では、本編、どうぞ。
妖怪の山。昔、ある少女を助けて、哨戒天狗たちに喧嘩を売ったことがあった。あの時はまだ、三桁単位でしか生きてなかった気がする。俺は月人だから、年齢の計算はほぼしてなかったような…。
妖夢「いい風だね〜。あっ。ほら、お空も快晴だよ。もう直ぐだね。あったかくなるのも。」
漣「…寒いのは苦手か?」
妖夢「うふふ。そんな人があんな異変起こすと思う?まぁ、アレは幽々子様の思いつきだったけどね…。鍛えてるから、並大抵のことでは動じないよ?」
今日は久しぶりに妖夢と二人でデートに出かけている。というのも、妖夢がお休みを貰う回数が少なくて…。なかなか、二人の予定が合わなかったのだ。本当に…何が白玉楼だよ。あんなん、ブラックだぞ。ブラック。
漣「しかし、こんな季節ならもう少し積もってからの方が風情あったよなぁ…。」
ここ最近、この幻想郷では雨が降ることもなく、晴れや曇りが続いたので雪は溶けており、ぬかるみすら無いほどだ。もう少し雪があった方がいいと思うのだがなぁ…。
妖夢「合わなかったんだから仕方ないよ。でも、雪がなくたって、漣さんと一緒に居れるからいいんだけどね♪」
妖夢の細い手が俺の手をしっかりと握る。鍛えているといっても勿論、筋肉質なゴツい腕ではなく、華奢な真っ白な腕だ。風にのって彼女の髪からシャンプーの匂いが流れてくる。花のいい香りだった。
漣「…つっても、妖怪の山だ。やな予感しかしな…。」
文「あやや?お二人、もしかして、デートですか?」
…こういう時だけ、自分を殴ってやりたくなる。いつから、フラグを回収する程度の能力を手に入れたのだろうか。
漣「帰れ。文屋。」
文「あやや…。辛辣すぎやしませんかねぇ…。ねっ?妖夢さん。」
妖夢「う、うん。記事にしないって約束してくれれば…うん。」
文「記事なんてしませんよ〜。」
嘘だ。絶対する。妖夢は純粋すぎるんだ。俺は信じんぞ〜…。
文「うっ…。そんな目しないで下さいよ〜。記事にはしませんからっ。ねっ?」
といって、ウィンクをする文。如何も信用ならんが、まぁ、良いか。嘘をついたら焼き鳥にするだけだし…。
文「あやや…。なんか、寒気が…。」
漣「はぁ…。ちっちゃい時の純粋なあややは何処行ったのかねぇ。」
その言葉に反応したのか、文の顔がボンっと赤くなった。妖夢は頭にハテナマークを浮かべ、ポカンとしている。
文「やっ…その…ち、ちっちゃい時なんて関係ないじゃないですかッ!!」
漣「ほう…。他人にバラされるのは嫌だと?」
文「そりゃそうでしょ!!誰でも知られたくない秘密くらいありますよ!!」
おお…。慌ててる、慌ててる〜。勿論、文との出会いは数百年前に遡る為、この捏造文屋の弱みなんていくらでもある。ふふ…。
妖夢「うわぁ…。凄い顔してるよ?」
漣「あっ。ほんと?」
文「うぅ…。わかりましたからぁ〜…。降参ですからぁ〜…。」
あらら。半泣きまで追い込んじゃったよ。
漣「ごめんごめん。冗談だよ。誰にも言わないから。な?」
文「うぅ…。ぐすん…。ほんとですからね?誰にも言っちゃダメですよ?」
漣「はいはい。」
俺は文の頭を宥めるように撫でる。すると先ほどまで泣いていた彼女はどこにやら、犬みたいな満足そうな声を上げて、気持ちよさそうに目を瞑っている。後で妖夢にもやってあげよっと。
妖夢「ふふ。そだ♪ねぇ、文さん。私たちの写真、撮ってくれない?」
漣「えっ…。俺、写真写り悪いんだけど…。」
文「良いですよ!!じゃ、そこに立ってくれます?」
あっ。俺の話は無視ですか、そうですか。
と、言う間も無く、俺は妖夢に引き寄せられ、妖夢は俺の腕に抱きついた。文は俺たち二人をカメラを通して見ている。
文「それじゃあ取りますよ〜。はいっ。チーズ!!」
カメラのフラッシュとカシャっと言う音が響く。その瞬間に隣から柔らかい物が頰に当たった。
文「わーお。大胆ですねえ。では、私はこれで。また、現像しましたらお送りしますので!!」
バサリッと大きな羽音を立て、風と共に流石は烏天狗といったようなスピードで俺たちの目の前から文は消えていった。まぁ、ロケットみたいな感じで辺りに砂埃が立ち込めるほど勢いが強いわけでないが…。
さて、思わぬ邪魔が入ったところで、如何したものか…。
妖夢「うふふ。キスしちゃった。」
漣「キスぐらい、何回もしたことあるだろ?その先だって…。」
妖夢「だって、幽々子様たちがいる前じゃ恥ずかしくてできないもん♪ルナサちゃん達みたいにあんまり一緒に居られないからいっぱい甘えないとね?」
それだけ言うと俺に向かってウィンクをする妖夢。手も指の間に指を入れて…所謂、恋人つなぎとか言う奴か…。紫が外でそんなのを聞いたとか言ってたな。というか、妖怪の山の名所ってあんまり知らないんだよなぁ…。玄武の沢とか、守矢神社とかぐらいだろうか…。
そんなことを考えていると隣から『くぅ…』と可愛らしい音が聞こえてきた。そっちを見ると妖夢が顔を赤くして、少し笑っていた。そういや、昼飯まだだっけ。
妖夢「いや…えっと…。ご、ご飯…作ってきたから…食べよ?」
漣「はいはい。」
妖夢の変わりようが少しおかしくって笑いながら、俺は腰を掛けられそうな場所を探した。あんまり笑うと幽々子曰く、顔を真っ赤にしてポカポカ殴られるらしい。見て見たい気もするが、あんまり煽って切られるのだけは勘弁だぜ…。
妖夢「はいっ。どうぞ!!」
妖夢は手提げ袋からバスケットを取り出し、開けた。因みにここに腰掛けろと言わんばかりに丁度いい切り株が見つかったので二人でそこに腰掛けることにした。バスケットの中にはおにぎりや卵焼きといったおかずが所狭しと並べられていた。
漣「いただきます。」
俺は一つおにぎりを取り出し、かぶりついた。妖夢がさっきから「どうかなぁ、どうかなぁ?」と不安そうな顔でこっちを見ている。その目線が上目遣いになっていて、めちゃくちゃ可愛くて吹き出しそうになっちまう。あぶない、あぶない…。
漣「妖夢の料理にハズレは無い。めちゃくちゃ美味いよ。」
妖夢「やた♪それじゃ、私も、いっただきまーす!!」
その後は二人でご飯を食べながら、話をしたり、一方的に愚痴を聞いたり、玄武の沢まで行って、妖夢が落ちちゃったりと色々なことがあった。勿論、妖夢の服は乾かしてあげた。そのあと、白玉楼まで送り届けて、今日を終えた俺は取り敢えず、ベッドに入って寝たのだった。
妖夢とちょこっと文ちゃん。
なんか、妖夢とか咲夜さんみたいなしっかりしてそうな人が意外と天然だったりすると可愛いよね。
では次回。
ではでは〜。