漣「…。」
月が綺麗だ。夜空を照らす、上弦の月。その光はとても強く、闇の中に映える。…月には随分と迷惑をかけてしまった。第一次月面戦争、シャドの侵略、月夜見の暴走…etc.
…月夜見…といえば、仮にも長を失った月の都はあの後どうなったのだろう。依姫や豊姫、サグメらが中心となって月の都の復興をしているらしい。今は手を貸してくれているが、月夜見は俺と戦う前に数多くの月人を惨殺しているからな。復興もかなりの時間がかかるのだろう。
輝夜「…なにを考えているの?月なんかぼーっと見つめちゃって…。」
漣「…アイツらは元気にやってるのかな。」
月のことを思い出したのも今日は永遠亭に来ていたからというのもあるかもしれない。今日は満月ではなく、半月だが、かつて宵闇の空を永久に縛りつけ、月人から身を隠した輝夜達。その時はかけることのない美しい円形の月だった。それが本物なら、とても美しかっただろう。
しかし、妖怪にとって月というものは力の源。気がつけない者はそう多くはない。その後は、博麗の巫女と幻想郷の民により、その事態は終幕を迎えた。
輝夜「…元気にやってるんじゃない?意外にデコボコながらもやってそう。」
漣「…お前は、アイツらを責めてないのか?」
輝夜は口元を隠して、笑った。それを月の光が反射し、この時ばかりは絶世の美少女の意味が分かった気がした。
輝夜「ふふっ♪ボクが?なんで?」
漣「だって…。」
輝夜の人差し指が俺の口に伸びる。それ以上は言っちゃダメと暗に言っているのだ。心なしか、輝夜と俺との距離も近くなっていた。
輝夜「…ボクを追い出したのは彼女らだけじゃないでしょ?それに、もう良いの。貴方を無断で貸し出しちゃったことも謝らなくちゃだし。あの舌禍の女神、サグメ様もお兄ちゃんがいなきゃ、ずっとクールキャラ続けないといけないの、大変だしね。」
漣「…そうか。」
音のならない口笛まがいのものを吹く輝夜。空気の抜ける音がなんだか可笑しくて、笑わずにはいられなかった。顔を真っ赤にし、頬をプクーッと膨らませ、俺のことをポカポカと叩く輝夜。痛みはない。
漣「ごめんごめん。」
輝夜「もぅ…。あーあ。なんか、何にもやる気なくなっちゃったっ!!」
…あーあ。着物のまま布団に転がったら、着崩れるだろうに。もう遅いからと永琳が気を利かして、布団を敷いてくれた。だが、それがまさかの輝夜の部屋。護衛時代に輝夜の部屋の扉の前や室内で座りながら寝ていた経験もあるから、今更、布団は無くても良いんだが…。
?「姫さま〜?お風呂のご用意出来ましたよ〜?」
扉がガラガラと音を立てて開く。扉の先にはうさ耳の少女、鈴仙・優曇華院・イナバが立っていた。
鈴仙「あっ!!もぅ、また姫さまはそのように堕落して…。隊長ももっと、しっかり叱って頂けないと…。」
漣「…これは今に始まったことじゃない。」
鈴仙「…えぇ〜。」
俺の反応に鈴仙はうさ耳を垂らし、冷や汗をかいて呆れたような顔をしている。俺はジトーと横でゴロゴロしている駄姫を見るが、お姫様はそんなの御構い無しと言った様子でゴロゴロしている。
輝夜「ん〜♪あっ!!…あの時みたいにナデナデしてよ〜。ねっ?ねっ?良いでしょっ?」
鈴仙「また子どもみたいに…。大体!!もう隊長は、姫さまとお師匠さまの便利屋さんじゃないんですよ?家庭を持って、恋人を作って…。」
…鈴仙の説教ぐせは健在か。
永琳には頭が上がらないくせに輝夜の前ではちょっと見栄を張るんだよな。頭が良い割にてゐの罠に嵌るんだから…。
輝夜「こうなると長いのよね〜。永琳にはここまで言えないから、ボクを吐き口にして…。全く、悪い兎だなっ!!」
鈴仙「ひゃっ!!な、なにをするんですかっ!!」
輝夜「男どもを誑かすのはこの身体か〜!!あははっ!!」
…何をしてるのか…。
あえて言うならば、輝夜が説教している鈴仙の後ろに周り、胸を一揉み。誑かす…って言い方はどうかと思うが、確かに立派だ。顔も良いし、相当モテてきただろう。
鈴仙「も、もう!!姫さまは節操がありません!!もう少し…そのぅ…殿方の前…と、言うのも…。」
輝夜「あはは!!わかってる、わかってる♪それに、鈴仙が好きなのは昔も今も変わらないからね〜。クールで容赦無いけれど優しい軍隊長。」
鈴仙「なっ///何を言ってるんですかっ!!…憧れ…なだけですッ!!け、決して好きなわけでは///」
鈴仙の顔が俺を見た瞬間、徐々に赤くなった。何を言っているかはわからないが、パクパクと口を開け閉めしている。
輝夜「まっいっか、お風呂入ろっと♪そだ、漣〜?お風呂、覗いてもいいわよ?それとも…一緒に入る?」
漣「えっ…。」
鈴仙「姫さまッ!!」
輝夜「おっと…。イナバが怒っちゃった…。じゃ、ボクはゆっくりとお風呂浸かってくるね〜。」
と言うや否や輝夜は逃げるようにして、風呂に行った。覗いてもいいというのは半分冗談、もう半分はガチだろう。鈴仙がいるので、簡単には返事できなかったが、輝夜ほどの女性が覗いてもいいと言えば、里の男は殆ど、見に行くだろう。だが、俺は仕事柄、輝夜の着替えや風呂の世話もしていたので、見飽きたといえば失礼だが、そのくらいは彼女を見ているので、別に今更、見たいとは思わない。だが、人らしい感情を得た現在、彼女の裸体を見れば欲情なり、なんなりしたのかもしれない。…月の護衛をしていた頃は殆どロボットみたいに感情を押し殺していたからな。
鈴仙「ふぅ…。そういえば、もうそろそろ帰ってきますね。月の姫様方。」
漣「…あぁ。」
鈴仙に言われて、改めて思った。長を失い、壊れかけた月の都を再建するため、月へと帰った3人。…どれほどの時間が経っただろうか。長らく、彼女と契りを交わしてから、時間が経ってしまった。なんでもわがままは聞いてやろう。それが、俺の使命だ。
漣「…少し寝るよ。輝夜が帰ってくるまで、時間があるからな。」
鈴仙「あぁ。長湯ですもんね。どうぞ?姫さまが来たら起こしてあげますね。」
にっこりと笑い、鈴仙は言った。俺は起こさなくてもいいと思いつつも、輝夜の温もりの残る布団に入り、まぶたを閉じた。…今日は長くなりそうだ。起こされた瞬間、そう思うことだろう。そんなことを考えている間に、俺は意識を飛ばした。
今回はこんな感じで。
では、次回。
ではでは〜。