「初めまして、アインツベルンの聖杯。貴様の身柄、この間桐臓硯が貰い受けた。すでに逆らえんと思っておくがいい」
「……そう、あなたが」
言峰綺礼に対して聖杯と化す前のアイリスフィールの肉体を渡し終えて戻ってきた後、”間桐臓硯”の肉体のまま蟲蔵の奥に行けばアイリスフィールはすでに目覚めていた。気絶するまで犯され、それを新たな蟲に犯されることで起こされ、全ての蟲が満足するまで続けたアイリスフィールには体力なんて欠片も残ってなどいなかったが、それでも冬の聖女の生き写しは、気丈にこちらを睨んできていた。
裸で、汚辱にまみれた姿であってもその気高さは変わらず、気の弱い人物であればそれだけで失神すらしかねないほどの怒りと侮蔑を向けてきているのだが、こちらはそれに対して特に思うことはない。間桐臓硯の知識は、記憶は、思い返しただけでその世間知らずの姫君の睨みを超える恐怖がいくつもあったために。むしろこの女性が最終的にこちらに対して媚びた視線と言葉、そして仕草で快楽を求めるようになる未来を思えば、それがあまりにも楽しみで。
「無駄だ」
「ん……ひぃっ!?」
すでに聖杯の外装だった元々の肉体から魔術回路は移植しているため、それに伴う形で新しい肉体の魔術回路も励起している。それを知ってか知らずか、おそらくは肉体が変わったことすら知らないまま、これまで通りに魔術を使用しようとしたのか、彼女の体から魔力の高ぶりを感じた。けれどそれは発動することはなく、アイリスフィールの肉体はびくりと震える。その時に漏れた声は快楽にまみれた俗物的なもので。そして快楽を貪った彼女は今の状況を不本意ながらにも理解しているのだろう。
「あな、た……! 私の体に何を……!」
「なに、刻印蟲を植えつけたにすぎんよ。貴様の魔力を吸って活動することは間違いないが、それで浅ましくも快楽を味わったのは貴様の肉体。アインツベルンはとんだ淫乱を作り出したものだな」
お尻の中の刻印蟲。それが彼女が魔力を行使しようとしたことに気がついてその魔力を貪り食らった。それによって活発になった刻印蟲の活動で彼女が快楽を感じ取ったところまでは俺の管轄ではない。……さすがに1日にも満たない時間でここまで快楽を貪るようになるとは思わなかったが。本来は激痛と魔術に回そうとした魔力を吸われることになって魔術を使用できなくする程度だったのだ。
そして同時に、刻印蟲も本来の用途から改造されている。本来ならば魔力を食らうだけのそれだが、彼女の胎内にいるのはその魔力を使って『生命維持に必要な成分』を錬成する蟲。彼女が魔術回路を持ったままの限り、彼女は刻印蟲に魔力を吸われ快楽を味わうことになるためこの部屋から出ることはできず、彼女が魔術回路を捨てれば魔術を使えないために工房からの脱出は不可能。
詳しい効果までは知らないだろうが、少なくとも己の手での脱出は無理だと悟ったのだろう。わずかに瞳に恐怖が混じる。ただそれよりも、自分の言葉は彼女の逆鱗に触れたらしい。恐怖よりも大きな怒りが瞳は浮かんでいる。
「ふざけないで……!」
「ふざけてなどいないさ。俺は、少なくともこの時点では痛みと魔力不足による脱出ができないと踏んでいた。ユスティーツァという聖女を知っていたからな。だが、貴様はたかが1日も犯されていないにも関わらずすでに蟲を受け入れる体になっている。これを淫乱と言わずになんという」
「……っ!」
もはや殺意なのではないかと疑うほどの視線。それに対して愉快な感情しか抱くことができない。彼女のそれはつまり、自分が……いや、自分の肉体ではないのだが、それでも自分の手で彼女の肉体を貪ったことの証明なのだから。
彼女には、すでに肉体を入れ替えたことを伝えることだけはしない。少なくとも聖杯戦争が終結するまでは。それは『三騎が倒れた以上死んでも聖杯として完成できる』と思わせることで、『聖杯を切嗣に与える』という思考を起こさせ、生命活動を自ら終わらせることで逃げるための手段を潰す、間桐が戦わずに逃げ切って聖杯を使ってしまうという手段をとらせないために。
少なくとも聖杯戦争の間、彼女には間桐の蟲に犯され続けてもらう。それ以降は俺の妻となるか、あるいはただ蟲を産むためだけの母体となるか。どちらになるのかは未だわからないが。
「そこに風呂があるから、汚れを洗い流しておくといい」
間桐臓硯は、そう言って地下室を出て行った。
アイリスフィールはその言葉に対してあなたがやったのだろうが、という怒りを覚えないわけではなかったが、『切嗣が助けに来てくれる』という希望は残っているために彼が助けに来た時に見られる姿ではないといけない。……たとえそれが、妻を探しに来たのではなく『聖杯』を探しに来たのだとしても。
その時のためにも、隣に設置されているというシャワールームを使わせてもらうことにした。
「あら、案外普通のシャワールームなのね」
蟲の体液で作られた風呂、なんてものも最悪の想定としてはあったので、そういう意味では普通のお風呂があるだけマシだった。
シャワーの水を出して、水がかからないように少し離れる。
間桐の魔術属性が『水』であるためにシャワーの水にも何かあるのではないかと疑ったが、アイリスフィールに感じ取れる限りでは魔力の痕跡すらも、この水が魔力にまみれているわけでもない。
安心しきってしまうのはだめだが、それでもその美しい裸身を穢している汚液を流してしまいたいとアイリスフィールが思ったのは事実であり、だからこそその流水に身をさらけ出した。
「ひぅ……っ!?」
さらけ出したところで、蟲に犯され鋭敏になった感覚が彼女に快楽を伝える。
流水が当たった場所が乳房であったことも、彼女にとっては不幸だったのか。
それでも、シャワーですらも今の彼女には感じる要因となる、ということがわかってしまえば、蟲によって与えられるものに比べれば遥かに小さな快楽など耐えられる。
それでも確かに体にはじくじくと熱が溜まり、思考を鈍化させて行く。
「ん……ぁ……」
漏れた小さな声は、いつの間にやら秘部に触れていた白魚のような指の刺激によって。
快楽に溺れているとしか見えないその姿、瞳にも快楽はあるが彼女はきっと認めないだろう。彼女はそこに、『蟲に中出しされた精液を掻き出す』という名目を見つけたのだから。
自慰に耽ける彼女は知らない。
この状況を見られているということも。
今、彼女が浴びているシャワーは、普通ではない地下室に引いた水道ということで後ろ暗いところがあるということも。
そのシャワーには希釈された『間桐の蟲が好む香水』が混じっていて、嗅覚が鋭敏な間桐の蟲たちが『アイリスフィールが戻ってきたら好きに犯してもいい』と命令されたために今か今かと待っているということも。
十数分後に受けることになる新たな辱めについて、何も想像すらしていなかった。