…かくして、事件は幕を閉じた。
とはいえ、あの異臭や異質な見た目は目の奥に焼き付いて離れない。嫌な体験をしたものだ。咲夜にも悪いことをした。
リリカ「よーし!!待て待てぇ!!」
ユウ「わぁい!!あはは♪」
紅魔館から帰ってきたわけだが、庭ではリリカとユウちゃんが一緒に遊んでいる。…なんというか、リリカも妹分と言える子ができて楽しいのだろう。鬼ごっこやらなんやらして、泥んこに帰ってくるなんてことが多くなった。元気なのは良いことだが、その状態で抱きついてこないで欲しい。ルナサの仕事が増える。…自分のは自分で洗濯してるが…。
響奇「きゃ〜♪」
リリカ「あはは。よーし!!捕まえちゃうぞ〜♪」
子供は風の子、元気な子っと…。
…しかし、これで終わったとも思っていない。あの言葉では形容し難いほど、形の歪な人とも妖怪でもない肉人形が、犯人なのは定かなのだが、大元である玄霧逢魔を倒しても、捕まえてもいない。更に、霊夢によると紫も行方不明らしい。
…不確定要素が多すぎる。
ルナサ「…また、事件のこと?」
漣「…ん。」
考え事をしていると、ルナサが俺の横にちょこんと座った。事件が始まってから、あまり構ってやれなかったので、怒っていることだろう。そのことを謝罪すると、
ルナサ「全然気にしてないよ?…漣さんが頑張っている姿を見るの好きだから。でも、倒れられるのは勘弁っ!!」
と、人差し指を指されてしまった。ギュッと彼女の華奢な腕が俺の体を抱きしめる。…暖かい。
昨日は寒空の下の任務だったため、人肌?騒霊肌?がとても暖かく感じた。一日だけだというのに。
ルナサ「…こうやって、二人でいられるだけで満足だよ…。だから、必ず、生きて帰ってきてね。…そしたら、二人目、作っちゃう?」
俺が彼女の明るさに押され、自然と笑みが溢れてしまう。出会った頃はこういうことに抵抗あったくせに…。
静かに彼女の唇を奪う。この時ばかりは二人の…二人だけの時間だった。時計の針も、風の音も、子供達の声も聞こえない。自分たちの世界だった。
響奇「あっ!!るなしゃとパパ、チューしてるっ!!」
リリカ「わーお。大人のチューだ!!」
ユウ「きゃ〜///」
…前言撤回。
子供達の声は忘れられなかった。俺たちは唇を離し、お互いを見た。ルナサの顔は沢山やっているのに、真っ赤になっていった。
ルナサ「ふふ。漣さん、顔真っ赤。」
漣「そういうお前こそっ。…こら!!子供が見て良いもんじゃないぞ?」
俺が叱る真似をするときゃ〜と逃げていく子供達。
…第二回、鬼ごっこ大会の始まりだ。そう思いつつも、隣の彼女の手を握り、小さな子供達の背中を追いかけていった。
鏡一郎「…え?僕に用ですか?月夜見さん。」
犯人は、玄霧の作った人形だった。あの時のことは月夜見の記憶に色濃く残っている。とてつもなく、グロテスクな見た目だったからだ。だが、不可解なことがあった。それを月夜見は片付けに来たのだ。
月夜見「…何故、お前は紅魔館前で消えた?外から来た…とはいえ、お前は今回の事件に多少なりとも興味を示していたはずだ。…何故だ?」
鏡一郎「…ははっ。いきなりなんですか?その事件は…もう…ねえ?」
鏡一郎は愛想笑いしていたが、月夜見の顔は一切笑っていなかった。月夜見の中には鏡一郎に対しての信頼など一切無い。対する鏡一郎は、笑いながらもどう逃げる?どう切り抜ける?という考えで頭はいっぱいだった。鏡一郎の額から汗が流れる。
鏡一郎「…そ、そうです!!あの時はぁ…。お、お腹の調子がおかしくなりましてっ!!」
月夜見「…厠に行っていたと?ならば、尚更、紅魔館に来た方が良かったのではないか?」
鏡一郎「ぐっ…!!」
…墓穴を掘った。鏡一郎はより一層、汗をかき始める。月夜見の真顔に対し、鏡一郎は眉間にシワを寄せて、睨み付けている。
鏡一郎「…もう少し、抗えると思ったんだがな…。」
勝てないとさとり、鏡一郎は尺に触る笑みをやめ、真顔になって月夜見を見る。紺碧の瞳が月夜見を睨む。
鏡一郎「…アンタの睨んだ通りさ。僕には支援してくれる人がいてね。その人が君たちに接触するように言ったのさ。」
月夜見「…そいつは玄霧逢魔か?」
鏡一郎は鼻で笑い、木の椅子に腰掛けた。右手で長い前髪を弄っている。確実に月夜見を舐め腐っていた。
鏡一郎「どうだろうね?勝手に考えとけば良いさ。僕は非力だった。だけど、あのお方にあった時、全てが変わったんだよ…。あんなゴミみたいな人生から!!…素晴らしいものになった!!」
すらっとした立ち姿をしているが、顔は怒りに満ち、声を荒げている鏡一郎。月夜見は立ち上がった鏡一郎から一切目を離さず、話を静かに聞いていた。
鏡一郎「…わからないだろうッ!?アンタみたいなエリートにッ!!僕みたいなクズの気持ちなんかッ!!…世の中…戦っている奴より…逃げている奴の方が…生き残れるんだよ…!!ここでお前に裁かれれば、あの方に僕は…簡単にッ…!!切り捨てられるッ!!」
自暴自棄になったのか、周りの家具を蹴り飛ばし、家の中をめちゃくちゃにしていく鏡一郎。月夜見は哀れに思っていた。…正直、暴れるところまでは読めていた。そのため、慧音や和泉を外で待機させている。腐ってもおそらくではあるが、死屍累々の一人。実力は未知数だ。
鏡一郎「…なんだよッ!!その目はぁぁッ!!…どいつもこいつも、僕を下に見やがってぇぇぇ…ッ!!…良いさ…。僕の力、見せてやる…!!」
鏡一郎は俯きながら、右手を横に出し、なにかを持つ仕草をした。すると、奴の右手を何かが覆い尽くした。まるで障壁のような…何かだった。月夜見にはそれが何かすぐにわかった。…『鏡』だった。
鏡一郎「僕の能力は、『像を形にする』程度の能力!!鏡に映るもの、鏡の中のものもあの方によって出せるようになったァッ!!あの方はすげえぜ?僕の力を、最大側まで引き上げてくれたッ!!僕に貴様の攻撃が通じるかなッ!!」
右手の鏡面が消える。…鎌か?あれは。
月夜見は両手に刀を持ち、臨戦態勢をとっていた。鏡一郎の目はなにがなんでも切り裂くという目をしていた。だが、鏡一郎は天井に鎌をふるい、天井に大穴を開けた、
月夜見「…なにをする気だッ!!」
鏡一郎「この家ごと、いや、この人里ごとッ!!貴様を切り裂いてやるッ!!」
月夜見「…やらせるかッ!!奥義『龍翔天文斬』!!」
月夜見の炎の斬波がクロス状に重なり、飛んでいく。鏡一郎はそれを鎌の風圧だけで消し去った。ふるった鎌の一撃で、壁に横一線の大穴が空き、月夜見にとんでもない衝撃が走った。咄嗟にガードしたので、月夜見の体に傷はないが、家はもう崩れようとしていた。
月夜見「チッ!!」
瓦礫が月夜見に降ってくる。だが、鏡一郎の姿は既にどこにもなかった。あっという間に月夜見の目の前は瓦礫の山に塞がれてしまった。
和泉「月夜見様ッ!!」
家の外で待機していた和泉が月夜見を呼ぶ。月夜見がこんな簡単にやられるわけがない…!!和泉の目には少しの涙を浮かべていた。
だが、その心配は必要なかった。ドサっという音と共に瓦礫の山から月夜見が現れた。月夜見特有の金の髪や赤色の着物は少し埃をかぶっていた。
月夜見「…和泉、奴は?」
和泉「…乱暴に鎌を振り回しながら、里の外に逃げて行きました。ここで暴れるのはやめてくれと…慧音様から…。」
月夜見「…そうか。」
月夜見は無表情だった。だが、和泉の心配そうな顔に少し顔が綻び、和泉の艶やかな黒髪を優しく撫で始めた。
和泉「きゃっ…。な、なんですか?」
先程まで少し泣いていた為か、和泉の顔が赤くなり、目は潤んでいた。滅多に笑うことのない月夜見がそれを見て、笑顔を示した。少年のような無邪気な笑顔だった。和泉はそれを見て、赤くなった顔を着物の袖で隠した。…これが天魔と神の夫婦であるとは誰も思うまい。月夜見は、和泉の手を取ると、和泉と共に妖怪の山へ帰り、着々と準備を始めるのだった。
ユウ「おいひい♪」
ルナサ「そう?ありがと♪」
楽しい時ほどすぐにすぎるものだ。急に始まった鬼ごっこ大会は、蛮奇のお腹の音によって中断された。そういえば、昼前だったと、ルナサと二人で急遽、昼食を作り、メルランや紫苑、正邪、こいしとご飯を食べ始めた。
正邪「ん〜♪」
漣「美味いか?」
正邪「あっ!?お、美味しくなんかねえよ!!普通だ!!ふ・つ・う!!」
…なんて言いながら、心の中ではしっかり褒めているところを見ると彼女も悪い子ではないのだろう。心の中では絶賛している。因みに正邪以外には言ってあるので、食卓は笑いに包まれた。
正邪「な、なんで笑うんだよッ!!」
ルナサ「ふふっ…。だって…ねぇ?」
漣「くくっ…。あぁ。」
正邪の顔はみるみる赤くなっていった。説明してやると赤かった顔はもっと赤くなった。
正邪「チッ!!漣、心読むの禁止だっ!!」
漣「はいはい。」
正邪「はいはいも禁止!!」
ビシッと指を指す正邪がなんだかおかしくて笑ってしまう。するとまた怒り出し、もう良いと飯をガツガツ食べ始めた。
…このままでは、正邪に全部食べられてしまうな。談笑しながら、ご飯に舌鼓を打ちつつ、また、食べ終わったら、ユウちゃんやリリカ達と遊ぶ俺であった。
今までの中では結構短めかな?
では次回。ではでは〜。