作の桜は化け物だな、と思いながら今日は一旦意識を落とすことになるのだった。




セイバー:アルトリア[リリィ]
アーチャー:エミヤ
ランサー:クー・フーリン
ライダー:メドゥーサ
キャスター:メディア[リリィ]
アサシン:佐々木小次郎→真アサシン
バーサーカー:ヘラクレス

うん、普通の第五次ですね。え? キャスターのマスターのアトラムくん? ……ああ、あいつはいいやつだったよ……(憐憫を込めた眼差しでパンケーキを見る)
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