レミリア「…それで此処を尋ねてきたというわけか。」
玄霧逢魔に会った俺たちは、正邪の話を聞きながら、紅魔館に辿り着いた。正邪から得た情報は三つ。
・玄霧逢魔は魔術の天才であること。
・死屍累々は玄霧逢魔ら幹部と逢魔が魔術で作り出した奴らで構成されること。
・目的は『人と妖怪の抹殺』と『幻想郷を蠱毒の状態にさせ、人と妖怪を互いに殺し合わせる』こと。
恐らく、人里で行われている連続殺人は、人里の人々に容疑を妖怪に向けさせるように仕向けているのだろう。その為、人にはできない方法で殺しているのだ。
…だが、奴らには謎が多い。それに玄霧はまるで今回の事件はどうでも良いかのようだった。もしかして、奴が使役しているわけではないのか?
裏で繋がっているわけではないのか?
フラン「ねぇ?漣兄様?私たちを…疑ってるの?」
漣「…っ。」
フランは、不安げな様子で涙声を出す。半分、泣いているようだった。…他でもない愛する人に疑われるのだ。
俺だって泣きたくなる。
漣「…疑うわけないだろ?お前達に協力をしてもらいたいんだ。」
フラン「…良かったぁ…。」
フランは心底、安心したような声を上げた。
レミリア「…で、協力…とは?」
ソファに腰掛け、ニヤリと笑うレミリア。吸血鬼らしく、発達した犬歯や八重歯が見えている。咲夜はその後ろで静かに俺たちの会話を見守っているようだった。リリカ達は、図書室にいるらしい。彼女らに聞かれては不安にさせてしまいそうなので、結果的には良かっただろう。
月夜見「…先刻、犯人は異国の言葉を使い、話していた。お前達ならわかると思い、このように頼みにきた。」
レミリア「ふむ…。その者はなんと言っていた?」
月夜見「…よくわからなかった。」
正邪「… Executor…。」
正邪はポツリとそう言った。
…正邪には異国の言葉がわかるのか?
そう聞くと正邪は首を横に振った。
正邪「意味はわかんねえ。でも、奴の持っている本に書いてあった。」
レミリア「…執行者…か。なるほど…。殺人にはピッタリの名前かもな。」
フラン「お姉様、いつものように話したら?」
フランの言葉とジト目にレミリアの顔が一気に真っ赤になる。…おいおい、汗も吹き出てるぞ?
レミリア「う、うるさいッ!!…もう少しこのままでいさせてくれ。」
そう言うとわかりやすく、話をずらすように咳払いをするレミリア。心なしか、咲夜も笑っている。俺が見ているのがわかったのか、ウインクをしてきた。…前までなら多分してこなかったな。可愛い。
レミリア「…しかし、言葉が通じないのであれば、不便だろう。…咲夜、暫く、氷川漣につけ。」
咲夜「はっ…?よ、よろしいのですか?」
レミリア「うむ。フランでは人里には入れないからな。夜中に二人で人里に張り込んでこい。霊夢も一緒に呼べば鬼に金棒だろう。」
…咲夜は小さくガッツポーズしてる。余程、嬉しいのだろうが、レミリアとしてはそこのところ、どうなのだろうか。因みにフランは抗議してるが、レミリアに軽くいなされている。
咲夜「漣様…。」
咲夜が俺の前に歩いてきて、俺の手を取る。…柔らかくて、細い。真っ白だ。
咲夜「本日はよろしくお願いします♪」
漣「あぁ。」
…まっ。いっちょ、やりますか。
翌日、午前1時…。
咲夜「…少し肌寒く…ないでしょうか?」
漣「寒い?」
次の殺人を未然に防ぐために人里で張り込みをする俺たち。シャドは西から、月夜見は東から、霊夢はもう直ぐ到着する。そして犯人を包囲して、逃がさないと言う算段だ。
人里から逃げられないように結界も張っている。念には念を入れるってやつだ。
咲夜「…漣様。私、夢のようですわ。こうやって、星空の下で二人で寄り添っていられるなんて…。まるで、デートみたい。恋人同士みたいですね。」
漣「…みたい?恋人とは違うのか?」
咲夜「えっ?…そうでしたね。でも、漣様だけずるいですわ。」
咲夜の手が俺の手に重なる。彼女の手は春になったとはいえ、寒いのに、暖かかった。咲夜は顔を少し赤らめている。
咲夜「…私ったら、少し大胆でしたね…。すいません。」
彼女が手を引っ込める。そんな彼女が愛おしくて、俺は彼女の後頭部に手をやり、優しく唇を重ねた。数秒しかしていないが、口の中では彼女の甘い香りがまだ漂っていた。
咲夜「…ほんっと…意地悪なんですから…。」
漣「…それが俺だ。」
…しかし、最後まで平和ではいさせてくれないのが現実だ。すぎる風の音に紛れて何処からか、血の匂いを感じた。新しい匂いではない。何かが錆びたような異臭だった。
漣「来たか。」
咲夜「えぇ…。」
…恐らく、狙いは咲夜だ。奴は人だけを狙って襲う。だから、レミリアは自分やフラン、美鈴ではなく、咲夜をよこしたのだろう。単純な強さもあるが…。
?「Mind or body? You can choose either.」
…確かに異国の言葉だ。しかも、奴は夜の闇にうまく紛れて姿を隠している。咲夜はナイフを構え、俺は剣をいつでも抜けるようにしておく。咲夜が答える。
咲夜「Why do you hear that?」
?「Because you have been selected .I have to kill you.」
咲夜「… why?」
?「You too ….Then, there is no help for it.」
言葉がわからない俺でもやつの殺気はわかる。奴は大きく鋭い刃を俺たちに向ける。…やる気のようだ。
咲夜「…来ますよッ!!」
?「Execute more than this!!」
奴が刃を振り上げ、此方に向かってくる。…速いっ。
少しでも瞬きをすれば、すぐに首を切られる。だが…相手が悪かった。
咲夜「…終わりです。」
数秒後、咲夜は立ち、奴は転がっていた。体には無数のナイフが突き刺されている。
…ようやく、奴が何かわかった。
奴は妖怪でも人間でもない。コイツは…。
鏡一郎「玄霧様。」
その様子を見ている男が一人、鏡一郎だ。
逢魔「…どうしました?」
フワリと風にのり、霧が人型を作る。正体は玄霧だ。家の裏手から漣と咲夜を眺めていた。
逢魔「…なるほど。散りましたか。時の前では何者も動けないようですね。」
鏡一郎「…ですが、フェーズ1は、まだ続いています。」
逢魔「えぇ…。平穏から絶望へ突き落とす…。それが僕達のやり方ですからね。それに…あんなのは幾らでもいる…。」
咲夜「…これが、正体?」
…これはひどいな。ブリキの人形が殺しに来ていると言った方がまだ良い。それは…血肉の集合体だった。腕や顔が裁縫道具で縫い合わされ、無念のうちに人を殺す道具になっていた…ということか。
逢魔「気づきましたか。」
鏡一郎「!?」
何処からか、逢魔がやってくる。だが、また作り物と見間違うような肉ではなく、まるで木で作られ、塗装された人形のような見た目だった。
逢魔「…しかし、これはいけませんね。殺してもないのに、腐乱臭をばら撒く愚か者です。」
漣「…お前がこれを作ったのか?」
逢魔「…世の中には二種類の人間がいる。…『生きたい』『死にたい』と思う人間と何も思わない人間です。どれほど、感情に争い、押し殺しても本当に何も思わない人間には勝てません。」
逢魔は不敵に笑った。横を見ると咲夜が俯き、腕がフルフルと震えていた。怒っているんだ。恐らく、相手のことより自分のこと、過去が関係しているのだろう。俺もコイツはいけすかない。
漣「…答えろ。貴様がこの異形を作ったのか。」
…かくいう俺も腹が煮え繰りかえっていた。目の前の異形の肉塊は顔や腕が何本も何個も無作法に繋がれた化け物だった。かつては同じく地を踏み、言葉を使い、なにかを考えていたはずなのに…。
逢魔「…果たして、これは異形なのでしょうか。先入観だけで、決めつけるのはいかがなものかと。」
漣「…お前が人間を語るな。」
逢魔「…貴方も人間ではないでしょうに。本当に神になった気であるのならば、それはただの傲慢ですよ。元々、ただの鬼が鬼神などもてはやされて…。なにが鬼の神。なにが幻想の神か。」
逢魔の声はとても穏やかだった。夜風の方がまだ騒がしい。俺の声も驚くほどに穏やかだった。
漣「…貴様の言い分は聞かない。やるのなら、相手になるぞ…ッ!!」
逢魔「…これが幻想の神とは…。この郷も終わりですね。まだ騒ぎを起こすわけにはいかないのですよ。では…。」
漣「待てッ!!」
俺の静止は虚しく、逢魔は霧散して消え去った。俺の手は空振りに終わる。…アイツは一体なにがしたいんだ?
気がつくと、あの肉塊は焼失していた。焦げ臭さと腐乱臭が鼻を刺激する。本当に終わったのか?
終わったとしたならば、さっぱりしすぎだ…。
どっと疲れがきた。今日は紅魔館で寝泊りしよう。シャド達と合流した俺たちは紅魔館へと帰るのだった。
…木の軋む音が聞こえる。
先程の人里や紅魔館とは違う何処か。少しだけの日の光にきらりと緑の目がひかった。風の音は聞こえない。木の床が石の床に変わる。所々、赤黒く湿っていた。男は一番奥の牢獄の手前で立ち止まる。
逢魔「…ここを突き止めるまでは良かったのですが、少し詰めが甘かったですね。」
鉄格子の奥、暗く見えづらいがそこには人影があった。石壁に鎖で繋がれていた。逢魔は持っていた提灯で鉄格子の奥を照らした。淡い光が人影の全貌を明確にさせた。
逢魔「…良い気分でしょう?最強であるはずの貴方が、まさか、こんないとも簡単に捕まってくれるとは…。ねぇ?八雲紫さん?」
紫「…まさか、能力をッ…!!無効化…ッ!!してくるとは…お、思い、ません…でしたわ…ッ!!」
逢魔「それが僕自身ですからね。…しかし随分調べ上げましたね。帳面に所狭しと僕達のことが書いてある…。」
逢魔の声は低く、暗い室内にしっかりと響いていた。逢魔の持っている本は紫が独自に逢魔達、『死屍累々』一味のことを調べていたものだった。逢魔の能力のみ、不確定なまま、調べ上げた一味の拠点に単身で踏み込んだところ、予期していた玄霧の能力により、境界を操る程度の能力を『消されて』しまった。
逢魔「その鎖も僕の能力ですよ。僕は二つ、能力を持ってますからね。」
紫「…私と…ッ!!同じ、能力を…持っている方までは…ッ!!し、調べたのですが…ッ!!」
逢魔「…そんな不確定な要素でよくここまできましたね。流石は幻想郷の管理者。少しでも幻想郷がピンチになるといてもたってもいられなくなるのですね。くくっ…。」
逢魔は不敵に笑った。その態度が紫の神経を逆撫でする。紫は眉間にシワを寄せて、逢魔を睨んだ。まさに鬼の形相であった。
紫「…貴方の能力は…一体ッ!!」
逢魔「…『ありとあらゆる繊維を操る』程度の能力、そして『使役する』程度の能力…。冥土の土産に教えておきましょう。」
紫「へぇ…。使役の力で私の能力を…?」
逢魔「…それ以上は言えません。では…。」
逢魔はまたその牢獄から離れていった。
…いつか、アイツに…!!
紫の目はメラメラと復讐に燃えていたのだった。
TSFの東方モノを書くとして、誰から始めましょうかね。
個人的には咲夜さんから始めようかなとか思ってますが…。
では次回。ではでは〜。