…晴天なり。日は落ちたが、晴天なり。
三日月も良く見え、星々も闇に映えている。
…なにを感傷に浸っているのだろうか。最近は、陽菜も大きくなって、寺子屋にも通い出した。ルナサとは違って、人懐っこい子だからか、慧音にペコペコする毎日だ。全く可愛い子だが、活発というか…なんというか…。
漣「…。」
こんな夜は…いい意味でも悪い意味でもいろんなことを思い出してしまう。懐かしいななんて独り言を言いつつ、お猪口の酒を一息に飲む。今日は一人で飲みたい気分だったので、ベランダから月を見ながら飲んでいる。酔ったことはないのは、やはり鬼の血の影響だろうな。
漣「…鬼…か。」
…そう言えば、勇儀や萃香と会った時のことを思い出した。懐かしいなぁ。あの時…アイツと会ったんだよな。
———————–——————数百年前…。
何年前かは、最早忘れた。
俺、氷川漣は蓬莱山輝夜の護衛として月の都から地上へやってきた。当時は黒い護衛用の動きやすい軍服で俺は当時、右目に眼帯をしていた。…厨二病ではないぞ。訓練とかで良く誤射撃が俺の目に当たったり、腕に当たったりするからな。この時は前者だった。八意の薬があれば多少の重傷でもすぐに完全復活なのだが、この時ばかりは八意は忙しかったので仕方ない。
漣「…迷った。」
当時、地上に来て日が浅く、輝夜達の側から離れても良いというので散歩をしていた俺だったが、土地勘が無かった為、妖怪の山に迷ってしまったのだった。しかも、当時の妖怪の山は鬼が住んでいた。更に言えば、天狗達も血気盛んな状態で危険な山だった。そのことをこの時の俺はまだ知らなかった。
漣「…ん?」
天狗1「動くな。」
…案の定、目をつけられてしまった。察知できる気配の数はおよそ30。小部隊の管轄のど真ん中を突っ切ってしまったようだ。俺の首には小刀が突きつけられ、いつでもカッ捌けると言う意思表示をしていたのだろう。…全く、都の陰陽師も鬼と天狗だけは恐れるわけだ。
漣「…すまないな。道に迷ってしまった。すぐに引き返そう。」
天狗1「ならない。この山に一歩でも足を踏み入れたものは即刻処刑する。それが我ら、天狗の住むこの山の掟だ。」
…ツンッと鼻を刺激する臭いがした。血の匂いだ。妖怪の血の匂いだ。耳をすませばバサバサと鳥が暴れているような羽音が聞こえた。この生い茂る木の中だ。何処かの猟師の網に妖怪でも入ってしまったのだろう。だが…次に聞こえた音が俺の推測を…悪い意味で裏切った。
漣「…あれも山の掟か。」
天狗1「…貴様には関係ないことだ。」
…その音とは少女の絶叫だった。助けてくれと言わんばかりの叫びだった。俺は茂みの間を指さした。…まだ人間でも5つほどの少女が中年の天狗数人に囲まれ、服をひん剥かれていた。少女の額や頬、体中に血が滲んでいた。まぁ、ほとんどの人が見て良い気分にならないような感じだ。
天狗2「…そうだよ。」
天狗1「おいッ!!余計なことをッ!!」
天狗2「良いじゃねえか!!どうせ、コイツも死んじまうんだし…。なぁ、にいちゃん。」
…先程の会話を聞いていたのだろう。俺に刀を突きつけている天狗の影からもう一人、ニヤニヤとして気持ちの悪い顔をしている天狗が出てきた。
天狗2「あれはなぁ…。見せしめだよ。見せしめ。俺たち、天狗の権威を知らしめす為にあの裏切り者を処罰としてレイプするんだよ。良いだろ?俺たち、上の立場の天狗はすぐに使えるからなぁ…。フヒヒ…楽しみだぜ…。」
天狗1「ったく…。余計なことを…。」
…その後は早かった。胸元からピストル型の銃を取り出し、先程の気持ちの悪い天狗と刀を突きつけている天狗の眉間に銃弾を打ち込んだ。そして、少女の近くまで走り、腰の短刀で中年の天狗どもの首をスパッと切っていく。…久しぶりに人前で刀を抜いたな…。短刀とはいえ、師匠以外の前ではあまり刀を見せたくないからな…。まぁ、どうでも良いや。
漣「…大丈夫かい?」
?「は、はい…。」
…目のやりどころに困る姿の少女…。俺は上着代わりの着物を彼女にかぶせた。
天狗3「貴様ッ!!なにをしたのか、わかっているのかッ!?殺傷はこの山の掟では、天狗の処罰以外では禁じられているッ!!貴様は部外者でありながら、天狗を二人、殺したッ!!これは重罪だぞッ!!」
漣「…掟、掟、掟。お前達のやってることは卑劣以外の何者でもないッ!!それに俺は余所者なんだろ?ふふ。…だったらァ…。俺を殺して…見せしめにでも…なんでもすれば良いじゃないか…。」
天狗3「ひっ…!?」
その刹那、天狗のこめかみに銃口をつけ、耳元で普段出さないようなどす黒い声をかける。…仕方ないだろう?ハラワタが煮え繰り返っていたんだよ。
漣「…じゃあな。」
バンッと言う音ともに先程の天狗は息を引き取った。
漣「…君の名前は…なんて言うんだい?」
俺は少女をおぶりながら、山道を走って行った。途中、天狗どもの攻撃が俺たちを襲ったが、彼女を一時的に下ろし、守りながら戦った。…これによって、持っていた弾丸も後2、3セットほどのみになったが…。
?「…はたて…。姫海棠…はたて…。」
漣「…そっか。はたては、どうしてあんなことになったの?」
はたての体は震えていた…。当然だ。この歳であんなことがあれば、普通に怖いと思うはずだ。しかも、ことごとく、気持ちの悪い体型の男天狗達だったしな…。
はたて「…お父さんと…お母さんの…お墓参りに…行こうとして…ッ…。山を降りたら…あの人たちにッ…見つかって…ひっぐ…怖かった…。」
漣「…そっか。よく頑張ったな…。」
…山道はようやく開けた集落が見えるほど、木々が無くなってきた。だが、そこに居たのは天狗でも人間でもなかった。大柄な姿。額から生える一角、二角のツノ。あれは…鬼だ。
?「…何者だッ!!ここを鬼の里と知っての愚行かッ!!」
漣「…俺は氷川漣ッ!!半人半妖だ!!訳あって、天狗どもに追われている!!匿ってはくれないかッ!!」
?「…天狗に〜?萃香姉さん!!どうするよッ!!」
奥の屋敷から吞んだくれの声で『良いんじゃない?』と聞こえた。目の前の少女は「降りてこいッ!!匿ってやるッ!!」と俺に叫んだ。
漣「助かるよ。え〜と…。」
?「…凍香。伊吹凍香だよ。…別によろしくしないで良いわ。」
凍香…。
そういった彼女は先程の吞んだくれのいる屋敷へと帰っていった…。
伊吹凍香
種族:鬼
真っ白な肌に青と先に行くほど水色になる長髪。服は萃香に似ていてスカート部分が青色。目も青くて、萃香と背丈は同じ。
能力は『凍と暖を操る』程度の能力。
と言った感じです。
漣君のことはあまりよく思っていない様子ですが、天邪鬼も居ますしねぇ…。では次回!!ではでは〜。