※この作品はR-18です。

臓硯憑依もの   作:ぴんころ

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第二話

 桜が間桐家にやってきてからすでに一年が経った。つまり、今年のどこかで間桐雁夜が帰ってくるということ。

 間桐臓硯としての知識と記憶があるために帰ってくるとわかりきっているあいつに対して怒りが湧くが、それでも俺の目的を考えるにあいつが帰ってきて聖杯戦争に参加するのをみすみす逃すのは惜しい。

 幸いにもそこに関してだけは教本(原作知識)があるので、頼りにさせてもらうとしよう。

 

「臓硯はどこだ……!」

 

 ……来たようだ。

 さて、俺がこの一年で演じるための努力をして来たかつての間桐臓硯。それがどれほどの完成度なのか、かつての臓硯をよく知る者の目を騙すことができるのであればそれでよし。できなければ勢いでどうにかする。

 こつこつと杖をつきながら歩いていくと、そこにはまだ蟲によって改造されていない頃の間桐雁夜の姿がある。

 

「その姿、二度と見せるなと言ったはずだがな」

 

「間桐が恥さらしな真似をしていると聞いた」

 

 どちらも、久方ぶりの挨拶などするような柄ではない。

 ゆえに話は最初から本題で、だからと言って俺から彼に対して”聖杯戦争に参加しろ”と言い出すのはおかしな話だ。すでに彼の出奔を許した身なのだから。

 よって、まずは桜が間桐の家に引き取られたという事実に対して怒りを隠しきれない雁夜が言葉を放つ。

 

「遠坂の娘を養子にしたそうだな。そんなに間桐の家の存続が大事か?」

 

「それを貴様がいうか? 鶴野よりも魔術的素養のあった貴様が間桐を継いでいればこのようなことにはならなかったであろうに」

 

 暗に、お前が悪いと言葉にした。この言葉は全くの嘘ではない。

 雁夜に魔術的素養があったのは事実だが、それを投げ捨ててしまったからこそ間桐の家は他から入れざるを得なくなった。

 そして、間桐の家がどういった家なのかを理解しながらも投げ捨てた……いいや理解しているからこそ投げ捨てた雁夜は、投げ捨てる前にもう一度よく考えなければならなかった。

 己が受け継ぐのが嫌だからと投げ捨てたそれは、果たして惚れた女やその娘に対して危害を及ぼさないと言い切れるものだったのか。

 

 そこからは基本的に俺の知る限りと全く変わらない内容。

 間桐の悲願である聖杯に関しては自分が持って来るから桜を解放しろ、と。

 

「……ふむ、よかろう。貴様が持ってこられるのであればな。

 だが、落伍者でしかない貴様よりも桜の子の方が期待できることには変わりない。

 貴様が聖杯を持って来るまでの間、桜に対して間桐の魔術を施すことをやめるつもりはないぞ」

 

「なっ……!」

 

「それとも何か? 貴様は自分の価値がそれほどまでに高いとでも思っていたのか?」

 

 ぶっちゃけた話、桜に対しては普通に魔術を教えている。

 間桐の魔術に適した肉体にするために食事に間桐の蟲をすりつぶして粉末にしたものを混ぜていたりするが、今のところ間桐の魔術関係でしているのはそれだけであり、間桐の母体としての完成は臓硯の知識を鑑みるに進み具合は遅々としていると言って問題はないだろう。

 まあ、死ぬよりもマシだ。ゆったりと進めていくとしよう。

 

「……わかった」

 

 絞り出すような雁夜の言葉。

 男を犯して喜ぶような趣味などないが、うざったいこの男を甚振ることができるという一点で諦めて、この男を一年で突貫の魔術師として仕上げてやるとしよう。

 その間にこちらも間桐臓硯の目的(聖杯の獲得)とはまた違う、俺自身の目的のためにやらねばならないことをやっておかなければ。

 

 

◆

 

 

 雁夜を魔術師として仕立て上げるのに使用することができたのは一年。その間に、こちらもやりたいことの準備をすることができた。

 あとは雁夜に召喚をさせるだけだ。

 雁夜が召喚したのがバーサーカーのランスロットであれば、問題など何もない。

 大前提となる部分には何も問題はなかったことだけがはっきりとする。

 少なくとも、魔術師を一名操って時計塔に潜り込ませているためにケイネス・エルメロイ・アーチボルトの参加、ウェイバー・ベルベットが聖遺物を盗んだことはわかっている。遠坂時臣が言峰綺礼を弟子にしたこともわかっているために、あとはキャスターのマスターだけ。

 

「雁夜よ、この一年よく耐えた。召喚の呪文はちゃんと覚えてきたであろうな?」

 

「……ああ」

 

 くかかと笑う。

 この一年でこんな風に笑うことにも結構慣れた。

 

「……いくら魔術師程度にはなることができたとは言っても、お主が魔術師として弱小であることには変わりない。故に、召喚の呪文に一節追加してもらう」

 

 無論、追加するのは狂化の呪文。

 魔法陣をはじめとした残りの準備に関しては整えてある。

 すでに半身が不随となっている今の雁夜であればそれすらも不可能に近いだろうから。

 外典(Apocrypha)のように円卓の欠片でもあれば話は簡単だったのだが、今の間桐家ではそのようなものを手に入れることは望むべくもなく。

 鶴野を先に殺しておいてよかったと思う。あいつが生きたままだと金についてどうのこうのと言ってきそうだったから。もしかしたらお金が足りなくなる可能性もあったのだから。

 

「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者」

 

 あとは、時期もよかったというべきだろうか。

 あの封印指定の魔術師がタイミングよく金に困っていたおかげで、間桐の財産でどうにか目的のものを手に入れることはできた。

 あとはアインツベルンのホムンクルス……今回の聖杯戦争においてはアイリスフィールを手に入れることができればそれで第四次の目的は達成することができる。

 それを成し遂げるための計画は、バーサーカーのランスロットが雁夜(間桐)によって召喚されることを前提に作っているために、この部分はもはやガチャと言ってもいいだろう。

 バーサーカー(ランスロット)が出るか、それ以外が出るか。

 その答えは。

 

「汝、三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よーーー!」

 

 雁夜の詠唱が終わるとともに現れた人影の姿によってはっきりとした。

 

「……勝った」

 

 ぼそりと、雁夜には聞こえない程度の声で呟く。

 果たしてそこにあったのはバーサーカー、ランスロットの姿。

 

 これで、目的を達成することができる。

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