漣「…陽奈。」
陽奈「お父さん…。わかってるよ?私、どれだけ辛くても私、耐えてみせるから!!」
咲夜の作ったメイド服に身を包み、長女、氷川・陽奈・プリズムリバーは俺のいる紅魔館のとある一室にやってきた。パチュリーの手によって結界が貼られ、激しく弾幕ごっこをしても壊れないようになっている。陽菜の小さなガッツポーズに大きくなったなと思いつつも、やっぱりルナサに似ていると思った。
漣「うん。…先に言っておくけど、みんながみんな、生きていられるかわからない。お前も死んでしまうかもしれないんだ。そんな過酷な戦いになる。…覚悟は出来てるか?」
陽奈「…大丈夫。私は死なないよ?だって…最強の幻想神の娘だもん。それに、今からお父さんが私が死なないように鍛えてくれるんでしょ?」
…能天気だな。能天気でマイペースな子だ。だが、戦う時になれば、こういう子は化けるだろう。如何なる時も自分という存在を見失わないというのは大切なことだ。俺が月で軍隊を鍛えている時も何度も言った。自分を見失ってしまうと攻撃が乱れるからな。相手に左右されず、自分の意思を貫くこと。それが大切になる。
漣「…俺はお前達の言うほど立派な奴じゃないさ。さて、無駄話をしている時間は無いな。先ずはお前の実力を見せてもらうぞ?」
陽奈「え?い、いきなり!?」
漣「…いきなりも何も…。敵は待ってくれないからな。…行くぞッ!!」
…先ずはノーマルで相手をしてやる。
俺は地面を蹴り、一気に間合いに走り込む。そして、陽奈に蹴りをお見舞いしようとするが、陽奈は簡単にはやられない。
手で足を塞ぎ、逆にカウンターで俺の腹に二段蹴りをしてきた。
…戦う前とは顔つきが変わった…ッ!?
漣「やるじゃないか!!」
陽奈「当然ッ!!お父さんの娘だから…ねッ!!」
これは想像以上かもしれないッ!!
俺は一旦、間合いを取り、弾幕を打つ。壁や床にあたり、辺りを黒煙が包む。
動くのは逆に蛇足だ。ここは、目を閉じて集中する…。
漣「ッ!?」
前方から飛んできた光弾が俺の頰を掠めた。血が下に滴り落ちる。俺は血を手で拭い、前を見る。黒煙は突然、飛んできた光弾に払われ、その光弾を作り出した者の姿を見せる。…楽しくなってきやがったッ!!
漣「陽奈ッ!!」
陽奈「やっぱ、お父さんの娘だね!!めちゃくちゃ…この瞬間が楽しいよッ!!」
…それはこっちが言いたいなッ!!ここまで俺を滾らせた相手は後にも先にも陽奈くらいだろう。少ししか動いていないのに、汗が止まらない…!!陽奈はニヤリと笑い、髪をかきあげる。ルナサに似た金色の瞳に俺の姿が映る。お互い、相手の出方を伺っているようだ。
陽奈「行くよッ!!」
漣「来いッ!!」
陽奈は走りながら、横にした弧を描くように光弾を撃ちまくる。弓形型と言ったらいいか…。俺は円形に火を展開し、光弾を消し去る。
陽奈「無駄だよ!!」
その瞬間、背後から陽奈の声が聞こえ、振り向く暇もなく、後頭部に衝撃が走った。
…俺が…後ろを取られた?
全てを視れるはずの俺が?
陽奈「…私の能力、まだお父さんには言ってなかったよね。」
漣「…?」
陽奈「…私の能力はね?『空間を操る』程度の能力なんだって。今のはね?私の周りの空間とお父さんの周りの空間を入れ替えたんだ。」
…空間?
咲夜の能力とは違うのか?
時間と空間は表裏一体。咲夜の能力で紅魔館内の空間を広げている。だが、空間を入れ替えるのと時間を止めて動くのでは違うはずだ。つまり、咲夜の能力とは違うものと考えれば良いのか…。
陽奈「それに、お父さんの炎の能力とお母さんのポルターガイストの能力。…どう?相手にとって不足はないでしょ?」
漣「…くくっ。そうだな…。暴島『激昂するテュポン』」
陽奈「キャッ!!」
地面から飛び出る光の柱が陽奈を飛ばす。大人気ないがこれは…本気を出してもいいかもしれない。空中でゆらゆらと揺らめく金色の髪、ルナサとは長さが違う。そして、あの目…。まるでかつての俺を見ているようだ。笑いがこみ上げてくる。格闘技は美鈴に習っているのだろう。無駄がない。
陽奈「…本気の目…だね。神お兄ちゃんの時の…。」
漣「…陽奈。お前は強い。はっきり言って想像以上だ。これが長女の威厳というものなのだろう。」
陽奈「…うーん。どうだろ。難しいことはわかんないや。」
小首を傾げる陽奈。さっきまでの臨戦態勢は何処行ったんだよ…。
陽奈「でも、意地悪だよね。神お兄ちゃんの時もギリギリまで本気を出さなかったでしょ?私たちはお父さんの本気が見たくてやってるのにさ…。」
漣「…本気か。」
心を落ち着ける。
…最近はやっていないが、力を目一杯に膨らませる形で…。俺という小さな器を真白の炎で満たす…。さぁ…ショータイムだ!!
漣「紅蓮『輪廻転生之炎』!!」
俺の視界は白い光に遮られる。白…というよりは銀の方が近いな。光は暖かくなればなるほど、白くなる。俺の周りには超高温のオーラが展開されているのだ。そして、その熱は気流を作る。今頃、室内は台風レベルの風が吹いていることだろう。
そして、右手で纏っているオーラを払う。はっきり言って、まだ迦具土の力は上手く扱えない。つまり、彼女の言っている最強のフォームとはこの力を言うのだろう。
陽奈「…うわぁ〜。綺麗…。」
漣「目を奪われている場合ではないよ?さぁ…。おいで!!」
俺はこっちに来いとわざと挑発する。癇に障ったのか、陽奈は先ほどの獲物を狙うような笑みを浮かべ、地面を蹴り、走ってくる。
陽奈「はぁ!!やぁ!!」
陽奈が近づき、俺に飛び蹴りをかます。
俺はその蹴りを手で払うと陽奈は軸足を変え、回し蹴りをしてくる。
俺はそれも手で払い、陽奈に右ストレートをかます。
それを彼女は手で受け止めて、俺に銃口を向ける。
その銃口は俺の眉間を捉え、火を吐く。
…当たるかよ。
俺はその光弾を首を動かして避け、後ろに一時、飛び退く。
漣「おいおい。スペルカードルール…忘れたのか?」
陽奈「お父さんにあんな攻撃、当たるわけないじゃん。まだまだ行くよッ!!」
お互いにバーサーカーってか。
陽奈はまた俺に近づき、三段蹴りをお見舞いしてくる。
俺は全てかわし、陽奈に肘打ちをするが、陽奈はそれを足で受け止める。
…陽奈の体はとんでもなく柔らかいんだな。足の甲が鼻の頭につきそうだ。
漣「そろそろ、格闘勝負にも飽きてきたか!?」
陽奈「ううん!!全然ッ!!とっても楽しいッ!!」
陽奈は笑っていた。恐らく、俺もだ。二人とも狂気的に笑っている。そろそろ、本気を出そう。…そう、『スペルカード』を。
俺は肘を戻し、反動をつけて、陽奈に回し蹴りをお見舞いする。空気すらも切り去るほどのスピードで…。
陽奈はガードするも、左の壁に吹き飛ばされる。
漣「行くぞッ!!紅蓮『太陽の息吹』!!」
俺は周りに不規則に生み出した弾幕達を陽奈のいる辺りに向かって撃つ。いくつ打ち込むかわからないが、とんでもない速さでな。弾幕はまるで磁石に吸い寄せられる金属のように全てが一箇所に飛ぶ。
漣「…ッ!!となるとそう来るよなッ!!」
横から撃ち込まれる陽奈の蹴りを俺は手をクロスしてガードする。浮遊の能力を使って、俺の頭の位置に足先を持ってきていた。
陽奈はバランスを崩さないように地面に右手で着地し、バク転で体勢を整える。
目を離した隙に、地面を蹴って俺との間合いを詰める陽奈。
俺は陽奈に当たるように弾幕を打つ。
空打ちだ。
目の前のターゲットが消えたと思ったら、俺の背後から俺の頰を掠め、光弾が飛んでくる。
漣「…ッ!!『喉を掻きむしる街灯の苦言』!!」
チッ…!!
気がつけば、俺の後ろに陽奈は居る。つまり、彼女は俺の背後を取り、一挙一動をされる前にやるといった感じだ。…全く、誰に似たんだか…。
彼女の拳が俺の顔面に向かう。
俺はそれを受け止め、逆に殴り返してやる。
鏡写しのように陽奈も俺の拳を受け止める。
陽奈「さぁ!!まだまだ行くよッ!!お父さん!!」
漣「あぁ!!」
フラン「…。」
フランとレミリア、咲夜、パチュリーは部屋の外から二人の手合わせを見ていた。親子喧嘩、というにはあまりにも荒々しく、戦争といえばあまりにも細々とした動きをしている。
フラン「ねぇねぇ。」
フランは隣にいたレミリアに聞いた。
フラン「…なんで、二人はあんなに笑ってるの?漣兄様も陽奈ちゃんも汚れてるのに…。」
レミリア「…あれは、ああいうサガなのだろうな。全く、親子とはとても面倒なものだな。」
部屋の中ではまだ戦闘が繰り広げられている。漣の放つスペルは全て、空に散る。
瞬間的に現れた陽奈が漣に向かって、次は蹴りを仕掛ける。
漣は右足で蹴りを相殺するよう、陽奈の足を蹴る。
…まるで一つの格闘試合を見ているようだった。
パチュリー「…全く、そのうち、結界も砕けるわよ。あの二人、どっちも鬼の血を引いてるだけあるわね…。狂気的に笑っちゃって…。本当に戦いを楽しんでいる…。」
咲夜「…陽奈ちゃんも漣様もかっこいいですわ。」
パチュリーはジト目で顔を真っ赤に染めている咲夜を見る。咲夜はフラン以外には漣と付き合っていることを言っていないのだが、言動やらなんやらで周りにもバレてしまっているのだ。しかも、当の本人はそれに気づいていない。
パチュリーも、前の試合に集中する。窓越しで見ているのだが、二人の炎で溶けて無くならないか、割れて無くならないかが心配なパチュリーだった。その心配を他所に中では試合が進行している。…着いてはいけないな。パチュリーはそう思い、苦笑いするのだった。
陽奈「はぁ…はぁ…。やるね。お父さん。さっすが♪」
漣「俺の方がびっくりしてるぜ。でも、そろそろ終わろうか。」
…次の一撃で…だかな。
なにせ、さっきから能力と格闘術で陽奈のスペルを見ていない。ならば、最後にスペルカード同士のぶつかりをしてもいいと思ったのだ。
俺は半身になり、右掌を広げ、前に突き出す。陽奈も銃口を此方に向ける。…その眼光は非常に鋭い。
漣「紅蓮『プロミネンスの怒り』!!」
陽奈「炎弾『フレイム・ショット』!!」
炎の弾丸と炎のレーザーがぶつかり合う。部屋全体が熱気と光に包まれた。数秒後、光が止む。陽奈は太陽のように晴れやかな笑顔をしていた。俺も笑っていることだろう。今日は陽奈のわがままを聞いてやろうか。そう思い、俺たちはその部屋を後にした。
少し戦闘の時の文を変えてみました。感想を教えていただければ幸いです。…疾走感が出てたら良いなぁ…。
では次回。ではでは〜。