桜が黒桜となるのはHeavens Feelルートのみ。
これは大前提であり、では『黒桜』が誕生するのはどういう流れだったのか。
大まかに分けてその過程は三つ程度。衛宮士郎が手に入る、「この世全ての悪」を使ってサーヴァントを取り込む、そして慎二を殺したことで殺人を自覚する、という状態。
この中で、俺が関わることができるのは最後の『慎二を殺す』ということのみ。
あれは臓硯の策略によって発生した事象であり、俺がなんとか慎二をこの家から追い出すことに成功すれば黒桜になるのは遅らせることができるだろう。……それ以前の段階で、俺は黒桜になるルートを削りきる予定ではあるが、絶対に成功するという保証がない以上は保険として慎二を家に置いておかないほうがいい。
「はてさて、桜の中に聖杯の欠片を埋め込むことには成功したが……」
ここからだ。
ここから、桜を黒桜にしないように進めながらも、己の目的を達成するために桜ルートに近い進め方をしなければならない。
俺がイリヤスフィールを確保することを目的とするのならば、どうしてもそれが一番楽だ。
俺が聖杯戦争に参加する上で一番状況を崩さないのは、桜ルートの真アサシン召喚による形。
原作と何も変わらない参加方法であるがために、一番変化が少なく思い描いた通りの形で進められるだろう。
一週間ほど前から始めた桜の調教、それに対しては”俺”の方の意識が上なのか嫌悪感がとても大きいのだが、アイリスフィールを犯すのを見たり、未来でイリヤスフィールを捕らえた後のことを想像したりしても嫌悪よりも征服したという達成感が大きいのは”間桐臓硯”の妄執がそれだけ大きいのか。
今は桜が学校に行っている時間帯のために彼女を間桐の母体にするということも不可能なので、アイリスフィールのさらなる調教を進める。そう決めて、地下室のさらに地下、アイリスフィールが犯されている空間にまで足を運ぶ。
「ずいぶん母親が板についたじゃないか」
「くっ……」
こちらに対して反抗的な視線を向けるアイリスフィールの腕に抱かれているのは生まれてから一ヶ月も経っていない。そんな赤子に対して母乳を吸わせることで感じる快感に身を震わせながら、崩れ落ちないように壁に背中を預けたアイリスフィールがそこにはいた。
犯されている間は快楽に耽るくせに、そうでなければ未だにこちらを睨むほどの余力がある。だからと言って完全に堕ちるまで犯し続ければそれこそ死にかねない。
なかなかに面倒な状態だった。
「さて、次はどうするかな」
「何をされても心まで渡すつもりはないわ……!」
アイリスフィールの戯言を聞き流し、次の手段を考える。その言葉を言った直後にさらに母乳を吸われて潮を吹いている女の言葉になど一切の説得力もない。
「くかか」
彼女が堕ちるまで、堕とすために様々な手段を取れるというのがとても楽しい。聖女のような見目麗しい女性を醜悪な手段で堕とす快感を思えば、その手段は様々なものが思い浮かびそうだった。
さらに四年。アイリスフィールの体はそれだけの期間犯しても一切飽きることがない。
桜の体を犯すのは反応も死んでいてつまらない、義務的かつ嫌悪するようなものになるが、彼女に対してはそうはならない。
今日という日に至るまで色々としてきたが、結局のところ屈服させることができなかったのは『切嗣がいつか助けに来てくれる』と信じていたからなのだろう。彼女の口からも実際そんな言葉はよく出て来た。
だからきっと、彼女はそれを信じていたのだと思う。俺があの日以来衛宮切嗣の様子を見せてはいないこともきっと、『イリヤスフィールを助けたのだ』と信じていたのか。あるいは、そうではなくても『衛宮切嗣はイリヤスフィールを連れ出して一緒に幸せに暮らしているはずだ』とは。
それさえあれば問題ない、というのであれば。なるほど、彼女は確かに『聖女』であり、『切嗣の妻』であり、『イリヤスフィールの母親』である。
自分のことを気にするよりも先に娘と夫のことを気にする、そんな彼女に対して絶望を与えるのであれば娘も夫も幸せにならないままに死んでいったという未来を伝えることだろう。
今日は、それができる日だった。
「アイリスフィール」
「なに、かしら……!」
こちらを睨む彼女に対して、簡潔に起きた出来事を語る。つまりは
「衛宮切嗣は死んだぞ」
月下の誓いである。
昨日発生したその出来事は、衛宮の家を監視していたから知っている。
本来の間桐臓硯は『衛宮士郎がまともに育てられた魔術師である』ことを当たり前のように信じていたから桜を送りつける形でしか監視することはできなかったが、俺はそうではないことを知っているために監視することができる。
無論、できる限りは第五次聖杯戦争も俺の知識と同じような始まり方にしたいと思うために、慎二が衛宮士郎を弓道部から追い出したら桜を向かわせる予定ではあるが。
その言葉を聞いて愕然とするアイリスフィールは逃避しようとしたが
「う、うそよ……」
「嘘ではない」
蟲に、衛宮切嗣の葬式の情景を映させる。
当然のことながらイリヤスフィールの姿はない。
彼女を都合のいい夢想の中には逃げさせない。
その状況下で彼女に与えられた絶望と、そして一つだけまだ残っている希望をちらつかせれば、きっと堕ちてくれるのではないかと信じている。
「これで、
聖杯に魔力はたまったにもかかわらず使用されなかったからな、と笑う。
聖杯に五騎の魂が宿った状態で、たまった魔力が使用されることなく聖杯戦争が終了した。
それはほとんどの魔力が散ることなく大聖杯に残ったままということ。
つまり、知っている俺ではなくとも、アイリスフィールにも第五次聖杯戦争がイリヤスフィールが生きているうちに発生する確率が高いということを理解させる。
「娘を助けてやろうか?」
「何ですって……?」
そこに付け込む。
「知っているだろう。俺が聖杯の欠片を確保したことを。
それを使って間桐で独自に聖杯を用意している関係で、その気になれば貴様の娘、次代の聖杯に聖杯としての機能を使わせずに人間として生かすことも可能だ」
「何が目的なの」
食いついた。
そう思った。
彼女はやはり母親なのだろう。
自分の身よりも娘であるイリヤスフィールの身を案じるその姿。
「なに、貴様が欲しいというだけのことよ」
それに対しての彼女の返答は…………