※この作品はR-18です。

臓硯憑依もの   作:ぴんころ

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第十三話

「初めまして、だな、セイバーのマスター。いつも俺の孫が世話になっているようで」

 

「……孫?」

 

 キャスターに命令したのは『柳洞寺にて街中から魔力を集める』こと。要するに原作のキャスターと同じことをするように命令した。ただ、これまでもやっていたらしいので結局は一日二日程度やらなかっただけということになるのだが。

 そうして一日が過ぎて、二日が過ぎて、その間に魔力補給のために人間を襲わせていたところを見つかったらしい慎二がぼろ負けして帰ってきて。アサシンに蟲を与えておくことでランサーと戦った時に桜ルートと同じような結末になるよう調整して。

 

 そうして今日、衛宮士郎が柳洞寺にまでやってきた。

 

「ああ。俺は間桐臓硯。お前の友人である慎二と、後輩である桜の祖父だよ」

 

 彼の驚きも最もだろう。今の俺の肉体は蟲によって構成されたそれではない。

 つまり若かりし頃の間桐臓硯の肉体である俺を見て、慎二の父親であるとは思えても祖父であるとは思えないに違いない。

 

「あんたが慎二と桜の爺さん……?

 ……いや、いいさ。それなら、キャスターに人を襲わせるのをやめてくれないか」

 

「なぜ止めねばならん」

 

「え……」

 

「これは戦争だぞ。勝てるように最大の努力をするのは当然の話だろう。……貴様の父親がそうしたように」

 

 言葉と同時に、姿を隠したままのキャスターが転移魔術を完成させる。対象は俺と衛宮士郎。

 俺の記憶が正しければセイバー・リリィの対魔力はBランク。大魔術などでも傷つけるのは難しいが、それならば俺と衛宮士郎を対象にして魔術を扱えばマスターとサーヴァントで分けることなど難しくもない。

 

「マスター!」

 

 父親と同じと聞いて、衛宮士郎が動揺した隙を狙っての魔術。彼を助けようとするセイバーの動きは影に隠れたアサシンが放つ暗剣によって邪魔される。

 バーサーカーを倒すにはセイバーの力がいるが、これが通常のセイバーではなくリリィであるために実力と武器に不安が残る。よって、キャスターを死なせずにセイバーを黒化させる必要に駆られている。キャスターによる支援があればきっとどうにかなると思うから。

 

 そんな思いで、とりあえずまずはセイバー組を脱落させることから始めることにした。

 

 

◆

 

 

 衛宮士郎とは、第五次聖杯戦争における最大の不確定要素である。

 それは原作を知るからこその懸念であり、こいつの処理は早めにしておきたいと思うのはきっとこの世界のことを知る聖杯戦争参加者の総意だろう。こいつにつけば死なないと思うバカはきっといない。死ぬタイミングはたくさん存在する。

 よって俺は、最初から本気で殺しにかかっていた。

 

「とっとと死んではくれんか?」

 

「誰が……!」

 

 衛宮士郎の持つ木刀が強化され、飛びかかる蟲を潰していく。数と大きさの影響でほとんど意味を為してはいないが、それでもこちらに近づけず逃げるしかない状況を少しでも長く続けているということには意味がある。

 俺は本来の臓硯とは違って自分の手で聖杯の泥を操る必要性がある関係で、そちらも使用している間は彼ほど多くの蟲を使役することができない。それが、本気で殺しにかかっているのに未だに殺しきれていない理由だった。

 蟲にも意識を向けながら、泥にも意識を向ける。面倒なことながらも、衛宮士郎を逃すわけにはいかず、サーヴァントをどちらも失うわけにはいかない状況であるがためにやめるわけにはいかない。

 同じサーヴァント、同じ条件下で戦ったとしても勝敗が定かではない聖杯戦争という状況、さらにそこに俺の知るものとは違うリリィという不確定要素が二つもある。そのためどのような結果になるのか判断がつかず、自らにとって最良の結果に少しでも近づけたいがために、泥に意識を割かないという選択肢はない。

 けれどこのままでは、俺が衛宮士郎を殺すよりも先にライダーがこの場所を嗅ぎつけてくるかもしれない。そうなれば目的を果たすことができない。

 

「仕方ない、か」

 

 ありがたいことに、セイバーは対魔力のランクがB。大魔術などでも傷つけるのは”難しい”レベルであって不可能なわけではない。つまりはキャスターの魔術ならば通用する可能性がある。彼女とアサシンが抑えてくれることを信じて数秒だけ泥に割いていた意識をこちらに向ける。

 

「死ぬといい、衛宮の倅よ」

 

 俺たちが今いる部屋は柳洞寺の一室ではなく大聖杯が存在する大空洞。

 大聖杯が起動を始めていないとはいえ、サーヴァントが取り込まれているわけだから多少は俺たちが魔力を使用しても問題なくバレないであろう空間である。

 汲み上げた魔力を泥として放出する。この空間の唯一の出口(入り口)を泥で封鎖し、さらには衛宮士郎の周囲に泥を纏った蟲たちを飛び回らせる。

 細かな蟲が沢山飛び回っているだけなので無論穴はあるのだが、無数の蟲が飛び交う関係でその穴は人間では通ることができない程度のもの。衛宮士郎がアヴァロンを使用できるのであればともかく、今の彼はその存在すらも知らないだろう。

 

「このっ……!」

 

 蟲を木刀で潰しながら、けれど潰すのとほぼ同時に他の蟲が逃げ場を奪っていく。

 

 彼の奮戦も虚しく生存圏は奪われていき、そして衛宮士郎はあまりもあっけなく死んでいた。




知らないうちに消えてたランサーくん、南無。幸運Eだからね。描写すらされない不幸を嘆くといい。
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