※この作品はR-18です。

半人半妖の恋愛奇譚   作:紳爾零士

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第131話『蛇と悪意の炎と一矢報いる力と』

?「シュルシュル…。」

 

?「うんっ。そうだね。」

 

?「シュルル?」

 

?「…お仕事、始めてもいいけど中々付け入る隙がないんだもの。背後さえ取れれば…蛇ちゃん達が噛み付いてドロドロ…。」

 

漣やシャド、鬼達や天狗達、そして、霊夢や魔理沙達の戦いを興味なさそうに見る瞳が六つ。いずれも血のように赤く、一寸の曇りもない。銀色の腰まである髪が特徴的で白黒のゴスロリ衣装を着ている少女。その華奢な腕には白蛇が巻きついていた。

 

早苗「…何方ですか?」

 

鈴仙「早苗さん?」

 

早苗と鈴仙はその者の存在に気づいた。少女は花が舞い散るが如く、静かに二人の方に振り向いた。二人は驚きはしたが、レミリアやさとりのような子なのだろうと思い、臨戦態勢を解かなかった。腕に巻きついた蛇はチロチロと舌を出し、ニタニタと笑っていた。対して少女は白百合の如く、可愛らしい見た目に反して、その顔は何を思っているのかわからないほど表情に変化がなく、目も陰りがさしている。

 

?「…巫女…兎…。」

 

早苗「敵ですか?それとも…味方ですか?」

 

?「…気分次第ではどちらにでもなる。でも、マスターは意地悪…。蛇達のコンディションが悪いのに…。」

 

少女が蛇を撫でると蛇は満足そうに目を細めた。

 

?「…私は蛇噛クロ。マスターの半身。マスターの為なら…なんでもする。」

 

鈴仙「…マスターとは、玄霧逢魔の…。」

 

クロ「…マスターの名前を気安く呼ばないで。」

 

鈴仙は驚いた。その少女からは考えのつかないほど、妖力と魔力が発せられていた。

 

早苗「…貴方は…人間ですか?」

 

クロは首を横に振った。

 

クロ「…私は人間じゃない。とある場所に蛇が居た。蛇というにはあまりにも細くて、まるでミミズのようだった…。蛇は思った…。何故、世界は平等ではないのかと…。」

 

クロはいきなり二人に語り出した。早苗と鈴仙はその様子を悲しげに捉えていたが、臨戦態勢は解かなかった…。

 

クロ「…蛇は恨んだ。蛇の周りには沢山の蛇が居た。自分よりも太くて長くて大きくて…。蛇は逃げた…。ひたすらに逃げた…。殺されないように…食べられないように…。逃げたところで…気付いたら何処かわからないところまで来てしまった…。そして、蛇は出会った。まるで神様が天上から見ているような高貴に満ちた声だった。そして、蛇は手を手に入れた。脚を手に入れた…。心を手に入れた…。人の体、人の心を…。」

 

早苗「その蛇が…クロちゃんですか?」

 

早苗は優しく接した。年下の少女のように見えて実力は上…だが、少女の話し方があまりにも悲しげにも嬉しげにも聞こえた。無表情なのに、その声は少し悲しみを含んでいたように聞こえた。

 

クロ「…私は強い。三月あれば100人以上は殺せる。…いや、違う。私は強くなった?マスターに拾われて…。」

 

華奈「急ぎそこから離れろッ!!」

 

鈴仙「華奈さんッ!?」

 

クロは蹲り、何やらぶつぶつと呟いている。死角になって鈴仙や早苗からは見えていないが、その目の焦点は合っていない。そこに突然現れた華奈が鈴仙や早苗に離れるようにと声を荒げた。鈴仙と早苗にはなんのことかわからないが、鈴仙や早苗がその場から離れた時に気づいた。クロの周囲の草が紫色に染まっていくのに気がついた。円形に…かつ浸食していき、周りの敵味方限らずにその紫の部分に足を踏み入れた者は土壌と同じく紫色の何かに蝕まれ、30秒もかからずに全身が紫色に染まり、その場にバタリと倒れた。…恐らく、死んだのだろう。早苗と鈴仙は華奈の妖力のバリアに入り、その浸食からなんとか逃げられた。

 

早苗「な、なんなんですかッ!?こ、この感じは!!」

 

鈴仙「この言いようのないいやぁ〜な感覚は…ッ!!」

 

華奈「…奴の妖力が暴走しているんだッ!!それに毒素が混じって、周りを腐食している…ッ!!アレに触れたらもれなく即死だぞッ!!」

 

早苗・鈴仙「ひえぇぇぇ〜!!」

 

クロ「…私は何?私は…何?ワタシは…ナニ?」

 

クロが何かを呟くとその紫色の妖力は周りを腐食させていく。じわじわと浸食し、獲物を殺した白蛇はその死体を貪り喰らい、ニタニタと笑っている。…これが本来の力なのだろう。一つの街全てを侵食するほどの毒素。それが彼女の能力。だが、精神が安定している時には発生しない。…怒りや不安、悲しみや狂気に反応し、その怒りや不安のレベルに応じて、侵食する範囲、毒の力が変わる。

高台の上でその惨劇を見ていた逢魔は密かに笑っていた。

 

逢魔「…やっと発動しましたか。これが彼女をNo.2と言わしめる最強の能力。今回は範囲こそ狭いが、毒のレベルは最高です…。はてさて、どうなりますかな…。クックックッ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レン「…。」

 

漣「…俺…だと?」

 

…そこにいるのは漣自身だった。姿、形、後ろ髪を触る癖も一緒だった。違う点を挙げるとすれば、ロングコートの色が赤く、そして、長い剣を鞘に納め、背に背負っている…くらいか…。

 

レン「…そうだ。正真正銘、俺はお前だ。だが、お前であったお前ではない。お前みたいな軟弱者と同じにされては困るな。」

 

漣「…なに?」

 

レン「…俺は覚悟を決めた。だが、お前の刀には、弾幕には覚悟がない。だから、お前は俺には勝てない。覚悟を決めた剣はなによりも強固でなによりも鋭い。…お前のような鈍に俺は切れない。」

 

漣「…試してみるか?虚無『絶滅の灯火』!!」

 

黒い炎が漣の体を包み込む。その炎を払うと漣はレンを殴りかかった。

 

レンは漣の拳をさっと避け、漣の腹に蹴りを一撃かます。

 

漣「がはッ…!!」

 

漣は血の混じった空気を口から出した。漣が体勢を整え、レンの方向に向くと、居たはずの場所にレンは居なかった。

 

レン「…だから、お前は甘いッ!!」

 

漣「ぐっ…!!」

 

レンは頭上からカカトを漣の脳天めがけて勢いよく落とし、ヒットさせる。あまりの痛さに漣が立てずにいるとすかさず、レンは倒れる漣の髪を掴み、持ち上げる。

 

漣「くっ…!!」

 

レン「…この強さの理由。お前には教えてやろう。俺はもう一つの幻想郷。此処とは違う鏡の中の幻想郷から来た。本当はお前と真逆の色の…純白の服を着ていた。…お前も知っているだろう?春雪異変のことを…。」

 

レンは目をカッと開き、漣のことを見た。ゆっくりと髪を掴んでいる左手を動かし、目線を合わせた。レンの目からは一筋の涙が流れた。

 

レン「…思わなかったか?もし、あの時、少しでも自分が行くのが遅れたら…ルナサはどうなっていたか。…お前の世界とは真逆のことが起こる。俺の世界では既に幽々子も妖夢もいなかった。桜は力を取り戻し、その枝は俺の…ッ!!隣にいた…ッ…ルナサに…ッ!!向かった…!!」

 

漣「な…に…?」

 

レン「消えたんだぞッ!!アレほどに愛した者が…!!俺の…全てを捧げた女性が…ッ!!いとも…簡単に…!!泡を割るみたいに…ッ!!」

 

レンは声を荒げた。レンの怒りが漣にも伝わった。

 

レン「だからッ!!俺は全てを壊したッ!!紅魔館もッ!!白玉楼もッ!!妖怪の山もッ!!全ての場所を…物を…人を…壊したんだッ!!だが、俺のこの喪失感は治らない…ッ!!…そんな時、奴に会った…。玄霧逢魔…。奴の口車に賭けで乗ってやることにした…ッ!!俺の…俺だけの…ルナサを手に入れるためになッ!!」

 

レンは右手を怒りのままに握りしめ、漣の顔を何度も何度も殴りつけた。漣の口には頰の内側が切れたのか、血の味がした。

 

レン「なんで…ッ!!なんで!!お前なんだッ!!なんで…同じ氷川レンなのに…ッ!!お前ばかり…幸福なんだッ!!」

 

怒りのままに漣の顔を殴りつけた。漣の額からも口の端からも血が流れ出てきた。

 

漣「…お前は…。」

 

レン「アァッ!?」

 

漣「…お前は…全員、殺したのか?…フランも、ルーミアも…メルランも…リリカも…みんな…みんなッ!!」

 

漣も知らず知らずのうちに怒りが込み上げて来るのを感じた。それに反し、レンは殴る手を止め、ニヤリと笑いながら言った。

 

レン「あぁ…そうだッ!!…全員、殺したさ。ルナサ以外は…この世にいらないッ!!」

 

漣「…ふざけんなよ…。」

 

レン「ア?」

 

漣「ふざけんなよッ!!このクソやろうッ!!」

 

漣はレンの腹めがけて、キックをお見舞いする。鳩尾に入ったのか、左手を緩めた隙に、漣はレンの手から抜け出し、服に付いた砂埃を払った。

 

レン「くっ…。グォォォォ…!!」

 

あまりの痛みに悶絶するレン。漣はその隙に右頬に1発。右に飛んで行くレンを追い、左頬に1発。また、左に飛んでいくレンを追い、肘打ちでレンを地面に打ち付けた。

 

レン「くっ…!!ひ、卑怯だぞぉ…!!」

 

漣「…お前に卑怯と言える権利が…あるのか?…お前はなにも知らないな。ルナサ以外になにもいらないだと?…俺が今までルナサだけを…愛していたわけではない…ッ!!確かにルナサは一番だッ!!だが、ルナサだけの幻想郷だなんて…そんなもの!!面白くないッ!!」

 

レン「…そんなのクソやろうはお前じゃないかッ!!ルナサ以外も愛する浮ついた野郎こそ、クソだッ!!クズだッ!!クソやろうだッ!!」

 

漣「違うッ!!…確かにクズかもしれない…。お前は一途かもしれない。だけど…!!一度愛すと決めたら、貫き通すッ!!それが俺の…!!氷川漣の意地だッ!!」

 

漣の左の拳がレンの頰に直撃する。

 

逆に引いた時にレンの拳が漣の頰に直撃する。

 

その繰り返しだった。お互いの胸ぐらを掴んで、殴りつける。お互いの頭に血が出るのも、お構いなく、自身の気持ちを目の前の相手に打ち明け、その拳に力が乗る。

 

レン「ふざけんな…!!ふざけんな、ふざけんなッ!!」

 

漣「所詮、お前にはッ!!多くの人間を愛す覚悟が足りなかったんだッ!!だから、ルナサの…!!ルナサだけの愛情に甘えてしまったッ!!それを失い、子どものようにそれ以外はいらないと駄々をこねてしまった…ッ!!そして、亡くなったものを求めてしまった!!…結局、お前は何もかも捨ててしまったんだッ!!愛情も、友情も…思い出さえもッ!!」

 

レン「なッ!?」

 

レンの拳が少し止まる。その隙を漣は逃さなかった。想いのままに、怒りのままに、漣は1番の高威力をレンの顔面に叩き込んだッ!!

その瞬間、周りの鬼達の怒りの声、戦いの音も全てがなくなったように思えた。

 

レン「あ…あっ…アァァァ…!!」

 

漣「…気づいていたんだろ?本当は…自分のやりたいことが合っているのか…合っていないのか…。その間違いをッ!!」

 

レン「…嫌だ…嫌だぁぁ…ッ!!認めたくない…認めたくない…!!」

 

レンは顔面に一撃喰らった瞬間、後ろにゆっくりと後退していった。その目から血と共に大粒の涙が流れていた。

 

レン「俺は…!!俺はァァァッ!!」

 

漣「…。」

 

レンは子どものように泣いた。左の拳で何度も何度も地面を殴りつけた。その手から血が流れていようが、お構いなく、レンは殴りつけた。

 

レン「…クックックッ…。」

 

漣「…ふふっ…。」

 

その後はお互い、空に轟くように高笑いをした。周りの状況など関係ない。お互い、まるで旧知の友のように一頻り笑った。

 

レン「…やはりお前は…甘い。」

 

漣「…お前もな…。」

 

漣とレンは自分の顔の血を拭って、また構えた。同じ構えで同じ笑み。お互い、戦いを楽しむバーサーカーとなっていた。

 

レン「…この俺を…!!」

 

漣「…この郷を…!!」

 

レン/漣「「舐めるなよッ!!」

 

その瞬間、二人は地面を蹴り、お互いの拳をかち合わせた…。




次回は少し巻き戻って月夜見編かな?
では次回。
ではでは〜!!
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