シャド「がはッ…!!」
メディスン「シャドッ!!」
無理がたたった。先程の攻防戦で膝から崩れ、うつ伏せに倒れたシャドの体はズタボロとなっていた。比較的白めのシャドの肌が赤く染まっている。地面に吐いた血や立つことも出来ない彼の状況が怪我の悲惨さを物語っていた。かろうじて、息はしている。
イーグル「所詮は無駄な足掻きだ。改めて…死ね…。」
シャドの検討も虚しく、イーグルはまた先程のエネルギー砲の準備をしている。
…勿論、シャドは動けない…。
漣「幻想『穿つ努力の極光』!!」
イーグル「なっ!?」
イーグルはシャドとメディスンしか眼中に無かったのか、背後から俺がレーザー砲を打つと、奴の羽の間に直撃し、黒煙が出ている。更に奴が溜めていたレーザーは、集中力を削がれたことで不発に終わった。
イーグル「くっ…!!また貴様かッ!!氷川漣ッ!!」
漣「…。」
キレたイーグルが俺に殴りかかって、そこから格闘戦に発展した。イーグルの蹴りを俺が相殺。逆に奴が俺の拳を相殺するというまさに一進一退の攻防戦だ。舞台が地上から空中に変わってもその状態は変わらない。
イーグル「いつまで足掻くつもりだッ!!貴様らに俺を倒すことなど無理なんだよッ!!」
確かに力の差は歴然だ。俺の四肢はもげそうなほどの激痛が走るが、ここでめげてしまえば、目の前の悪魔に幻想郷ごと破壊されてしまう…ッ!!
漣「無理でもなんでもやるしかないッ!!幻想『蒼炎・フジヤマヴォルケイノ』!!」
俺は一旦、距離を離し、宵ノ明星を抜刀。天高く突き出した剣先には青い火の鳥が翼を広げている。
漣「墜ちろッ!!」
俺は思いっきり下に剣を振った。その動きと連動し、イーグルに奴の体の何倍もある火の鳥が炸裂ッ!!
イーグル「ぐっ…!!クソッタレェェェッ!!」
地底内を普段は見ないほどの閃光が包む。その閃光の中心にあった黒い影は徐々に崩壊するように消えた。それと同時に耳を覆いたくなるような凄まじい炸裂音。そして、爆風。
漣「くっ…!!」
魔理沙「やったかッ!?」
…いや、奴がこんな簡単にやられるわけがない…。
その時だった…。今まで視えなかった、奴の心の声や過去がフラッシュバックのように頭に入ってきた。とてつもないドス黒い感情が遮るものもない為、濁流のように流れてくる。
漣「ぐっ…!!」
ルナサ「漣さん?」
俺はゆっくりと地面に降りる。頭が痛い。俺はルナサに手を握られながらも、頭の痛みに悶えた。
憎悪…殺意…。全てが混濁したドス黒い感情…。今まで視てきたものはまるで比にならない…。動くことすら出来なかった…。
迦具土『このとてつもない負の感情…。間違いない…。奴は元々、非力な人間…。』
何!?人間がここまでの力を持つわけが…。
迦具土『…お前は何を視たのだ。我にも視えたがあれは奴がまだ『人』だった頃の理不尽なものの数々…。それが奴を悪魔と変えた原因…。人のように心の弱き者なら尚更、力を欲する。お前ならわかるだろう。人を、妖怪を、神を知るお前なら…。』
『力を欲する』…。力を求めた末に奴はカヤに会ったのか…。頭の痛みが徐々に引いてきた。だが、何故、あそこまでの力を…。
迦具土『奴はもしかすると自ら望んで魔術の媒体となったのやもしれん。そして、カヤは奴にとてつもないほどの魔力を注いだ。…壊れてしまうほどのな。だが、器は魔術に耐えてしまった。規格外の力はその魔力の強大さゆえ…だろうな。』
イーグル「氷川レェェェェンーッ!!」
俺が迦具土と頭の中で話をしていると、先程まで瓦礫の山だった場所から紫色の閃光が溢れ出し、爆音とともに先程、蒼炎に包まれたイーグルがその上空に大翼を広げ、力を溜めるかのように腕を曲げ、胸を突き出し、足を広げ、顔は怒りをあらわにしていた。虚空に吠えるその男に対し、絶望する者も臨戦態勢を取る者も居た。
イーグル「はぁ…はぁ…。さ、流石の俺も…死ぬかと思ったぜ…。」
爆風が止み、地面に降り、ゆっくりと此方に歩いてくるイーグル。よく見ると上半身の服は完全にはだけ、逆三角で周りは黒く輝く羽毛に覆われ(翼以外は鱗に近いが…)、鳥というよりは猿に近い容姿だ。髪は逆立ち、深紅の目で此方を睨みつつ、口角を歪めて奇妙な笑みを浮かべていた。
イーグル「もう遊びは終いだ…。今度こそ…こんなゴミどもの住まう箱庭など…木っ端微塵にしてくれる…。」
漣「…何故、お前はこの幻想郷を憎んでいるんだ。力が欲しかっただけなら、こんなことをする必要は無いはずだッ!!」
イーグル「…勘違いはしないで頂きたいな。俺は一度も力が欲しいとは発していないだろう?俺はなぁ…?この力を世に知らしめたいのだよ…。この郷を壊すのは前戯に過ぎない…。ただの『前戯』にな…。」
イーグルはニヤリと笑い、ゆっくりと歩みを進めてくる。その声はやけに冷静で、先ほどまでの怒りを微塵も感じなかった。
…これは奴の挑発だ…。だが、彼女らに乗るなという方が難しい…。最近、おしとやかになった霊夢も普段は怒りをあらわにすることのない妖夢も完全にキレている。魔理沙に至っては、もう我慢が出来てない。
魔理沙「幻想郷を壊すことが前戯だと…ッ!!ふざけるなーッ!!魔砲『ファイナルマスタースパーク』ッ!!」
魔理沙、最大のレーザーがイーグルに直撃した。閃光がイーグルを包み、見る影もなくなる。閃光が止み、静寂の中、黒煙が立ち昇る…。これで奴にダメージでも入れば良いが…。
イーグル「ふむ…。何か…したかな?」
魔理沙「嘘…だろ…?」
確実に直撃していた。それも真正面から避けようの無い距離で…。だが、目の前の男には傷一つついていない。イーグルの冷ややかな笑みが、魔理沙を絶望へと陥れる。
…もう、魔理沙はダメかもしれない。勿論、魔理沙が弱いわけではないし、先ほどの攻撃もとても良い一撃だった。だが、魔理沙も人間。自分が殺されるという恐怖に彼女の目からは一筋の涙が流れていた。
イーグル「ガキ…。自身の力におごり、一筋の希望をも踏みにじられた気分は…どうだ?そういえば、お前は途中から戦いに参加していなかったな?そうか…。お前は…。」
魔理沙「…やめろ…。」
イーグル「怖いのか…。この俺が…。」
魔理沙「ぐっ…!!」
魔理沙の首にイーグルの手が伸びる。イーグルのごつい手に比べ、魔理沙の首は余りにも華奢だ。このままでは…折られてしまう…!!
漣「幻想『幻想のアカシックレコード』!!」
俺は五線譜のような形で帯状に伸びる弾幕を魔理沙を避けながら、イーグルに撃つ。その間に霊夢が魔理沙を救出。彼女のことは親友である魔理沙に任せよう。
イーグル「…この程度が最強か。ますます、期待外れだな。氷川漣。」
シャド「くくっ…。だったら、俺も加わってやるよッ!!」
先程までボロボロだったシャドが俺の横にスタッと降り立つ。妖夢と勇儀も俺たちとともに戦ってくれるようだ。
漣「ボロボロじゃないか。」
シャド「るっせぇ。これでも回復した方だ。」
勇儀「来るよッ!!」
このピリピリとした空気の中、黒曜の翼のみがバサバサと音を立て、イーグルのみが不敵に笑っていた。
次回、魔理沙覚醒か?
では、次回!!
ではでは!!